ロスジェネ論者の今と最近の若者論について思うこと

February 08 [Wed], 2012, 14:20
 毎日新聞『リアル30’s』を読んでいて、改めて考え込まざるを得なかったのは「ロスジェネ論壇って一体なんだったんだろう?」ということ。
 簡単に振り返ってみると、赤木智弘氏の『希望は戦争』論文が掲載された頃から盛り上がりを見せて、秋葉原無差別殺傷事件があった2008年がピーク。浅尾大輔氏・大澤信亮氏、増山麗奈女史が出した雑誌『ロスジェネ』創刊号は1万部も売れた。
 そして、そのアイコンとして活躍したのが、作家の雨宮処凛女史。

 それで話を戻すと、『リアル30’s』で例示されていることって、全部ロスジェネ論壇でアジェンタとして上がっていたことばかりだということ。つまるところ、ここ数年間で問題解決の端緒すら見つけることが出来なかったという事実が浮かび上がってくる。
 雑誌『ロスジェネ』は2010年に終刊しているのだけど、その時の言葉が振るっている。

 「もう一度立ち上がるために我々は、この虚(むな)しく飽和した言論状況を自らの実行=作品によって終わらせることを選びました」

 いやぁ、ありとあらゆる罵倒を浴びせたくなりますね正直なところ(笑)。
 言葉を飾っているけれど、結局のところは「ロストジェネレーション問題を楽しくネタにしてお金稼ぎしました」ということですよね、と問わざるを得ない。
 赤木氏にしても、今「ハローワーク省作れ」とか提言にもならないようなことを書き散らせるご身分になっているし(参照)、雨宮女史に至ってはご著書を精力的に出している上に厚生労働省のナショナルミニマム研究会委員に就任なさっている。端的に言って、貧困論壇をビジネスにして上手に「食べて」いくことに成功している。結果として、「貧困」や「弱者」からは遠ざかっている、というパラドックスが生まれているのは皮肉だけど。ま、彼らをひがんでも私たちに還元されるわけではないので、これからもちゃんと「仕事」して下さいね、という以上のことは言わないでおこう。

 ロスジェネ論壇の禍根を残したいちばん罪深いことは、「貧困」や「弱者」の定義が狭すぎて、正社員=持てる者という単純な図式に矮小化して、ロスジェネ世代自体を分断してしまったこと。
 正社員でも、みなし残業に苦闘している人は沢山いるし、無理なゲームを強いられて体調を崩す人も多い。そういった層はロスジェネ論者たちは汲み取れなかった。まぁ、正社員としての労務環境に明るい論者の方は少なかったから、そういう結末になるのは当然といえる。
 「あらかじめ貧困だった」ワーキングプア(低収入労働者)や若年ホームレスなどは、「貧困」というキーワードをもとに、世代間を越えた、同じ問題を抱える人との連帯、というモデルが提示されている。
 しかし、終身雇用が崩れ、何らかの理由で正社員から転げ落ちてしまった層(これには私Parsley自身も含まれる)に関しては、それまでのロールモデルがないし、自己責任の四文字で済まされてしまいがちな上、その後の再チャレンジを図るためにも自助努力が求められる、という厳しい環境に置かれている。なってみると分かるけれど、相当苦しいよ!
 それとは別に、今の20代から30代が直面している仕事上や労務上の問題って、決裁権や人事権のある40代以上とのジェネレーションギャップに起因していることが、非常に多い。会社に残れば残ったで、コミュニケーションにストレスかかるし、それが上手くいかないと無能者の烙印のもと退職に追い込まれる。
 彼らは労基法の基本も踏まえていないことが多いし、就業側も知識不足な面があるけれど、それは長くなるので別の機会に譲るとして。とにかく、労働組合に守られているレガシーカンパニーならいざ知らず、それ以外の大多数の正規雇用者が置かれている環境と、再チャレンジの困難さについては、まともな議論すらされていない、というのが現状ではないかしら?

 さて。『リアル30’s』を読んで気になったのは、社会学者の古市憲寿氏の論(参照)。 
 「今どきの若者には覇気がない」「もっと怒れ」という上の世代は勝手に言ってればいい、というのは心から同感だけれど、今の指導者層に「あんたたちが世の中を良くすればぁ?」というのは、ちょっと暢気すぎる。
 まず、彼らは今のシステムを守るための方策をない知恵絞って考えていてしかもそれに失敗しつつあるし、ましてや社会システムの更新する能力なんてほぼないものだと見るのが妥当。
 つまり、問題がずっと先送りされて、私たちの世代で「必要に迫られて」いろいろな軋轢を生みながら変えていく羽目になる可能性が非常に高い。そして、その間にも失業者や自殺者が増える。古市氏のご著書を読むと、そういう視点は抜けているよね、と思ってしまう。
 あと、もふくちゃんこと福嶋麻衣子女史の『日本の若者は不幸じゃない』を読んだ際の感想を繰り返すと(拙エントリー参照)、若者の幸福感を担保している趣味や好きなことをしていて居心地のよいクラスターが、30歳の線を境にして維持できるのかは非常に怪しい。
 会社や仕事をしていく上での軋轢にすりつぶされる可能性だってあるし、社会的な視線は厳しくなるし、それこそ経済がどうなるか分からなく政治に期待できない。そういったことに直面した時、ほんとうに所属しているクラスターの仲間たちは救ってくれるのか。これは真剣に考えた方がいいと思う。

 だから、セーフティネットを構築する議論を、もっとしないといけなくて、なおかつ政策的なイシューに上げるように働きかけていかないとヤバい状況だってことを、私たちは認識しなければならないし、安易に「いや今じぶん幸せですから」と半径数メートルのことで切ってしまう態度は危険だとも感じる。
 そういった風潮に、古市氏の論が使われないことを、心から祈るよ。

 なんかとりとめもなくなってしまったけれど、今回はこれで。


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