グレイト?ギャツビー

October 11 [Fri], 2013, 12:37
あの日のそれから、あの日の夜、その翌日を、2年経ったいまにして思い出してみると、ギャツビーの屋敷の玄

関を出たり入ったりする警察やカメラマンや新聞記者たちがどこまでもつづくかと思われるほどの列をなして

いたのだけが思い出されてくる。正面門にはロープが張られ、警官がひとりそのそばにたって野次馬たちを締

め出していたけれど、子どもたちはすぐにぼくの家の庭から入りこめることに気づいて、そうした子どもたち

が、いつも何人か一塊になってプールのそばでぽかんと口をあけていた。きびきびした態度の人物が、おそら

くは刑事だったのだろうが、あの午後、ウィルソンの死体に屈みこみながら「気違い」という表現を使った。

なんとなしの権威がその口ぶりに備わっていたせいで、翌朝の新聞記事はみなそういった調子で書かれること

になった。

そうした記事の大部分は悪夢だった――グロテスクで、回りくどく、熱狂的で、しかも真実をついていない。

検死に際してマイカリスはウィルソンが妻に疑惑を抱いていたという証言をしたと聞き、ぼくはきわどい諷刺

に包まれて話全体が暴露されるのもすぐのことだろうと思った――けれどもキャサリンは、なんでも言い出し

かねないと思っていたところが、一言も口外しなかった。どころか、ことに前後して彼女は驚くべき性格を周

囲に明かした――検死官を書きなおされた眉の下からまっすぐ見据え、彼女の姉はギャツビーに会ったことが

ないということ、彼女の姉が夫と一緒にいてこよなく幸せだったこと、彼女の姉がいかなる悪戯もやったこと

がないということを、言明した。彼女はそう自分に言い聞かせると、ハンカチに顔を埋めて泣きじゃくりだし

た。疑いを持たれるなんて我慢の限度を超えているとでも言うように。だから、ウィルソンは「悲しみのあま

り発狂した」男にまで格を落とし、事件はもっとも単純な形に落としこまれた。事件はそこで収まったのだ。

けれどもそれらはみな遠い、どうでもいいできごとのように思えた。

気がつくと、ぼくはひとりでギャツビーの側に立っていた。

悲報をウエスト?エッグ?ビレッジに電話した時点から、ギャツビーにまつわる推測や現実的な質問のすべてが

、ぼくに向けられるようになっていた。最初は驚きもしたし混乱もした。それから、屋敷の中のギャツビーが

、1時間、また1時間と、動くことも息をすることも話すこともなく横たわっている間に、ぼくの中で責任感が

芽生えてきた。というのも、だれも関心をもっていないのだから――関心というのは、つまり、だれもがもっ

ているあいまいな権利ともいうべき個人的な激しい関心を含んだ気持ちのことだ。

遺体発見から30分後、ぼくは、本能的に、ためらうことなく、デイジーに電話をかけていた。けれども、デイ

ジーもトムもその午後早くから、荷物を持ってどこかにでかけてしまっていた。

「連絡先は聞いてないのかな?」

「はい」

「いつもどるのか、分かる?」

「いいえ」

「どこに行ったのかな? こっちから連絡する方法を知りたいんだけど?」

「わかりかねます。なんとも申し上げられません」

ぼくはギャツビーのためにだれかをつかまえてやりたかった。ぼくはギャツビーが臥されている部屋に行って

、こう言って安心させてやりたかった。「だれかをつかまえてやるからね、ギャツビー。心配ないよ。ぼくを

信じてくれ、必ずだれかをつかまえてあげるから――」

メイヤー?ウルフシェイムという名前は電話帳には載っていなかった。執事が教えてくれた、ブロードウェイに

あるウルフシェイムの事務所の住所を手がかりに、ぼくは番号案内に問い合わせたのだけど、結局ぼくが電話

番号を知ったときには5時をずいぶん回ってしまっていて、だれも電話にでなかった。

「もう1回電話したいんだけど?」

「もうすでに3回呼び出してみてるんですよ」

「重要なことなんだ」

「申し訳ありません。どなたもおられないのではないでしょうか」

更衣室に引きかえしたぼくは、一瞬、こうして仕事柄屋敷に詰めている人々もみな予期せぬ弔問客なのだと思

った。けれど、かれらがシーツをめくってはショックを受けた目でギャツビーを見やるそのさなかにも、ギャ

ツビーの抗議が頭の中で鳴り響いてやまなかった。

「あのですね、親友、私のために誰かをつかまえてこなきゃなりませんよ。一生懸命やってもらわないと。今

度ばかりは、私ひとりではとても切り抜けられませんからね」

だれかがぼくに質問を切り出したが、ぼくはそれを受け流して、2階に上がり、ギャツビーのデスクの鍵が掛か

っていない引出しを矢継ぎ早に調べはじめた――かれは、自分の両親が死んだとは明言したことがなかったの

だ。けれどもそこには何もなかった――ただ、忘れ去られた暴力の象徴、ダン?コーディーの肖像画が、壁から

室内を睥睨するばかり。

翌朝ぼくは、執事にウルフシェイム宛ての手紙を持たせてニューヨークに行ってもらった。情報を求めると同

時に、次の列車でこちらにくるようにと促す手紙だった。この要求は、書いたときは、余計なことだと思えて

いた。新聞でことを知ったウルフシェイムがこちらに向かっているのは確実だとぼくは思っていたから。そし

て、昼前にデイジーから電話が入るということも、同じように確実視していた――が、電話もこなければ、ウ

ルフシェイムもやってこなかった。警官、カメラマン、新聞記者といった連中以外にはだれひとりやってこな

かった。執事がウルフシェイムからの返事をもって帰ってきたときは、ギャツビーと肩を並べてかれら全員と

対峙し、軽蔑と冷笑を浴びせてやりたい気分だった。

親愛なるミスター?キャラウェイ。このたびのことを知り、私はこの人生においてもっともひどい衝撃を受け、

本当のことなのかまったく信じられそうにない思いです。あの男がとったああいう気の狂った行為は、私たち

みなに何事かを思わせずにはいられません。重要なビジネスにかかわっており、このたびの事件に巻き込まれ

るわけにはいかない今現在の私でありますれば、そちらに出向くことはできそうにありません。事後、何か私

にできることがありましたら、エドガーに手紙を持たせてこちらにお寄越しください。このようなことを耳に

すると、私はまったく打ちのめされてしまい、自分がどこにいるのかさえよくわからなくなってしまいます。
プロフィール
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  • ニックネーム:日奈森亚梦
  • 性別:女性
  • 誕生日:1989年4月10日
  • 血液型:AB型
  • 現住所:徳島県
  • 職業:短大生・専門学校生
  • 趣味:
    ・映画
    ・旅行
    ・音楽
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