勝手に続編AKB48マジすか学園!その弐!

April 05 [Tue], 2011, 12:00
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3年C組の教室は朝からホルモンの匂いで充満していた。
今日はチームホルモンに加え学ランと歌舞伎シスターズも輪に入っていた。
前田敦子は相変わらず自分の席で参考書を広げている。
「はぁ」
アキチャがため息をつく。
「どうしたんだよ?」
ウナギが聞く。
「ダメだ、ホルモンが喉を通らねえ」
「私もだ」
「バンジーお前もか」
「あぁ、だって次はどう考えても俺たちが狙われる番じゃね?そのこと考えたらホルモンでも喉を通らねえよ」
ムクチもうなずく。
その時教室にだるまが入ってきた。
「よー負け犬ども!」
「まだ負けてねえよ」
ヲタがツッコむ。
「まるで負けたような顔しとるやんけ。あっ、敦ねえおはようございます」
だるまが遠くの前田敦子に挨拶すると、前田敦子も振り返ってオハヨウゴザイマスとだけ言って参考書に向き直った。
「敦ねえちょっと聞いてくださいよー、実はうち、鬼頭やっつけたんですわー」
「はぁ!?」
クラスにいた者全員が声を揃えた。
「何寝ぼけてんだよ、だるま」
学ランが呆れながら言う。
「こんな時によくそんな冗談言えんな」
大歌舞伎が言う。
「なんやお前ら、これは冗談でもなんでもないでぇ。ほんまの話や」
「おめでとさん」
ヲタがホルモンをつつきながら適当に言った。
「ちょい待てって、なんで信じへんねん」
「いや、誰も信じねえよ、普通。前田にも聞いてみろよ」
ヲタが前田をハシで指した。だるまが前田敦子に近づく。
「敦ねえ、敦ねえは信じてくれますよね?」
だるまがそう聞くと、前田敦子は微妙な表情で首をかしげた。
「ちょっと待ってくださいよー。敦ねえまで信じてくれへんのですかー」
「そこまで言うなら、なんか証拠あんのかよ?」
アキチャが聞く。
「ありますよ!」
皆が振り向くと教室の入り口にスミレが立っていた。
「私が証人です」
「なんだよ、スミレまで協力してドッキリしてんのかよ、さみいな」
アキチャがつまらなそうにホルモンをハシでいじりながら言った。
「じゃあこれ見てください!」
スミレはそういうと携帯を取り出して開いて皆に見せた。
その画面には鬼頭の倒れている姿が写っていた。
「おいおい、マジかよ」
誰ともなくつぶやいた。
「昨日だるま姐さんが倒した後に写真撮っておいたんです、記念に」
スミレは笑顔で言った。いつの間にか前田敦子も携帯の画面を覗き込んでいた。
「でかしたでスミレ!あとでその画像送ってくれや」
だるまがそう言った瞬間、教室のドアが蹴破られた。そこにはトリアイナの茉夏とアニソンが立っていた。
「負けた相手の写真を撮るとは、随分レベルの低いことするんですね、前田軍団って」
茉夏が冷めた表情で言う。
「ケリつけに来ましたよ、前田先輩。ウチも鬼頭がやられたことだし。そっちは2人残ってるだけでしょ。2対2で決着つけましょうよ」
「ちょっと待てよ!お前らウチらのこと忘れてね?」
ヲタがすかさずツッコむ。
「えっ?誰ですか?」
茉夏が真面目な顔をして答えるとチームホルモンは意気消沈した。
「ははは、お前らよかったやないか」
だるまが大笑いしながら言った。チームホルモンは更に沈んだ。
「よっしゃ、ほなうちと敦ねえが相手になったるで」
「何言ってんだ?お前は鬼頭に負けたんだろ。鬼頭を倒したのは」
茉夏がスミレを睨みつける。
「スミレ!?」
ヲタが驚きの声を上げる。
「鬼頭ちゃんのかたきは唯がとるね〜」
アニソンはそう言うと一歩踏み出して来た。
「ちょ、ちょっと待ってください!私やってません!」
「今更なにを言ってんのかな〜?鬼頭ちゃんから話は聞いてるんだよ〜」
「スミレ、お前どうゆうことや!?」
「その…私は…」
「敦子、どうする?」
学ランが前田敦子に言い寄る。
