公立学校共済組合運営審議会委員任命処分取消等請求

October 13 [Thu], 2011, 14:25
- 1 -主文

1 原告らの被告文部科学大臣及び被告公立学校共済組合理事長に対する訴えをいずれも却下する。

2 原告らの被告国及び被告公立学校共済組合に対する請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は原告らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告文部科学大臣(以下「被告大臣」という。)が,平成16年12月7日付けで行った別紙運営審議会委員目録記載の公立学校共済組合運営審議会委員の任命を取り消す。

2 被告公立学校共済組合理事長(以下「被告理事長」という。)が,平成16年12月1日付けで行った別紙理事目録記載の公立学校共済組合理事の任命を取り消す。

3 被告国及び被告公立学校共済組合(以下「被告組合」という。)は,原告らそれぞれに対し,連帯して100万円及びこれらに対する平成17年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要被告大臣は,平成16年12月7日付けで,別紙運営審議会委員目録記載のとおり,被告組合の運営審議会委員を任命し,被告理事長は,平成16年12月1日付けで,別紙理事目録記載のとおり,被告組合の理事を任命した(以下,両任命を併せて,「本件任命」という。)。本件は,原告らが,本件任命において,原告全日本教職員組合(以下「原告全教」という。)が候補者として推薦した原告A及び原告Bが運営審議会委員に任命されず,日本教職員組合(以下「日教組」という。)及び全日本教職員連盟(以下「全日教連」という。)に推薦された候補者が運営審議会委員に任命されたこと,原告全教が候補者として推薦した原告Cが理事に認可及び任命

- 2 -されず,日教組に推薦された候補者が理事に認可及び任命されたこと(本件任命)は,いずれも,違法であると主張して,@被告大臣及び被告理事長に対して本件任命の取消しを求めるとともに,A被告国に対し国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条に基づき,被告組合に対し国賠法1条,民法709条又は715条に基づき,連帯して,100万円及びこれらに対する不法行為の日の後である平成17年3月25日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 争いのない事実等(争いがないか,後掲証拠又は弁論の全趣旨によって認められる。)

(1)ア 原告全教は,全国の公立及び私立学校の教職員で構成される教職員団体の連合組織である。

イ 原告Aは,原告全教の中央執行委員であり,原告Cは,原告全教の中央執行副委員長である。また,原告Bは,原告全教に加盟する日本高等学校教職員組合の中央執行副委員長であった(甲55)。

(2)ア 被告組合は,地方公務員等共済組合法(以下「地公共法」という。)に基づいて設立された法人であり,公立学校の職員並びに都道府県教育委員会及びその所管に属する教育機関(公立学校を除く。)の職員等をもって組織されている(地公共法3条1項2号,4条1項,公立学校共済組合定款(以下「定款」という。)1条,21条)。被告組合は,組合員の相互救済による給付事業及び福祉事業を行い,もって組合員及びその遺族の生活の安定と福祉の増進を図るとともに,公務の能率的運営に資することを目的としている(定款2条)。

イ 被告組合には,役員として,1名の被告理事長,9名以内の理事が置かれ,被告理事長は,被告組合を代表して,その業務を執行し,また,理事は,理事長の定めるところにより,理事長を補佐して被告組合の業務を執行する(地公共法12条1項,2項,定款5条1項,2項,6条1項,3

- 3 -項)。また,理事は,被告理事長が,被告大臣の認可を受けて,任命するが,役員の任期は2年であり,補欠の役員の任期は前任者の残任期間である(地公共法13条2項,14条1項,定款7条2項,3項)。

ウ 被告組合には,公立学校共済組合運営審議会(以下「運営審議会」という。)が設置されている(地公共法6条,定款14条1項)。運営審議会は,@定款の変更,A運営規則の作成及び変更,B毎事業年度の事業計画並びに予算及び決算,C重要な財産の処分及び重大な債務の負担について決議しなければならないほか,被告理事長の諮問に応じて被告組合の業務に関する重要事項を調査審議し,又は必要と認める事項について被告理事長に建議することができる(定款14条3項,4項)。運営審議会は委員16人で組織され,運営審議会委員は,組合員で被告組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者のうちから,被告大臣が任命するが,その半数は,組合員を代表する者でなければならない(以下,この組合員を代表する者を「組合員代表委員」という。地公共法7条1項,2項,144条の29第1項,3項,定款14条2項,15条)。運営審議会委員の任期は2年であり,補欠の委員の任期は前任者の残任期間である(定款16条)。

エ 被告組合には,主たる事務所が肩書地にあるほか,従たる事務所(以下「支部」という。)が都道府県教育委員会に設置されている(定款3条1項,2項)。支部には支部運営審議会が設置され,支部運営審議会は,支部の所掌する事務に関する重要事項を審議する(定款20条)。そして,支部運営審議会委員は,10名の委員で組織され,支部運営審議会委員は,当該支部に所属する組合員で組合の業務その他組合員の福祉

- 4 -に関する事項について広い知識を有する者のうちから,支部長が命ずるが,その半数は,組合員を代表する者でなければならない(公立学校共済組合運営規則(以下「規則」という。)60条1項,61条)。

(3) 公立学校の教職員が組織する主な教職員団体として,平成16年10月1日時点では,日教組,原告全教,全日教連のほか,日本高等学校教職員組合

(以下「日高教」という。)及び全国教育管理職員団体協議会(以下「全管教」という。)がある(甲3)。そして,各教職員団体に加盟する被告組合の組合員数は,同日時点で,日教組30万9913人,原告全教7万8791人,全日教連2万3867人であり,日高教1万1998人,全管教3484人であった(甲3)。なお,同日時点の公立学校(大学及び高等専門学校を除く。)の教職員総数は103万7345人である(甲3)。

(4) 原告全教は,平成16年11月5日,被告大臣に対し,運営審議会委員として原告A及び原告Bを推薦し,理事として原告Cを推薦する旨記載された同日付けの推薦書を提出したが,被告大臣は,平成16年12月7日付けで,別紙運営審議会委員目録記載の7名を同委員に任命し(本件任命),原告A及び原告Bを同委員に任命しなかった。また,原告全教は,同年11月8日,被告理事長に対し,理事として原告Cを推薦する旨記載された同日付けの推薦書を提出したが,被告大臣は別紙理事目録記載の1名を理事に認可して,被告理事長は,平成16年12月1日付けで,同人を理事に任命し(本件任命),原告Cを同理事に任命しなかった。(甲5,6,45・2頁)なお,原告全教は,平成3年から,運営審議会委員及び理事の2年間の任期に合わせて,被告大臣に対し,運営審議会委員及び理事の候補者の推薦書を提出しており,平成3年6月7日,平成8年10月,平成10年11月6日,平成12年9月6日に,それぞれ,運営審議会委員2ないし3

- 5 -名及び理事1名の候補者の推薦書を提出し,平成6年11月に運営審議会委員3名の候補者の推薦書を提出した(甲7ないし11,45・2頁,証人D1ないし2頁・18頁)。しかし,平成5年から平成17年までの各年1月1日時点において,組合員代表委員の7名が日教組の出身者であり,1名が全日教連の出身者であった(甲16)。

