やぷろぐおもすぎ 

2007年08月23日(木) 23時53分
「2分以内にこの中の誰かが死にます。」

Aの宣言。目を本に戻す。
一瞬静まり返る教室。
どうせいつもの戯言だろう。誰もがそう思った。
再びの喧騒。自習という名の自由時間。

Aの発言から秒針が1周と4分の3回った時。

「ふふ・・・ふふふっ・・・」
笑い声。はたまた嗚咽か。
辺りを見回す生徒。互いに目を見合す生徒。Aに視線を移す生徒。意に介さないA。
「あっあああああああああっああああっあっああああっああああああ」
学校中に響き渡っているのではないかと思われるほどの絶叫。
突如立ち上がる女生徒。椅子が倒れる。机が倒れる。手にはカッターナイフ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
叫びはやまない。様子を見に来た隣室の教師。愕然。
力一杯切りつける女生徒。意に介さないA。
刃が折れる。止めに入った教師の右目。
真っ直ぐ舐めるように眼球を滑る刃。視界が真っ赤に。
「うわああああああああああああああああ」
「ああああああああああああああああああ」
教師と女生徒のユニゾン。

この時まだ誰も気づいてはいない。
騒動の中。Aの発言から1分59秒後。
女生徒の隣の席で1人の男子生徒の命が終了したことを。

臨時休校。生徒達のフォローにカウンセラーが家庭訪問。
休みに浮かれる生徒達。押し寄せる報道陣。
学校側沈黙。女生徒沈黙。男子生徒永遠の沈黙。
一部報道「いじめを苦に自殺か」
学校側「そのような事実は確認していない」
教師の右目は完全に光を失った。
Aは無傷。

登校日。男子生徒の机に白いカーネーション。
ひそひそ話。Aがやったと誰もが思っている。
男子生徒の机のカーネーションを取りAの席へ。
「お前が死ねばよかったんだ」
カーネーションの茎は真っ直ぐAの左目へ。
文庫本で軌道を逸らす。
逸らされた手を返し首筋へ。
突き刺さる茎に仕込まれた鉄線。
狙い通り。紅く染まるカーネーション。
意に介さないA。
カーネーションを引き抜く。噴出す鮮血。
意に介さないA。
周りの生徒達。一瞬の沈黙。パニック。
飛び込んでくる教師。愕然。
止血などできるはずもなく。
意に介さないA。蒼白。

2度目の人死に。
臨時休校。報道過熱。
学校側沈黙。加害者生徒沈黙。A永遠の沈黙。

事件の終結。
いつもの日常。
標的を変えた報道陣。急速に冷めてゆく。
カーネーションの置かれた2つの机は教室の隅へ。

「2分以内にこの中の誰かが死にます。」

Aの宣言。真意は闇の中。

醜いは吾の心なり 

2007年08月08日(水) 23時24分
自分の正義に合わない人間を悪と決めつけ第三者に有る事無い事をを言いふらす人間がいます。
他者から見れば明らかに歪んでいる物差しも彼の中では直線で普遍なのです。
そして彼が"悪"と見なした者と仲良くする者もまた"悪"なのです。
彼を第一に思わず彼以外の人たちと仲良くする者も"悪"なのです。

彼は私の友人に「体を壊すまでネットゲームをやる人間は異常だ。」と言いました。
友人が現実世界よりも仮想現実の方に嵌り体調を悪くしたのは事実です。
しかし彼はそのネットゲームでPCを2台壊しています。ほぼ24時間接続しているからです。
"廃人"と呼ばれる人達を嘲り軽蔑する彼もまた"廃人"だということに気づいていません。

彼は幼少時に家族や親戚から酷く虐待され、現在もその後遺症で"解離性記憶障害"というのに悩んでいるらしいのです。
他者に何かきついことを言われたりされるとこの病気を持ち出してきます。
そして"かまってちゃん"特有の「自分が一番可哀想劇場」が始まります。
"自分がどれだけ可哀想な人間か"それをつとつとと語りだします。
しかしこちらの言い分は全く聞こうともしません。
可哀想な自分自慢をして優しい言葉を掛けてもらいたいだけなのです。
そして可哀想な過去を話し終わると勝手に"心の深い所まで語り合った仲"と認定されます。
この時点でこちらの過去や思いはほぼ100%話していません。
ここからがやっかいです。
"心の深い所まで語り合った仲"なのにオフ会に誘ってくれなかった。
"心の深い所まで語り合った仲"なのにゲーム内で会っても声を掛けてくれなかった。
"心の深い所まで語り合った仲"なのにブログで記事にしてくれない。
"心の深い所まで語り合った仲"なのに自分が嫌っている人間と仲良くしている。
"心の深い所まで語り合った仲"なのに・・・。
そして"心の深い所まで語り合った仲"だった人間は一転して"悪"と認定されます。

