アジェンダ設定が薄い書籍を売るためには?

January 25 [Mon], 2010, 22:20
ぼくたちの女災社会
ぼくたちの女災社会
posted with amazlet at 10.01.25
兵頭 新児
二見書房
売り上げランキング: 294502

 ひょんなことから、著者の兵頭新児氏から献本頂きました。ありがとうございました。

 本書では、セクシャルハラスメント、ストーカー等の行き過ぎた認定や、痴漢冤罪・ドメスティックバイオレンス冤罪を「女災」と定義し、男性ならば女災に遭ったことがない人はいない、とする。そして、「萌え」の一言が意味をする、『電波男』的な二次元に活路を求めるオタク男性や、草食系男子は、女災からの「防災」と捉えている。「宿命的に女性への渇望を抱き続けている男性が、今世紀に至ってとうとう女性への希望を見出せなくなってしまった、女性とつきあうことにはほとほと疲れてしまった、ということなのです」と、第二章では結ばれている。
 そして「二次災害」として、少子化・晩婚化や「負け犬」そして腐女子化を挙げ、これらは、男性を得ることの出来ない女性側の現象、という文脈で捉えている。
 筆者は、「ぼくたちの清む女災社会」を、このように結論付ける。

 (前略)「ナオンが決めたことをぼくたちがテレパシーでもって察知して、ナオンが何も言わないうちにナオンの願望を充足させ、もしそれができなかったらお巡りさんに捕まっちゃう社会」であります。
 間違っちゃいました。再度訂正させていただきます。
 「ナオンに近寄らない社会」が正解でした。
 何となれば、今の男性たちはぼくに指摘されるまでもなく既に女性のリターンは望めない、リスクしかないと考えはじめているからです。


 えーと。筆者の文脈に従えば、私Parsleyのような乙女男子はどういう位置づけになるのだろう? 消費社会が「女性化」している中で、女性をターゲットにしたコンテンツを積極的に楽しんだ方が面白い、という考えは、女性の側にすり寄る裏切り者、になっちゃうのかな??

 本書は、ジェンダーフリー、婚活、草食系男子、腐女子にまつわる文献、統計を丹念に当たっている労作であることは間違いない。
 ただ、結論が「女性に近寄らない社会」というのは、実効性という意味で難があるし、既に『電波男』で指摘されているような、「二次元」に寄るという対処法とかぶり、それほど新味がない、という弱点があるように思われる。
 つまり、本書の場合、結論が重要なのではなく、「女災社会」というアジェンダを、より多くのひとに共有して貰うことそのものが目的、といえるだろう。
 しかし、本書が発売して数ヶ月経てもそのような問題意識が浸透しているようには見えない。
 兵頭氏には厳しいかもしれないけれど、本書のアジェンダ設定は、痴漢冤罪やDV、少子化といった個別問題を全て包括しようとして、逆に焦点がぼけてしまい、結果として内容が薄い印象を受けざるを得なかった。

 もう一つ、本書に関して思ったことは、本屋さんの担当がどこに並べるかで迷う本は、売ることが難しい、ということ。ジェンダーの専門書コーナーに並べるには、二見書房の実績がない(失礼!)し、サブカル書やロスジェネ論壇特設コーナーに混ぜて売るにはイマイチ関連付けに乏しい。

 また、現在、著者・出版社編集は本を作ることでなく本を売ることに積極的に関わることが求められる。勝間和代女史ほどのひとでも、がっつかないと月数万点の刊行物の中の一冊に埋もれてしまうのだ。
 そのためにも、兵頭氏は今すぐにでもブログを開設しなければいけないのでは。出来ればtwitterも。そこで、「女災社会」が抱える問題や事件について、恒常的に情報発信していくべきだ。mixiの女性専用車両反対コミュニティでの議論を追う、というのもいいかもしれない。いずれにしても、「女災社会」という言葉をネット上に流し続ける地道な作業が必要になってくる。

 世間への浸透が難しいテーマを広めるための、アクロバティックな方法としては、フィクション化、もっといえば「ラノベ化」するというものもある。
 最近では、ピーター・ドラッカーのマネジメント論を扱った『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が大成功している。
 例えば、女災社会が進んで男性の人口が極端減少した未来を舞台にしたSFフィクションなどを描いてみたら、よりこの問題が認知されたかもしれない。
 …って、それまんまよしながふみ女史の『大奥』の設定じゃん。ということで、おあとがよろしいようで。

  • URL:http://yaplog.jp/parsleymood/archive/900
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 自著です。 セクハラ、ストーカー、痴漢冤罪、女性専用車両などといったトピックス
兵頭新児の女災対策的読書  January 30 [Sat], 2010, 19:28
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parsley@現実逃避中
 >兵頭新児さま
 繰り返しますが、「非モテ」でもひとによって千差万別で、現実モテていても過去の非モテ時代のマインドをずるずる持ち続けているひとがいらっしゃったりして、なんというか、人間の業って一筋縄じゃいかないよなぁ、とつくづく思います。
February 17 [Wed], 2010, 12:14
> 何より編集を主にやっている人間のうち一人が女の子とキャッハウフフするの大好きという有様ですのし(笑)。どちらかというと、「非モテ」を「克服」する、という視点があるという指摘は甘んじてお受けするしかないのではと、個人的には思います。