2 争点

(1) 本件任命の取消しの訴えにかかる訴えの利益の有無

(2) 本件任命の取消しの訴えにかかる原告適格の有無

(3) 本件任命の違法性の存否

(4) 原告らに対する不法行為の成否

3 争点に対する当事者の主張

(1) 争点(1)・本件任命の取消しの訴えにかかる訴えの利益の有無

(被告らの主張)本件任命のうち運営審議会委員7名の任命については,運営審議会委員の任期は2年であり,その終期は平成18年12月6日であったところ,同日を経過したことにより,上記運営審議会委員の任命に基づく法的効果は消滅した。また,本件任命のうち理事1名の任命については,理事の任期は2年であり,その終期は同年11月30日であったところ,同日を経過したことにより,上記理事の任命に基づく法的効果も消滅した。したがって,本件任命の取消しの訴えについては,いずれも,訴えの利益が失われた。

(原告らの主張)争う。

(2) 争点(2)・本件任命の取消しの訴えにかかる原告適格の有無

- 6 -(原告らの主張)

ア 行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項の「法律上の利益を有する者」取消訴訟に期待される現実的救済機能及び行政統制機能を充実させるため,行訴法9条1項の「法律上の利益」は,権利又は法律上保護された利益とはいえない利益であっても,裁判上保護に値する利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあれば足りると解すべきであり,原告が当該行政処分によって直接的に不利益を受けており,その不利益が,一般市民とは区別され得る原告固有のもので,裁判で保護するに値するものであれば,原告適格が認められるべきである。仮に,行訴法9条1項の「法律上の利益」について,いわゆる法律の保護する利益説に依拠したとしても,同条2項の必要的考慮事項を具体的に考慮すべきである。

イ 原告全教の原告適格

(ア) 教職員団体の意向の反映に関する権利又は法的利益被告組合は100万人の組合員の福利厚生事業を行い,その事業規模が巨大であること,地公法41条が,職員の福祉及び利益の保護の根本基準である適切公正原則を規定していることからすると,被告組合の運営は,公正かつ民主的に行われなければならない。また,地公共法7条3項及び定款15条は,組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者の中から運営審議会委員を任命しなければならないこと,運営審議会委員の半数は,組合員を代表する者でなければならないことを規定して,運営審議会の民主的な運営を要請している。そして,被告組合の運営が公正かつ民主的に行われるためには,組合員の多様な意見が運営審議会委員及び理事を通じて被告組合の運営に反

- 7 -映されることが必要であるから,運営審議会の委員及び理事は,各教職員団体が推薦した候補者の中から,各教職員団体の構成人数の比率に応じて任命されるべきである。以上からすれば,運営審議会委員及び理事の候補者を推薦した教職員団体は,運営審議会委員及び理事の任命に際し,その意向を反映させる権利又は法的利益を有しているというべきである。

(イ) 教職員団体の推薦権被告組合の民主的な運営を徹底するためには,一定数の被告組合の組合員を組織している教職員団体による適切な候補者の推薦が必要不可欠であり,また,このような教職員団体こそが適切な候補者を推薦することができる。そして,このような適切な候補者の推薦は,労働者の労働条件の維持改善その他経済的地位及び福祉の向上を実現することを目的とする労働組合の責務でもある。そのため,長年にわたって,教職員団体でもあり,かつ,労働組合でもある原告全教,日教組及び全日教連のみが運営審議会委員及び理事の候補者を推薦してきたのであって,被告大臣及び被告理事長も,原告全教ら教職員団体による推薦が100万人の組合員の中から運営審議会委員及び理事を任命する手続に必要不可欠であるとして,教職員団体に対し推薦を求め,教職員団体推薦の候補者の中から,運営審議会委員及び理事を任命してきたのであって,このような推薦に基づく任命は確固たる慣行として確立している。また,被告組合の支部をはじめ,他の共済組合においても,教職員団体が推薦した候補者の中から運営審議会委員及び理事が任命されており,推薦に基づく任命が確固たる慣行として確立している。以上からすれば,教職員団体による候補者の推薦は,教職員団体の推薦権として,保障されているのであって,この推薦権は,憲法28条,

- 8 -14条,結社の自由及び団結権の保護に関する条約(以下「ILO87号条約」という。),団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(以下「ILO98号条約」という。),第284回ILO理事会で採択された日本政府に対する勧告(以下「ILO理事会284回勧告」という。),国家公務員法(以下「国公法」という。)96条,82条1項3号,地方公務員法(以下「地公法」という。)41条,地公共法7条2項,3項等によっても保障されている。

(ウ) 瑕疵なき裁量権行使を求める手続上の地位及び権利そして,教職員団体は,前記(ア)の教職員団体の意向の反映に関する権利又は法的利益及び前記(イ)の教職員団体の推薦権に基づき,被告大臣及び被告理事長の任命裁量権の行使過程において,教職員団体が推薦した候補者が適切,公平な審査の対象となることを求める一種の手続的地位及び権利,すなわち,瑕疵なき裁量権行使を求める手続上の地位及び権利を有している。以上によれば,本件任命により,原告全教は,上記瑕疵なき裁量権行使を求める手続上の地位及び権利を侵害されるから,法律の保護する利益説によっても,本件任命の取消しの訴えについて,原告適格を有する。

ウ 原告A,原告B及び原告Cの原告適格

(ア) 被告組合は民法上の社団ではないが,民法上の社団に関する法理は,組織運営に関する基本原則として,被告組合に準用されるべきである。そして,民法上の社団の構成員には,固有権として,総会を通じて社団の運営に参画する権利が保障されているところ,総会等が存在しない被告組合においては,被告組合の運営審議会が,被告組合の民主的運営に資する唯一の管理運営機関であって(地公共法8条),被告組合の組合員は,運営審議会の委員に任命されることによってのみ,被告組合の管理運営に直接参画し得る。

- 9 -また,地公法41条は,前記のとおり,適正公正原則を規定して,被告組合の民主的な運営の徹底を要請し,地公共法7条1項,2項及び定款15条も,運営審議会の委員については,主務大臣が組合員の中から同委員を任命するとしており,被告組合の組合員には,運営審議会委員として任命を受け得る権利又は法的利益がある。以上からすれば,被告組合の組合員は,組合員の固有権及び地公法41条,地公共法7条1項,2項,定款15条に基づき,被告組合の運営に参画する権利,運営審議会委員に任命され得る権利又は法的利益,さらには,被告組合における適切公正な運営を担い,受ける権利又は期待権を有している。

(イ) また,被告大臣及び被告理事長は,教職員団体の推薦を受けていない者を,運営審議会委員及び理事に任命していないし,また,任命することはできないから,教職員団体の推薦を受けた者は,運営審議会委員及び理事に任命され得る権利又は法的利益を有している。

(ウ) 地公共法7条3項は,運営審議会委員の任命資格について,「組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者」を規定しているところ,法及び定款は,理事の任命資格について何ら規定していないが,被告組合が,「組合員の相互救済による給付事業及び福祉事業を行い,もって組合員及びその遺族の生活の安定と福祉の増進を図るとともに,公務の能率的運営に資する」(定款2条)ことを目的とする以上,上記運営審議会委員の任命資格は,理事の任命資格にも当てはまるというべきである。そして,一定数の被告組合の組合員を組織している教職員団体こそが,「業務そのほか組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者」を推薦することができるのであり,そのような教職員団体から運営審議会委員及び理事の候補者に推薦された者は,他の候補者と同様に,

- 10 -その資格の有無を適切に審査されて,任命するかどうかの決定がなされるべき権利又は法的利益を有している。

(エ) 以上によれば,本件任命により,原告A,原告B及び原告Cは,上記の権利,法的利益,期待権を侵害されるから,法律の保護する利益説によっても,本件任命の取消しの訴えについて,原告適格を有する。また,本件任命は,原告A,原告B及び原告Cに対する一種の拒否処分であり,原告A,原告B及び原告Cは,これと競合する関係にある他の任命処分の取消しを求める法律上の利益があるというべきであるから,本件任命の取消しの訴えについて,原告適格を有する。

