黒部行1 

November 24 [Wed], 2004, 15:04
富山に飛ぶ飛行機の席を決めるなら、進行方向右側が断然よい.もちろん、新幹線開通で北陸への列車旅の魅力が減ってしまったこともあり今回初めて飛行機にしてみたので、もしかしたら左側はもっとすごいのかもしれない。富山行き飛行機はいわば「空の青梅線」といえる。これはメタファーではなく、ほんとうに青梅線沿いを飛ぶので、あえてそう呼ぶ必要は無論まったくない。飛び立つとまず右に大きく旋回するのは羽田離陸の全便がたどるコースである。しかし、西へ向かうほかの便と違い、ほぼ360度といってよい一見無駄な回頭をし、この時点で進行方向右窓側の視野に東京以北の関東全域が捕捉される。少し前に東南アジアのチャーター便が東京タワーをかすめて羽田に入ったことがニュースになっていたが、それがいかに重大なミスであったかを今回確認することができた。眼下には多摩川がのびている。東名入り口に至るバイパス群の場当たり的な構造や、ニコタマあたりのランドマークなどを楽しんでいると、あっというまに川幅が狭くなり、気がつくと狭山の人工湖やドーム、横田基地の滑走路などが見えてくる。ここまで書いた時点で青梅線沿いを飛ぶ時間はほんの少しで、むしろ「多摩川遡航線」と呼ぶべきであったかとも思ったがまあどちらでもよいだろう。横田の滑走路が一本だけということに軽い衝撃をうけ、専用ジャンボで故国へ帰還する米兵のことなどを考えていると、浅間山が煙を上げているのが目に入ってくる。浅間山からの火山灰が形成した北軽井沢ののっぺりした灰色の土地柄をみていると、岸田京子の『山小屋だより』の雰囲気が奇妙に得心できる。「なるほど」などと言っているうちに、冠雪したやけに鋭い稜線があらわれる。そして、前方に海を確認したその刹那、眼下にこれまで以上に鋭く高い二つの稜線に挟まれた日の当たらない深い谷間に暗く深く、それは高々度から眺めているだけによりいっそう深く感じられる深さでたたえられた青黒い湖が通り過ぎた。これから向かう黒部にこのような形で一瞥を送ることができるとは、期待していなかったことだけについている。そのまま、着陸かと思いきや、海岸線を大幅に行きすぎてから、雲がもうもうと湧く日本海をおおきく旋回し、雲の上に立山連峰の峰々を幻想的にながめながら、どうということはない地方空港に飛行機は降り立った。
P R
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