(まだまだ続くよ!)(知らない女の子が主人公だよ!) 

March 12 [Mon], 2007, 15:45
埼玉に来た目的は偶然にも達成してしまった訳だけど、如何せん早すぎた。
残りの時間をどう遣り過ごそうかとぼんやりしていたら、利央くんが今日の練習試合を見に来ないかと誘ってくれた。(私ったら、なんてツイてるの!)
タカセくんは、女の子にはたぶんつまんないよ、と笑って。私は、野球大好きなの、と笑った。
下りの15分のバスの中、利央くんの真似をして準さんと呼んでみたら、タカセくんはおおきな目をゆっくりしばたかせて、それから一気に真っ赤になった。利央くんと二人でけらけら笑い転げてたら、ふわふわの正捕手さんがふたりぶんの鉄拳制裁をくらってくれた。尊い犠牲でありました。


あかい(慎吾夢)(男主人公注意!) 

February 26 [Mon], 2007, 20:55

「慎吾、何かついてる」

なに、飯粒でもついてる、なんて普通に笑っていた慎吾に、ほら、首のとこ、そう言うと、みるみる普通の笑顔が「普通」でなくなっていってしまって。
あ、言わなきゃ良かった。俺はいつも鈍くてとろい。

「ごめん、気ィつけてるつもりだったんだけど」
慎吾が、あの島崎慎吾が、照れたように赤い目元で、やっぱり照れたような困ったような笑い顔で言う。
謝る必要はないと思ったけれど、とりあえず頷くことで応えておいた。なんだか俺まで顔が熱い。
「…ずいぶん積極的な彼女デスネ」
照れ隠しに言うと、なんだかじくりと痛みが沸いて、あれ、なんだこれと思っている間に慎吾の声がかぶさる。
「可愛い子なの」
元から下がってる目尻をこれ以上無いだろってほど緩ませて。正直その口調はかなりキモいと思うけど、それも照れ隠しだと分かったから敢えて黙ってた。案の定、ツッコめよ、と背中を叩かれる。
じくり。
あれ、ていうか彼女いたっけ。お前最近女の話とかしないじゃん。
どのクラスのなにちゃんが可愛いだの、どこどこの学校の女子がいいだの、お前の情報が一番正確だってみんなが言ってたのに。
じくり、じくり。じくじく。
あ、これ、痛いんじゃなくて。
「なん、その子、大事にしてるん、なぁ」
「大事よ、」
すごく。静かに付け足された言葉と横顔を俺は一生忘れないんじゃなかろうか。
生まれて初めて感じた自分の血圧に、何だか泣きそうな、笑い出しそうな気持ちになって。俺は、ちゃんと大事に隠しておけよと笑って、慎吾も笑った。
始まったと同時に終わりを迎えた恋だった。

第三期島準ブームです(やまなしいみなしおちなし) 

February 26 [Mon], 2007, 20:29
そうっと手を伸ばして、触れる。とくり、命の音がする。
ああ、この人生きてるんだなぁ、と思うと同時に熱が三度くらい上がったみたいに熱くなって寒くなって視界が揺れて、俺の世界はこぼれた。

「泣くなよ」
「泣いてねえよ」
言葉遣いが悪いと叱られる。その叱責の言葉すら甘くて、どうしようもなくなる。
しかしこの状況でその余裕はどうなんだ。言葉にしない抗議の代わりに、ぷいと顔を背けてみせる。
子供っぽいですかそうですか、笑ってんじゃねえよエロ崎。
視線をはずした弾みで、雑誌だとかグローブだとかさっきしなやかな指に外されたネクタイだとか、そういう現実味を帯びたものが視界に入ってきて。ああ、もう頭がどうにかなりそうだ。
慎吾さんの部屋は、何も無いのにごちゃごちゃしていて、おれみたいだ、と思った。
俺の心の中には慎吾さんしかいないのに、ひどく混沌としているので。
「なぁ泣くなって」
泣いていない、と言い返すつもりだったのに、目尻の水分と一緒に言葉まで吸われて。そうやって俺の残りのぜんぶ、吸い尽くしてくれたらいいのに、なんて、ぼんやり考えた。
こんなにやさしい俺の恋人は、俺の体を開いて無理やり割り入って俺を傷つけて泣かせているっていうのに、当の俺はそれが嬉しくてしょうがない、だなんて。涙の理由は嬉しいからだ、なんて。
とてもじゃないけど口に出しては言えないなぁ。
もういちど、目元にキス。
「泣いてないすから、俺」
言われる前に言うと、強がりだと笑ってキスをくれた。余裕ぽくてむかついて、実際のところ俺はすごく嬉しかったのだけれど、でもそんなことはちらとも見せずにきつく締め付けると、少し呻いて眉を寄せて。あ、あ、その顔、すき。
余韻を追って目を細めたら、あとはもう慎吾さんに無言で責め立てられるばかりだった。

In the world,that is called the love.(準千代) 