(被告らの主張)

ア 行訴法9条1項の「法律上の利益を有する者」行訴法9条1項の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分等により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうが(法律の保護する利益説),当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の具体的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も法律上保護された利益に当たるというべきである。

イ 原告全教の原告適格地公共法は,地方公共団体の適正かつ効率的な運営を主要な目的とし,この目的を遂行するため,総体としての地方公務員又はその遺族の生活保障を図っているのであって,教職員団体の利益を確保することを予定しておらず,また,明文上,教職員団体自体が被告組合の運営に関与することを予定していない。したがって,原告全教は,運営審議会委員及び理事の任命に関し,法律上保護された利益を有していないから,本件任命の取消しの訴えについて,

- 11 -いずれも,原告適格を有しない。

ウ 原告A,原告B及び原告Cの原告適格地公共法は,@前記イのとおり,地方公共団体の適正かつ効率的な運営を主要な目的とし,この目的を遂行するため,総体としての地方公務員又はその遺族の生活保障を図っていること,A運営審議会,理事長,理事,監事及び審査会という被告組合の機関のいずれについても,組合員による選挙及び教職員団体の推薦等の手続を設けておらず,組合員又はその遺族の意思を直接かつ積極的に反映させるための諸手続を設けていないこと,

B組合員の資格及び給付に関する決定等については,行政不服審査法による審査請求をすることができる旨規定して,簡易迅速な権利利益の保護を図りながら(地公共法117条1項),運営審議会委員及び理事の任命については,何ら不服申立ての規定がないことからすると,地公共法が個々の組合員に対して保護している個別的な利益は,具体的に給付を受けることによる利益であって,地公共法は個々の組合員又はその遺族が被告組合の運営に関与する利益までも保護しているわけではない。したがって,原告A,原告B及び原告Cは,運営審議会委員及び理事の任命について,法律上保護された利益を有しないから,本件任命の取消しの訴えについて,いずれも原告適格を有しない。

エ 原告らの主張に対する反論

(ア) 教職員団体の推薦権がないこと地公共法は,被告組合の運営審議会委員及び理事の各任命について,中央労働委員会の労働者委員の任命におけるような労働組合による推薦制度を設けておらず,教職員団体等推薦の候補者の中から運営審議会委員及び理事を任命しなければならないとする規定はない。被告大臣及び被告理事長は,運営審議会委員及び理事を任命するに当たり,約100万人もの組合員の中から,何らの情報もなしに適切な人

- 12 -材を任命することは困難であるから,運営審議会委員及び理事の任命に関する広範な裁量権行使の一方法として,教職員団体等から運営審議会委員及び理事の適格者に関する情報を入手して,事実上,これらの者の中から同委員を任命しているにすぎない。したがって,原告が主張するような推薦権は存しない。

(イ) 社団法理の準用がないこと被告組合は,地公共法に基づき設立された認可法人であり,被告組合の設立,管理及び運営は,根拠法たる地公共法の規定により行われるのであって,民法上の社団法人に関する民法の規定は直ちに適用又は準用されない。また,社団法人と被告組合とでは,理事,理事長,社員総会,運営審議会の機関の実態及び性格が全く異なるから,被告組合について社団法理を準用することはできない。

(ウ) 地公法41条地公法41条は,職員の福祉及び利益保護について,「適正であり,且つ,公正でなければならない」旨規定するが,その文言が極めて抽象的であること,同条が第8節の総則的規定にすぎないこと及び共済制度の具体的な内容については法律によって定めることとされていること

(地公法43条6項)からすると,地公法41条は,飽くまでも精神規定であって,同条が組合員に対し,特定の権利等を付与設定するものではないというべきである。したがって,地公法41条は原告らが主張する「固有権」とは全く関係がなく,同条に定める福祉及び利益保護の根本基準は,被告組合の組合員が運営審議会委員として被告組合の管理運営に適切公平に参加する地位及び権利を保障するものではない。

(3) 争点(3)・本件任命の違法性の存否

- 13 -(原告らの主張)以下に述べるとおり,被告大臣及び被告理事長による本件任命は,憲法14条1項,28条,ILO87号条約,同98号条約,同理事会284回勧告,国公法96条,82条1項3号,地公法41条,地公共法7条3項,定款15条,公序良俗及び善良なる管理者の注意義務に違反し,裁量権を著しく逸脱する違法な処分である。

ア 憲法14条1項及び28条違反

(ア) 日教組及び全日教連の役職者でもある運営審議会委員及び理事は,日教組及び全日教連において役職者の交代があると,任期途中であっても運営審議会委員及び理事を辞任しているが,これに対し,被告大臣及び被告理事長は,日教組及び全日教連の既得権保護の観点から,長期間にわたって,日教組及び全日教連に対してのみ,辞任予定者の人数分だけ候補者の推薦を求め,新たに役職に就いた日教組及び全日教連の候補者を審査せずにすべて運営審議会委員及び理事に任命し,同人から辞任の申出がない限り,これらの者を再任している。

(イ) 現に,日教組,原告全教及び全日教連の構成人数の比率からすれば,組合員代表委員8名には,日教組推薦の候補者6名,原告全教推薦の候補者2名が任命されなければならず,また,理事についても,少なくとも任期2期について1名は,原告全教推薦の候補者が任命されなければならないが,それにもかかわらず,組合員代表委員8名は,原告全教が候補者を推薦し始めた平成5年1月以降,7期14年間にわたり,日教組7名及び全日教連1名の候補者が任命されており,また,理事2名も日教組の候補者が任命されているのである。

(ウ) 以上からすれば,被告大臣及び被告理事長は,日教組及び全日教連の既得権保護の観点から,日教組及び全日教連の特定の役職に就いている者を審査しないでそのまま運営審議会委員及び理事に任命し,再任して

- 14 -いるのであって,原告全教推薦の候補者は,正当な理由なく,任命の審査の対象にされていない。本件任命の理事の任命についても,被告組合は,被告理事長の理事再任の内諾を得た後に,原告全教の理事候補者の推薦書を回覧しただけであり,原告全教推薦の理事候補者を任命の審査の対象としていない。これは,被告大臣及び被告理事長が,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱っているのであり,憲法14条1項に違反する。また,このような差別的取扱いは,労働組合に対する中立保持義務に違反し,原告全教が共済制度に意見を反映することをできなくするものであって,原告全教の団結の弱体化及び労働者の団結権の弱体化を狙うものであるから,憲法28条にも違反する。

イ ILO87号条約,同98号条約及び同理事会284回勧告違反我が国はILO87号条約及び同98号条約を批准しており,政府及び公的機関は,各教職員団体(労働組合)を差別せずに処遇する国際法上の義務を負担している。以上によれば,本件任命は,前記イのとおり,原告全教に対する差別的な取扱いであるから,ILO87号条約及び同98号条約に違反し,また,両条約に基づくILO理事会284回勧告にも違反している。

ウ 地公法41条,地公共法7条3項及び定款15条違反

(ア) 上記(2)(原告らの主張)イ(ア)のとおり,地公法41条,地公共法7条3項及び定款15条は,被告組合の公正かつ民主的な運営を要請しているところ,被告組合の運営が公正かつ民主的であるためには,教職員の中にある多様な見解が運営審議会委員及び理事を通じて被告組合の運営に反映されることが必要であり,特定の教職員団体推薦の候補者のみから運営審議会委員及び理事が任命されることは許されず,公平公正に,各教職員団体推薦の候補者の中から,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,

