えっちゃんは笑ってた 

January 06 [Sat], 2007, 21:33



 夕ぐれの道をさんにんであるいた

 かわらのたんぽぽが楽しそうにゆれた
 あたしの親友もたのしそうにわらった

 あのこはいつだってにこにこ
 そばであたしだってにこにこ
 あのこのおとうともにこにこ

 あのこはたいようみたいに
 みんなをしあわせにしてくれる

 くもがいっぱいでもだいじょうぶ
 あのこがいてくれればだいじょうぶ

 夕やけのひかりに
 あのこもあたしもあのこのおとうとも
 みんなみんなおれんじ色

 しあわせがつづけばいいなって思ってた
 だけど だけど だけど

 あのこが 大好きなあのこが
 あんなことになるなんて思わなかったんだ

 あたしはいっぱい いっぱいないた

1 

January 06 [Sat], 2007, 21:34

1

えっちゃんには弟がいる。ふたつ下のこうくんだ。
こうくんは他の人とは違う。特別な人生を生きている。
えっちゃんはあたしにそう話してくれた。
たしか、あれは小学校2年生のとき。

「さなえちゃん、えみかね、弟がいるの。」

学校の校門を出たところで、そこを見はからったみたいにえっちゃんはあたしに話しかけた。
かわいくて、優しいえっちゃん。
あたしたちは入学式の日に席がおとなりさんだったからすぐに仲良くなった。いまでは親友だよって胸を張って言える。
そんなえっちゃんに弟がいるなんて知らなかったから、ちょっとだけさびしかった。

「え、そうなの。」

軽くあいづちを打つと、えっちゃんはとても幸せそうにうんとうなずいた。

「ふたつ下なんだけどね、来年この学校に来るから大好きなさなえちゃんには先に言っておこうと思って。」

えっちゃんはやっぱり、あたしの親友だった。
今まで隠していたんじゃなかった。ただ、言うタイミングとかあたしが知っておくひつようがなかっただけなんだって気づいた。

「そっかあ。名前はなんてゆうの。」

「こうすけ。はやかわこうすけってゆうの。」

えっちゃんはにっこりほほえんだ。
ひまわりが似合う笑顔だと思った。
こうすけくん。はやかわ、こうすけくん。
うん、いい名前。ん…あれ。

「はや・・かわくん?」

「うん、こうくんはいまのパパの子供だから。」

えっちゃんは表情を変えない。
かなしい話をしてるんじゃないのかな。
さびしい話をしてるんじゃないのかな。
なのに、えっちゃんはどうしてにこにこ笑っているのかな。

「いまのパパって…。」

「はやかわの方。えみかのまえのパパは、たちばなだよ。」

そう。
さっきあたしはえっちゃんのことばにちょっとひっかかった。
弟なのにみょうじがちがったのがふしぎだったんだ。

1+ 

January 06 [Sat], 2007, 21:36

えっちゃんは、たちばなえみか。こうくんは、はやかわこうすけ。
えっちゃんのいえは、パパが何年か前に死んじゃって、ママは新しいパパとけっこんしたんだ。
かわいくて優しいえっちゃんのパパちがいの弟、こうくんはどんな子なんだろう。
考えてみたらおかしかった。

「さなえちゃん、どうしたの。思い出し笑いかな。」

「ううん、違うの。こうくんのこと、想像してたの。えっちゃんみたいな子がもうひとり、それに男の子としていたらどうだろうって。なんか笑えちゃって。」

ふふふと笑うと、急にえっちゃんは肩を落とした。

「どうしたの。ごめん、あたしへんなこと言ったかなあ。」

えっちゃんはしたを向いたまま。
あたしにはどうすることもできない。
ねえ、泣いてるのかな、えっちゃん。えっちゃん。

「…こうくんはね」やがて、えっちゃんはしずかに話し始めた。しゅんとして寂しそうな表情。えっちゃん、泣かないで。「こうくんは、特別なの。クラスのみんなとはちがうの。」

どういう意味だろう。考えてみた。…分からない。

「どういう、ことなの。」

「こうくん、しょうがいしゃなの。じへいしょうなの。だから、みんなとはちがうの。」

「ジヘイショウ…」

えっちゃんのひとみには、なみだがあふれていた。
それはいまにもこぼれそうで、タオルをぼふってかぶせてあげたくなった。
さっき、えっちゃんはじへいしょうって言った。
ジヘイショウってなに。
あたしには分からなかった。

