デジカメにおける顔検出やシーン認識などは一般化し、最近ではGPSや無線LANなどデジタル家電的な機能やサービスに対応する製品も増えた。そうした流れはどこまで行くのか?【斎藤健二】
【前編:2010年、デジカメのデジタル的進歩とは何か】 ITmedia: 前編ではデジタルカメラのデジタル的進化について聞きました。アナログカメラではあり得なかった、デジカメならではの付加機能というものがあります。最近ではそうした付加機能もカメラ的な機能ではなく、GSP搭載によるジオタグ付加や無線LAN内蔵/対応など、デジタル家電的な機能を搭載した製品が増えているように思えます。
渡邊(ITmedia デジカメプラス編集長): ニワトリと卵の話になってしまうのですが、需要のないところにデジカメというマスプロダクトは作れません。とはいっても需要は作っていかなくてはならない。それのせめぎ合いです。
無線LANでいえば、スタジオ用トランスミッタは定番製品ですし、コンパクトデジタルカメラでも内蔵した製品は以前よりあります。GSP内蔵製品も既に存在しています。ですが、無線LANをカメラに内蔵すれば消費電力の増大を招きますし、磁石の塊ともいえるズームレンズとGPSを1の筐体に納めるためには防磁設計とアンテナ感度の両立という課題に取り組まなくてはなりません。
こうした付加機能は最終製品の価格に反映されてしまいますが、ソニー「DSC-HVX5V」はGPS搭載にあたって「かなりのコスト的な無理」をしたそうです。無理をしてでも機能として搭載すれば、新たな利用者を獲得できると踏んでのことでしょう。
ただこうしたデジタル家電的な機能は、カメラだけでは完結しないことが多々あります。ネットワークがない場所での無線LAN搭載機は何ら意味を持ちませんし、GPSを搭載して撮影画像へジオタグを埋め込めても、それを表示するアプリケーションやネットワークサービスがなければ、機能を搭載しただけのオモチャに過ぎません。そうした意味では、まだまだ、搭載したというレベルの製品が多いように見えます。
ITmedia: カメラで完結しない部分、今後の流れはどんな方向にいくんでしょう。
渡邊: 悲観する必要はないな、というのが個人的な感触です。デジカメの何が楽しいですか?という問いに対して、市場が立ち上がりはじめた当初は撮ったその場で写真が見えますという「即時性」が、その後にプリントやネットをつかった閲覧サービスなど「共有」がアピールされ、利用者の支持を得ました。
そして2009年には、デジタルフォトフレームの販売数が100万台を超えました。デジタルフォトフレームは基本的に単純な機能しか持たない「写真立て」ですが、「デジタル時代の写真立て」としての利便性で市場に受け入れられました。「デジタルならでは」として提案する機能や楽しさ、サービスが消費者の心をつかめば、市場が成立するともいえるでしょう。
近々にモノになりそうなのは、無線LANではないかと思います。無線LANというインフラの普及率がそれなりに高いことが理由のひとつ、無線LAN内蔵メモリーSDカード「Eye-Fi」の影響も大きいですね。ニコン、カシオ、サンヨー、キヤノンなどで標準対応する機種も増えています。これらの利用者が増えていけば、時間はかかっても市場ができあがると予想しています。
●撮った後どうするか。写真共有サービスと動画の関係
ITmedia: 私の母親が、先日「写真撮ってフォト蔵というサービスを使うとみんなですぐに見られるのよ。便利」といっていました。ITリテラシーが高い人ではありませんが、デジタルデータとしての写真をネットで共有する楽しみを満喫している。ここにはまだニーズがあるようにも感じているんのですが。
渡邊: 写真共有サービスは、「見せる」という目的は同じでも、紙という物質にしないので、どうしても分かりにくさが残ります。そのあたりは課題です。オンラインサービスはデジカメプラスでも積極的に取り扱う予定ですので、目を通していただけるとうれしいです。
ITmedia デジタル一眼でも当たり前のように撮れるようになってきた動画ですが、機能としては以前から存在しているためか、目新しい差別化要素になっているかというと、そうでもないように感じます。今後、どのように普及していくのか、そのあたりの考え方を教えてください。
渡邊: そもそも素人の動画を見て楽しいか? というのがあると思います。テレビに代表されるプロフェッショナルの映像に親しんでいるなかで、素人が撮った映像を果たして見たいか。UGCの代表格といわれるYouTubeにしても、膨大なアーカイブから万人が楽しめる映像を探すには一苦労です。一方で「この前の送別会のスピーチを動画で撮ったよ。15秒だよ」といったら見てくれるとも思います。
