『生命保険のカラクリ』を読んだ。
October 23 [Fri], 2009, 8:22
献本いただきました。ありがとうございます。
約9割の世帯が加入しているという、世界でも類を見ない程の加入率を誇る日本の生命保険。だが、契約内容が複雑で、必ずしも加入者(場合によっては売り手の側も)の理解が充分でないというのが実情だろう。
本書は、独立系としては74年ぶりに誕生したライフネット生命保険株式会社の代表取締役副社長である著者が、日本の生命保険が発展してきた経緯と、パッケージ化されて販売される保険の中身、生保会社がどのように売上を立てているのかという内情まで、詳らかにして、消費者がより良い生保の選択をするための7か条を示すという内容になっている。
目次は、こちらを参照のこと。
日本の生命保険は義理(G)・人情(N)・プレゼント(P)からなる「GNPセールス」と呼ばれているそうだ。確かに、身近なひとに勧められて、契約内容も吟味せずに加入するというケースが多い。
著者も、社会人二年目に外資系生保の営業・コンサルティングを受けて、総額800万円近い買い物を「内容を十分に理解しないまま」したという。このエピソードは後日、その会社の営業マニュアルにセールス話法の「台本」や、オーダー・メイドだったはずの保険プランが記されていたことを知るという、笑えないオチで終わっている。
「社会人になったんだから、保険くらい入っておかなきゃ」ということを、親や親戚から言われて、それでも入らないでいることは、簡単ではない。そういった空気が醸成されたのは、ここ30年くらいのことだと、筆者は指摘する。貯蓄の要素を薄め、保障の要素を高める「定期付終身保険」によって、より手数料を取りたいという保険会社の販売戦略が、日本人を「生保好き」にさせたとする。
本書が、非常に「良心的」だと思ったのが、「買い手にとってお得な商品など存在しない」と明確に述べていること。
セールや割引が法律で禁止されている(不勉強で、はじめて知った)ことにより、割高の保険料を払ってサービスを受けるのか、自分で調べたりすることによって、安い保険料のものを選択するのか。それは、買い手のチョイスの問題になっていると、はっきりと記している。
また、医療保障の中核には、国による健康保険があり、民間の医療保険はそれを補完するものにすぎず、「高額療養費制度」により、自己負担額には上限が設けられていて、原則としてひと月あたりの負担は10万円前後におさまる、と実例を挙げて説明している。
不幸にも亡くなった場合でも、残された家族には「遺族年金」が用意されていて、子供が独立するまで支払われる。さらに個人の貯蓄した上で、それでも足りない部分を補完するのが、保険商品だという。
筆者は、保険にかしこく入るための七か条を挙げている。
一、死亡・医療・貯金の三つに分けて考えよう
二、加入は必要最小限、を心がけよう
三、まずは中核の死亡保障を、安い定期保険で確保する
四、医療保障はコスト・リターンを冷静に把握して、好みにあったものを選ぶ
五、貯蓄は金利が上がるまで、生保で長期の資金を塩漬けしてしまうのは避けよう
六、すでに入っていても「解約したら損」とは限らない。見直そう
七、必ず複数の商品(営業マンではない)を比較して選ぼう
個人的には、長く売り手の買い手の「情報格差」で、高い保険料の商品を販売してきた生保業界を、手数料を開示することによって、ひとりひとりの加入行動を変え、年間40兆円を超えるという生保に流れているお金を適正化するという、著者とライフネット生命の挑戦を応援したい。
だが、転職を繰り返したり、非正規雇用を長らく続けざるを得なかったり、場合によっては職につけない人が若年層で増えている現状で、果たして生保の審査を通る人はどれくらいいるのだろう?
民間保険のほとんどは、正規雇用者を対象にして商品設計をされている、というのが私の理解なのだけれど、雇用の流動化が進むと、「審査」という部分がどうなるのか。
そういったところに、若干の疑問が残った。
ともあれ、これから生命保険に入ろうとする人、もしくは生命保険に入っている人が、契約内容を見直そうという人にとっては、必読の書であることは間違いないと思う。
月に払うお金は数千〜数万でも、結果的に一千万円に届く程の大きな買い物。計画は慎重に、ですね。
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<追記2010年3月2日>
本書は3月1日から4月15日まで、PDFが無料で全文公開をしております。
こちらのサイトからダウンロード出来るので、お早めに。
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