「勝間和代って誰?」「ツイッターって何?」 

November 18 [Wed], 2009, 18:35
 私ことParsleyが編集を担当している『週刊メルマガクリルタイ』の最新号に、『くらやみのスキャナー』様にご寄稿頂きました。
 その中に、ご自身が働かれている郊外型新古書店の現状について端的に表した、こんな一節があった。

 まあ『1Q84』クラスは別にしても、本屋大賞にノミネートされているレベルの本だと、お店のスタッフはあまり知らないし、お客さんも知らないので店頭で売れ残ったりもする(あくまでも僕が働いている、郊外型のお店の上での話ですが)。
 さらにWeb上で話題の自己啓発系の本、なんていったら事態は壊滅的です。
 (中略)
 小飼弾さんもみんな知らないし。勝間和代さんなんて超超超有名人のはずなのに、まるで知らない。さすがに勝間さん知らないのは仮にも本屋で働く立場としても如何なものかという部分はありますが…。


 週刊メルマガクリルタイ Vol.18 ネガ/ポジ 週刊メルマガクリルタイ Vol.18 ネガ/ポジ 週刊メルマガクリルタイ Vol.18 ネガ/ポジ

 私の場合、本・雑誌の購入はamazonが4、都内大型書店が3、自宅最寄駅前書店が3といった割合なのだけれど、それぞれ売れている(とされる)もの、棚作りがまるで違っている。

 Amazonの場合、「本のベストセラー」のほかも、例えば「新書・文庫」といったレイヤーがあって、その下の階層のジャンルを選べるような仕組みになっている。例えば、現在絶賛在庫切れ、取次搬入後、またたく間に「蒸発」するという噂(参照)の『Twitter社会論』は、「政治・社会」カテゴリーで第1位になっている。
 つまり、Amazonにおいては、あらゆるなレイヤーやカテゴリーでの「第1位」が無数に存在している。このことは、あまり指摘されていないことのように思えるのだが、著者や出版社の側にとってみれば宣伝になるし、購入する側からしても、食指が動きやすい。ロングテールのヘッドの部分である「第1位」の商品がさらに売れるようなデータベース設計になっている。

 大規模書店も、最近ではAmazonに近い売れ筋になっている。ブックファースト新宿店の11月2日〜8日の新書ランキングによると、2位が『ツイッター140文字が世界を変える』で、5位が『Twitter社会論』、8位が勝間和代女史の『目立つ力』といったラインナップ。
 勿論、大型書店の売れ行きは出版社はとても気にしている上に宣伝効果も期待出来る。紀伊国屋書店新宿本店の売れ行きを関係者の誰もが気にしているのは、各メディアなどが同店のランキングを参照するケースが多いからだ。その影響が、全国へと波及していくことを見込んでいるのは言うまでもない。

 しかし、そういった「全国的なベストセラー」というものは、ちょっとやそっとでは生まれにくくなっているんじゃないかなーと、郊外/地方のチェーン書店や、TSUTAYAのランキングなどを見ていると、思ったりする。

 首都圏を中心に店舗を展開している文教堂の11月9日〜15日ランキングを見てみると、『Twitter社会論』は13位、『ツイッター140文字が世界を変える』は24位だ。勝間女史の本は、ビジネス書のランキングを含めて1冊も見当たらない。
 替わりに浮上しているのが、ハーレクイン、官能小説(それもライトなもの)、ボーイズラブといったジャンルのものになる。

 明屋書店の傘下で、九州各県に店舗を持つ明林堂書店の書籍ランキングを見ると、1位が東野圭吾。そして、トップ10の中にケータイ小説が2作品ランクインしている。
 また、ランキングにあまり変動がないところも特徴として上げられるだろう。

 そして、TSUTAYAオンラインのランキングがこちら
 いやー、ボーイズラブ強いっすねー。
 ちなみに、Twitter関連本は、『仕事で使える!Twitter 超入門』の43位。こちらも、勝間本は見当たりません。

 例えば、『Twitter社会論』はAmazonでは在庫切れで都内大型書店では山積みになっているけれど、ちょっと郊外に行くと、同じ洋泉社の『雅子さま論争』が面陳で、『Twitter社会論』はひっそりと一冊だけ棚ざしということが珍しくない。
 勝間本も、多く刊行されているディスカヴァー21が取次流通をしていないこともあり、地方に行くと知名度はがくりと落ちてしまっているのではと想像する。
 逆に、香山リカ女史などはワイドショーにも出演していたりして知名度が高いのか、『しがみつかない生き方』はどこでも、まんべんなく売れている。

 俯瞰すると、取次流通の出版市場において、主戦場になっているのは、ライトノベル・ハーレクイン・ライトエロ・ボーイズラブといったジャンルだ。購買層は10〜20代前半の女性が主力。悪い言い方をすると、女子中高生や若い女性からどうお金を巻き上げるのか、ということに腐心しなければいけないということになるだろう。
 そして、この市場に割って入ろうとしているのが、ケータイ小説。gotanda6様の『ケータイ小説的。』でトドメをさされてしまったためか、Webでのケータイ小説論はあまり見かけなくなったが、郊外の書店だと専用の棚がどこにもあってまんべんなく売れているということは認識しておくべきだろう。