February 05 [Mon], 2007, 17:48
可愛いって言葉を、何回飲み込んだか知れない。


「可愛いよな」
ボクネンジンの和さんからそんな言葉が漏れたのは、和さんと、いつものファミレスで二人きりという時だった。
実はこの状況はなかなか珍しい。
ファミレスなんかに行くときは、大抵利央か慎吾さんがついてくる。若しくは部員全員。
和さんだって、慎吾さんや利央がいないから、こんなことを言い出したのだろう。
(いたら確実にからかわれる)(山さんも然り)
「ああ、あの、西浦の」
「そうそう、見たときちょっとヤベーって思った」
こんなにでかいこの人が俄かに赤くなってるのが何だか可愛く見えるんですが、それはやっぱ自分の女房ビイキだと思う訳で。
「可愛かったスよね、ふわふわだし」
「…ちょっと待て準太、何だ、何の話だ」
更に赤くなる。え、俺なにか言いました?
「…え、髪とか、茶いくて、やあらかそーだったでしょ?」
「…あー…あーそんな子いたな、確かに。可愛かった。小さいしな」
お菓子みたいだった、と笑う和さん。
じゃあアンタは誰のことを…ってアレか。巨乳のカントクか。
(そういや試合中にチラ見しちゃ赤面してたな)(コラ!主将!)
「そっかー準太はああいう子が好みか」
「ええ、俺も和さんの好みが巨乳とは、知りませんでした」
「準太!!」
声を荒げる和さんは、なんて可愛いんだろう。


「…てな話をしたわけ」
さっきからうつ向いたままの篠岡さんは、耳まで赤い。食べてしまいたい。
薄くて赤い耳とか、震える指とか。
きっとあまい味がする。
「たか、高瀬さん、そんな、」
「近くで見たら、もっと可愛くてもっとふわふわで、もっと好きになった」
夕焼けが赤い。頬がほてる。
夕日のバカヤローだ。とんだ青春だ。
でも隣の彼女が今度は髪の毛まで夕日の光に染めていたから、時折金茶に輝く髪に指を絡ませながら、このこは可愛さで俺をころせるんじゃないかなぁ、とぼんやり思った。

世界がそれを愛と呼ぼうとも(準千代) 

February 05 [Mon], 2007, 17:45
「和さんがさぁ、」と切り出されて
またいつもの女房自慢かと思っていたのに。

真っ黒な髪は、夕日に透けてなお黒い。
私の髪は、明るさを増して彼の指を絡めとる。
離さないと言わんばかりに絡むくせ毛に、更に体温が上がった。
私のからだは正直すぎる。

高瀬さんは、髪を弄びながら、かおあかいよ、ていう。
自分だって真っ赤な顔のくせに、恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。
でも多分このひとは、このはなしをすれば私が喜ぶことを知っていて、
悔しいことにそれは大正解なのだ。はなまる満点だ。
私が喜ぶことなら、恥ずかしいことだって言ってくれる気概なのだ、このひと。
うわあなんて愛しい気持ちでいっぱいなのかしら!
ちかちかと目がくらんで、目の前の赤い顔しか見えなくなるわ!

世界の軸に高瀬さんがいて、わたしはそれに振り回されてばかりだ。
例えばそれを愛と呼ぼうとも。

ロマンチックに愛して(島準) 

February 05 [Mon], 2007, 17:44
まだ寒い初夏の海に、いち、にの、さんで飛び出した。
おれと慎吾さんの間にはいつだって勢いしかない。
それもあれだ、若さゆえ。
愛だとか恋だとかの8割は勘違いと思い込みだ。
それなら、若さゆえの勢いの方が、幾分かマシに見える。
おれたちは、いつだって自分達のことをマトモだと思ってた。
(実際はただのバカだって知っていた)
(恋をしてから俺は、すっかりバカになってしまったんだ)
慎吾さんに当たってはじける水は、夏の光を跳ねかえして、俺は思わず目を細める。
そしたら今度は慎吾さんが、眩しそうに目を細めて俺を見て、俺はのんきにも自然の摂理にときめいた。
ああ、こうやって世界は循環しているのだなあ。まる。

「じゅんた、」
「何すかハニー」
「お前のこと、やばいくらい好きだなぁって思うんだけど、やっぱやばいかなぁ」
「やばいっすね」
「やばいかあ」
やっぱりね、と渋い顔で言うもんだから、俺はアンタが愛しくてしょうがないんですよって思いを込めて、
こめかみに唇を押し付けた。
難しい顔はすぐに綻んで、また、眩しそうに目をしばたかせる。濡れた額は塩の味がした。
「すきよダーリン」
イッセンチ低い場所からキスを仕掛けられる。
制服のズボンをたくしあげた慎吾さんは、めまいがするほど可愛い。

現實を笑う(準慎) 

