そういった

October 23 [Tue], 2012, 21:29
からう。神と云ふものは無い。セルギウスは横になつて頬杖を衝いてゐた。その時突然非常に眠たくなつた。もう頭を上げてはゐられない。そこで肱を曲げてそれを枕にしてすぐに寐入つた。
 此眠は只一刹那で覚めた。そしてセルギウスの心頭には、半ばは夢のやうに、昔の記念が浮んで来た。
 セルギウスはまだ子供半分の時に、田舎で、母の許にゐた。母衣
ほろ
を掛けて半分隠した馬車が家の前に来て留まつた。マイIP馬車の中からはニコライ・セルギエヰツチユをぢさんが出た。恐ろしい黒い鎌鬚の生えた人である。そのをぢさんが痩せた、小さい娘を連れてゐる。名はパシエンカと云つて、大きい優しい目の、はにかんだ顔をしてゐる。パシエンカは我々男の子の仲間に連れて来られたので、我々はその子と一しよに遊ばなくてはならなかつた。その遊がひどく退屈だ。娘が余り馬鹿だからである。とう/\しまひには男の子が皆娘を馬鹿にして、娘に泳げるか泳いで見せろと云つた。娘はこんなに泳げると云つて、土の上に腹
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