 で、こういった読者層からしてみれば、「Twitterって何それ」「勝間和代?誰??」なわけで。
 善し悪しにかかわらず、そちらの方がマジョリティだということは、頭の片隅にでも置いておいた方がいんじゃないのかな、と考えた次第です。

   

『CREA』に「新・婚活ノート」特集 

November 12 [Thu], 2009, 14:20

 しばらく「婚活」という言葉は結婚相談所のアドワーズ広告でしか見かけなかったから、このままブームが収束に向かうものだと思っていた時期が、Parsleyにもありました。
 ところがどっこい、まだまだ潜在的ニーズを掘り起こしたいようで、『CREA』12月号にモノクロ8ページにわたる「新・婚活ノート」が!
 ちなみに『CREA』は、20歳代後半〜30歳都市部OLをターゲットとしており、発行部数は約85000部。
 
 "婚活"という言葉がこんなに話題になっているのに、まだ"婚活"に本気で取り組んでいない人、"結婚"がまだ遠い夢物語の人、どちらも今こそ本気になるべきときなんです!!
 あなたが「結婚したいのにできない」理由を賢人たちの話をもとに解明していきましょう。


 この特集が秀逸なのは、婚活"賢者"(『CREA』がお好きな言葉)たちの著書の要旨からいちばんいいところを抽出していること。
 例えば、山田昌弘・中央大教授と、少子化ジャーナリスト(!?)白河桃子女史の『「婚活」時代』からは、出会いから結婚までのプロセスが80年代以降変化したという比較図と、男性未婚者の年収と未婚女性の期待のギャップを明らかにする棒グラフが引用され、「お城でいつまで白馬の王子様を待っているだけではダメ」「結婚相手への期待値を下げる」という両氏の主張の骨子が抜き出されている。
 同じように、アボガド・アッシュ氏の『婚活マーケティング』からは、自分の特徴を明確にすることと、自分を求める人を対象にするということを、ブランディング/ターゲッティングという用語で説明している。
 そして、最後のページでは、杉浦里多女史の『電撃結婚ノススメ』をもとに、結婚したい理由や自分自身の"売り"、相手に求める絶対条件などを書き出させるワークシートが用意されている。

 このように、各著者のいいとこどりをして一つの特集にまとめ上げているのだが、それがところどころで主張がバディングして雑把になっている、という印象が拭えない。おおむね、以前拙エントリーで触れた『AERA』の婚活特集の時と状況は変化ないと見て差し支えないだろう。

 すげーなぁと思ったのが、『結婚できない10の習慣』より引用した、"婚差値"診断テスト。なんでも、次の図式で偏差値ならぬ"婚差値"が算出できるのだとか。

 市場価値(30歳を50とし歳の上下でプラスマイナスしていく)+プラス値−マイナス値=結婚体質度

 で、「プラス値」とされている項目が「ひとりで外食ができない」「ファッション誌は『VERY』や『CLASSY.』が好き」「同棲はしたことがない」「過去2年間は転職や引越しをしていない」など。
 逆に「マイナス値」は、「親と同居している」「ひとり暮らしでペットを飼っている」「じつは処女だ」「今現在、不倫をしている」といったことが挙げられている。…笑ったのが、「スピリッチュアル系サロンに通っている(行ったことがある)」のもマイナスとされていること。
 いや、なんというか、こんな数値で結婚に向き不向きを判定されてしまうなんて、女性って大変なんだなぁというのが率直な感想になる。

 もう一つ、"合コンアナリスト"の水谷舞女史が出会いを積極的に求めていくことをレクチャーしているのだが、面白いのが「男の見極め方」。
 「男性幹事がイマイチならイイ男が来る可能性はゼロに近い」
 「メニューをなかなか決められない男は決断力がなく、優柔不断」
 「将来性があって上り調子の男はエネルギーに溢れていて、どんな激務でも肌はツヤツヤ」
 「チャラく見えても、シャイでも、眼力だけは誤魔化せず」
 …まぁ、身も蓋もないけれどその診断にはParsleyもおおむね同意しますが、せっかく山田先生が「相手への理想を下げよう」と言っているのに、二ページめくるとこのようなことを載っているのは、編集としてどうなのかと思ったりはしますねぇ。

 さて、この企画ではマーケティングジャンクション協力で25歳から39歳までの女性200人を対象にアンケートを実施している。
 それによると、「結婚したいですか?」という質問に対して、「絶対結婚したい!!」が71%、「結婚しなくていい!!」が29%としている。それで「結婚しなくてもいい」派は「出来るならしたいのだけど」というのを無理に割り切っている感じと断じて、山田由美子女史の「行き着くのは孤独死かもよ」という言葉を借りて、"婚活"へと追い立てようとしている。
 しかし、この「結婚したい」という数字の中身をよく見てみると、「でも、最悪できなければしょうがない」も含まれている。これを「結婚しなくてもいい」に含めれば37%。さらに、「時期は特に決めていない」という消極派が14%いて、これも足せば51%が結婚に対して消極的、というように取れる。