February 05 [Mon], 2007, 17:39
不意に雑誌から顔を上げて左手を差し出す。
この人はいつも突然だ。
「お手」
「犬じゃないっす」
「お手、できる?準太、お手」
「…わん」
しぶしぶ乗せたあんたの手と、緩んだ笑顔の温度差に、ああ、これがリアルなんだと唐突に理解する。
不明瞭な境界線を以ってしか愛せないのは、あんただけでなくきっとこの俺も同じだから、
不意にクリアに感じた現実感に戸惑う。
だって、こんなにも愛しいと思う気持ち、正しいとは到底思えないんだ。
もらうばかりだったから、正しい与え方を知らないんだ、きっとあんたを困らせる、苦しめる、傷つける。
それでもそうやって笑っているっていうんなら、俺にも考えがあるんすよ、せんぱい。
「準太、キスしよっか」
「やです」
「そっか」
「今日はしてあげません」
「そっか」
「絶対です」
「…分かったから、あんま言うなよ、かなしいから」
読みかけの雑誌に顔を埋めて恨めしそうに此方を見遣る。
演技なんですかね。本気なんですかね。それすらも戯言なんですかね。
「準太、」
「何すか」
「すき」

「すきすきすきすきすきすき、」
「しん、ごさ」
「す。」
す、って言って唇を尖らせて、目を細めて笑う。
「キス、しませんか」
「しません」

丸められた雑誌は、俺の頭を叩くにはちょうどいい武器になった。

アシッド(島準) 

February 05 [Mon], 2007, 17:37
誰が一番好きかと聞かれたら、そりゃもう澱みなく和さんと答えるだろうけど、
世界で一番、と聞かれると、ちょっと困ってしまう。
俺の世界には、島崎慎吾、その人しかいないのだ。

誤解を招かないよう言っておきたいのだが、俺は慎吾さんなんて別に好きじゃない。
温度のひくい手だとか、
温度のひくい笑顔だとか、
温度のひくい声だとか、
その割に熱を帯びて届く言葉だとかに
ただ、溶かされるだけ。
甘くでなく、しくしくと痛みを伴って。
好きじゃない。
好きじゃない、のに。

俺の世界は、もうとっくに支配されて、こんなにも、奪われて。
ああ、あなただけしか、もう、みえない。

きみをのせて(慎吾夢) 

February 05 [Mon], 2007, 17:33
「じゃーん」
ダサい効果音と共に見せられたのはマイメロのキーホルダー付きの車の鍵だった。

部活を引退してからの島崎慎吾ときたら、実際、暑苦しくなるくらい暇そうにしていて。
同じ野球部の河合は勉強に打ち込んでいるのに(スポーツ推薦とか受けないのかな)島崎は、本当の本当に、心の底から暇そうだった。
暇なら車校にでも行ってみたら?と提案したのは私だけど、
まさかこんな短期間で免許を取って、なおかつ、車まで手に入れて来るとは。
恐るべし、本気の島崎慎吾。

「で、どうする?」
「どうする、って何、てか、これ本物なわけ?」
「ちゃんと本物。アルトって知ってる?アルト」
ちゃらちゃらと鍵をもてあそびながら上機嫌に鼻歌を口ずさむ。あ、その曲知ってる、CMで、昔。
「ちなみに、助手席は俺の惚れた子の指定席って決めてるんだけど」
「…え、」
「乗ってみる?」
意地悪く細められた目の奥に、赤い顔の私が見える。あ、やられた、くそ。
だって、そんな告白反則だ。
「私も、惚れた男の助手席にしか座らないって決めてるんだけど、ていうか、今決めたんだけど、」
「そっか」
「乗ってあげても、いい」
「…そっか」
とろけたような笑顔、それも反則。
夏の日差しが反射して、きらりと鍵が光って目を射した。
うつ向いてしまったのは、ただただ眩しい夏のせい。

朝顔(準本) 

February 05 [Mon], 2007, 17:31
初めて訪ねた彼の家でまず視線を奪われたのは、軒先に植えてあった朝顔。
支えを求めて伸びて絡む様は、滑稽な俺自身の姿によく似ていて、愛しく愚かしく、至極腹が立つものだった。
次に捕われたのは、抱き締めて見上げたはにかんだような笑顔。ああ、愛しているのだ、と鮮明に思い知らされた。
思い知らされた勢いのまま、余裕だとか遊びだとか手加減だとか、少しもないセックスをした。
あなたは少しだけ泣いて、そのあとは声を殺して、緩慢に揺らされることをただただ許していた。

眠りに落ちたらつむじにキスをして。
流れる黒髪は、俺のそれとは違って繊細で柔らかい。
俺が朝顔になって、腕の中の愛しいこの人を蔦で縛ることができたならとてもすてきだなあ、とか、思った。
(優しいこの人は、柔らかい俺の蔦を拒むことも裂くこともきっとできない)

(一番愚かなのは、そんな顔をするくせに俺に抱かれているあなた)
(に、気付かないふりをして平気な顔で抱いている俺、だ)