私とワルツを 

November 25 [Wed], 2009, 14:04
あの日の、僕の部活人生何度目かの決意から

気がつくともう一ヶ月以上経っていた

僕は、秋の新人戦の次の試合からまた選手として試合に出るようになっていた

それは、僕の代わりに試合に出ていた後輩が部活を辞めてしまったからなのか

僕のがんばりが評価されたからなのかはよくわからない(おそらく前者だろう)

結局、僕のことを何一つわかっていない監督は

レギュラに復帰した僕のポジションを切り込み隊長に据えたままだったが

僕は、もうそれに対して不満を言うのは止めた

与えられたポジションを全力でこなすことによって、チームに貢献しようと考えた

自分のポジションに対しても、前よりは愛着と自信が持てるようになった

わずかではあるが戦績も上がり、周りの僕に対する見方も少し変わってきた

特に、ポジション間で直接つながりのある、小さいけれど

ガッツのある同期の男子(以下、この日記のすべてに於いて林くんと表記)

と、男子部の部長(以下、この日記のすべてにおいてヒトシと表記)は

僕のがんばりを見ていてくれているようで

「タロー、最近がんばってるな」

とか

「オレとタローは気持ちがつながるように試合に臨もうぜ」

と言ってくれた

僕は、少しづつ部活動に対する情熱と

チームメイトのためにがんばろうとする意欲を取り戻しつつあった

他の同期の男子は相変わらず僕に対しては

何の感慨も持っていなかったようだが

少なくとも、林くんとヒトシにはわかってもらえているという僕の認識が

僕にとっては大嫌いだった試合に対するモチベーションになったし

今度こそは僕がチームを引っ張っていくんだという意志が

ダメダメだった僕を突き動かし、練習に臨ませた


部活動の悩みに関しては、徐々にではあるが解決してきているような気がした

僕の心の持ちよう一つで解決する、こんな単純なことだったのに

どうして今まで打開策を講じれなかったんだろうと内心恥ずかしく思った


さて、部活動に対して次第に自信を取り戻してきた僕は

一端考えることを止めていた、あかちゃんとのことについて考えた

部活の問題を解決して、自分の足で立てるようになったら

僕は、あかちゃんに告白しようと思っていた


本当は、僕はまだ副部長としてやるべきことがあった

部活を第一義に考えるならば、僕はまだあかちゃんに対して

何かをするべきではなかったのかもしれない

しかし、あかちゃんに対する恋心がもうどうしようもないくらい膨らんでいた

短絡的な僕には、状況を精査する能力はなかった



10月も終わりに近づいた、少し肌寒い日

僕はあかちゃんに告白することを決めた


僕は今まで、未知の可能性にかけて他人に

自分の思いを打ち明けたことがなかった

今までは、相手の気持ちがほぼわかっている状態で

「じゃあ、付き合おうか?」という感じで付き合っていた

僕は自分が傷つくことが何より怖い、とても弱い人間だった

だから手に入る可能性の高い、安全な恋愛しかしてこなかった

要するに、自分の事しか考えていなかったのだ


けれど、あかちゃんに対しては違った

僕はどうしようもなく、大好きなあかちゃんを僕の力で幸せにしてあげたかった

こんなに好きな気持ちを、あかちゃんに知ってほしかった

そして、あかちゃんと付き合うことで、僕自身も幸せになりたかった


人生を舞台に例えるならば、僕はその舞台で

あかちゃんをパートナーとして、ふたりでダンスを踊りたかった

あの笑顔をずっと見つめながら、楽しい時間を

終わらないダンスミュージックに合わせて

ずっとずっと、ふたりで踊り続けていたかったのだ


もう少し、理論的な解釈をすれば

あかちゃんの人生に、僕は深く関わりたかった

そして同時に、僕の人生をあかちゃんに干渉して欲しかった

僕の生きている姿を、あかちゃんに見て欲しいと思った

ただただ、僕はそれを願った


「部活が終わったら、今日は一緒に帰らない?」

その日の授業中に、僕はあかちゃんにメールを送った

僕の家は、歩いて5分の近距離に位置するのだが

電車で帰る他の部員に合わせて、僕はよく遠回りをして帰っていた

あかちゃんはバス通学だったが

僕はたまにあかちゃんの帰りにあわせて一緒に帰ることもあった

バス通学はあかちゃんだけなので、道すがらふたりきりになったときに

僕の想いを打ち明けよう、そう考えていた


しかし、あかちゃんの答えは

「ごめんなさい、今日は友達と先に約束をしてしまったんです」

というものだった


その後は、何をしていたのかよく覚えていない

きっと心ここにあらずな状態で部活に参加した後、ボーっと家に帰ったに違いない