「うん、じへいしょう。みんなの中にはいっていくのがこわくて、こりつしちゃうんだって。じぶんのきもちとか言えなくて、ひとのことばをくりかえしたりしちゃうの。だから、他の人とちがうんだよ。そんなの、ぜったい辛いのにこうくん、がんばってるの。おねえちゃん、おねえちゃんってえみかのこと、呼ぶんだよ。いっしょうけんめい、生きてるんだよ。」

とうとう、えっちゃんのひとみからぼろぼろとなみだがこぼれた。
えんぶんをふくんだえっちゃんのなみだは、アスファルトにぽたぽた落ちていく。いつのまにか、あたしたちは通学路のとちゅうにある河原に来ていた。

「えっちゃん…泣かないで。」

あたまをなぜたら、えっちゃんはあたしにごめんね、って言った。
ううん、ちがうの。あやまってほしかったんじゃないの。
いつもみたいに、にこって笑ってほしかったの。
あたしはそのとき、えっちゃんは本当にこうくんのことを大切に想ってるんだなって気づいた。
やっぱりえっちゃんは、かわいくて優しいえっちゃんで、弟思いのえっちゃんなんだ。
それからは、ふたりともちょっとだけだまりこんで、そして笑った。
ゆうやけの色がえっちゃんのほっぺに映って、えっちゃんがえへへと照れた。

2 

January 06 [Sat], 2007, 21:38



小学6年生になったいま、えっちゃんはまた大きな悩みをかかえていた。
小学生になったこうくんは、えっちゃんに守られて学校生活を送ってきた。
いやなことをいわれたり、つきとばされたり。いっぱい、いっぱい傷ついてきた。
だけど、そんなとき、いつだって必ずえっちゃんは助けに行っていた。
えっちゃんは、けんかなんかしない。話せば分かるよってにこりとほほえんでおわらせるんだ。えっちゃんは、ようせいさんみたい。
それから、さんにんでよく遊ぶようになった。はじめはやっぱり、ショウガイシャと遊ぶのにはていこうがあった。
だけど、遊んでいくうちに、だんだんこうくんがかわいく思えてしょうがなくなった。笑い方なんかえっちゃんとそっくりで、すごくかわいい。
ただ、他の人よりちょっと脳のはたらきがおそくて、日本語をまちがえちゃったりして、感情をおさえきれないだけ。他の人とのちがいなんて、それだけ。
あたしはこうくんといっぱいお話した。いっぱい遊んで、いっぱい走り回った。
ショウガイシャ、として接していたころとはちがう。
あたしはこうくんをひとりのにんげん、内側のにんげんとして受け入れた。えっちゃんは、泣きながら仲良くしてくれてありがとう、と言った。
こうくんというともだちが出来て、うきうきの9月半ば。
季節は秋へと移り変わる。ちょっとだけ肌寒い空気に、あたしとえっちゃんとこうくんはほっぺを真っ赤に染めながら学校へと向かった。

2+ 

January 06 [Sat], 2007, 21:39

さんにんでの楽しい登校。こうくんにとっては、からかわれたりしなくて、足を引っかけられたりしない、しあわせなひととき。お姉ちゃんとその友達が助けてくれるから、ほっと安心できるひととき。
だけど、来年になったら…。
来年になったらあたしたちはもうこの小学校にはいない。
もうこうくんと同じ場所にはいない。
それに、えっちゃんも、あたしも、私立のとおい中学校を受験するからりょうに入ることになっている。もう、めったにこうくんに会うこともなくなる。
それは、もうこうくんを守ることが出来ないということの意味をあらわしていた。
だけど、私立の受験をあきらめることなんて出来ない。
だって、これからのこうくんの生活を支えるためには、自分がお金を使っちゃいけないから、とえっちゃんは笑って言った。

「お・・ねえちゃん、だいじょうぶう、だいじょうぶう。」

こうくんは、泣き出しそうなえっちゃんの顔を見上げてにかっと笑った。

「ごめんね、こうくん。」

「ごめんね。ごめんね。」

卒業まであと半年。
あたしたちが一緒にいられるのは、あと何日だろう。
考えると、悲しくなった。寂しくなった。
だけど、なみだはまだでなかった。

3 

January 06 [Sat], 2007, 21:41



受験勉強はたいへん。
みんなはしないのに、あたしたちだけがんばってるんだもん。
自分でえらんだ道だけど、ちょっとだけゆううつ。
そんなとき、はげましてくれるのはやっぱり、えっちゃんとこうくん、それから桃山堂のチョコレートパフェ。
今日も学校の帰り道、えっちゃんは桃山堂によっていこうと言った。
あたしはその言葉を待ってたんだ。
えっちゃんのさそいにあたしは大いに賛成して、そして感謝した。

