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木漏れ日の音5 / 2007年09月14日(金)


図書館、購買、生徒会室を流れるように見ながら教室に辿りつく。
「ここがあなたの教室」
3-Fと書かれた看板を望月はぼーっと見上げた。
「ここが、僕の・・・」
なんだか胸が高鳴る。
学校なんて初めてじゃないのに、まるでこれが始めてみたいに。
転校だって何回もしているから、新しい学校に行くのは慣れているのに。
何故だろう、初めの事のように胸が高鳴る。

「中に入っても、いいですか?」
「どうぞ」
先程のこともあってか、心なし声が冷たく感じる。いや、というか冷たい。
だが、望月は全く気に掛けず、ドアに手をかけゆっくりと開く。
皆帰ってしまったのだろうか、教室には誰もいなかった。
言葉もなく教室の隅々を見て回る。
思う存分見てから、今度は黒板、机、窓、掲示板と順に触れていく。
外気が冷たいからそれらも冷たくなっているかと思ったが、予想に反してどれもが暖かく感じられた。
(人の温もり・・かな)
何故だか分からないがそう思った。

「あ、そろそろ私職員室に帰らないと・・・後は適当に見て回ってくれる?帰り道は分かるわよね?」
「あぁ、はい。大丈夫です」
「気をつけて帰りなさいよー」
それじゃ、と手を振り去っていく鳥海にお辞儀をしてから再び教室に目を戻す。
適当に目に付いた席に向かい、椅子を拝借して教卓を見上げた。
月曜日が待ち遠しい。
どんな出会いがあるんだろう、友達作れるかな、女の子たちとも仲良くなりたいな。
望月は子供のように足を前後に揺らし、色々な想像を膨らませる。
嬉しそうに笑ったり、困ったように眉を寄せたり、かと思えば今度は顔を赤めたり大忙しだ。
一人だとずっとこのまま百面相し続けていたかもしれないが、扉が開けられる音がしたのでそこで想像を巡らす旅は終わった。


入ってきたのは片目が前髪で覆い隠された少年だった。
中性的で整った顔立ち、線の細い身体・・・一瞬女の子だろうかと思った。
けれど、男物の制服を着ているから違うだろう。
呆然と見ていると、少年がバツが悪そうに目を逸らし溜め息を吐く。
ポケットに入れていた手を抜いてから望月に近づき口を開いた。
「そこ、俺の席」
少年を見るのに熱中していたせいか、言われたことを理解するのに時間がかかった。
「えっ、あ・・・」
理解してから、慌てて立ち上がり席から退く。
「ご、ごめん!!ごめんね!」
望月の慌てっぷりが面白かったのか、少年が口元に手を当て静かに笑う。
「いいよ、怒ってない」
しゃがみ込み机の中から数冊教科書を取り出すと、机の横に掛けていた鞄に詰め込む。
鞄を閉め終わった少年が望月の顔を凝視する。
あまりに真剣に見つめるから、視線を外し辛い。
でもこのままずっと見られ続けるのも気恥ずかしいので、「あの・・・」と声を掛けた。
すると少年は驚いたように目を見開いて顔を逸らす。
何か言わなくてはと少年は思考を巡らし、適当に誤魔化せそうな言葉を選ぶ。
「・・見覚えのない顔だけど、他のクラスか?」
「あ、違う違う。僕、転校生。月曜日から正式にこの学校の生徒だよ」
「そうなのか?えっと、どこのクラスに入るんだ?」
同じクラスに三人も転校生が来ることはないだろうと思って聞いてみたのだが・・・。
「ここのクラスってさっき先生が言ってたけど」
・・・・どうやら、また転校生が増えるようだ。

「これからよろしくね」
嬉々として手を差し出す転校生に、少年は戸惑いながらもゆっくりと手を出した。
「あぁ、よろしく」

 
   
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木漏れ日の音4 / 2007年09月14日(金)
「うーん・・・職員室ってどこだろう?」
渡り廊下のど真ん中で立ち止まり、周囲を見渡す少年がいる。