- 15 -運営審議会委員及び理事が任命されるべきである。現に,被告組合の支部においては,被告組合の指導により,支部長が,原則として,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,同支部の運営審議会委員を任命しており,また,国家公務員共済組合連合会においても,連合会理事長が,基本的に,各職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員を任命しているところ,地方公務員共済制度は国家公務員共済制度に準じて運営されなければならない(地公法43条4項)。

(イ) また,地公共法7条3項は,被告大臣が,運営審議会委員を任命する場合には,組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者のうちから任命しなければならないと規定しているから,被告大臣は,運営審議会委員の任命に際し,運営審議会委員の候補者が同項の要件を満たすかどうか審査しなければならない。そして,理事の任命についても,地公共法及び定款は任命資格を規定していないが,運営審議会委員の任命資格を規定する地公共法7条3項は,理事の任命にも適用されるべきであるから,被告理事長は,理事の任命に際し,理事の候補者が同項の要件を満たすかどうか審査しなければならない。

(ウ) しかし,被告大臣及び被告理事長は,本件任命に際し,原告A,原告B及び原告Cが地公共法7条3項の要件を満たすかどうか審査せずに,日教組及び全日教連推薦の候補者のみを運営審議会委員及び理事に任命したのであるから,本件任命は地公法41条,地公共法7条3項及び定款15条に反し違法である。

エ 国公法96条1項,82条1項3号及び公序良俗違反被告大臣及び被告理事長が,日教組及び全日教連推薦の候補者のみを運営審議会委員及び理事に任命したことは,不当な差別であって,全体の奉仕ではなく,一部の奉仕であるから,国公法96条1項及び82条1項3号に違

- 16 -反する。なお,被告組合は,国の利害関係のある訴訟についての法務大臣の権限に関する法律(以下「法務大臣権限法」という。)により,地方公共団体と同列に位置づけられており,公共団体の一つとして国賠法が適用されるから,被告理事長についても国公法が準用されるべきである。また,仮に被告理事長に国公法が準用されないとしても,被告組合は法務大臣権限法により地方公共団体と同列に位置づけられているから,被告理事長による理事の任命に関する不当な差別的取扱いは,憲法14条1項,国公法96条1項及び82条1項3号等に基づく公序良俗に違反する。

オ 善管注意義務違反(社団法理の準用)被告組合は民法上の社団ではないが,民法上の社団に関する法理は,組織運営に関する基本原則として,被告組合に準用されるべきである。そして,被告組合の組合員は,被告理事長に対し,被告組合の運営を委任しているところ,被告理事長が,日教組推薦の候補者のみを理事に任命したことは,被告組合の運営を委任した組合員に対する善管注意義務に違反する。

(被告らの主張)

ア 裁量権の逸脱及び濫用がないこと地公共法は,運営審議会委員の任命基準として,「組合員のうちから命ずる」こと,「組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者」であること,及び「委員の半数は,組合員を代表する者」であることを規定するのみであり(地公共法7条2項,3項),また,理事の任命及び認可手続については,地公共法の文言上は何らの制限も設けられていない。そして,地公共法には,運営審議会委員及び理事の任命基準として,原告らが主張するように,教職員団体を代表する者でなければならないとする規定も,また,教職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員及び理

- 17 -事を任命しなけらばならないとする規定もない。これらの規定からは,地公共法は,被告大臣がいかなる者を運営審議会委員に任命し,いかなる者を理事として認可するか,また,被告理事長がいかなる者を理事に任命するかについては,被告大臣及び被告理事長の広範な裁量に委ねているというべきであり,被告大臣及び被告理事長は,被告組合の適正な運営,ひいては地方公共団体の適正な運営のため,この広範な裁量権に基づき,大所高所的見地から,原告全教の候補者を含め諸般の事情を総合的に考慮して,被告組合の運営審議会委員を任命し,理事を認可及び任命しているのであるから,本件任命は適法である。

イ 原告らの主張に対する反論

(ア) ILO87号,98号条約ILO98号条約は公務員に適用されず(6条),同87号条約は,使用者との関係において,労働者が団体を結成する権利及び当該団体の自由な活動を保障したものであり,同87号条約3条2項及び11条は,締約国政府において,労働者の上記の自由権を制約する干渉を禁止する趣旨である。したがって,これらの条約が,被告組合の運営審議会委員及び理事の任命との関係で,教職員団体に何らかの権利を保障したものではない。また,ILO理事会に設置された結社の自由委員会の,平成14年6月の第328次報告は,労働者の信頼回復の観点から,適切な措置をとるよう要望したものにすぎず,被告大臣による運営審議会委員の任命及び被告理事長による理事の任命がILO87号条約に違反するとしたものではない。

(イ) 国公法被告理事長は国公法上の国家公務員ではなく,また,法務大臣権限法は,法務省設置法とあいまって,国の利害に関係のある争訟を法務大臣

- 18 -の下で統一的,一元的に処理する訟務制度の根拠法であって,国家公務員の範囲を拡大するものではない。したがって,被告理事長に国公法は適用されない。

(ウ) 国賠法上の違法性がないこと被告大臣による運営審議会委員の任命,理事の任命に関する認可,及び被告理事長による理事の任命は,総体としての地方公務員及びその遺族の利益を保護し,被告組合及び地方公共団体の運営を適正にするという公益上の見地から行われるものであり,そこで考慮されるべきことは,運営審議会委員又は理事としての職務の遂行に関し,適性と能力を有する者か否かということであって,個々の組合員又は遺族の個別的な利益や教職員団体の利益ではない。そうすると,仮に,組合員個人及び教職員団体が上記任命及び認可により何らかの利益又は不利益を受けることがあるとしても,それは,公益上の見地から行われる任命及び認可によって反射的に生じる利益又は不利益にすぎず,国賠法上保護されている権利利益ではない。したがって,原告らに国賠法上保護された利益がなく,被告大臣及び被告理事長による任命及び認可は,国賠法上違法ではない。また,国公法は「公務の民主的且つ能率的な運営を保障する」という公益を目的とし(同法1条1項),国家公務員が「国民全体の奉仕者」であると規定していることなどからすると(同法82条1項3号,96条1項),国公法は,個々の国民,組合員及び教職員団体の利益を保護するものではないから,個別の国民に対して負担する職務上の法的義務の根拠とはなり得ない。

(4) 争点(4)・原告らに対する不法行為の成否

(原告らの主張)

ア 本件任命は,原告らの社会的信用及び名誉を毀損し,原告らの団結権,

- 19 -また,国公法等に基づく行政権等の平等行使を受ける期待権を違法に侵害した。また,本件任命は,原告全教の瑕疵なき裁量権行使を求める手続上の地位及び権利を違法に侵害し,さらに,原告A,原告B及び原告Cの,@運営審議会委員又は理事に任命され得る権利又は法的利益,A被告組合の適切公正な運営を担い,受ける権利又は期待権,B他の候補者と同様に,その資格の有無を適切に審査されて,任命するかどうかの決定がなされるべき権利又は法的利益を違法に侵害した。原告らは,本件任命により,精神的損害を被ったのであって,これを金銭に評価すると,それぞれ100万円が相当である。

イ 被告国は,国賠法1条に基づき被告大臣が行った不法行為について損害賠償の責めを負うものであり,また,被告組合は,国賠法1条,民法709条又は715条に基づき被告理事長が行った不法行為について損害賠償の責めを負う。そして,被告大臣及び被告理事長は,任命権を適切に行使すること等により,被告組合が適切に運営されることについて,共同の責任を負担しているところ,被告大臣及び被告理事長は,共同して,運営審議会委員及び理事の任命権を濫用したほか,被告大臣は,理事の認可権を濫用し,被告組合に対する監督権を行使せず,また,被告理事長は,被告組合の業務執行権を濫用した。このように,被告大臣及び被告理事長は,共同して不法行為をしたのであるから,共同不法行為が成立し,被告国及び被告組合は連帯して原告らの損害を賠償すべきである。

