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SAPが垣間見せたクラウド時代のパートナー戦略 / 2010年04月14日(水)
 独SAPと富士通が4月5日、SAPが提供するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型情報分析サービス「SAP BusinessObjects BI OnDemand」の日本語版を共同開発し、富士通のクラウドコンピューティング基盤から国内市場に提供することで合意した。

 SAP BusinessObjects BI OnDemandは、社内外に分散した経営情報を集め、組み合わせて分析、共有することで経営の見える化を実現するビジネスインテリジェンス(BI)ソフトをSaaSとして提供するサービスである。

 例えば、データマッシュアップでは、個々に構築された業務システムから収集した会計・受注データを、あたかも単一システムのデータのようにPC画面上に表示する。瞬時に検索・分析が可能な「SAP BusinessObjects Explorer」の機能も標準搭載したことにより、容易に経営分析やレポート作成ができるという。また、SAP製品やセールスフォース・ドットコムの「Salesforce CRM」などのオンデマンドおよびオンプレミス(自社運用)のデータとの連携機能も備えている。

 SAPは2006年から同サービスを提供しており、すでに世界中で26万人が利用している。新たに富士通と共同で日本語化し、富士通が群馬県館林市に持つデータセンターから国内企業に提供することにした。

 両社はグローバルパートナーとして、これまでERP分野で協業を進めてきたが、今回の提携を通じて今後はBI分野でもグローバルな戦略的パートナーとして協業を深めていく方針。その一環として、国内市場に向けたBIのクラウドサービス展開については、SAPが富士通のデータセンターの堅牢さなどを評価し、日本語版の共同開発と合わせて手を組んだ格好だ。

 グローバルでERP最大手のSAPは、今やCRM、SCMなど幅広い分野をカバーする総合ビジネスソフトベンダーである。2007年にはBusinessObjects(BO)を買収し、BI分野へも本格的に進出した。ERPが屋台骨であることに変わりはないが、BIはERPをはじめとした手持ちのビジネスソフトの普及に相乗効果を生み出せるとあって、このところ相当注力しているようだ。

 一方、SAPはERPがミッションクリティカルな分野であることもあって、当初はクラウドサービスへの展開に慎重な姿勢を見せていた。しかし、最近になってその姿勢もだいぶ変わってきたようだ。今回の富士通との提携は、製品サービスおよびパートナー戦略と合わせて同社のクラウド事業への取り組み方を示唆しているようにも受け取れる。

●ERPのクラウドサービス化の布石か

 「SAPもクラウドには注目している。ただし、(ERPのような)基幹システムをクラウド環境で利用するには、その信頼性をきちんと検証する必要がある。とはいえ、今後は基幹システムもクラウド化する方向に行くだろう。SAPはそうした変化をしっかりと支援していきたい」

 SAPジャパンのギャレット・イルグ社長は、同社が4月8日に開いた事業戦略説明会でこう語った。イルグ氏は今後の事業戦略における注力分野として、BIと中堅・中小企業向け事業を挙げた。そして、それぞれのクラウドへの取り組みについては、BIは富士通との提携に触れ、中堅・中小企業向け事業はSaaS型ERPとして注目される「Business ByDesign」の日本市場への投入が、2011年半ばになることを明らかにした。

 では、なぜ今回の富士通との提携が、SAPのクラウド事業への取り組み方を示唆しているように受け取れるのか。それはSAPのローカルなパートナー戦略と推測できるからだ。

 SAPは富士通のクラウド基盤を活用することで、社内の機密情報を国内にとどめたいとする日本企業のニーズに対応したとみられる。日本企業には、機密情報は日本のデータセンターに置きたいというニーズが強い。海外で情報漏えいなどの問題が起きた場合、外国法が適用されるなど対処に手間が掛かる可能性があるからだ。

 そこでSAPがパートナーとして選んだのは、ERP分野でグローバルに協業を進めている富士通だった。そこには、顧客に安心感を与えるクラウド基盤を提供できるとともに、強い販売力を持つパートナーと組むという同社としての狙いがあったとみられる。これはERPのクラウドサービス化の布石とも見て取れる。

 一方、SAPはNECともERP分野で緊密な提携関係にあることから、ERPのクラウドサービス化についてはNECとの関係強化の動きもあるかもしれない。

 こうしてみると、SAPはローカルの有力なデータセンターを活用しながら、同社ならではのクラウド時代のパートナー戦略を構築していこうという意図があるようだ。今や120を超える国に9万5000社以上の顧客企業を有するSAPが、果たしてどのような戦略を描こうとしているのか。アプリケーションベンダーとクラウドベンダーの今後の力関係を占う意味でも大いに注目される。【松岡功】 4月13日21時58分配信 ITmedia エンタープライズ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100413-00000086-zdn_ep-sci

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