「ちょっと、あの子かっこよくない?」
「え、どの・・・・あ、本当だ!カッコいい〜」

「あ、君たち、職員室ってどこか分かるかな?知ってたら教えて欲しいんだけど」

「は、はい!」
「いいですよ!」

可愛いなと思い笑みを向けると、少女達は俯いて顔を真っ赤に染めた。
その様子がやっぱり可愛らしく思えて、益々笑みを深める。

少女達と他愛のない会話をしながら職員室へ向かう。
職員室に着くと少年は丁寧にお礼を述べ、そして少女達と別れ職員室に入る。

「失礼します」
中に入ると、数人の先生が少年に振り返る。
その内の一人が「あぁ」と声を上げてから机を立ち上がり、少年に近づいた。
近づいてきたのはピンクのスーツを身に纏った若い女性。
綺麗な人だなー・・・それが少年の第一印象だった。おそらく彼の女性の見分け方は「綺麗な人」「可愛い人」の二種類しかない。
「あなたが転校生の・・・」
「はい、望月綾時って言います」
「そう、望月君」
女性は手を合わせ、そうだったと何度も頷く。
「私は鳥海いさ子。あなたの担任よ、宜しくね」
「鳥海さん、いいお名前ですね。あ、そうだ。あなたの雰囲気ピッタリのお店を知っているんですが、今度・・・」
と言いかけたところ、鳥海は手に持っていた日誌で望月の頭を小突く。
望月が頭を抑えても全く気に掛けず、そのまま会話を続ける。
「一応、簡単に案内しとくわ。ついてきて」
「そっけないところも素敵ですね」
鳥海はとんでもない発言に驚いて思わず声を上げかけたが、慌てて右手で口を押さえ、左で綾時の服を掴み職員室を出る。
勢いよくドアを閉めてからものすごい形相で望月を睨みつけ、望月の足を思いっきり踏みつけた。
「いっ!!!」
痛みのあまりしゃがみこんで、足を押さえる。
が、その間にどんどん鳥海が歩いていってしまうものだから、痛みを堪えながら後を追った。

 
   
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木漏れ日の音3 / 2007年09月14日(金)
滅びの塔の頂上に一人の少年が立っていた。ファルロスだ。
食い入るように禍々しく輝く月に向かって語りかけている。

「"滅び"の時がくるまで彼の傍にいたいんだ」
幼い声が必死に月に向かって話しかけていた。
「本当は貴女の所に帰らなきゃいけないって知ってるけど、でも・・・!」
拳を作り、強く握り締める。
痛みなんてものは感じなかった。
痛みなんてものよりも、彼と別れる痛みの方が何百倍も痛い。

「まだここにいたいんだ!」
有りっ丈の声で叫ぶと、月が不穏な光を放ち、そしてタルタロスの鐘が鳴り始めた。
"アレ"が怒っている。
そんなことは許さない、お前はこちら側の存在だろう?と言って怒っている。
ファルロスは思わず肩を萎縮させた。
恐怖のあまり歯が上手く噛み合わず、カチカチと音を鳴らす。
だけども彼の傍にいたいから必死に恐怖心を押し隠して言葉を紡いだ。

「約束したんだ、必ず帰るって」
帰って、今度はもっと長い時間を一緒に過したいんだ。
それで色々な話を聞かせてもらって、一緒に笑って・・・。
学校っていうところに行ってみたかった。
友達、仲間・・・・そういったものも作ってみたかった。
もうすぐシュウガクリョコウでキョウトに行くって言っていたから一緒に行きたい。
クリスマス、オショウガツ、バレンタイン・・・沢山の行事を彼と一緒に過ごしたい。
彼が教えてくれたことは全部覚えている。
彼といた時間が僕の全てと言っても過言じゃない。
僕の育てのお母さん。
ずっと僕を優しく包み込んで守ってくれていた人。
けれど、"アレ"・・・いや、産みの"母なるもの"が僕を見つけ出して、ここ―巌戸台―に呼び寄せた。
強引に彼から離して、連れ帰ろうとしている。
アレのもとには帰りたくない。帰りたいのは彼の傍だけ。
だから連れていかないで、ここに残らせて。
反抗的な目で月を睨み付ける。
だが、「もう遅い、お前を見つけた、お前を放さない、あちらに帰るのは許さない」と鐘が鳴り続ける。
鐘が一つなる度に、自分の人間らしさが削られていく。
彼の記憶を削り取ろうとした瞬間、大声で叫ぶ。
「やめて!」
他のものなら何を奪われてもいい、だけど彼の記憶だけはダメ。
彼を忘れてしまったら、約束を守れない。だから、ダメ。
耳を塞ぎながら、必死に身体を丸めて彼の記憶を守ろうとする。