ウ したがって,被告国及び被告組合は,原告らそれぞれに対し,連帯して慰謝料100万円及びこれらに対する不法行為の日の後である平成17年3月25日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うべき

- 20 -である。

(被告らの主張)争う。

第3 争点に対する判断

1 事実関係後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(1) 運営審議会委員の任命

ア 平成16年12月7日付けの運営審議会委員の任命平成16年12月7日付けの運営審議会委員の任命は,組合員代表委員7名を含む,15名の運営審議会委員の任期満了に伴うものであり,組合員代表委員7名中6名は,同年6月3日付けで任命され,前任の運営審議会委員の残任期間を任期とする者であった(乙7・3頁・4頁・6頁,証人E3頁)。そこで,文部科学省初等中等教育局財務課の生涯生活設計専門官であるE(以下「E専門官」という。)は,運営審議会委員の候補者の原案を作成するに当たり,上記組合員代表委員6名が任命されてから約半年しか経過していなかったこと,他の組合員代表委員1名を含む15名の運営審議会委員の適格性を総合的に考慮して,15名を全員再任することが適当と考え,特に教職員団体から候補者に関する情報の提供を受けることなく,15名全員を再任する旨の候補者原案を作成した(乙7・3頁・6頁,証人E3頁)。なお,上記組合員代表委員6名については,日教組の推薦が,F,G,H,I,Jであり,全日教連の推薦が,Kであった(甲50,証人E19頁)。その後,E専門官は,初等中等教育局内において,上記候補者原案について,財務課長,初等中等教育企画課長,大臣官房審議官(初等中等教育

- 21 -局担当)及び局長の順に,それぞれ説明して了承を得て,初等中等教育局の候補者案を作成した(乙7・4頁)。そして,E専門官は,初等中等教育局の候補者案について,大臣官房の総務課長,総括審議官,官房長,文部科学審議官及び文部科学事務次官の順に,それぞれ説明して了承を得て,文部科学省の候補者案を作成した(乙7・4頁)。なお,E専門官は,上記幹部職員に対する候補者原案及び初等中等教育局の候補者案の説明の際に,平成16年11月5日付けの原告全教の推薦書を提示した上,原告全教から,原告全教の候補者を運営審議会委員に任命して欲しい旨の要請があったことを説明した(甲5,乙7・5ないし6頁,証人E3ないし4頁)。E専門官は,文部科学省の候補者案を作成した後,候補者本人から運営審議会委員就任の承諾を得て,また,候補者の所属教職員団体である日教組及び全日教連から候補者の運営審議会委員就任の同意を得た(乙7・4ないし5頁)。そして,文部科学省において,初等中等教育局長が,被告大臣に対し,運営審議会委員任命発令を上申し,候補者に対し,運営審議会委員に任命する旨の被告大臣名の人事異動通知書を交付して,平成16年12月7日付けで,別紙運営審議会委員目録記載の7名を含む15名の運営審議会委員を任命した(乙7・5頁)。

イ 教職員団体に対する候補者に関する情報の提供依頼被告大臣は,組合員代表委員を新たに任命する必要がある場合,おおむね,教職員団体等から候補者に関する情報の提供を受けることがあったが,組合員代表委員を再任する場合には,教職員団体からその提供を受けないこともあった(乙7・2ないし3頁,証人E2頁)。そして,教職員団体からの候補者に関する情報の提供については,特段

- 22 -決まった様式はなく,単に候補者の名前を書いたメモ,教職員団体の既存の名簿に印をつけたもの等により提供を受けていた(乙7・3頁)。前記アの平成16年6月3日付けの運営審議会委員の任命は,組合員代表委員8名のうち6名が任期途中で同月辞任したことに伴うものであり,新たに6名の組合員代表委員が任命された。この任命の際,文部科学省初等中等教育局財務課の生涯生活設計専門官又は公立学校共済組合係の職員は,被告組合の総務部総務課長であるL(以下「L総務課長」という。)に対し,口頭で,日教組及び全日教連から運営審議会委員の候補者に関する情報の提供を受けるよう依頼し,これに応じてL総務課長又は被告組合の事務局長は,辞任予定の運営審議会委員が所属する日教組及び全日教連から,ファクシミリ又はメモの交付により,候補者の氏名,生年月日,住所,所属教職員団体,役職及び略歴等の情報を入手し,文部科学省にこれを提供した(乙7・3ないし4頁,8・5頁,証人E3頁・7頁・10ないし16頁・19頁,証人L7頁・29ないし32頁,証人M1ないし2頁)。

(2) 理事の認可及び任命

ア 平成16年12月1日付けの理事の認可及び任命平成16年12月1日付けの理事の認可及び任命は,教職員団体に所属する理事2名のうちの1名を含む3名の理事の任期満了に伴うものであった(乙8・2ないし3頁・5頁,証人L2ないし4頁)。L総務課長は,任期が満了する理事から辞任の申出がなかったこと,理事の在任中の業務執行の状況,理事の経験等を総合的に考慮して,理事3名を全員再任することが適当と考え,教職員団体から候補者に関する情報の提供を受けることなく,3名全員を再任する旨の候補者原案を作成し,被告組合の事務局長,人事担当理事及び被告理事長の順に,それぞれ説明して内諾を得た(乙8・2ないし3頁・5頁,証人L2ないし4頁)。

- 23 -なお,L総務課長は,上記被告理事長の内諾の後,認可申請の前に,被告理事長に対し,平成16年11月8日付けの原告全教の推薦書を回覧したが,原告Cの経歴を原告全教に問い合わせることはなかった(甲6,乙8・4ないし5頁,証人L5ないし6頁・20頁)。L総務課長は,上記理事長の内諾後,理事の任期が満了する約1か月前に,口頭で,文部科学省初等中等教育局財務課の生涯生活設計専門官又は公立学校共済組合係の職員に対し,理事を再任する予定であることを伝え,文部科学省の内諾を得るよう依頼した。そこで,文部科学省は,初等中等教育局の財務課長,初等中等教育企画課長,大臣官房審議官(初等中等教育局担当)及び局長,さらに,大臣官房の総務課長,総括審議官,官房長,文部科学審議官及び文部科学事務次官に対し,前記(1)アの運営審議会委員の候補者案の説明と同時に,理事を再任する予定である旨説明して了承を得たが,この認可に係る事前説明において,平成16年11月5日付けの原告全教の推薦書が提出されていることも説明した(乙7・7頁,8・3頁,証人E5ないし6頁・30ないし31頁,証人L4頁・22頁)。そして,文部科学省は,被告組合に対し,内諾した旨連絡し,その後,L総務課長は,候補者本人から理事就任の承諾を得て,また,候補者の所属教職員団体である日教組から候補者の理事就任の同意を得た(乙8・4頁,証人L4ないし5頁)。被告組合は,候補者本人の承諾及び日教組の同意を得るのと並行して,被告大臣に対し,理事の任命の認可を申請し,被告大臣は,被告理事長に対し,理事の任命を認可した(乙7・7頁,8・4頁,証人E5頁,証人L5頁)。そして,被告理事長は,平成16年12月1日付けで,別紙理事目録記載の1名を含む3名の理事を任命した(乙8・4頁,証人L5頁)。