「私には、この二人が嘘をついてるようには見えない」
「待ってくださいよ敦ねえ、スミレにそんなことできるわけないじゃないですか。そうやろスミレ?」だるまが言う。
「その、本当のことを言うと、覚えてないんです。昨日のこと…。気がついたら鬼頭さんが倒れていて、近くにだるま姐さんも倒れてて。何が起こったのかわからなくて…」
「じゃあ思い出させてあげるよ」
アニソンがスミレに近づく。
「待てや!うちが相手になったる」
だるまがスミレの前に立ちはだかる。
「おれたちのこと、忘れてましたじゃすまされねぇぜ」
チームホルモンも立ち上がる。茉夏がため息をつく。
「めんどくせえな、ったく。時間の無駄だ。まとめて蹴散らせ、唯」
茉夏がそう言うとアニソンはヘッドフォンを装着し、プレーヤーのスイッチを入れた。



とある路地裏。およそ10人程の高校生が一人のサラリーマンを囲んでいた。
「こうゆうことは、よくないと思うな」
弱々しい声でサラリーマンが言う。
「あっ?何か言ったかオッサン?」
「いいからさっさと金出せや」
「なめてんじゃねえぞ、おい」
次々に高校生たちがサラリーマンに罵声をあびせる。
すると後ろから声が聞こえた。
「邪魔だ」
高校生たちが振り向くと、そこには一人の女子高生が立っていた。
「なんだお前?」
「おっ、結構可愛いじゃん」
「遊んでほしいのかよ」
また次々と喋り出した。
突然女子高生の身体が舞った。
それは一瞬の出来事だった。ほんの数秒で高校生集団は地面に倒れていた。
「邪魔だって言ってんだよ、タコが」
そう言い捨てると女子高生は立ち去ろうとした。
「ちょっと君」サラリーマンが言う。
「暴力はいけないな」
「あっ?何言ってんだ?お前こいつらにボコられる寸前だったじゃねえか、助けてやったのに文句あんのかよ?あぁ?」
「僕は別に助けてほしいなんて言ってないよ」
「マジでなんなんだよお前、ふざけんな。感謝されるならまだしも説教かよ。殺す」
女子高生の右手が飛ぶ。するとその拳をサラリーマンは軽く受け止めた。
「君はマジ女の生徒だね?」
「関係ねえだろ、離せよ!」
女子高生がそう言うとサラリーマンは手を離した。
「いや、うちの娘も同じ学校に通っててね。もしかしたら娘の友達なんじゃないかな、と思ってね」
「知るか、私に友達なんかいねえ!」
そう言うと女子高生は右足を飛ばした。サラリーマンはバックステップでそれを躱した。
「そうか、それは淋しいね」
サラリーマンが眼鏡の位置を直しながら言った。
「うぜえ!」
また右手を飛ばす。しかしあっけなく拳を止められた。
「さっき、君があの連中を殴る姿を見て思ったことがあってね。君の拳には何も無い。ただ殴ってるだけだ。それでは友達はできないな」
「気持ちわりいこと言ってんじゃねえ!」
掴まれていた拳を振り払う。
「なんだか昔の娘を見ているようでね、つい声をかけてしまったんだ。ごめんね。じゃあ」
そう言うとサラリーマンは背を向けて歩き出した。
「てめえ!逃げてんじゃねえ!」
女子高生が叫んだ。サラリーマンの足が止まる。
「逃げてる、だと。この俺が」
サラリーマンの声がいきなり変わり、振り向きながら眼鏡を外した。
「逃げてんのはてめえの方だろ。お前学校行ってねえよな、見りゃわかる。現役の頃に山ほどそうゆう奴らを見て来たからな。そいつらには何も無かった、友達も仲間も、居場所もプライドも、守るべきものも。お前も同じだ、お前の拳には何にもねえ、お前の眼には何も映ってねえ。大事なもんを何にも背負ってねえ、そんな奴には何にも掴めねえぞ。一生1人で生きて行くことになるんだ。いつまでも逃げてねえで、マジになれよ」
「い、イキナリ何語り出してんだよオッサン。こええよ」
女子高生はある意味かなりビビっていた。サラリーマンの顔が正気に戻る。
「あ、あぁ、ごめんごめん。つい癖で」
そう言って手に持っていた眼鏡を掛け直した。
「なんなんだよ、あービビった」