 『Voice』×gooニュース連動企画で、「そもそも結婚自体に価値がない」という記事を寄稿させて頂いた身としては、まだまだ「婚活」が根強いということを思い知らされる特集だった。このような動きには、これからもカウンターをしていかなきゃ、という気持ちを新たにした次第です。

 ちなみに、今号の『CREA』は「いい男大図鑑!」ということで、カラーページの大部分が男ばっか200人。表紙の玉木宏から茂木健一郎先生まで。結構面白かったから買ってみるなり立ち読みするなりしてみるといいと思うよ。

『日本インターネット報道協会』のHPができていた 

November 11 [Wed], 2009, 22:13
 岡田外務大臣お墨付きの報道協会である『日本インターネット報道協会』がサイトもないし連絡先にもつながらない、ということは、以前拙エントリーでも取り上げたのですが、ついにサイトがオープンした模様。

 日本インターネット報道協会(Internet News Association of Japan)

 サイトが出来たことをリリースしてくれてもいいのに、水くさいなぁ。

 以前のリリースとの違いは、役員。
 平野日出木氏が幹事から外れ、「事務局長」だった元木昌彦氏、「監査」だった神保哲生氏が幹事に名を連ねている。
 平野氏が外れたのは、当然オーマイニュースが消滅したためだと思いがちだが、平野氏にメールで問い合わせたところ、2008年の10月頃には「協会に属しているメリットがない」というようにオーマイ社内で話が出て、退会と幹事退任の手続きを取ったとのことだった。

 また、「発足時の会員」である株式会社ベリタの名が、会員リストから消えている。これについては、先方に確認のメールを送ってみたなう。

 同時に、やっとメールアドレスも分かったので、同協会に今後の活動方針についてとご質問と取材依頼のメールを出してみました。
 どんなご返答が頂けるのか、楽しみにして待ってみようと思います。

「森ガール」はオリーブの夢を見るか 

November 10 [Tue], 2009, 23:02
spoon. (スプーン) 2009年 12月号 [雑誌]

角川書店(角川グループパブリッシング)

 巷を騒がしている「森ガール」。最近では、mixiの「*森ガール*」コミュニティの管理人を監修に迎えた『森ガール fashion & style BOOK』(毎日コミュニケーションズ)など、数社からムックが発売されて、ちょっとした出版ラッシュになっていた。
 そんな中、今年の2月という早い段階で『森ガール A to Z』という別冊を出している『spoon.』が、他誌に先んじているようにも思える。

 今発売されている12月号でも、「真冬の森ガール」という企画で、ニット・ミトン・ファーといったアイテムを全面に出したグラビアを組んでいて、toi toi toia.g.plusといったブランドが雑誌のコンセプトに合わせたスタイリングを提案していた。
 「森ガール」を理解するのに、重要だなと思ったのは、表紙が木村カエラだということ。プライベートでも服などをリメイクするという彼女も、『spoon.』的には「森ガール」なのだ。mixiコミュの【森ガールな項目】の中に「手作りがすき」「雑貨屋さん巡りをついついしてしまう」というものがある。そういった意味からも、表紙・木村カエラは矛盾するようで矛盾しない。
 彼女のリメイクTシャツとインタビューの後に、クリエイターのリメイク術、ショップのリメイクアイテム、そして、余った毛糸で作るボンボンの作り方が掲載されている。個人的には、ギャラリーartist inの矢崎純子女史のリボン名刺ケースがかわいくて、早速まねしようと思いました。

 もう一つ、「森ガールのための路地裏散歩ガイド」として、谷根千・吉祥寺・鎌倉が選ばれていることも見逃せない。決して白樺で覆われた上高地、などではないところがポイント(笑)。「森にいそうな格好」をしているから「森ガール」なのであって、本当に森にいるとすればもののけ姫になってしまう。だから、散歩するのも、ちょっと古めかしい佇まいの路地が残る街や、公園や雑貨屋の多い街になるわけだ。

 ところで、『週刊メルマガクリルタイ』で不肖Parsleyが掲載している「文化系女子研究所」にて、「森ガール」の嗜好の多くは、「オリーブ少女」のそれを継承しているという指摘をした。(参照
 これは、何も私の独創ではなく、例えば『spoon.』の編集・安西由里子女史は、東京ウォーカーの記事で、『Olive』の文脈から、ガーリーなものが培われて今の「森ガール」に繋がっているということを明確に述べている。(参照

 文化系女子の前衛としての「森ガール」。本来であればそう定義づけしたいところだが、個人的にはまだここから「森文化」が生まれるかどうかは懐疑的であったりする。
 「オリーブ少女」は、いわば今の「かわいい」を規定した、最初のティーンが原動力となったファッション文化。 『Olive』から市川実和子・実日子姉妹や酒井景都が登場し、蜷川実花がガーリーフォトの潮流を作るプラットフォームの役割を果たした。ピエ・ブックスの書籍たちにも、影響が色濃い。
 今のところ、「森ガール」は「オリーブ少女」が培ってきた文化を消費するのみのように見える。実際、毎コミのムック本は、服や雑貨の通販などに力点が置かれていて、そこから何か新しい「文化」が生み出されそうなイメージは感じられなかった。
 しかし、『CanCam』の「モテ」のアンチテーゼとして浮上したというには3万7千というコミュの登録者数を集めた流れを説明するには不充分だろう。
 このコミュニティの中で、「消費」だけに飽き足らないひとたちがどれだけ現れるのか。そして、そのひとたちが「かわいい」をどのように進化させることができるのか。かつての「オリーブ少女」たちのように。
 「森ガール」が一時のムーブメントに終わるのか、それとも新しい「文化」として根を張ることができるのかは、そういったところに分かれ目があるのではないのかしら?