これだけでは済みません。
「"悪"とは一切の関係を絶ちたい。」これは誰でも抱く思いです。
"関わらない事"が最大の防御となるからです。
そして"悪"と関係のあるものを削除していきます。
削除された人間のとる行動は"こちらからの関係も絶つ"ではないでしょうか。
現に私はこの行動をとりました。
削除されたことで連絡手段が無くなったも同然ですから。
しかしこれは「自分が一番可哀想劇場」の一部に過ぎません。
言うなれば彼の罠です。
「削除までしたのに何の反応もしてこなかった。結局は表面上の付き合いだった。」
そこで彼の私に対する"悪"は"憎悪"へと変化しました。

私自身への連絡を絶った彼が次にとった行動は"私と私の友人達との関係を絶つ"ことでした。
ある友人はHPを閉鎖させられました。
ある友人は彼に無視されるようになりました。
これは私自身が彼に何か言われるよりもずっと辛いことです。
私と彼の不仲のせいで関係の無い人達までが嫌な思いをすることになるからです。
「ここまでしてこの仮想現実の世界に留まる必要はあるのだろうか。」
そう思い彼を知る友人達に相談をしました。
―辞めるか関係を修復するか
私自身そのどちらもしたくはありませんでした。
彼の目さえなければこの仮想現実の世界は素晴らしいものだからです。
そして友人達は一様に「辞めてはいけない」と言ってくれました。
結局物事は前にも後ろにも進みませんでした。
現在も膠着状態が続いています。

そして今日彼が"害人ランキング"に載りました。
心の中でほくそ笑む自分がありました。
もっと言うと自らの手で"害人ランキング"に載せようとさえ思っていました。
昔はとても仲良くしてた人間をここまで嫌いになった自分に改めて気がつきました。
そして晒された彼のことを想像して嬉しがっている自分に鳥肌が立ちました。
歪んでるのは自分の物差しだったのです。
それでももう少しだけこの仮想現実の世界で彼の様子を眺めようと思います。

タイトル未定 

2007年07月27日(金) 2時40分
「おはよう」
目覚めたばかりの彼女に僕はそう声を掛けた。
「だれ・・・?」
まだ寝足りないといった表情で彼女はこちらを見る。
「僕の名前はフジサワリュウジ。28歳だ。君は?」
「ハルカ。9さい。」
眉間に少し皺を寄せて答えた。
もう同じ質問が7度繰り返されている。
―ハルカ。彼女に出会ったのは僕が21歳の時だ。
そして1年に1度彼女は名前や言語、年齢、物の名前といった生きていくうえで必要な物を除く全ての記憶を失くした。失う記憶にはそれまでに知り合った人間のことも含まれている。

「トマト食べる?」
ハルカは小さく頷く。
何度記憶を失くしてもトマトは大好きだったし牛乳は絶対に飲もうとしなかった。
1つのトマトを6つに切り分け、塩と砂糖と一緒にテーブルに置いた。
何も付けずに一切れ食べ、そして砂糖をかけて残りを食べた。
前の彼女は塩をかけて食べていた。味の好みが少しずつ変わっているのだろうか。
もしかしたら牛乳を飲めるようになる日が来るかもしれない。・・・トマトを嫌いになる日が来るかもしれない。
「リュージ」
「ん?」
「ここどこ?」
「ここは君の家だよ。覚えてないかい?」
ハルカは口を尖らせて俯いた。何かを思い出そうとしているように。
「わからない。」
「ここは君の家。僕は君の保護者だ。」
「ほごしゃ・・・」
また俯いてしまった。
「パパ?」
「ああ、そうだね。そんな感じだ。でもパパってわけじゃないからリュウジって呼んでくれればいいよ。」
「リュージ・・・」
ハルカが大きく欠伸をした。
「まだ眠そうだね。どこでも君の好きな所で寝たらいいよ。」
「ん・・・」
目をこすりながら机の脚に抱きつくような格好で横になる。
「おやすみハルカ。」
「・・・おやすみなさい・・・」