「まぁ、とりあえず、あれだ。その、マジで生きられるのって、学生時代くらいだからさ、後悔しないように、ね」
「なんだよ、それ」
女子高生は笑った。
「でもなんつーか、うん。おかげで眼は覚めた気がするよ」
「そっか」
「ふう、じゃあちょっと、マジになってくるかな」
そう言うと、女子高生は歩き出した。するとポケットから何かが落ちた。
「君、何か落としたよ」
サラリーマンが拾う、生徒手帳だった。名前がサラリーマンの眼に入る。
「松井珠理奈」
「勝手に見んなオッサン」
珠理奈がサラリーマンの手から生徒手帳をもぎ取る。
「ったく。じゃあな」
珠理奈は生徒手帳をポケットにしまうと再び歩き出した。



「前田」
煙突から流れ出る煙を見上げながら、前田敦子の隣に立っていたサドが口を開いた。
「はい」
「仲間を最後まで信じてやれって、優子さんがよく言ってた。頭に立つやつが仲間を助けることはいくらでもできる、けど、仲間を信じて待つことは難しい。仲間が困ってる時に手を差し出すのも頭の役目だが、仲間が貫こうとしてるもんを守るのも、頭の役目なんだぜ」
「はい」
「新学期が始まれば、きっとお前に喧嘩を挑んでくる連中が大勢出てくるだろう。そんな時は1人で全部背負うなよ。お前にはマジな仲間が沢山いるんだ、少しくらい、背中あずけてやれよな」
「はい」
「それにしてもすげえ晴れてんな、太陽が眩しすぎるぜ。ははっ、まるで優子さんの笑顔みてえだ」
「そうですね」
二人は眩しそうに空を見上げた。その日の空は雲ひとつなかった。


アニソンがヘッドフォンを装着し、プレーヤーのスイッチを入れた。
ふと前田敦子が動いた。教室にいた全員が前田敦子を見た。アニソンに向かっていくかと思われた前田敦子の足は、何故か自分の席へと向かっていた。そして前田敦子は席に座ると参考書を広げた。
その瞬間その場の全員が理解した。学ランは大きく伸びをすると笑った。歌舞伎シスターズも笑っている。
学ランがアニソンに向かって駆けた。拳を突き出す。アニソンはそれを躱し、すれ違いざまに学ランの首に肘を打ち込む。崩れ落ちる学ランの背後から大歌舞伎の掌底が伸びる。アニソンの左脇腹に決まった。しかしアニソンは掌底の勢いを吸収するように回転し左の手刀を大歌舞伎の首筋に打ち込んだ。間髪入れずにアキチャが右手を飛ばす。アニソンはそれを屈んで躱すと肩からアキチャにぶつかった。アキチャの身体が吹き飛ぶ。そこへウナギが後ろから組み付く。アニソンは冷静に右肘をウナギの脇腹へ打ち込む。だるまの頭突き。躱せなかった。アニソンの顔面が歪む。しかしアニソンの右膝がだるまの鳩尾に決まっていた。だるまが膝を折る。アニソンはウナギを振りほどく。右の拳がウナギの顎を捉える。ヲタが右側から蹴りをくりだす。アニソンはその足を取る。掴んだまま右足を飛ばす。上段。ヲタの頭を打ち抜く。

参考書をめくる前田敦子。表情はまだ落ち着きを保っていたが、ページをめくる指には力が入り、既に眼も本の中身など追っていなかった。
サドさんが言ってたことってのはこんなにツライもんだったんだな。
トリアイナが現れてから、前田敦子はずっと仲間に背中をあずけていた。みんなの気持ちを信じて。しかしそれももう限界に近づいていた。
背後からはみんなの叫び声が聴こえる。殴り合う音。床に倒れる音。そして耳障りなヘッドフォンから流れるノイズ。
音が止んだ。
前田敦子は立ち上がり、振り返る。仲間で立っていたのは教室の隅にいるスミレだけだった。
「やっと2対2ですね」
茉夏が言う。
「おっと、前田先輩はもう少し待っていてくださいね。今最後の1人をやっちゃいますから」
「やめろ、お前ら二人とも私が相手になる」
前田敦子が言う。
「それはダメです。こっちとしては鬼頭の仇討ちをしておきたいんでね」
アニソンがスミレに近づく。
「やめろ」
そう言って前田敦子がスミレの前に立つ。その時だった。何かが床に落ちる音がした。そして背後から凄まじい殺気を感じた。振り返る。眼鏡を外したスミレの表情が変わっていた。