- 24 -イ教職員団体に対する候補者に関する情報の提供依頼被告理事長は,教職員団体に所属する者から理事を任命する場合,教職員団体から候補者に関する情報の提供を受けることがあった(乙8・2頁)。そして,教職員団体からの候補者に関する情報の提供については,特段決まった様式はなく,単に候補者の名前を書いたメモ,教職員団体の既存の名簿に印をつけたもの等により提供を受けていた(乙8・3頁)。なお,前記(1)アと同様,平成16年6月に教職員団体に所属する理事2名のうち1名が任期途中で辞任したことに伴い,被告理事長は同月3日付けで新たに理事1名を任命したが,その際,被告組合の事務局長は,辞任予定の理事が所属する日教組から,候補者の氏名,略歴,役職等の情報を入手した(乙8・3頁,証人L2ないし3頁・6頁・11頁・16頁・18ないし19頁・21ないし22頁,証人M1ないし2頁)。

2 判断以上の事実関係をもとに,争点について判断する。

(1) 争点(1)について平成16年12月7日付けの運営審議会委員の任命については,運営審議会委員の任期は2年であるから,その終期は平成18年12月6日であり,また,平成16年12月1日付けの理事の任命については,理事の任期も2年であるから,その終期は平成18年11月30日である。そして,上記任期の終期の経過により,平成16年12月7日付けの運営審議会委員及び同月1日付けの理事の任命の法的効果はいずれも失われたというべきであるから,被告大臣に対する同月7日付け運営審議会委員の任命の取消しの訴え及び被告理事長に対する同月1日付け理事の任命の取消しの訴えについては,いずれも,訴えの利益が失われたというべきである。よって,本件任命の取消しの訴えは,争点(2)を判断するまでもなく,不適法というほかない。

- 25 -(

2) 争点(3),(4)について前記(1)によれば,本件任命の取消請求との関係で争点(3)を判断する必要はないものの,本件任命の違法性は,争点(4)との関係で,なお,問題となるので,ここで争点(3),(4)につき併せて判断することとする。

ア 運営審議会委員の任命基準について,地公共法及び定款は,組合員であること,組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者であること,運営審議会委員の半数は,組合員を代表する者であることを規定するのみであって,それ以外に法令上任命基準について規定がない。これらの規定からすれば,被告大臣が,被告組合の組合員の中からいかなる者を組合員代表委員に任命するかは,組合員の福祉に関する事項について広い知識を有するかどうか,組合員を代表する者として運営審議会委員の責務を適正に果たし得るかどうかという観点から行われるものであるが,このような観点からの候補者の評価は,その性質上判断要素が多岐にわたる上,一定の基準に基づいて一義的に判断することができるものではないため,地公共法及び定款は,運営審議会委員の任命を被告大臣の健全な裁量的判断に委ねたものと解される。そうすると,運営審議会委員の任命は,被告大臣がいわゆる自由裁量行為として,これを行うものと解すべきである。したがって,被告大臣による運営審議会委員の任命については,当不当の評価はあり得ても,被告大臣がその権限を逸脱して行使し,又はこれを濫用したなどの特別の事情が認められない限り,違法の問題を生ずる余地はないものというべきである。また,理事の認可及び任命については,法令上その基準について何の規定もないから,地公共法及び定款は,被告大臣の認可及び被告理事長の任命も被告大臣及び被告理事長の健全な裁量的判断に委ねたものであり,理

- 26 -事の認可及び任命は,被告大臣及び被告理事長がいわゆる自由裁量行為として,これを行うものと解すべきである。したがって,被告大臣による理事の認可及び被告理事長による理事の任命についても,当不当の評価はあり得ても,被告大臣及び被告理事長がその権限を逸脱して行使し,又はこれを濫用したなどの特別の事情が認められない限り,違法の問題を生ずる余地はないものというべきである。

イ そこで,裁量権の逸脱又は濫用の有無について,検討する。

(ア) 憲法14条1項及び28条違反

a 原告らは,被告大臣及び被告理事長が,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱っているのであるから,憲法14条1項及び28条に違反すると主張するので,以下検討する。

(a) まず,原告らは,被告大臣及び被告理事長は,日教組及び全日教連の既得権保護の観点から,日教組及び全日教連の特定の役職に就いている者を審査しないでそのまま運営審議会委員及び理事に任命し,再任していると主張し,かかる主張に沿う証拠(甲50ないし54,証人M3ないし4頁,証人D4ないし5頁)もある。確かに,証拠(甲50,証人M3ないし4頁)によれば,日教組においては,毎年3月に開催される定期大会において,日教組の役職者が交代し,日教組出身の運営審議会委員及び理事は,当該交代に応じて,任期途中である4月の第2週ころに運営審議会委員及び理事を辞任していることが認められる。また,前記争いのない事実等(4)のとおり,平成5年から平成17年までの各年1月1日時点において,組合員代表委員8名の構成は,うち7名が日教組の出身者であり,その余の1名は全日教連の出身者で占められていた。さらに,証拠(甲15)によれば,被告組合の理事長であったNが,著書において,「公立学校共済組合の運営(54年1月)」との表題の下に,非常勤理事5名

- 27 -のうち2名は,従来の例として,組合員代表として日教組幹部から選ばれていること,組合員代表委員は,教職員組合の幹部から選ばれており,具体的には,日教組7名,日本教職員連盟(以下「日教連」という)1名であることを記述していることが認められ,また,証拠(甲3)によれば,全日教連は,昭和59年2月26日,日教連と日本新教職員組合連合会の統一により結成されたことが認められる。しかし,証拠(甲50,54)によっても,日教組及び全日教連における役職者の交代があった後に,新たに同じ役職に就いた者が必ず運営審議会委員及び理事に任命されているというわけではなく,日教組及び全日教連の特定の役職と運営審議会委員及び理事への任命との関係は直ちに認め難いし,被告大臣及び被告理事長が,現職の運営審議会委員及び理事が所属する教職員団体のみに対し,後任の候補者に関する情報の提供を求めたとしても,そのこと自体は,運営審議会委員及び理事として職務を果たし得る者を選定する手続として直ちに不合理であるとはいえない。そして,前記1(1)イ,(2)イのとおり,被告大臣及び被告理事長は,平成16年6月3日付けの運営審議会委員及び理事の任命の際には,日教組及び全日教連の候補者の氏名,所属教職員団体,役職,生年月日,住所,略歴等の情報を収集しているが,役職及び略歴等は,候補者の経験を知る上での一つの有用な資料であり,候補者が運営審議会委員及び理事の職務を果たし得るかどうか判断するための資料として不合理なものではないから,被告大臣及び被告理事長が日教組及び全日教連の候補者を審査しないで運営審議会委員及び理事に任命したとはいえない。また,長期間にわたって,組合員代表委員のうち7名が日教組の,1名が全日教連の出身者であることが続いたこと自体から,直ちに被告大臣及び被告理事長が日教組及び全日教連の候補者を審査しないで運営審議会委員及び理事に任命し

- 28 -ているともいえない。したがって,被告大臣及び被告理事長が,日教組及び全日教連の既得権保護の観点から,日教組及び全日教連の特定の役職に就いている者を審査しないでそのまま運営審議会委員及び理事に任命し,再任したということはできない。