高校を卒業し実家を出て就職もせずバイトで食いつなぐ、そんな生活が3年も続き僕はただただ惰性でのみ日々を生きていた。
そんなときハルカに出会った。
照りつける太陽の下、ノースリーブのワンピース1枚で今にも倒れそうになりながら歩いていたハルカに。
「大丈夫ですか?」
僕は思わず声を掛けていた。
ワンピースの白に負けないくらいに白い肌をしていた。肌の内側から光っているようなそんな白さだった。
「あなたは誰・・・?」
「僕はフジサワリュウジ。とりあえず日陰に入って。飲み物買ってくるから。」
「リュウジ・・・」
シャッターの下りた店先のベンチに座らせ、近くの自販機まで走った。
「これ飲んで。」
「ありがとうリュウジ。」
よく冷えたスポーツドリンクをゆっくりと飲んでいく。
「君の名前は?しんどそうだったけど大丈夫?どこに行くの?」
「私はハルカ。どこに・・・?わからない・・・」
ハルカは眉間に皺を寄せた。
「ここはどこ?」
「えっ・・・?」
「ここはどこ?何故私はここにいるの?」
「ここはK市だよ。君はどこから来たの?」
「わからない・・・どこから来たのか・・・どこにいたのか・・・」
記憶喪失・・・本では読んだことはあったが実際にいるとは思っていなかった。
しかし、目の前の少女は間違いなくそれだった。
「病院か警察に・・・」
そう言いかけた僕の腕をハルカは強く握った。
「だめ・・・お願い・・・」
「でも・・・」
「お願い・・・」
目に涙を溜め懇願してくる。何かやばい事情があったのかもしれない。
それでも僕の口から出た言葉は
「僕の所にくる?」
だった。

(続く)

タイトル未定 2 

2007年07月27日(金) 1時37分
「汚くてごめん。」
「ううん。」
自分から誘っておきながら物凄く後悔した。
まさかコンビニに行く途中で女の子を拾うなんて想像できるはずがない。
玄関先で少し待ってもらい見られたらまずいものは片付けたが部屋自体の汚さはどうしようもなかった。
「そのへん適当に座ってて。何か食べる?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」
キッチンから適当にお菓子と麦茶を持ってきて机に置いた。
「で、君は自分のことをどれくらい覚えてるの?名前はわかってたし・・・年齢は?」
「16・・・」
「自分の住んでたとこもわからないんだよね?家族の人とかは?」
「・・・わからない・・・」
「なにか思い出せることはない?」
ハルカは口を尖らせて俯いた。
「・・・わからない・・・どうして・・・?なんで・・・?」
「ハルカ落ち着いて。無理に思い出さなくても大丈夫だから。」
「ごめんなさい・・・」
クーラーが低い音を立てている。
閉め切った窓の向こうでは蝉たちが魂をすり減らして鳴き喚いていた。
それから僕は1週間の休みを取り、ハルカに家の周辺の施設の場所や家電の使い方を教えた。
バイトが始まれば彼女はほぼ毎日半日以上を1人で過ごさなければならないのだから。

「大丈夫?1人でいれそう?」
「たぶん大丈夫・・」
「もし何か困ったことがあれば、携帯に電話して。」
小さな携帯電話を彼女に手渡す。電話番号を3件のみ登録できる老人向けの携帯電話だ。
「1番に僕の携帯を登録してるから。2番は救急、3番は警察につながるようにしてるからね。」
「わかった。今日は図書館に行ってこようと思う。」
「うん。あそこなら涼しいし静かだからいいんじゃないかな。
出かけるときはガスとクーラーと電気を消してね。戸締りもしっかりするんだよ。
お金はここに置いてるから。無駄遣いしないでね?」
「わかってる。」
ハルカは少し不機嫌な様子になった。子ども扱いされたくないのだろう。
「じゃあバイト行ってくるね。8時くらいには帰ってくるから。」
「うん。いってらっしゃい。」
「行ってきます。」