あ、いえ、別に女の子とキャッキャウフフすることは悪いことでも何でもないじゃないですか。
と言うより、当然、非モテを克服するという目的を掲げた方が建設的でもありますし。
ただ、そうおっしゃられると「あれ? でも何とかいう保守派の非モテの人の方がモテてませんでした?」という意地悪も、ちょっと言いたくなってきます。
ぼくのブログに書いてくださったコメントにもレスをつけさせていただきましたので、もしよろしければごらんになってください。
それでは、簡単ですが。
February 16 [Tue], 2010, 18:34
parsley@現実逃避中
 >兵頭新児さま
 わざわざコメントありがとうございます。『クリルタイ』への御感想も感謝です。
 まず、非モテ論者の多くが、それぞれ立ち位置が違い、『クリルタイ』ではそれらを一つに纏め切れていませんし、網羅的に明らかにする、というのが『4.0』の役割だった、ということを明確にしておきたい、と思います。ですので、フェミニズム的な立場の方もいれば、マッチョな精神性なひともいる、という感じです。
 何より編集を主にやっている人間のうち一人が女の子とキャッハウフフするの大好きという有様ですのし(笑)。どちらかというと、「非モテ」を「克服」する、という視点があるという指摘は甘んじてお受けするしかないのではと、個人的には思います。
 あと、特に『4.0』に関しては、「非モテ」=「非コミュ」という図式が強く、コミュニティからこぼれてしまった人間がどのように新たなコミュニケーションを構築していくか、ということが裏テーマであったと考えております。その点で、「対女性」「対フェミニズム」という図式は、積極的に採用出来なかった、という事情があったこともあります。
 なんだか取りとめもなく、お答えになっているかも分からないのですが、『クリルタイ』の木っ端編集として述べれることは以上です。
 これからの御活躍、祈念させて頂きます。
February 13 [Sat], 2010, 13:47
兵頭新児
すみません、連投して、しかもその順序が逆になっております。
January 30 [Sat], 2010, 19:23
実は同じ冬コミで「男の娘ブームを分析する」みたいな本を買って読みました。
ところがこの本、ページを開く度に「腐女子(女性)への理解」「ゲイへのシンパシー」といった言葉がひたすらにコピペでもしたかのように並んでいて、いささか閉口させられました。「男の娘ブーム」というのはある意味、オタク男性が自らの内面を見つめ、そこにあるアニマを吐露する試みであるかのように、ぼくには思われます。オタク男性の抱えるアニマ、それ自体は「女々しいけしからん心性」という面も「女性的な感性溢れた素晴らしい心性」という面もある両義的なもので、ことさら善でも悪でもないと思いますが、しかしオタク男性たちが自らの内面へと目を向けているのだとするなら、それ自体は素晴らしいことであると思います。
しかし、にもかかわらず、それを「分析」すると称する評論本の著者の目はただひたすらに腐女子やゲイへと向けられている。どうしてこの著者たちはこんなにも腐女子やゲイにばかり関心を持っているのだろう、いや男性が彼ら彼女らへと「理解」を示し「近しい存在」になることがそんなにもエラいことであるかのように言うのだろう、と不可解な気持ちに囚われました。
『クリルタイ』もちょっと近い感じを受けるのです(繰り返しますがParsleyさま個人ではありません)。「非モテ」を名乗って文章を書くこと自体、ある意味勇気を持って自らの内面と向き合う作業であるはずなのですが、例えば森岡先生のインタビューなど「草食系男子」という良き存在以外を切り捨てる作業に腐心しているなと感じました。
長文でいきなり失礼なことを書いてしまい、大変申し訳ありません。
もしよろしければこちらでも、ぼくのブログででもご意見お聞かせいただければ幸いです。
January 30 [Sat], 2010, 19:21
ご紹介ありがとうございます、著者の兵頭新児です。
確かにお言葉通り、書店に行くと本書が『絶望裁判』と日垣隆の間に挟まれていたりして「う〜ん」となったりしました。かといってフェミニズムコーナーに置くのもどうかという感じですし。アドバイスいただきまして(それだけが理由というわけでもないのですが)この度、ブログを開設することにしました。
さて、Parsleyさまは本書とご自分のスタンスを対比させ、「女性の側にすり寄る裏切り者、になっちゃうのかな??」とおっしゃっています。
メールでお話しした通り、冬コミで買わせていただいた『クリルタイ』最新号を読んでちょっとそんな感じは受けました(Parsleyさま個人ではなく、あくまで全体の印象です)。ただ、Parsleyさまご自身を知らないままに想像で申し上げるようですが、ぼくは「乙女男子であること」自体が「男性への裏切り行為だ」と考えるわけではありません。
January 30 [Sat], 2010, 19:20
すごく面白いブログですねっ!
これからも頑張って下さい!
January 26 [Tue], 2010, 12:37

profile
Name:Parsley
Birthday:1976/4/8
Point:首が長い。つまりエロい
Favorite:エイガにケイバ
タバコ:Davidoff GOLD
ウィスキー:アーリータイムズ
おしごと募集!!
カワサキシティーで布団と同化中
コメントは返したり返さなかったりです。
parsleymood@gmail.com
さらに詳しいことはこちら

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