 そして。「森ガール」の嗜好することは、まんま「乙女男子」にも当てはまったりするのだが、それはまた別の話ということで。


『Twitter社会論』を読んだ。 

January 01 [Tue], 2008, 0:00
Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流
津田 大介
洋泉社
売り上げランキング: 89

 いま、Twitterに関する本の刊行ラッシュ。その中でも本書が特異な位置を占めるのは、いわゆる入門書的内容やビジネスでの成功事例を取り上げるだけにはとどまらず、Twitterを使う「人」と「社会」とのつながりそのものにフォーカスしている、ということが挙げられるだろう。紀伊国屋書店新宿本店の手書きポップによれば、「これを読まずして'10年代を迎えること勿れ!」とあった。まぁ、それは言いすぎだと思うけれど(笑)。

 本書では、「新しい情報流通インフラ」としてのtwitterの特徴として、「1、リアルタイム性」「2、伝播力が強い」「3、オープン性」「4、ゆるい空気感」「5、属人性が高い」「6、自由度が高い」といったことを挙げている。
 中でも、リアルタイムに同期していることによって、より現実世界と深く結びつくインフラとなったことが、「個々人が今直面している現実をトリガーに様々な情報発信を行うことで容赦なくその人の思考や価値観が明らかになっていく」。そして、ユーザー自身の思考にフレームが出来ていくという指摘が特に重要だ。この、個人の行動や思考の「コンテンツ化」こそが、ヘビーユーザーが増えている理由を端的に示している。

 第2章では、ツイッター中継、いわゆる「tsudaる」技術が紹介されている(自分で命名したわけではないと主張なさっているところが微笑を誘う)。

 1 配布資料はあらかじめ確認する
 2 スライド上の数字やデータを見逃さない
 3 オイシイ発言を見逃すな
 4 「つまり」「要するに」を待て
 5 文字数はとにかく節約


 この「tsudaる」行為について、筆者は「ジャーナリズム」だと明確に意識されており、多くの「市民記者」が増えることによって政治に影響を与え、既存のジャーナリズムを補完することが出来ると主張されている。
 実際、第三章では60ページ程を費やして、Twitterと、ジャーナリズム・政治との関係について、実例を紹介しつつ、「急速に政治性を帯びてきている」ことを指摘している。
 筆者は2008年の中国・四川省の大地震、インド・ムンバイのテロにおけるBBCの誤報事件、今年1月のニューヨークの旅客機不時着事故でのTwitterでの一報を引き、その「伝達機能」の破壊力とデマの危険性を指摘、投稿された真偽の不確かな「0.5次情報」の信頼性を担保して「1次情報」にするプロセスが重要になるとしている。
 「監視機能」としてはモルドバやイランのような政府当局の情報統制に対抗する手段としての直接的政治行動のほかに、穏健な権力(民主主義国家)に対する政策決定のプロセスを透明化するということがある。現実社会に深く結びついたTwitterは「人間を現実社会で動かすための起爆剤」になっており、「監視」をするのにはうってつけだと筆者は指摘する。その上で、既存メディアが行えない、選挙公約や法律施行などのチェック機能の一端を、一般ユーザーが担うことを期待しているようだ。
 そして、「アジェンダ構築機能」。信頼性の担保や個人の嗜好とマスとの差が埋まるかどうかがポイント、としている。
 この点に関しては、brainparasiteさまがおっしゃるように(参照)、平沢進師匠が「平沢唯じゃない」とつぶやいてフォロアーが一万を超えるが、13万ものフォロアーを抱える勝間和代女史がデフレ脱却を求める署名アカウント(@anti_deflation)を告知して2500人超といったところだというあたりに、現状の日本のtwitterの限界点が見えるように思える。

 日本の政治家は、既存メディアに頼らない発言の場としてブログにこぞって参入しており、twitterを利用している議員さんはまだまだ少数だ。しかし、『みたいもん!』様と『ネタフル』様の『ツイッター 140文字が世界を変える』藤末健三参議院議員によって首相官邸に持ち込まれるなど、関心が高いことは事実だろう。
 本書では、twitterを議員が使うことに対して、主に逢坂誠二衆議院議員を例にして、有権者に政治に興味をもってもらい、より身近に感じて欲しいということが大前提だとした上で、「政治への参加意識を高める」という役割を果たし得るのではないか、としている。
 個人的には、もう一つ上のレイヤー、政治家に直接アクセスする手段としてのtwitterという役割も果たし得るのではないか、と思う。
 10月31日に開催された駒澤大学のシンポジウム『ブロガーが問う!ネット時代の政治とメディアの新たな関係』では、『ガ島通信』様がtwitterでDMしたことで浅尾慶一郎衆議院議員の出席が実現した。
 同シンポジウムで、浅尾議員はメール等で意見や陳情が送られてくることに触れて、「メッセージを伝えるにしても140文字以内にまとめてもらえると分かりやすい。1000字読んで石だった時は疲れてしまう」と述べている。(参照
 このように、既にtwitterの影響を受け、実際に政治活動に生かしている議員がいらっしゃるということは、「政治参加の喚起」だけではなく「政治参加」そのものへコミットできる可能性もあるのではないか、と思う。