バイトから帰った僕は息ができなくなるほどびっくりした。
テーブルの上に出来立ての肉じゃがとご飯が乗っていたのだ。
「これハルカが作ったの!?」
「うん・・・だめだった・・・?」
「だめじゃないよ!!すごい嬉しい!」
「まずいかもだけど・・・」
「ううん。いただきます。」
ハルカが作った肉じゃがは基本に忠実で美味しかった。ご飯は少し芯があったけど・・・
「うん、おいしい。作ったことあったの?」
「あったのかな?図書館で作り方をコピーしてきたの。でもほとんど見ないで作れた。」
「そっかー。いいお嫁さんになれそうだ。炊飯器の使い方も教えといたらよかったな。」
「やっぱり、ご飯失敗してた・・・?」
「でも食べられるから大丈夫。」
そんな会話をしながら僕はふと気づいた。ハルカは料理に一切箸をつけていない。
「ハルカ食べないの?」
「味見してたらお腹いっぱいになっちゃって・・・」
そう言って少し頬を染めた。
「全部食べてね?」
「うん。もちろん食べるよ。もうずっと惣菜ばっかりだったから幸せ。」
「よかったぁ。」
出会ってからずっと不安げな顔をしてたハルカが初めて見せた笑顔だった。

(続く)

タイトル未定 3 

2007年07月27日(金) 0時34分
僕がバイトへ行ってる間、ハルカは近所を散策したり図書館へ行ったりしていた。
そしてバイトを終え家へ帰ると毎日違うメニューが並んでいた。
「毎日大変じゃない?たまには外食する?」
甲斐甲斐しく家事をしてくれる彼女に少し申し訳なくなり、そう聞いたときも
「ううん。家のことするの楽しい。」
と言って心底楽しそうな顔をするのだ。
「ありがとう。本当に助かるよ。」
「なんだか夫婦みたいだね。」
「ほんとだな。」
そう言って笑いあった。
穏やかな時間が流れた。
うるさかった蝉が静かになり、街を行く人たちの格好も少しずつ厚くなっていった。
ハルカと一緒に暮らしていても体が交わることは無かった。
寒いからと抱き合って寝ることはあってもそれ以上に発展することは無かった。
彼女にはそういったものを超越した何かがあった。

冬が終わり春がきた。
ハルカの料理の腕はもうプロ並になっていた。
春の陽気に誘われるようにハルカのウトウトする時間が多くなっていた。
「眠いならベッドで寝なよ?」
「うん・・・」
「ご飯作るのきつかったら何か買ってくるから。」
「うん・・・」
短い春が終わりうんざりするような梅雨がきた。
ハルカは1日のほとんどをベッドの上で過ごしていた。
「医者行かなくて大丈夫か?」
「だいじょうぶ・・・ねむいだけだから・・・」
そしてまた眠りの世界に落ちていく。
わずかに目が覚めたときにトマトとおにぎりを食べさせ風呂に入らせる。
風呂でもお構いなしに寝てしまうので目が離せなかった。
7月に入り、ついにハルカは目を覚まさなくなった。
呼んでも揺すっても起きない。
医者を呼ぼうかとも思ったのだが、呼吸も表情もとても穏やかだったのでもうしばらく様子を見ることにした。

7月7日。街中でも星が見られそうなほど良い天気の夜だった。
体を丸めて眠っていたハルカの体が月明かりでほのかに白く輝いていた。
「んんん・・・」
おもむろに体を伸ばしうつ伏せになった。
「起きたのか?」
しかしハルカの反応は無い。
月明かりで輝いていると思っていたハルカの体は間違いなくそれ自身が発光していた。
ピシッと何かの軋む音が聞こえ
「んんんあああああああああああああああ!!!!」
ハルカの口から絶叫が溢れた。
「お、おい!!大丈夫か!?」
「はぁあああああんんん」
ハルカは苦痛とも恍惚ともとれるような叫びを吐き続けている。
その間もピシッ・・ピシッ・・・と何かの軋む音がしていた。
「やぁあぁあああ・・・・!!!!」
うろたえる僕の目の前でハルカの背中が裂け、透けるように真っ白な少女が姿を現した。
「ハルカ・・・?」
少女は僅かに首を動かし僕と目が合うとそのまま意識を失った。

(続く)

