『ニコニコ動画が未来を作る』を読んだ。
November 01 [Sun], 2009, 10:35
ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語 (アスキー新書)
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佐々木 俊尚
アスキー・メディアワークス
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献本頂きました。ありがとうございます。
タイトルにニコニコ動画とあるのだけど、実際にその開発や将来の展望について書かれているのは、約300ページのうち50ページあまりに過ぎない。
だが、ドワンゴという会社に吸い寄せられるように集まった異能たちが、どのようなバックボーンを持ち、日本のPC・ケータイのシーンを作り上げていったのか、ということが活写されており、どの要素が欠けてもニコニコにはたどり着くことは出来なかったということを詳らかにするには説得力充分だ。
まず、『月刊マイコン』や『BASICマガジン』によって培われた、ゲームプログラミングの土壌とフリーウェアが流通する草の根BBSの中から、ドワンゴの副社長になる森栄樹氏やニコニコ動画を開発する戀塚昭彦氏らが参加するBio_100%というゲーム制作集団が現れ、『Super Depth』が当時のマニアたちに熱狂的に受け入れられるところから物語がはじまる。
次に、Windowsの登場によりPC/ATの自作パソコン文化が生まれ、ビデオカードやモデムをソフトウェアとパッケージにして売りまくった、川上量生・現ドワンゴ会長が登場する。
彼がDWANGOという会社のインターネットネットワーク対戦システムを見つけ、モデムにソフトをバンドルして売ろうする。その矢先、ソフトウェアジャパンが倒産し、呆然としているところ、後にマイクロソフトのXbox営業部長になるジェイムス・スパーンが交渉して日本に新会社を作り出資することをDWANGOに同意させてしまう。こうして、「ドワンゴ」という会社が誕生する−。
その後の、「廃人軍団」達のドリームキャストの通信対戦部分開発のデスマーチ、iモードのゲーム開発、着メロ・着ボイスの成功と着ウタフルの普及による凋落、そしてエイベックスからの出資…。疾風怒濤、まるでジェットコースターのように展開されていく流れは、『プロジェクトX』ばり。2030年くらいには、本書を原作にした大河ドラマが放映されているんじゃないか?
そう思わせるぐらいの筆者のストーリーテリングには舌を巻くほかないだろう。
個人的に、特に印象的だったのが、川上会長が着メロ事業を展開していくうちに芸能界の人間と付き合うようになり、個人の看板で勝負しているというこの業界のことが好きになった、というくだり。大手のプロダクションやテレビ局、広告代理店という会社に所属はしているが、個人と個人の人間関係が重視されるということが、「会社の知名度と肩書きだけで相手を判断するのに比べると、これってすごい公平だな」と感じたという。
ドワンゴという会社が出来上がるまで、同じように異才と異才とが出会い、コラボしてモノを作り上げていくという過程を経てきた川上氏らしい感覚だな、と思うけれど、ブログなどのソーシャルメディアが普及するにあたって、社会全体がそのような方向に寄っていきつつある。ドワンゴの仕事のスキームは、そういったことも先取りしたように思える。
さて、本書では最後に、ニコニコ動画、そしてコンテンツ業界全体としての課題として、マネタイズを挙げる。
それを、『俺のロードローラーだっ』の作者であるhc氏の口を借りる。
(中略)ニコニコ動画で作成された楽曲がパッケージされ、それが流通に乗ったりすると、嫌悪感を感じてしまうのはなぜだろう。
ボカ廃やMADの作者から見れば、「せっかく使ってやったのに」「応援してやったのに」と感じる人も少なくないだろう。作品を作るために使うボーカロイドソフトの調教も、誰が発明したのかよくわからなくなっている状況で、みんなが様々な要素を取り入れている。だったらその要素を発明した人に、どうしてお金が入っていかないんだろう。
筆者は、広告代理店モデルが機能不全を起こしてアドマーケットプレイスになったようなことと同じような形態が、クリエイターの世界にもやってこようとしていると述べ、「どこでお金を生み出させて、どうやってクリエイターに還元していくのか」という問題を提起する。が、結論は「まだない」とし、「ニコニコ動画こそが、最初のスタート地点なのだ」と締めている。
このコンテンツ制作者への還元が、現状ではアフィリエイトと、「投げ銭」モデルしか提示されていない。ここに新たなアーキテクチャやシステムが持ち込まれるのか、持ち込まれるとするならいつなのか−。
それは、今後のIT・ネットサービスやコンテンツ業界全体の、大きな大きな宿題といえるだろう。
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