(b) また,原告らは,原告全教の候補者は,正当な理由なく,任命の審査の対象とされていないと主張する。しかし,前記1(1)アのとおり,平成16年12月7日付けの運営審議会委員の任命の際には,E専門官が,文部科学省の事務次官をはじめとする幹部職員に対し,同年11月5日付けの原告全教の推薦書を提示して,原告全教からその推薦する候補者を運営審議会委員に任命して欲しい旨の要請があったことを説明しているのであるから,原告全教の候補者が,文部科学省初等中等教育局及び文部科学省の候補者案を作成する際に全く考慮の対象とされていないということはできない。また,前記1(2)アのとおり,平成16年12月1日付けの理事の任命の際にも,L総務課長が,被告理事長の内諾の後,認可申請の前に,被告理事長に対し,同年11月8日付けの原告全教の推薦書を回覧し,その上で,被告理事長が理事の任命(再任)をしたのであるから,被告理事長は,同年12月1日付けの理事の任命に際し,原告全教の候補者を全く考慮の対象としなかったということもできない。そして,同日付けの理事の任命の際の認可についても,前記1(2)アのとおり,E専門官が,運営審議会委員の候補者案の説明と同時に,同年11月5日付けの原告全教の推薦書をも一応考慮しつつ,文部科学省の事務次官をはじめとする幹部職員に対し,理事を再任する予定である旨説明して了承を得たのであるから,原告全教の候補者は,認

- 29 -可に係る事前説明の際に全く審査の対象とされなかったとまでいうことはできない。したがって,原告全教の候補者は,正当な理由なく,任命の審査の対象とされていないとはいえないというべきである。

(c) そもそも,地公共法及び定款は,運営審議会委員及び理事の任命及び認可の手続として,中央労働委員会の労働者を代表する者を任命する際の労働組合の推薦のような,教職員団体の推薦について何ら規定していない。したがって,被告大臣が,各教職員団体の候補者をすべて審査した上で,運営審議会委員を任命し,理事を認可することは,組合員の多様な意見を組合の運営に反映するとの観点からは望ましい一つの方法であるとはいえるものの,地公共法及び定款は,各教職員団体の候補者をすべて精査した上で,その候補者の中から最も適任の者を運営審議会委員に任命したり,理事として認可したりすることまでは要求していないというべきであり,被告大臣としては,地公共法及び定款の規定に従って,運営審議会委員及び理事の責務を適正に果たし得る者を任命し,認可することで足りるというべきである。また,被告理事長による理事の任命についても,上記と同様であって,被告理事長としては,理事の責務を適正に果たし得る者を任命することで足りるというべきである。以上のことに加えて,殊に本件では,特段の問題のない委員及び理事について再任する場合であったことからすると,被告大臣及び被告理事長が,原告全教の候補者を十分な審査の対象としなかったとしても,そのことから,直ちに,被告大臣及び被告理事長が正当な理由なく差別的な取扱いをしたということはできない。これに対して,原告らは,教職員団体による推薦が慣行として確立

- 30 -していると主張する。しかし,原告全教が候補者に関する情報を提供したのは平成3年から平成16年までの合計7回であるが(争いのない事実等(4)),他方,日教組及び全日教連がいつから候補者に関する情報を提供していたかは明らかではなく,その間,運営審議会委員及び理事が再任される場合には,教職員団体に候補者に関する情報の提供が求められていないこと(前記1(1)ア,イ,(2)ア),情報提供やその要請の方式も,文書による照会とこれに対する回答といったものではなく,特段の方式も定まっていないものであった(前記1(1)イ,(2)イ)ほか,聴取すべき教職員団体の範囲についても特段の決まりがあるわけではないなどの事情からすると,これらは飽くまでも事実上の措置と解するほかはなく,教職員団体による推薦が慣行として確立しているとするのは困難である。また,原告らは,被告組合の支部をはじめ,他の共済組合においても,教職員団体による推薦が慣行として確立していると主張し,かかる主張に沿う証拠(甲28の1ないし42)もあるが,当該証拠によっても,被告組合の支部をはじめとする他の共済組合において,教職員団体による推薦が慣行として確立しているとまでは認められないし,他の共済組合における慣行から直ちに,被告組合における慣行を認定し得るものでもない。したがって,教職員団体による推薦が慣行として確立していると認めることはできない。

b 以上のとおり,被告大臣及び被告理事長が,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱っているとはいえないから,憲法14条1項及び28条に違反するとはいえない。

(イ) ILO87号条約,同98号条約及び同理事会284回勧告違反

- 31 -a原告らは,本件任命がILO87号条約及び同98号条約に違反すると主張するので,以下検討する。ILO87号条約2条は「労働者及び使用者は,事前の認可を受けることなしに,自ら選択する団体を設立し,及びその団体の規約に従うことのみを条件としてこれに加入する権利をいかなる差別もなしに有する。」と規定し,また,同条約3条は「労働者団体及び使用者団体は,その規約及び規則を作成し,自由にその代表者を選び,その管理及び活動について定め,並びにその計画を策定する権利を有する。」(1項),「公の機関は,この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。」(2項)と規定している。さらに,同条約11条は「この条約の適用を受ける国際労働機関の各加盟国は,労働者及び使用者が団結権を自由に行使することができることを確保するために,必要にしてかつ適当なすべての措置をとることを約束する。」と規定している。また,ILO98号条約1条1項は「労働者は,雇用に関する反組合的な差別待遇に対して充分な保護を受ける。」と規定し,同条約2条1項は「労働者団体及び使用者団体は,その設立,任務遂行又は管理に関して相互が直接に又は代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける。」と規定している。さらに,同条約3条は「前各条に定める団結権の尊重を確保するため,必要がある場合には,国内事情に適する機関を設けなければならない。」と規定し,同条約4条は「労働協約により雇用条件を規制する目的をもって行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し,且つ,促進するため,必要がある場合には,国内事情に適する措置を執らなければならない。」と規定している。そして,ILO87号条約及び同98号条約の上記各条項の文言によ

- 32 -れば,ILO87号条約2条,3条1項及びILO98号条約1条1項,2条1項は,使用者との関係で,労働者が団体を結成するという権利と当該団体の自由な活動を保障したものというべきであり,それゆえ,ILO87号条約3条2項,11条及びILO98号条約3条,4条も,締約国政府において,かかる労働者の上記のような自由権を制約する干渉を禁止する趣旨とみるのが相当である。そうすると,ILO87号条約及び同98号条約が,被告組合の運営審議会委員及び理事の任命との関係で,教職員団体に何らかの権利を保障したものと解することはできないし,また,前記のとおり,被告大臣及び被告理事長による本件任命は,原告全教に対する差別的な取扱いとはいえないから,両条約に違反しているということはできない。

b また,原告らは,本件任命がILO理事会284回勧告に違反すると主張するので検討する。原告らが主張するILO理事会284回勧告とは,ILO理事会に設置された結社の自由委員会における2002年6月の第328次報告をいうものと解される。そして,証拠(甲13)によれば,結社の自由委員会が,ILO理事会に対する第328次報告において,日本政府に対し,すべての代表的労働組合組織に公平で平等な取扱いを供与する必要性に関する結社の自由の原則に基づき,労働委員会及び他の審議会の構成の公平性についてすべての労働者の信頼を回復する観点から,適切な措置を講ずるよう要請すると述べていることが認められる。しかし,この報告は,労働者の信頼回復の観点から,任命基準の設定及び不均衡の是正措置を要望したものにすぎないから,仮に,本件任命が上記第328次報告に沿わないものとしても,そのことから直ちに被告大臣及び被告理事長に裁量権の逸脱濫用があったとはいえないし,ま