タイトル未定 4 

2007年07月26日(木) 23時22分
翌日の夕方、少女は目を覚ました。
僕はほとんど無意識にハルカの抜け殻はクローゼットにしまっていた。
まだかなり混乱していたが努めて冷静に声をかけた。
「おはよう。調子はどう?」
「・・・あなた誰?」
「えっ?」
「ここは・・・?」
自分の耳を疑った。冗談ではないのか?
「ぼ、僕の名前はフジサワリュウジ。ここは僕の家だよ。」
「どうして私こんなところに・・・」
「1年くらい僕と君はここで暮らしてるんだけど・・・覚えてない?」
「・・・わからない・・・」
「何か覚えてることは?名前とか・・・年齢とか」
これはデジャヴか・・・?
「名前はハルカ。年は15・・・」
そう言ったきりハルカはまた眠りへ落ちていった。
出会って1年。僕は22歳になりハルカは15歳になった。
夏の日に出会った記憶喪失の少女は脱皮をしてまた記憶を無くした。

15歳のハルカは16歳のハルカと変わらず、家事をして僕の帰りを待ってくれた。
トマトが好きで牛乳が嫌いなのは相変わらずだ。
夏が終わり秋が来た。木はどんどん葉を散らし木枯らしに震えた。
冬が来て春が来た。
ハルカはまた沢山眠るようになった。
「また脱皮するのか?」
そしてまた記憶を・・・
7月7日。新しいハルカの誕生を祝福するかのように月が輝いていた。
数時間前まで滝のように雨が降っていたというのに。
月の輝きよりずっと明るくハルカは光っている。
「うああああああああああああああああああああああ!!!!!」
喉が潰れるかと思うほどの絶叫。
ハルカの背中が割れ真っ白な少女が現れる。
そして繰り返される記憶の再構築。

出会ってからハルカは7度脱皮した。
その間に僕は零細企業に就職し28歳になった。
ハルカは記憶を再構築してはデリートされ脱皮を繰り返すたびに幼くなっていた。
今目覚めたハルカは9歳だと言った。
もう家事はできなくなっている。
すぐに1人で留守番もできなくなるだろう。
「ハルカ・・・」
「なぁに?」
「君は何者なんだ。」
「わたしはわたし。ハルカだよ?」
夢と現の間を彷徨いながらうっとりと答える。
「僕は君に何をしてあげられるんだ・・・」

(続く)

タイトル未定 5 

2007年07月26日(木) 22時07分
あっという間に季節が巡ってゆく。
僕が仕事に行っている間ハルカは図書館で借りてきた本を読んだり人形相手にままごとをしているようだ。
あと数年で留守番ができなくなる。母親役が必要になるだろう。
しかしこの7年間ハルカと自分の2人分の生活費を稼ぐため必死にバイトをし、就職活動をしてきた。
今さらこの不思議な少女の面倒を見てくれる女性など見つけられるはずがない。
「リュージ・・・」
「ん、どうした?」
「ずっと一緒にいてくれる?」
「ああ、もちろんだよ。」
「もうすぐ夏がくるね。」
「そうだな。」
「わたしリュージのこと忘れたくない。」
「ハルカ・・・まさか記憶が?」
「・・・わからない・・・けど・・・けど・・・」
口を尖らせて俯く。
「ハルカは覚えてないかもしれないけど、僕はずっとハルカと一緒に暮らしてきたんだ。
これからもずっと一緒にいる。一緒にいたいんだ。」
「リュージ・・・」

ハルカはさらに5度脱皮をした。
僕は33歳、ハルカは4歳になった。
仕事を在宅でできるものに変え、貯金を食いつぶしながら日々を過ごした。
あと4年・・・
ハルカが0歳になったとき、どういう別れが待っているのか・・・
今はまだ考えたくなかった。
「リュージ」
「ん?」
「わたしリュージのことだいすき」
「僕もハルカのこと大好きだよ」
ハルカの小さな手が僕の両目を隠した。
「ハルカ?」
「だめ。じっとしてて。目をつぶって。」
言われるままに目を閉じた。
唇に柔らかな感触。
薄く目を開けると頬を薔薇色にしたハルカの顔が視界いっぱいに広がった。
ハルカ・・・
力いっぱい抱きしめた。
「リュージ、くるしいよ。」
「ハルカ・・・僕ずっと君と一緒にいるから。
だから・・・君もどこへも行かないでくれ・・・」
「わたしはずっとここにいるよ。」