 巻末には、著者と勝間和代女史との対談「つぶやく力」も収録されている。ここで印象的だったのは、お二方ともTwitterの可能性は認めつつも、非常に冷静に捉えていること。ネット発で売れる人の多くが、ネットだけにとどまらず、当人の能力が高かったり面白かったりしているから評価されている、という当たり前のことを確認しているし、日本での「キャズム超え」にはケータイユーザーの存在と、「IT素人による意外な使われ方」が必要としている、というのは頷ける話だ。
 これから、今は前略プロフあたりにいる女子中高生がtwitterを使ったときに、一体どういった使われ方になるんだろう? それとも見向きもされないのかな?

 筆者は総じて、ことさらTwitterの面白さをデフォルメして伝えることなく、淡々とした筆致で今後Twitterが社会のインフラになりうる可能性を論じている。
 それでも、個人が変わることでオープンで自由な方向に変わっていくためのトリガーとしてTwitterに寄せる期待が時折迸っている。
 「おわりに」には、次のような一節がある。

 社会なんてなかなか簡単に変わるものじゃない。変えるには、個人個人がリスクとコストを取って実際の社会で何かしら動く必要があるからだ。変わらないことに絶望していろいろあきらめてしまった人もたくさんいるだろう。それでも、人々が動くための一歩目を踏み出すツールとして、ツイッターは間違いなく優秀だ。何かをあきらめてしまった人が、ツイッターを使うことで「再起動」できれば、少しずつ世の中は良い方向に動いていく。そんな希望を持ちたくなる、得体の知れない力をツイッターは持っている。

 Parsleyも、筆者の「希望」に共感を覚える。そして、この言葉が、まだTwitteに触れていないひと、面白さが分からないというひとに届きますように。そんなふうに願わずにはいられなかった。

『PS』12月号を読んだ。 

November 05 [Thu], 2009, 23:09

 表紙はこれが初となる吉高由里子。ファーベストに帽子、長袖ニットにファー付きミトン、ヘッドバンドにカーディガンといった、さしずめ「冬の森ガール」といった印象を受ける。でも、趣味はという問いに「パソコンのネット通信対戦」と答え、「対戦中のコメントは妙に強気(笑)」という、サイバーな吉高さんなのだった…。

 11月号の着こなしもなかなか勉強になったが、今号もロングニットカーディガンやサルエルパンツ、大判ストールなどの人気アイテムはどれも素敵で目移りしそう。35Pのmysty womanのカーディガンは、たぶん買う。
 また、68Pより4ページにわたって、足元のコーディネートの特集が。タイツ×柄レギンス、カラータイツ×トレンカ、レギンス×レッグウォーマーなど、複雑かつ多様になっていて、「これが正解!」というものはなくなってきている。だんだん、奇をてらった者が目立つ、といった感じになっている?

 一ヶ月の着まわし術企画は、入夏の"ゆるミリタリー"。もはやPSのエース格にまで成長した彼女の表情からは堅さはなくて、貫禄すら漂い始めている。
 中綴じに『PS MODELS "Happy" BOOK』という、出演モデル14人をフューチャーした中でも、菊地亜希子やアリスといった常連に存在感で負けていない。

 面白企画としては『JK(女子高生)ライフ追跡SNAP』。「彼氏のタイプでイチバン多かったのはやっぱり"草食系"」って絶対ウソだろ(笑)。Suzy's ZooのBoofのグッズを持っているコは、たしかにちょこちょこ見かける。しかし…彼女達の持ち物を見て今いちばん即物的/実用的な人種なんじゃなかろうかとひとしきり考えてみた。

 最後に、毎号掲載されているパブ記事の『くるまデート劇場』。今月は須藤元気に、プジョー207HBという組み合わせ。申し訳ないけれど、今までで一番爆笑させて頂きました。ごちそうさまです。

『ニコニコ動画が未来を作る』を読んだ。 

November 01 [Sun], 2009, 10:35
ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語 (アスキー新書)
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 献本頂きました。ありがとうございます。
 タイトルにニコニコ動画とあるのだけど、実際にその開発や将来の展望について書かれているのは、約300ページのうち50ページあまりに過ぎない。
 だが、ドワンゴという会社に吸い寄せられるように集まった異能たちが、どのようなバックボーンを持ち、日本のPC・ケータイのシーンを作り上げていったのか、ということが活写されており、どの要素が欠けてもニコニコにはたどり着くことは出来なかったということを詳らかにするには説得力充分だ。