暫くすると鐘の音が止んだ。
恐る恐る耳から手を外し、月を見上げる。
彼の元に帰ることを許してくれるんだろうか、そんな考えが脳裏を横切った。
だがすぐに甘い考えだったと悟る。

先程の鐘の音とは違う音が耳についた。
それ程遠くない場所から聞こえてきた、ということはタルタロスからだ。
音の聞こえた方に意識を集中させて探る。
もしかして、彼がここに来ているのだろうか。
そう、その考えは的中していた。していたのだが――。
「・・・な!」
見えたのは十字架に磔にされ、身動きが取れない状況に置かれた彼と仲間達。
そんな彼らに少女が銃口を向けている。
「だめっ!」
声高々に叫び、彼の傍に行こうとした。
だが、急に強い圧力がかけられて身動きが取れなくなる。
指一本動かすこともままならない。
力なく崩れ落ち、冷たい床に伏せられる。
"母なるもの"の前では自分はあまりに無力すぎた。
悔しさのあまり涙が溢れ落ちそうになったが寸でのところで堪え、歯を食いしばる。
(やめて、彼を殺さないで)
懇願するようにその情景を見ていた。
ふいに、狂ったように笑う男に目がいく。異様な雰囲気を漂わせる男にファルロスは息を呑んだ。
見るからに彼らを窮地に追いやったのはあの男だと分かる。
しかし、何故彼らを殺す必要があるのか分からず思案していると、男が「僕が闇の皇子になる」と叫んだ。
ファルロスはその言葉に一瞬目を見開いてから、苦笑する。
(あぁ、そうか・・・あの人は)
月に狂わされたのだ。月にいる"母なるもの"に。
ありもしない情報に踊らされ、自分が利用されていることに気付いていない、哀れな存在。
「僕を目覚めさせるために利用して、今度は邪魔になったから殺すんだね・・・・ペルソナ使いごと」
あの男は10年も前から、自分が闇の皇子になる儀式の準備をし、計画が他者にばれぬよう入念に練った。
そして準備が整い彼を呼び寄せた。僕を解放するためにペルソナ使いを利用して、大型シャドウを倒させたけれど・・・。
そのシャドウを倒し僕を目覚めさせた現在、あの男もペルソナ使いも"母なるもの"にとって邪魔な存在でしかない。
だから殺す。
「貴女は残酷だ、慈悲なんてものは持ち合わせてない」
「やっぱり僕のお母さんは彼だけみたいだ、貴女じゃない。だから、そっちには帰らない・・・!」
反抗的な言動に気分を害したのか、"母なるもの"は一層圧力を強めた。
身体が鉛のように重くなり、体内の血が燃え上がるように熱くなる。
意識が遠のきかけたが、必死に意識を保った。
「今度は"僕"が・・邪魔に、なった?だから・・・消す・・・の?」
声を出すのも辛かったが、それでもゆっくりと言葉を紡ぐ。
「でも残念、彼・・との記憶だ、けは手放さないよ・・・絶対に」

彼の「俺は俺達の"絆"を信じる」という言葉を思い出す。
彼に出会ってから絆がどれほど大切なものか知った。
そう絆が僕たちを繋いでる。だから大丈夫。ちゃんと帰るから。

徐々に薄れゆく意識の中で、最後に見たのは彼が助けられた場面。
銃口を向けていた少女が彼らを縛り付けていた枷を取り外す。
最初に彼が十字架から助け出されたのを見て、ほっと安堵の溜め息をついた。
(良かった・・・)
彼女は、彼らと結んだ絆のおかげで正気を戻したのだろうか?
そうだといいな。と微笑したところで完全に意識が途切れた。


――私二刃向カウトハ全ク、使エナイ
今度ハ従順ナ子ヲ作ラネバ
従順ナ子ヲ

月が異様に眩く輝いていた。
まるでケタケタと笑うかのように――

幼子は再び記憶を手放し、新たな人格として生まれ変わる。


「望月さん、宅急便です」
「あ、はい!今出ます」
宅配業者の声に答えたのは、望月と呼ばれた少年だった。
 
   
Posted at 03:34 / ペルソナ3 / この記事のURL
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木漏れ日の音2 / 2007年09月07日(金)