ハルカ0歳の7月7日。
ついに別れのときが来たのだ。
ハルカは母親の胎内にいるように丸まりその時を待っている。
その姿は今までで一番明るく輝いていた。
ハルカ自身の輝きでハルカの姿はほとんど見えなくなっている。
真っ白な大きな卵のようだ。
やがてその光の球に亀裂が入り始めた。
亀裂からは虹色の光が溢れ、目を開けることすら困難になってきた。
キィ・・・ン・・・という耳鳴りのような音の後、一瞬で光は全て消え去った。
目を開けると真っ白な体に薔薇色の紋を持った手のひらほどの蝶が部屋を舞っていた。
「ハルカ・・・」
蝶は1度ハルカの道具箱の上に止まった後、天の川へ向かって飛んで行った。

ハルカがいなくなってどれくらいが経ったのだろう。
ご飯も喉を通らないような状態の僕のもとに1通の手紙が届いた。
差出人は・・・ハルカ・・・
「7ねんごのリュージへ
たぶんこのてがみがとどくころにはわたしはいなくなってるとおもいます。
でもかなしまないで。
わたしはずっとリュージといっしょにいるから。
このからだがきえてしまっても、こころはずっとリュージといっしょにいるから。
リュージがわたしにくれたたくさんのもの、かえせなくてごめんなさい。
リュージとあえてハルカはほんとうにしあわせでした。
リュージありがとう。だいすきだよ。
ハルカ」
手紙を読み終えた僕の目にふとハルカの道具箱が映った。
ハルカが最後に止まっていった場所・・・
箱の蓋を開けると、そこにはノートがぎっしり詰まっていた。
15歳の夏から文字が書けなくなる4歳の夏まで。それは途方も無い量の日記だった。

(続く)

タイトル未定 6 

2007年07月26日(木) 21時11分
15才。7月20日。
気づいたらリュージという人の家だった。
リュージが1年前から一緒に住んでると言ってきた。
覚えていない。こわい。
でもうそをついているようには見えない。
日記を書けば次もしまた忘れても思い出すかもしれないよね。
というわけで、今日から日記を書きます。

14才。8月2日。
ハルカって書いてある箱の中に沢山のノートが入っていた。
日記の書いてあるノートと何も書いてないノート。
日記の書いてあるノートの表紙には「15才」って書いてあった。
中も見た。1番最初の日記は今の私の状況にそっくりだった。
15才の私、1年前の私。リュージとの沢山の思い出が書いてあった。
どうして忘れてしまったのだろう。悲しい。

13才。12月23日。
明日はクリスマスイブ。
去年とおととしの日記を見るとリュージがケーキとプレゼントを買ってきてくれたみたい。
今年は何がもらえるのかな?

12才。4月1日。
今日は1年で1度だけうそをついても良い日。
記憶が戻った!!ってリュージをおどろかしたら、ボロボロ泣いちゃってこっちがびっくり。
リュージごめんね。

11才。6月29日。
今日も雨。
雨だと外に出られないからいやだな。
それにさいきんとってもねむい。
今までの日記も7月のはじめくらいで終わってた。
わたしに何がおきるのだろう。

10才。11月11日。
きょうは犬の日です。ワンワンワンワン。
リュージがおしごとに行ってるからずっと犬のえをかいてた。
むずかしかった・・・

9才。5月5日。
リュージのおやすみもきょうでおしまい。
2人でおべんとうをつくってとおくのこうえんまで行った。
でんしゃにのった。はじめてのでんしゃはとってもたのしかった。

8才。2月9日。
たくさんゆきがふったからゆきだるまをつくった。
リュージにみせるまでとけないでね。

7才。10月27日。
ぎゅうにゅうきらい。

6才。9月15日。
いままでのノートにはわたしのしらないわたしのおもいでがかいてある。
どうしてわすれてしまうの?
わすれたくない。リュージのこともほかのいろんなことも。

5才。3がつ3日。
きょうはひなまつり。
リュージとおりがみでおひなさまをつくった。
リュージはとってもじょうずにできるのにわたしはできない。
おしえてもらってもよくわからない・・・

4さい。7がつ4にち。
ねむい
りゅーじだいすき

(終)

youtubeテスト 

2007年07月25日(水) 0時58分
糞MAD

UNIQLOCK 

2007年07月10日(火) 20時11分
http://www.uniqlo.jp/uniqlock/

右側のサイドバーに設置してみた。
たまに顔がこわい。
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