 まず、『月刊マイコン』『BASICマガジン』によって培われた、ゲームプログラミングの土壌とフリーウェアが流通する草の根BBSの中から、ドワンゴの副社長になる森栄樹氏やニコニコ動画を開発する戀塚昭彦氏らが参加するBio_100%というゲーム制作集団が現れ、『Super Depth』が当時のマニアたちに熱狂的に受け入れられるところから物語がはじまる。



 次に、Windowsの登場によりPC/ATの自作パソコン文化が生まれ、ビデオカードやモデムをソフトウェアとパッケージにして売りまくった、川上量生・現ドワンゴ会長が登場する。
 彼がDWANGOという会社のインターネットネットワーク対戦システムを見つけ、モデムにソフトをバンドルして売ろうする。その矢先、ソフトウェアジャパンが倒産し、呆然としているところ、後にマイクロソフトのXbox営業部長になるジェイムス・スパーンが交渉して日本に新会社を作り出資することをDWANGOに同意させてしまう。こうして、「ドワンゴ」という会社が誕生する−。

 その後の、「廃人軍団」達のドリームキャストの通信対戦部分開発のデスマーチ、iモードのゲーム開発、着メロ・着ボイスの成功と着ウタフルの普及による凋落、そしてエイベックスからの出資…。疾風怒濤、まるでジェットコースターのように展開されていく流れは、『プロジェクトX』ばり。2030年くらいには、本書を原作にした大河ドラマが放映されているんじゃないか?
 そう思わせるぐらいの筆者のストーリーテリングには舌を巻くほかないだろう。

 個人的に、特に印象的だったのが、川上会長が着メロ事業を展開していくうちに芸能界の人間と付き合うようになり、個人の看板で勝負しているというこの業界のことが好きになった、というくだり。大手のプロダクションやテレビ局、広告代理店という会社に所属はしているが、個人と個人の人間関係が重視されるということが、「会社の知名度と肩書きだけで相手を判断するのに比べると、これってすごい公平だな」と感じたという。
 ドワンゴという会社が出来上がるまで、同じように異才と異才とが出会い、コラボしてモノを作り上げていくという過程を経てきた川上氏らしい感覚だな、と思うけれど、ブログなどのソーシャルメディアが普及するにあたって、社会全体がそのような方向に寄っていきつつある。ドワンゴの仕事のスキームは、そういったことも先取りしたように思える。

 さて、本書では最後に、ニコニコ動画、そしてコンテンツ業界全体としての課題として、マネタイズを挙げる。
 それを、『俺のロードローラーだっ』の作者であるhc氏の口を借りる。



 (中略)ニコニコ動画で作成された楽曲がパッケージされ、それが流通に乗ったりすると、嫌悪感を感じてしまうのはなぜだろう。
 ボカ廃やMADの作者から見れば、「せっかく使ってやったのに」「応援してやったのに」と感じる人も少なくないだろう。作品を作るために使うボーカロイドソフトの調教も、誰が発明したのかよくわからなくなっている状況で、みんなが様々な要素を取り入れている。だったらその要素を発明した人に、どうしてお金が入っていかないんだろう。


 筆者は、広告代理店モデルが機能不全を起こしてアドマーケットプレイスになったようなことと同じような形態が、クリエイターの世界にもやってこようとしていると述べ、「どこでお金を生み出させて、どうやってクリエイターに還元していくのか」という問題を提起する。が、結論は「まだない」とし、「ニコニコ動画こそが、最初のスタート地点なのだ」と締めている。

 このコンテンツ制作者への還元が、現状ではアフィリエイトと、「投げ銭」モデルしか提示されていない。ここに新たなアーキテクチャやシステムが持ち込まれるのか、持ち込まれるとするならいつなのか−。
 それは、今後のIT・ネットサービスやコンテンツ業界全体の、大きな大きな宿題といえるだろう。

乙女男子のマンガよみあわせ(3) 

October 31 [Sat], 2009, 22:36

100番めの羊
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 乙女男子のマンガよみあわせの第三回は、今日マチ子先生です。
 『今日マチ子のセンネン画報』で注目された彼女は、モーニング公式サイトで『みかこさん』、『読んどこ』で『100番めの羊』を更新している。ネット媒体での連載⇒書籍化という特異で新しい立ち位置のマンガ家さんといえるだろう。

 彼女の作風が新鮮なのは、気持ちの切り取り方や、日常の中の断片のすくい方。

 『みかこさん』では、主人公の女子高生であるみかこが、友達のナオの話をずっと聞くというエピソードがある。砂時計とともに、落ちてくる、言葉。

 お茶はどんどん苦くなるけど 話の続きをどうぞ

 『100番めの羊』の主人公なおみは、修道院に拾われたという女子高生。
 雪の中、彼女は学校へ急ぎながら、思う。

 この季節になると シスターたちは わたしとはじめて会ったときの話をする
 わたしは わたしを 放った人を考えてみる


 何気ない、情景と、何気ない日常の中の、ざらりとしたもの。
 『みかこさん』のオビには「残りわずかな高校生活は、噛むとがりっと音がする」とある。『100番めの羊』には、「ひたむきで、不条理で、ドキドキする毎日……」とある。