- 33 -た,前記のとおり,そもそも,被告大臣及び被告理事長による本件任命は,原告全教に対する差別的な取扱いとまではいえないから,その前提を欠いている。

(ウ) 地公法41条,地公法7条3項及び定款15条違反

a 原告らは,被告大臣及び被告理事長は,各教職員団体推薦の候補者の中から,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員及び理事を任命するべきであると主張する。確かに,地公法41条は,職員の福祉と利益の保護は適正なものでなければならないこと及び公正に実施されなければならないことを規定しているが,同条は,厚生福利制度,公務災害補償,勤務条件に関する措置の要求及び不利益処分に関する不服申立ての諸制度の設定と実施とが適切,公正の原則に基づいて行われなければならないことを明らかにしたものであって,被告組合の運営そのものについて直接規定するものではないから,同条が直接に被告組合が公正かつ民主的に運営されなければならないことを規定するものとはいえない。また,地公共法7条3項及び定款15条は,運営審議会委員の半数は組合員を代表する者でなければならないと規定しているところ,これは,組合員の意見を十分に反映させることにより運営審議会の民主的な運営をも併せ図ろうとしたものであると解される(乙4,証人E8ないし9頁)。しかし,公正かつ民主的であるとは抽象的な概念であって,被告組合が公正かつ民主的に運営されるための方策として,いくつかの方策が考えられるところ,教職員団体に対する運営審議会委員の比例配分は,異なる教職員団体の多様な意見を被告組合の運営に反映することが期待でき,また,各教職員団体の間の公平感も保たれることから,一つの優れた方策であるとはいえるが,他方,各教職員団体は,共済組合の運営に

- 34 -関する意見を中心に形成されているわけではないし,また,教職員団体間の意見の対立が被告組合の運営に持ち込まれるといった弊害も懸念されないわけではない。また,そもそも,運営審議会委員が「組合員を代表する者」とされていること(地公共法7条3項,定款15条)に照らすと,運営審議会委員は,組合員全体を代表して職務を行うことが求められ,特定の教職員団体の利益のために職務を行うことは予定されていないのであって,このことをも考慮すれば,比例配分が絶対不可欠な方策であるとはいえず,その配分をどのようにするかは,なお被告大臣の裁量に委ねられているといわざるを得ない。もっとも,文部科学省においては,候補者に関する情報入手を教職員団体に依存しているとの現状を踏まえれば,被告大臣の裁量権の行使に当たり,複数の教職員団体間の公平感を保つことも考慮することが相当であると考えられるものの,上記のような運営審議会委員の性格等を考慮すれば,仮に上記裁量判断を誤ったとしても,当不当の問題を生ずるにとどまり,直ちに裁量権行使の逸脱,濫用となるものではない。したがって,被告組合の公正かつ民主的な運営が要請されていることから,直ちに,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員及び理事が任命されなければ,当該任命が違法となるということはできない。以上からすれば,被告大臣及び被告理事長は,各教職員団体の候補者の中から,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員及び理事を任命するべきであるとはいえない。なお,原告らは,被告組合の支部及び国家公務員共済組合連合会において,原則として,各職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員が任命されているから,被告組合においても,各教職員団体の構成人数の比率に応じて任命されるべきであると主張し,かかる主張に沿う証拠(甲43,44,45・10ないし11頁,46・1頁,47・2

- 35 -ないし5頁,証人O5頁,証人D17頁,証人P3ないし4頁)もある。しかし,被告組合の支部に関する前記(ア)a(c)の判示に加え,上記証拠及び他の証拠(乙6,9)をも勘案すると,被告組合の支部及び国家公務員共済組合連合会において,各職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員が任命されているとは必ずしも認められないし,また,被告組合の支部等において,各職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員が任命されている場合も多くみられるとしても,それは,各支部の実情に応じて任命が行われた結果であると解され,そのことから直ちに被告組合においても同様にしなければならないものではない。そして,地公法43条4項は,共済制度について,国の制度との間で均衡を失しないように適当な考慮が払われなければならないと規定しているが,その抽象的な規定内容からすると,何が均衡がとれた制度であるかについては法令で規定することが予定されているというべきところ,これを具体化したとみることのできる地公共法は,上記のとおり,各教職員団体の構成人数の比率に応じて,運営審議会委員及び理事が任命されることまでをも要請してはいないというべきである。

b また,原告らは,被告大臣及び被告理事長は,運営審議会委員及び理事を任命する際に,地公共法7条3項の要件を満たすかどうか審査しなければならないが,本件任命において審査していないと主張する。確かに,運営審議会委員の任命については,地公共法7条3項が,組合の業務その他組合員の福祉に関する事項について広い知識を有する者のうちから任命しなければならないと規定しているから,被告大臣は,候補者が同項の要件を満たすかどうか審査しなければならないというべきである。しかし,前記(ア)a(b)のとおり,被告大臣及び被告理事長は,本件任命において,原告全教の候補者も考慮したというべきであるし,また,

- 36 -前記1(1)アのとおり,本件任命において,E専門官は,6名の組合員代表委員が任命されてから約半年しか経過していなかったこと,他の組合員代表委員1名を含む15名の運営審議会委員の適格性を総合的に考慮して,15名全員を再任する旨の候補者原案を作成し,その後,文部科学省の事務次官をはじめとする幹部職員に対して説明して了承を得て,最終的に被告大臣が平成16年12月7日付けで運営審議会委員を任命しているのであるから,被告大臣は,地公共法7条3項の要件を満たすかどうかを含めて,候補者を審査したというべきである。

(エ) 国公法96条1項,82条1項3号及び公序良俗違反被告大臣は,国務大臣であり,特別職の国家公務員であるから(国公法2条3項2号),国公法は適用されないというべきであるし(国公法2条5項),仮に,被告大臣に国公法が準用されるとしても,前記のとおり,被告大臣が,本件任命において,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱ったとはいえないから,被告大臣が一部の国民に対して奉仕したとはいえない。また,被告理事長は,そもそも,国家公務員ではないから(地公共法19条参照),国公法は適用されないし,また,法務大臣権限法は,国の利害に関係のある訴訟の訴訟代理人の選任等に関する訴訟手続に関する法律であって,同法が被告組合と地方公共団体とを同列に位置づけているとは解されず,被告組合に国賠法が適用されるとも解されないから,被告理事長に国公法が準用されるともいえない。そして,前記のとおり,被告理事長は,本件任命において,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱ったとはいえないから,本件任命が公序良俗に違反するともいえない。以上からすれば,本件任命が,国公法96条1項,82条1項3号及び公序良俗に違反したということはできない。

- 37 -(

オ) 善管注意義務違反(社団法理の準用)被告組合は地公共法によって設立された法人であって,役員である被告理事長と被告組合との関係については地公共法の規定によるべきところ,地公共法には,被告理事長と被告組合との関係について,民法の委任及び社団法理に関する条項が準用されるとの規定はないが,被告理事長は法人の機関として法人に対し一定の注意義務を負うと解されるものの,前記のとおり,被告理事長は,本件任命において,原告全教を正当な理由なく差別的に取り扱ったとはいえないから,被告理事長がこのような注意義務に違反したとはいえない。

(カ) 以上のとおりであって,被告国及び被告組合につき,運営審議会委員及び理事の任命及び認可の裁量権の逸脱,濫用があったといえないことが明らかであり,したがって,原告らの主張する各行為は,運営審議会委員及び理事を推薦した教職員団体並びに推薦を受けた個人との関係で国賠法上違法となるものとは到底いえないというべきである。

3 結論以上によれば,原告らの本件訴えのうち,被告大臣及び被告理事長に対する本件命令の取消しの訴えについては,いずれも不適法であるから却下すべきであり,被告国及び被告組合に対する損害賠償請求については,いずれも理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第11部裁判長裁判官 佐 村 浩 之裁判官 篠 原 淳 一裁判官 後 藤 英 時 郎

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