「うはー。おいしいよー。」

ついつい幸せな顔になる桃山堂のパフェ。
ここは、あたしたちが2年生のときから通っている行きつけの店だった。
店のおばちゃんもすごく優しくて大好き。
えっちゃんも、こうくんも、おいしそうにパフェをほお張る。
桃山堂の中には幸せがいっぱいだ、そう思った。
笑顔がいっぱい咲いていて、まほうみたいだ、とも思った。

「おいしいねえ。」

「ん゛―、おいしいねえ。おいしいねえ。」

ふたりはとてもきらきらしていた。
しあわせそうに、うれしそうに、いつまでもいっしょにいられるんだとさっかくさせられるみたいに、ふたりはにこにことほほえんでいた。
あたしは、そんなふたりがうらやましかった。
ふたりのあいだにもっともっと好きを深めながらはいっていけたら、桃山堂のパフェが溶けるのもかまわないとさえ、思った。
ふたりはあたしのたからもので、たいせつな親友だった。
ふわりとしたふんいきの中で、あたしはなんだか、せかいじゅうにひとりぼっちの気分にひたっていた。
さびしくて、なきそうになってしまう気分。
きっと、卒業したら、今よりもっとさびしいと思うようになる。
今よりもっと、楽しいことも、嬉しいこともふえる分だけ、辛いことも、かなしいこともふえるだろう。
だけど、あたしたちは生きている。このせかいに生きている。
だから、むりせずにいっぽいっぽ前にすすんでいけたらいい。ひとりぼっちになったら、まわりを見回して、たすけてって言えばいい。
きっと、だれかが立ち止まってくれる。手をさしのべてくれる。
あたしはそれをまっている。そんなともだちをもっている。
卒業まで、あと3ヶ月。
年明けということもあって、街中は、あたしの心とうらはらにがやがやとにぎわっていた。

4 

January 13 [Sat], 2007, 20:47

4

目がさめると、あたしはぶるぶるとからだをふるわせた。
ふとんをがばっとかぶり、もぐりこむ。
1月の朝はやっぱりさむい。

「さなえ、早く起きなさい。朝ご飯出来たわよ。」

ママが二階のあたしに声をかけた。

「今行くー。」

あたしは目をこすりながら一階に下りた。
ママがテーブルに朝ごはんを並べている。
パパはテレビを見ている。もう朝ごはんを食べおわったみたい。

「お兄ちゃんは。」

「さなえが寝てる間に行ったよ。今日は生徒会があるんだって。」

「ふうん。」

5つ上のお兄ちゃんは、生徒会というものに入っている。
たまに帰りがおそくなるのもそのせいらしい。
ともだちに言ったらかのじょと遊んでるんだよ、って言われたけど。

「ごちそうさま。」

空っぽの食器を片付けて、服をきがえた。
顔を洗ったらちょっとだけ目がさめて、はみがきをしたらもっとすっきりした。
ランドセルは、今日も真っ赤な表情であたしを見つめてた。
1年生のときには、このランドセルも毎朝ぴかぴか光っていた。
朝日に当てるときらきら光って、それがあたしのお気に入りだった。
そういえば、となりのせきの男子にランドセルを傷つけられたときは泣きそうになったっけ。
このランドセルは小学生になるころにママとパパが買ってくれた大切なものだった。
たしか、たんじょうびプレゼントだったと思う。

「いってきます。」

思い出した。もうすぐ、1月5日はあたしのたんじょうびだ。
みんなにお祝いしてもらえるのが、あたしの楽しみ。
たくさん届くお手紙も、いっぱいの笑顔も、温かくてすごく好き。
自分が生まれてきたことをよろこんでもらえるのが、すごくうれしい。