 みかこにしても、なおみにしても、出自もあって「孤独」というものと向き合うように「設定」されている。しかし、だからこそ、ひととの「つながり」に敏感だ。それを、繊細なタッチで、20コマほどで描いている。決して重くなく、そこに「ある」ものとして、感情の揺らぎを。

 Parsleyは、その情景と登場人物の「カット」に、いつの間にか共感するようになっていた。いつまでも残しておきたい、写真のような。今日マチ子先生が描くコマの魅力は、つまるところ、連続している時間からどの気持ちの動きを「保存」するかという選択の的確さにあるのだと思う。



 今日10月31日、有隣堂アトレ恵比寿店でのサイン会でみかこさんを描いて頂きました。だいじにします。

 

大臣記者会見開放ハッキングなう! 

October 28 [Wed], 2009, 23:11
 ■外務省

 岡田克也大臣の主導で9月29日の記者会見から霞クラブ(記者クラブ)以外のメディア・フリーランスにも開放された。会見の主催は、記者クラブから外務省へ。(拙エントリー参照
 その後も、J-CASTニュースなどは毎回参加している模様。27日の記者会見ではニコニコ動画が視聴者から寄せられたメールの質問を代読している。以下、議事録より引用

(ニコニコ動画 七尾記者)質問用のマイクをご用意していただいて、記者の皆さんにも使っていただいて、視聴者の方へのご高配感謝致します。本日は、視聴者から事前に電子メールで募集させていただいた質問を、ニコニコ動画の方で代読させていただいて質問とさせて頂きます。
 「大臣は野党の時代の早くから、自らのサイト内で動画配信をされてきたということですが、ニュース、報道という点においてテレビとネットの大きな違いはどういったものだとお考えになられますか。」

(外務大臣)私(大臣)自身が配信をしてきたことは、私(大臣)の主張を多くの方に知って頂くため。他の媒体を通すと必ずしも私(大臣)の本意と違う伝えられ方をすることがありますけれども、映像ですとそれがそのままということになりますから、非常にそういう意味で非常に有り難い。政治家にとっては自分の考え方をより広く発信するための非常にいい手段だと思っています。

(ニコニコ動画 七尾記者)大臣ご自身は、インターネットをどのように使われていますか。

(外務大臣)自分のホームページを見るくらいです。なかなか時間もありませんので。 


 ■金融庁

 亀井静香大臣の主導で、記者クラブ「財政研究会」の従来の会見と、雑誌・ネットメディア・フリーランス向けの会見が別々に行われることになった。

 記者クラブに開放断られて 亀井氏「もうひとつの記者会見」断行(J-CASTニュース)

 議事録を見ると、日経ビジネスなどの雑誌、J-CASTや日刊ベリタなどのネット媒体やフリーの記者が参加している。特筆すべきは、10月16日の会見で、赤旗の記者の質問を受けていること。(参照
 10月20日の会見では、『ケツダンポトフ』のそらの女史がダダ漏れを敢行。(参照
 彼女のtwitterによると、「プロ」かどうかが判断の基準になっているようだ。(参照

 ■法務省

 法務省記者クラブの総会で、フリーランスの記者にも法務大臣の記者会見を開放する方針が決められる。
 中村哲治政務官のブログによると、以下のような手続きが必要になるという。(参照

 まず、法務省の代表番号(03−3580−4111)に電話をしていただいて、記者クラブにつないでもらう。そこで、記者会見への参加を希望する旨、伝えていただく。
記者クラブ側は、過去の記事などを参考にして、本当に記者たりうる人物かを判断する。その後、法務省秘書課広報室に伝える。
秘書課は、その方に申請書の用紙をFAXで送り、必要事項を記入していただいて、FAXで返送していただく。
当日、取材を希望されるジャーナリストの方は、そのFAXを持参し、法務省に入る。そこで、写真入りの身分証明書で法務省側は、身分を確認する。


 10月6日にはフリーランス1名が参加しているとのこと。雑誌・ネット媒体の参加は確認出来なかった。

 ■総務省

 9月29日の記者会見で、原口一博大臣から「できるだけ、国民、内外各位に開かれた記者会見をしたいということで、セキュリティーや様々な問題を確保した上で、多くの皆さんに、これは記者クラブ主催でございますが、開かれたものにさせていただきたい」という「お願い」がなされる。(参照
 その後の進展は一切確認できず。

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 ここからは、木っ端ブロガーの感想。
 もともとこの問題は、鳩山由紀夫総理がまだ民主党代表当時に、上杉隆氏に対して「首相官邸における記者会見の開放」を約束したことに端を発している。(参照
 政権発足一ヶ月余を経ての、「開放」の状況が上記の通り。確かに、分厚い扉から一筋の光は差しているのかもしれないが、ぜんぶ開き放たれたわけではないし、まだまだ風通しは悪い、といったところだろうか。
 問題は、現状の「開放」によって「ガス抜き」がされた状態で、他の省庁への開放の機運が高まらないことにある。現に総務省は、その後記者クラブがどのように検討したのか、皆目情報が上がってこない。
 ここは、ネットメディアが頑張るところだろう。飽きられるまで騒ぐべき。「日本インターネット報道協会」の元木昌彦事務局長は、もう逆立ちしても先のない週刊誌のことを講演している暇があるなら、こちらに注力して頂きたいものです。
 
