【第50話】赦し@

October 11 [Tue], 2011, 18:00
真白と別れたナオは、迷うことなく歩き続け、とある場所で足を止めた。


そこは、ロープが張られた更地で、
小さい頃、ナオが生活していた施設があった場所だった。

ナオがその更地をじっと見つめていると、

「そこの旦那さんも、昔あった火事に巻き込まれて死んじゃってねぇ。」

後ろから声がしたので、振り返ると、犬の散歩をしている近所のおばさんらしき女性が立っていた。

「あぁ…」

「あんた、知り合いかなにか?」

「昔…子供のときにここにおったんですよ。」

「あら、まぁ!そうなの〜。」

おばさんは世間話が楽しいようで、ナオに近づいてきた。

「火事があったのは知ってたのかしら?」

「そんときはもう俺、ここにはおらんかったんですけど、新聞で読みました。」

「あらそぉ〜。
よかったわねぇ。大きな火事だったから。
奥さんも、取り乱しちゃってねぇ。
一緒に非難した子供達に『ごめんね、ごめんね』って言って、泣いて謝ってたのよ。
ほら、明るい人だったでしょう?だから、あの姿は忘れられないわねぇ。」

「そうやったんですか…」

「奥さん、ほら、熱心なカトリックの方だったでしょお〜?
だから、火事の後、隣町の教会でシスターになられたそうでねえ。
そこも、身寄りのない子どもたちを預かるところだったから、
残った子供たちも一緒にそこへ行ったみたいよぉ〜。
は〜、今もお元気なのかしらねえ。」

ナオは今まで忘れかけていたものを思い出したような気分になった。
そういえば、恭子先生は元気なのだろうか。

そして、吉浦が自分たちにしていたあのことを、恭子先生は知っていたのだろうか。

【第49.5話】ちあき

October 11 [Tue], 2011, 11:00
通っている高校の制服であるYシャツとプリーツスカートを身に着けて、
マリエはムスっとしながら、早足で歩いていた。

「なぁ、なんでお前が怒ってんだって。」

その少し後ろを、同じ制服を着たちあきが早足で歩いている。

「てゆーか、ついてこないで。」

マリエは冷たい口調でそう言うと、駅前の道をツカツカと進んで行った。

【第49話】ホットケーキ

November 12 [Fri], 2010, 18:17
『体が重い…まぶたが…』

ナオが重いまぶたをゆっくりあけると、窓から朝日が差し込んでいた。

カチャカチャ…

キッチンから音がして、そちらへ目を向けると、真白の後姿が目に入り、
「真白?」と小さい声で呼ぶが、真白には届かなかった。

ふいに昨日、真白の前で、自分の心のうちをすべてぶちまけたことを思い出した。

『格好悪…』

無様に泣いてしまったと、後悔したが、真白に向かって、
誰かに向かって、自分の心のうちをすべて打ち明けたせいか、
なぜか気持ちは軽かった。軽いというより、空っぽに近かった。

【第48話】冷雨

October 02 [Sat], 2010, 0:54
ベッドに横たわるナオは、カーテンが開いたままの、窓を見つめていた。

思いがけず真白に会ったことで、動揺して、教会からどう帰ってきたのか、覚えていなかった。
横たわり、ようやく胸の動悸がおさまったようで、ぐったりとしていた。

いつの間にか日も沈んで、夜になっていた。

『真白はちゃんと帰ったやろうか?』

それだけがずっと気になっていた。

ポツポツと、窓に当たる雨音が徐々に激しくなり、雨が降り始めたことに気づいた。

【第47話】迎え

October 01 [Fri], 2010, 17:43
青葉は、縁側に座って、庭の紅葉が一片、ひらりと落ちるのを見ていた。

「秋だな。」

斜め上から声がしたので、見上げると、琥珀が立っていた。

もうすぐ高校を卒業という秋、ますます背が伸び、体格もがっしりした琥珀は、
琥礼がいない仙崎道場で、今は青葉と同じく、幼稚園生や小学生を教える立場に
なっていた。

「淋しい。」
ふいに青葉が発した質問に琥珀が不思議そうな顔をした。
「琥礼がいなくなってもうすぐ二年も経つんだね。」

「若が望んだ道だ。」

「元気でやってるのかな?」

青葉が遠い目で空を見上げながらつぶやいて、琥珀の顔を見あげる。

琥珀は黙ったまま、目をそらしてしまった。


ふと、向こうの渡り廊下に、ふわりと揺れるものが見え、琥珀がそっちを振り向く。
青葉もつられて、そっちを見ると、向こうの廊下で長いサラサラのロングヘアーと、制服のスカートが、
秋の涼しい風にひらりと揺れた。