「あ、そうだ」
その言葉と共に、頭を撫でる動作が止まり少年が立ち上がる。
机の戸棚を開き、何かを探す。すぐにその何かは見つかって、それを手に少年が戻ってくる。
ファルロスは何を持っているのか気になり、手に視線を移した。
そしてその何かが分かると、少し驚いた顔をして少年を見上げる。
「・・・・それ、カメラ?」
「そう。ファルロス、ちょっとそっちに移動して」
「え?あぁ、うん」
指差す方面に移動すると少年はカメラ越しにファルロスの姿を捉える。
「いつか一緒に撮ろうと思ってたんだ。本当はこの間来た時に撮りたかったんだけど、影時間に機械は動かないことを失念してたよ。でも今日はちゃんと写せるな」
ちょうどいい位置を把握してから、本棚から分厚い本を数冊取り出し、机の上に重ねて置く。
何をしたいのかが分からず首を傾げると、少年が「三脚がないから代わりに本で位置調整・・」と簡単に説明をしてくれた。
頭がいいのか悪いのか分からない行動が少し面白くて笑うと、いきなりシャッターを切られた。
「わっ!いきなり撮らないでよ!」
「あ・・・ごめん。いい顔してたから、つい」
「もぅ、ひどいよ」
「ごめんごめん。じゃぁ、次。本番行くぞ」
カメラに何らかの設定をしてから、少年はファルロスの傍に寄って、背丈が同じ位になるように屈みこむ。
「もうすぐしたら赤いランプが点滅するんだけど、それが写真撮る合図だから」
「うん、分かった」
そう答えてすぐに赤いランプが点滅する、その瞬間に「笑って」と言われ、カメラに笑顔を向けた。
刹那、カシャッという音が耳に届く。

ほんの一瞬。
その一瞬の時間を捕らえ、形を残す機械。

「カメラって面白いね」
思ったことをそのまま口に出すと、少年は写真が綺麗に撮れたか確認しながら「そうだな」と答える。
適当に答えた感じの口調だったので、たぶんちゃんと聞いてない。
だけど、それを気にすることもなく・・・寧ろ彼らしいと笑ってしまう。

そうだよ、すごく面白い。
僕の存在が消えても、写真が残っている限り僕は生きてる感じがする。
君の記憶力はすごいと思っている。
でも記憶って曖昧なものだから、時間が経つと美化したり劣化したりすること・・・あるかもしれない。
だけどこれなら少なくても僕の顔はこのまま残るんだ。
うん、カメラってすごい。

「ファルロス、綺麗に撮れてたぞ」
「ほんと!見せて見せて!」
どういう風に撮れてたのか見てみたくて駆け寄ると、少年が右手を顔に翳して制止させる。
「駄目」
「えぇ!??なんで?」
その言葉にがっかりして肩を下ろす。
頬を膨らませながら少年を見上げると、極上の笑みを浮かべていた。
「次に会った時、現像した物を渡すから」
「え?」
「だから必ず帰って来い」
「そ、そんな無茶苦茶な事なこと言って・・・」
「いいな?」
「う・・・」
「いいな」
もう一度念押しに言われて思わず「うん」と頷いてしまった。
あれ?おかしいな、本当は「無理だよ!」って言おうとしたのに。
無意識のうちの頷いた自分を心の中で叱咤する。
でも満足そうに微笑む彼を見て、まぁいいかなんて思ってしまった。
仕方がない、僕は彼に弱いんだ。

「これからもずっと"絆"が僕たちを繋いでるよね・・・?」
「あぁ。・・・だから、必ずここに帰っておいで」
「うん」

そう答えたと同時にファルロスの身体が徐々に溶けるように消えていく。
自分が消えかけていることに気がつき、外を仰ぎ見る。

もう時間がきたんだっ。
まだ伝えてないことがあるのに・・・! 

慌てて口を開く。消えてしまう前に言わないと。

「また、友達になってって言うからっ!だからその時は!」

少年の手を取ろうとすると、手が透けているせいで透りぬけてしまう。
その事に驚愕して言葉を詰まらせると、今度は少年が手を伸ばす。
触れるか触れないかの寸でのところで手を止め、ファルロスの右手を包み込む。
触れていないのに温かみを感じられて少し泣きそうになる。

「また友達になって」
「もちろん」



その言葉を最後に、幼子は少年の前から消え去った。





 
   
Posted at 21:00 / ペルソナ3 / この記事のURL
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木漏れ日の音1 / 2007年09月05日(水)