 外務省の会見を見ていると、J-CASTニュースやニコニコ動画は「頑張っているなぁ」と思う。ただ、開放前に比べて質問の内容が向上しているかといえば、そんなことないよねぇというのが正直なところ。
 そんな中、動画メディアは質問を一般から募集してぶつけるという手法をとり始めている。何も、質問者が、質問の内容を考えずともいい。いわば質問内容のアウトソーシング。もしかすると、より専門的で、鋭い問いを投げかけられる可能性があるかもしれないね。

『生命保険のカラクリ』を読んだ。 

October 23 [Fri], 2009, 8:22
生命保険のカラクリ (文春新書)
岩瀬 大輔
文藝春秋
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 献本いただきました。ありがとうございます。
 約9割の世帯が加入しているという、世界でも類を見ない程の加入率を誇る日本の生命保険。だが、契約内容が複雑で、必ずしも加入者(場合によっては売り手の側も)の理解が充分でないというのが実情だろう。
 本書は、独立系としては74年ぶりに誕生したライフネット生命保険株式会社の代表取締役副社長である著者が、日本の生命保険が発展してきた経緯と、パッケージ化されて販売される保険の中身、生保会社がどのように売上を立てているのかという内情まで、詳らかにして、消費者がより良い生保の選択をするための7か条を示すという内容になっている。
 目次は、こちらを参照のこと。

 日本の生命保険は義理(G)・人情(N)・プレゼント(P)からなる「GNPセールス」と呼ばれているそうだ。確かに、身近なひとに勧められて、契約内容も吟味せずに加入するというケースが多い。
 著者も、社会人二年目に外資系生保の営業・コンサルティングを受けて、総額800万円近い買い物を「内容を十分に理解しないまま」したという。このエピソードは後日、その会社の営業マニュアルにセールス話法の「台本」や、オーダー・メイドだったはずの保険プランが記されていたことを知るという、笑えないオチで終わっている。

 「社会人になったんだから、保険くらい入っておかなきゃ」ということを、親や親戚から言われて、それでも入らないでいることは、簡単ではない。そういった空気が醸成されたのは、ここ30年くらいのことだと、筆者は指摘する。貯蓄の要素を薄め、保障の要素を高める「定期付終身保険」によって、より手数料を取りたいという保険会社の販売戦略が、日本人を「生保好き」にさせたとする。

 本書が、非常に「良心的」だと思ったのが、「買い手にとってお得な商品など存在しない」と明確に述べていること。
 セールや割引が法律で禁止されている(不勉強で、はじめて知った)ことにより、割高の保険料を払ってサービスを受けるのか、自分で調べたりすることによって、安い保険料のものを選択するのか。それは、買い手のチョイスの問題になっていると、はっきりと記している。

 また、医療保障の中核には、国による健康保険があり、民間の医療保険はそれを補完するものにすぎず、「高額療養費制度」により、自己負担額には上限が設けられていて、原則としてひと月あたりの負担は10万円前後におさまる、と実例を挙げて説明している。
 不幸にも亡くなった場合でも、残された家族には「遺族年金」が用意されていて、子供が独立するまで支払われる。さらに個人の貯蓄した上で、それでも足りない部分を補完するのが、保険商品だという。

 筆者は、保険にかしこく入るための七か条を挙げている。

 一、死亡・医療・貯金の三つに分けて考えよう
 二、加入は必要最小限、を心がけよう
 三、まずは中核の死亡保障を、安い定期保険で確保する
 四、医療保障はコスト・リターンを冷静に把握して、好みにあったものを選ぶ
 五、貯蓄は金利が上がるまで、生保で長期の資金を塩漬けしてしまうのは避けよう
 六、すでに入っていても「解約したら損」とは限らない。見直そう
 七、必ず複数の商品(営業マンではない)を比較して選ぼう


 個人的には、長く売り手の買い手の「情報格差」で、高い保険料の商品を販売してきた生保業界を、手数料を開示することによって、ひとりひとりの加入行動を変え、年間40兆円を超えるという生保に流れているお金を適正化するという、著者とライフネット生命の挑戦を応援したい。
 だが、転職を繰り返したり、非正規雇用を長らく続けざるを得なかったり、場合によっては職につけない人が若年層で増えている現状で、果たして生保の審査を通る人はどれくらいいるのだろう?
 民間保険のほとんどは、正規雇用者を対象にして商品設計をされている、というのが私の理解なのだけれど、雇用の流動化が進むと、「審査」という部分がどうなるのか。
 そういったところに、若干の疑問が残った。

 ともあれ、これから生命保険に入ろうとする人、もしくは生命保険に入っている人が、契約内容を見直そうという人にとっては、必読の書であることは間違いないと思う。
 月に払うお金は数千〜数万でも、結果的に一千万円に届く程の大きな買い物。計画は慎重に、ですね。


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Name:Parsley
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広告企画会社のWeb担当
カワサキシティーで布団と同化中
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