琥珀が無言のまま、手を挙げて挨拶すると、向こうも同じように手を挙げ、涼やかに微笑んだ。

「大人になったわね。」

青葉が遠い目をしたので、琥珀は「親戚のおばさんみたい発言。」と笑った。

庭の彼岸花が揺れていた。

【第46話】 日なた

May 10 [Mon], 2010, 20:30

真白は、駅前の、ナオに連れて行ってもらったカフェで、ちあきと向かい合って座っていた。

「ごめんなさい、鍵返すの遅くなっちゃって。」

「や、いいよ。合鍵だし、俺もアメリカとか行ってたからさー。」

真白はちあきに微笑みかける。
ちあきはじっと真白を見つめる。

ちあきはダークブラウンの落ち着いた髪色に、黒いカットソーの袖を肘までめくり上げ、
下は濃紺のゆるいジーンズをはいていた。カットソーの裾と肩から少し見えている、
かわいらしいチェック柄のタンクトップがちあきらしいなと真白は思った。

真白はシフォン生地のきれいなラインの、淡いクリーム色のワンピースを着て、
少し伸びた髪が、ちあきから見ると、以前と比べて大人びて見えた。


「真白ちゃん、大丈夫か?」

真白は伏目がちにテーブルの隅をじっと見つめていたが、
ちあきの方を見て、もう一度にこりと微笑んだ。

【第45話】 夜明け

May 01 [Sat], 2010, 14:55
ナオが真白の前から姿を消してから一週間経った日の早朝。

真白は一睡もしないまま、布団にくるまって、じっと窓の外を見つめていた。

朝日がキラキラと、カーテンの向こうで輝き始める。

隣の部屋には琥礼の姿はない。
起きて、いつもの待ち合わせ場所へ向かっても、ナオの姿もない。

それでも、夜は明けてしまう。

【第44話】 旅立ち

April 26 [Mon], 2010, 22:20
朝9時。

仙崎道場を後にしたナオは、駅前の美容院の前を通り過ぎた。
店内のシャンデリアに朝日が反射している。

中で掃除している店員が数人いた。
ナオは少し歩く速度を緩める。

それから、店の奥にいた、飴色のショートヘアを見つけて、じっと見つめた。
開店準備をするマリエの横顔を、まるで目に焼き付けるように、じっと。



それから、ゆっくり前を向き、歩き始めた。

【第43話】 兄と妹

April 26 [Mon], 2010, 21:46
「ナオちゃん!」

向こうのほうから、真白が手を振っていた。

「おぉ!ばったりやな。
…じゃぁ、買い物行くか?」

ナオが返すと、真白は不思議そうな顔をしていた。

「今日は、一緒にメシ作ろ〜や。
真白に料理教えてやるわ!」

ナオがにかっと笑った。

木々がまだ早い春の風に、少し震えているようだった。

【第42話】 卒業

February 04 [Thu], 2010, 21:17
3月。仙崎道場の庭にも梅が咲き始めていた。
そんなある朝、真白は早起きして、青葉を起こさないように、
そっと座敷の外へ出て、廊下から庭の梅を眺めていた。

見上げると、早春の澄んだ空気に、澄んだ空があった。



今日は卒業式。

3年生である琥礼や青葉が卒業する。
卒業後、琥礼はアメリカの和歌子の道場へ行き、
青葉は講師として仙崎道場に残ることになっている。

ふいに、母屋の方に何かを感じ、見ると、琥礼の部屋から、琥礼が顔を出していた。

琥礼も同じように空を眺めていた。

ふいに、琥礼が真白の視線に気づいたように、こちらを見る。

真白は、じっと、琥礼から目が離せなかった。
琥礼も同じように、真白をじっと見つめている。

ふいに、琥礼が穏やかな微笑みを浮かべたかと思うと、
すっと、窓際からいなくなった。

真白は胸が締めつけられる思いがした。

今日、卒業式が終われば、琥礼は明日にはアメリカへ発ってしまうのだった。
P R
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