ホームビデオは家族の成長記録をアーカイブする手段として定着し、イコールビデオカメラ市場として存在していますが、別の市場としてスナップ写真を撮るように動画を撮って人に見せる、というコミュケーションツールとしての使い方・楽しみ方はこれから伸びていくのではないかとも感じています。
ITmedia: 海外ではビデオブロガーというような人たちがいて、MP4カメラといわれる「FlipVideo」や「Bloggie」などを使って、静止画のかわりに動画を撮ってブログに使っているといわれますが、日本ではどうでしょう。
渡邊: スナップ動画でいいなら、“カメラ”で撮る必要はない気もします。映像を残すだけならばiPhoneなどでも構いませんよね。じゃあ、カメラならではの映像とはなんでしょうか。一義には映像のキレイさを挙げられますが、ならばビデオカメラのほうが優位な点が多いです。「カメラの動画」には、映像のキレイさと取り回しの軽快さ、そのバランスが求められるように思います。ですが、そのバランスはどこにあるかというと、カメラの動画に対するニーズが固まっていないために、定まっていないというのが現状ではないでしょうか。
ハイビジョン動画がデジカメで撮れます、というのは各社製品がアピールしていますが、撮った後にどう楽しむかまではきちんと打ち出し切れていません。強いて言えば総合家電メーカーであるパナソニックがSDメモリーカードを軸にした提案を行っているぐらいです。ですが、HDMI端子を備えたカメラも増えていますから、この領域についてはこれからの進歩に期待したいですね。
写真でも動画でも、各社とも「撮ったものをカメラの中に閉じ込めてほしくない」という思いがあります。ただ悲しいかな、カメラ専業メーカーが多いので、「見る」「編集する」「共有する」など、撮影した写真と動画の活用までトータルで作り込んで提案できているメーカーはほぼありません。そう考えると、ソニーによる、動画共有サイト「eyeVio」売却は残念だったなあと思います。
●コンパクトデジカメはどうなる
ITmedia: コンパクトデジカメの市場規模が縮小しているという統計結果が出ました(2009年度CIPA統計調査では、レンズ一体式デジタルカメラの総出荷数は前年比70.9%の約11億6200万台。2008年は前年比101.4%の約16億3900万台)。景気動向に左右される側面があるともいえますが、次第にエントリー層も取り込みつつあるデジタル一眼レフ、高画素化・高機能化が進むケータイカメラ。上から下から攻められ、コンパクトデジカメの市場はなくなってしまうのでしょうか?
渡邊: レンズを一体化したコンパクトデジカメの本質は「手軽にきれいな写真が撮れる」単機能さにあります。一般的にシンプルな道具へのニーズが尽きることはありませんから、コンパクトデジカメへのニーズもなくなることはないと思っています。
デジタル一眼との比較でいえば、レンズと本体が一体化しているからこそできることがたくさんあります。手のひらサイズの超高倍率ズーム機といった小型化や、防水耐衝撃などのタフネスさ、AFを含めた高速処理などはコンパクトデジカメの特徴を生かしたからこそ実現した性能・機能です。
コンパクトデジカメには、シンプルさに特化した道具としての道が1つ。写真を撮って、それを活用するという先鋭的なデバイスとしての道がもう1つ。これだけデジカメが普及している今だからこそ、背面液晶で見るだけではなく、ネットワークを介して見てもらう、共有するなど、撮影したデータを活用することがより重要になるでしょう。
デジカメプラスでは、カメラをコミュニケーションの手段であったり、家族の成長の記録であったり、自分の生活を豊かにするプラスαの要素として考える人に向けて中身を作っていきたいと思っています。
ITmedia: カメラがある生活、という感じでしょうか?
渡邊: カメラが生活、ではなく横にカメラがある生活を応援します、というイメージです。カメラ単体の話題ではなく、どんなふうに撮影するのか、撮った写真をどう活用していくのか。そうした観点から、カメラのある生活を紹介、提案していきます。デジカメプラスを楽しみにしていてください。
(デジカメプラス) 4月5日12時27分配信
+D LifeStylehttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100405-00000020-zdn_lp-sci