「おはよう。」

うしろから声をかけられた。

4+ 

January 13 [Sat], 2007, 20:52

振り返ったらえっちゃんとこうくんがいた。

「おはよう。おはよう。」

ふたりにそれぞれあいさつをする。

「おはようございます。」

こうくんが笑った。

「さなえちゃん、おたんじょうびプレゼント、なにがいい。」

「え、くれるの。」

「もちろん。さなえちゃんは、えみかの大切なおともだちだもん。」

なみだが出るかと思った。
えっちゃん、好き。

「こうくん、さなえちゃんね、もうすぐおたんじょうびなんだよ。」

「さなえちゃん。おたんじょうび。」

えっちゃんのことばをこうくんがくり返す。
しあわせなこうけいだと思った。
目の前がちょっとずつぼやけていった。

「あたし、えっちゃんにもらえるならなんでもいい。」

「だめ。それがいちばん困るんだから。」

えっちゃんはほっぺをふくらませて言った。
だって、本当なんだもん。
えっちゃんがくれるなら、なんだってよろこぶよ。
えっちゃんが笑うなら、なにもくれなくていいよ。

「それじゃあね、えっちゃんが作るミサンガがいいな。」

ミサンガは、切れたらねがいが叶うっていうかざりもの。
えっちゃんはそれを作るのが上手なんだ。

「それだけでいいの。」

「うん、いいの。」

「じゃあ、こんど作ってくるね。」

あたしはうん、と言って笑った。
えっちゃんもにこりと笑った。
このときは、こんなふうに、ずっとずっと笑い合っていけると思ってた。
ずっとずっと、いっしょにいれると思ってた。
なみだは本当にしょっぱいんだなって、このあと、あたしはじっかんすることになる。

5 

January 13 [Sat], 2007, 20:55

5

習いごとの習字から帰ると、ほどよいタイミングで電話がなった。
ワンコール、ツーコール。

「はい、もしもし。はるのですけど。」

家にはだれもいなかったから、しかたなくあたしがでることにした。
すると、電話口からは聞きなれないめずらしい声がした。

「もしもし、さなえちゃんね。」

それはえっちゃんのママの声だった。
おばさんとあたしのママは仲がいいけれど、あたしはおばさんとあまり話したことがない。
今日のおばさんは、ひどくどうようしているみたいだった。

「お、落ちついて・・聞いてね。」

「どうしたんですか。」

「え、えみかが、えみかが事故に合ったのよ。」

電話をとり落としそうになった。
えっちゃんが事故だなんて。
しんぞうが、ばくばくと音を立てているのが分かった。

「今からそっちにいきます。どこにいますか。」

「朝日北総合病院よ。さなえちゃん、お母さんは。」

「まだ帰ってきていません。」

「じゃあ、少し待ってて、おばさんが迎えに行くわ。」

「え。でも。」

「ひとりで来ちゃ駄目。何かあったら・・・どうするの。さなえちゃんまで事故にあったりしたら・・・。だからお願いだから待っていて頂戴。」

少しだけ考えて、あたしは、はい、と言って電話を切った。
すぐにすみのついた服からきがえる。
えっちゃん、えっちゃん。
どうか、ぶじでいて。

5+ 

January 13 [Sat], 2007, 20:58

家を出て、かぎをかけると、しんぞうのどきどきをおさえながらおばさんが来るのを待った。
家のことは大丈夫。ちゃんとかきおきも残したし、かぎだってしめた。
今はえっちゃんのことが心配だ。
まもなく、車のとまる音がして、窓からおばさんがかおを出した。

「さなえちゃん。」

「こ、こんばんは。」

あたしは、どうようをかくしながら、おばさんにあいさつをした。

「とりあえず、乗って。」

はい、と言ってじょしゅせきにすわる。
むかむかする。はきそう。

「どうしたの。だいじょうぶ。」

そう聞かれても、応えられなかった。
あたしはいっかい車をおりて、家のかぎをあけた。
トイレにかけこむ。

「うええ。」

口を洗ってもどってくると、おばさんが心配そうにかおをのぞきこんだ。

「あ、だいじょうぶです。」

そういうと、おばさんはほっとしたようだった。
あたまがぐるぐるする。
あたしがさっきはいちゃったのは、たぶん、しんぱいしてたのが一気にあふれでたからだと思う。
えっちゃんのなみだがきらいだからだと思う。
今ごろえっちゃんはどんなかおしてみんなを待ってるんだろう。
何を想っていたみをこらえているんだろう。

「それじゃあ、行こうか。」

「はい。」
ぷろふ
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  • アイコン画像 ニックネーム:ちぴろ
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:1991年10月22日
  • アイコン画像 職業:小中高生
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実わ小説書くの好きなンです←なに
読むのももちろン好きだけれどもww
書くのめちャ楽しくて!
みンなみたいに上手に書けないけど頑張る(・ω・`)
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