「おはよう」

柔らかな日差しの中、和らげな声が落ちてくる。
その声で目が醒め、ゆるゆると目を開きながら声のしたほうに視線を移すと、そこにはファルロスが立っていた。
「ファル・・・?」
意識がはっきりしていないためか、声がどこか朧げだ。ファルロスは彼の姿を見て苦笑する。
「こうして陽の出てる時間に会うのは初めてだね」
「なんだか変な感じ、いつもは影時間でしか会ったことがないから・・・」と呟くと、少年は「そういえばそうだな」と頷く。
まだちゃんと頭が働いてないから、言われてその事に気がついた。
そうかファルロスお前・・・朝でも来れるんだな。影時間じゃないと凝れないのかと思ってた。なんて考えていると、ファルロスが少年の方に駆け寄ってくる。
そしてベッドに腰を下ろし、まだ寝転がっている少年の顔を覗き込む。

「やっぱり君って綺麗」
その言葉に驚愕して、寝ぼけてた頭がハッキリとする。
何言ってるんだ、そういうのは女の子に言え。と言おうとしたが、ファルロスが哀しげな顔をしているのに気がついて言葉を呑んだ。
代わりに手を伸ばし、頭を何度も撫でる。
するとますます哀しそうな顔をして、少年の胸に蹲ってしまった。
慰めるつもりが裏目に出たのかと思い、少年は内心で焦る。
だが、上手い対処法も思い浮かばなかったので、そのまま頭を撫で続けた。
暫くするとファルロスが起き上がり、また少年の顔を食い入るように見つめ、そして窓へ視線を逸らす。
少年もゆっくりと身体を起こしてから窓を見やった。
「いい天気だね。今朝はほんとの意味で、新しい朝だ。君にとっても、そして、僕にとってもね」
言葉の意味するところが分からない。
「どういう・・・?」
少年が首を傾げながら問いかけると、ファルロスは視線を逸らしたままゆっくりと答える。
「今まで集まっていった記憶のカケラ、ついに全部つながったんだ。僕は、僕自身の役割がハッキリ分かった。来るべき時の訪れだ。」
そこで一旦言葉を切り、俯く。
次の言葉が言いにくいのか、唇をかみ締めている。
だが、少年は急かすことなくファルロスが言い出すのを待った。


大分時間を経ってから、ファルロスが口を開く。
「ほんとは辛いことだけど、でも言うよ。お別れしなきゃ・・・君と」
「お別れ?」
怪訝な顔をして問いかけるとファルロスは答えず、代わりに寂しげな笑顔を少年に向ける。
「今だから分かる・・・君と友達になれたことは僕にとって奇跡みたいなものなんだ。
でも奇跡は・・・永遠には続かない。永遠だったら、いいんだけどね」
いきなりお別れだと言われても永遠に続かないと言われても納得がいかない。
この子は本当に返答に困ることばかり言うもんだから、いつもどう答えるべきか悩んでしまう。
というか困らせるの好きだろう、お前!全く・・・何てやつだ。
「今生の別れじゃないなら、また会える。絶対に」
「根拠は?」
「ない」
即答でそう答えると、ファルロスは困った顔をして肩を竦める。
確かに根拠も確証もないけれど、でもまた会えると信じている。だから会える。それでいいじゃないか。
「根拠なんてものはないけど、俺は俺達の"絆"を信じる」
少年のいつもと違った力強い言葉にファルロスは驚いて目を瞠る。
こんな熱の篭った言葉を紡ぐなんて珍しいなんて、ちょっと失礼なことを思いながら。
自分の掌に目を移し握り締める。そして「絆・・・」と反芻した。
「―――そ、うだね」

どうしてそんなに君は強いんだろう。いつも真っ直ぐ前を向いて・・・・。
君がそんな真っ直ぐだから、信じたくなっちゃうじゃない。

また会えるって。


「また・・・・。また会えたら、いいなぁ」
「絶対に会える」
「ふふ・・・君がそう言ってくれると心強いな」
「だろう?」
いつも以上に優しい笑みを浮かべる少年につられて笑みを浮かべる。
ちょっと甘えてみたくなって少年の手を引き、自分の頭へと持っていくと、労わるように優しく頭を撫でてくれた。
この優しい手を忘れることはないだろう。
その形も温もりも全部、忘れない。
 
   
Posted at 22:38 / ペルソナ3 / この記事のURL
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