「前田先輩、どいててください」
スミレが前田敦子の横を抜け前へ出る。
「やっとスイッチが入ったの〜?」
アニソンが言う。
「できればあんまり出てきたくなかったんだが、スミレがどうしてもって言うからな」
「『スミレ』が?」
前田敦子が聞いた。
「初めまして、私はカダンっていいます」
「二重人格ってやつか」
茉夏が言った。
「お前だな、鬼頭をやったのは」
「あぁ、あのやろうスミレに手ぇ出しやがったからな。つい前に出ちまった」
カダンは前田敦子を見た。
「待っててください、今片付けますんで」
そう言ってカダンはアニソンの方を向いた。
「お前らが前田先輩とやろうなんて、世界が終わってもありえねえ。身の程を知りな」
アニソンは既に音楽に没頭していた。頭がリズムをとって揺れている。ステップ。間合いが詰まる。突然身体がしなった。回し蹴り。カダンは腕で受けた。痺れ。そこに反対からまた蹴りが飛んで来た。今度は下がって避けた。独特のステップ。無視した。目の前まで間合いを詰める。掌底。アニソンの脇腹をとらえる。間髪入れずに左足を飛ばす。中段。アニソンが腕で防ぐ。そこへ顎に向けて再び掌底。決まった。アニソンの身体が崩れた。
「さてと、次はそっちだな」
カダンが茉夏を見た。
「さすがに鬼頭を倒しただけのことはある、か」
そう言うと茉夏は倒れているアニソンに近づいた。そしてアニソンの制服のポケットからプレーヤーを取り出すと、なにやらいじり出した。
「好きなだけ暴れな、唯」
茉夏が再生ボタンを押した。ヘッドフォンから洩れ出すノイズがさっきよりも激しくなった。するとアニソンが身体を起こした。
「まさか、立てるはずねえ。顎に掌底がまともに入ったんだぞ」
カダンがつぶやく。しかしアニソンは平然と立ち上がった。再び身体全体がリズムを打つ。ステップ。速かった。一瞬で間合いが詰まる。カダンはとっさに両腕で顔をガードした。するとアニソンは姿勢を低くし両手で掌底を放った。カダンの腹部に掌底が沈んだ。
「がはっ」カダンの口から痛みを具現化したような嗚咽が漏れた。
「両刀掌底拳か。さっき顎に喰らったのが相当頭に来たんだな、唯のやつ」
茉夏がつぶやくように言った。カダンが膝をつく。そこにアニソンの右足が飛んだ。とっさにカダンは頭からアニソンの身体へ突っ込んだ。二人が重なり合うように倒れる。カダンの叫び。下になっているアニソンに思い切り両手を叩き付ける。拳に歯が当たった。鮮血が舞う。もう一度両手を振り上げる。しかしアニソンがその手をつかんだ。転がる。身体が離れた。二人がゆっくりと立ち上がる。呼吸は激しく乱れていた。カダンが拳を繰り出す。顔面を捉える。倒れなかった。アニソンも拳を出す。当たった。もう二人とも躱すことはしなかった。いや。できなかった。打ち合いになった。1発。また1発。何度も何度も繰り返された。カダンが右手を振り上げる。しかし手は空中で止まり身体ごと崩れ落ちた。アニソンの膝も折れた。二人が倒れる。カダンが叫び声を上げる。手を床につき立とうとする。アニソンも起き上がろうとしている。しかし二人とも立てなかった。荒い呼吸が教室に響く。ふとアニソンのヘッドフォンから流れるノイズが消えた。
「ちっ、時間切れか。ここまでだな唯、後は私に任せろ」
茉夏がアニソンに近づき口元の血を指で拭った。
「そっちの方も立てないみたいですね。これでいよいよ前田先輩とタイマンが張れるのか、待ちわびましたよ」
茉夏が指の骨をポキポキと鳴らした。そして前田敦子が眼鏡に手をかけた。
「そこに至るにはまだ早いですよ、二人とも」
突然教室の入り口の方から声が聞こえた。
茉夏が振り返る。前田敦子が声の方に顔を向ける。二人の眼に映ったのは、珠理奈だった。



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