家のベッドに寝転びながら、どうしようか考えていた


僕は、昔から懸案事項に対する

結論を出すまでのスピードが人に比べて格段に遅かった

これが、僕自身の最大の弱点だと思っている

今の僕は、だいぶこの弱点は克服したが

それでもまだ遅いな、と感じることが多い

その根底にあるものは、自分への自信のなさだ

自分に自信がないから、結論を出して行動に移す勇気がない

こんなことをしたら嫌われないだろうか

これをすることによって失敗してしまったらどうしよう

そんな弱い感情を、熟慮するふりをすることによってごまかしていた

そうすることで、いつまでも解決法を導けない自分を正当化していた

ただ、一度結論を導けば僕の行動は恐ろしく早かった

散々悩んで考えた分だけ、かなり具体化された結論は

実行に移すにはうってつけであったのだ


今回の件に関しては、僕の結論はもう固まっていた

僕には、今日あかちゃんに告白するという確乎不抜の決意があった

感情にだって、慣性の法則は適用可能だ

外力が加えられない限り、感情は等速直線運動をする

感情の質量が大きければ大きいほど、慣性は強くなる

今日告白するって決めたんだ

できなかったら、きっと明日から作戦を練り直すという

口実の元、僕はまた逃げ出すに決まってる

僕は慣性に任せて、あかちゃんに電話をかけた


「もしもし、先輩どうしたんですか?」

あかちゃんが電話に出た

「…ごめん、ちょっと話したいことがあるんだ」

「どうしたんですかいきなり?別に明日でも直接聞きますよ?」

「いや、今日じゃなきゃダメなんだ」

少しの無言が続いた

僕は、意を決して話を切り出す

「…あのさ、あかちゃんはどう思ってるかわからないけど

僕、ずっとあかちゃんのことが好きだったんだ。

だから、僕と付き合ってもらえませんか?」

今度は、さっきとは比べ物にならないほどの無言が続いた

僕の感じ方の違いによるところが大きいだろうが

あかちゃんが次の一言を発するまでの時間は

僕にとっては永遠に等しい時間だった

もうこのまま、二度とあかちゃんの声を聞くことができないような気持ちになった

だから、あかちゃんがたどたどしく返事を始めたとき

僕はどれだけほっとしたかわからない

「…えっと、私告白ってされるの初めてで、どうすればいいのかわからなくって」

「それに私、タロー先輩のことお兄ちゃんみたいに思ってたから

恋人としてみれるかどうかわかりませんし…」

「…だから、少しだけ考えさせてくれませんか?」

それが、あかちゃんの答えだった

「…そっか、じゃあまってるよ。また明日ね!」

僕は電話を切った



僕は生まれて初めて自分の想いに正直になった

電話で告白なんて、傍から見たら情けないだろうけれど

それでも、僕の中では最大限の努力だった

今までの守ってばかりの恋愛から、少しだけ脱却できた

答えはまだわからないけれど、僕はなんだかほっとした

そして、これから返事をもらうまでの1週間弱、僕は抜け殻のように過ごした


恋の性質を考察することに、果たしてどれほどの価値があるかはわからないが

この恋心は、今までのそれとは明らかにその性質を異にするものであった

これは、意識のカテゴリィに自分しかいなかった子供時代から

初めて他人を意識し始めた、つまり以前に比べて少しばかり

しかし確実に大人になった僕にとっての「初恋」だった、といえよう


初恋に「初」とつくのは、恋というものの全部を最終的に見たときに

それらに序列をつける、ナンバリングをするためである

つまり、二番目、三番目があるから初恋なのだ

解釈としては、そうである

では、この僕にとっての「初恋」はどうして僕の中に

深く深く、残ってしまうのだろうか

二番目、三番目の恋にも、影響を及ぼしてしまうのだろうか

それを問い続けることが、この日記を書く趣旨であり

それによって得られる結論が、僕の最終到達目標である

だから、僕は誰も答えてくれなくても

問いかけが終わったときに、僕の周りに

何も残っていなかったとしても、問い続ける

先述したが、結論が遅い自分には慣れっこだ

だから、僕にとってはそれでいいと思っている

傍から見れば、無意味な問いかけかもしれないけれど

それが僕の優しさになるはずだと信じているから
P R
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忘れられない恋愛を、その初まりから終わりまで、記憶を頼りに振り返ってただひたすらに書き綴る、事実に基づいたフィクションっぽい学園恋愛物語☆…になるといいな。
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