拾い物 

2008年02月25日(月) 0時30分
本日も砂漠は快晴、リーヴィ一行は船で行く。
太陽が真上に昇りきった頃、見張り台にいたレックスが大声で皆を呼んだ。
「進行方向に、遭難者発見。ひき逃げする?」
「なんでだよ、止まってやれよ。もしくはせめて避けて通り過ぎろ」
甲板から見上げたアレンが、呆れた声を上げる。レックスは、こういう事を冗談ではなく本気で言うのだから、思考回路がどういう回転をしているのか分からない。
「面倒だなぁ」
アレンのどちらの言葉に対する返答なのかは分りかねたが、レックスは双眼鏡を外して舵を握るスタンに人影の方角を伝えた。
「リーヴィ、止まるか?」
「うん、いいんじゃない?」
一応船長と言う事になっているリーヴィは、考える間もなく返答してくる。また何も考えてないなとスタンは小さく嘆息したが、止まってみて盗賊の一味だとかそういう様子があればそのまま走り去れば良い事だと舵を切った。

「本当に助かりました!何とお礼を言ったら良いのか、もう!!」
拾い上げた男は、自称盗賊の被害者であった。日除けのストールで頭を覆い、出来る限り肌の露出を抑えた砂漠を旅する一般的な格好。荷物は男の言い分を信じるのならば盗賊に奪われたらしく、出納一つ持たなかった男は、喉を枯らして助けを求めていたのだった。
「食糧くらいは何とか我慢できるんですが、水は駄目ですね、耐えられません。それにしても、通りかかってくれた船が、水屋だなんて、俺はなんてついているんだろう!!」
砂に塗れた顔を拭うこともせず、口の周りにはやした髭を濡らしながら男は差し出された水の椀を空にする。身なりが汚れているので判別は難しいが、そう年を取っている様子でもない。子rの様子からすれば四十代頃か。
「盗賊に襲われた貴方がついてるのかどうかは知らないけど、それで、お代は何で払ってくれるのかしら?」
男に差し出されるままに水瓶からお代わりを注いでいたヴァルのその言葉に、椀を受け取った男の頬が僅かに引きつった。
「え?」
「貴方がわかっている通り、私たちは水屋よ。水を売るのが商売なの。だったら当然、代金と引き換えなのは分るでしょう?まさか、善意だとは思わないわよね?世の中は厳しいのよ、砂漠の生命線である水までを盗賊に奪われてしまうくらいに」
無表情で空手を差し出すヴァルに、男は視線を泳がせる。誰か助け舟を出してくれはしないかと期待した眼差しに、応える人間は誰もいない。
男はその場の一人一人の顔に視線を泳がせて、諦めて肩を落として俯いた。
「・・・そうですね、助けていただいただけでもありがたいのに、その上無償だなんて虫のいい話ですよね・・。ですが、見ての通り俺は今無一文です。何一つ持っていない」
証明するように両手を広げた男に、ヴァルは失望の溜め息を吐く。アレンはその横で男を上から下まで値踏みして、その場で軽く飛んでみろと言った。
「小銭の音くれぇ、するんじゃねぇの?」
路地裏のチンピラ如き台詞を吐くアレンに、男は律義にも飛んで見せた。が、ただ布が擦れる音と床が軋む男がするだけで、何かの金属音などは一切しない。
「これは本当に無一文なんだね、弱ったねぇ。無駄骨って嫌いなんだよねぇ。あ、そーだ、このまま町まで連れて行って、腎臓の一つでも・・・」
「レックス」
彼が言い終える前に、咄嗟にリーヴィの耳を塞いだスタンが諌める声を上げる。

序章1 

2008年02月18日(月) 20時08分
『序

私は、自分の世界から零れ落ちてしまったらしい。自分の生まれた世界が表と裏になっている事は学んでいたのだが、まさか実際にこうして零れ落ちることがあるとは思わなかった。
ここは、砂の世界である。世界の中心に高く鋭い山がそびえ、その頂上からは水ではなく砂が湧き出ている。そして私の世界で川が海に水を注ぐように、砂は砂漠へ広がっていく。
いくつかの国が存在し、幾ばくかの民族が暮らし、言葉はほぼ私たちと変わりなく、分らない単語や耳慣れない言葉が時折混じるにしろ、会話にそう不便は感じない。
人々は、海を渡るのと同じ様子で船で砂漠を渡る。つまり、私のいた世界の海が、そのまま砂漠へ姿を変えているのだと言えば、想像しやすかろうと思う。
では水はどこから来るのかといえば、花からである。
ここには、「水花」と呼ばれる根や茎や葉に多量の水を含む花が存在しているのだ。
勿論、ここは私の世界と繋がっているのだから水が湧き出ている場が無いわけではないが、どうやらそのままその水を飲むのはここの人々の身体に適さないようで、水花はその自然の水を吸い上げて根の部分で人々の口に合う水に変化させることができる花らしい。
だから当然、その水花は各国が国を挙げて栽培している。しかし厄介なことに、その花は何故だか過酷な環境下での方がよく育つらしい。
そこで国々は、花を栽培する「花屋」を手厚く保護し、そして荒れた地から水や水花そのものを運ぶ「水屋」を優遇している。
私の世界で「土」を希少な物として扱うのと同じ様に、ここでは水が希少なものだ。「土割り」と同じくらい花屋と水屋が重要な存在であるのだと置き換えれば、これも想像に難くないだろう。

この世界に落ちた私を拾ってくれたのも、「水屋」であった。
彼らは所謂国の認可を受けていない水屋で、ゆえにどの国にも自由に出入りし自由に水花で商売を行なっていた。
水屋は危険な土地へ行く商売だから、ある程度の腕は必要とされ、認可を受けていないので利益もそう多くは無く、副業として用心棒やら傭兵のようなこともやっていた。中には盗賊と殆ど変わらない水屋もいるとの事だったが、私を拾ってくれた水屋はその様な事は無かった。
彼らに拾われ、彼らと共に過ごした日々を私はここに記していこうと思う。
それはとても慌しく、騒々しく、荒々しい日々だった。彼らは何者にも捕らわれず、頭を垂れず、自由奔放に水と刺激を求め砂漠を走り回っていたー』

「ネアゼイ、何書いてるのさ」
背後から伸びた影に、ネアゼイは顔を上げた。リーヴィがこちらの手元を覗き込んでいる。
「こちらに来てからの事を、書き記していこうと思って。私はあちらではちょっと名の知れた冒険家なんだ」
少年は、ふぅんと気の無い返事をして、ネアゼイの隣へ腰を下ろす。天気は薄曇り、風はほぼ無し。甲板でのんびりと腰をすえて何かをするにはもってこいの日だ。快晴や爽やかな風を喜べないのは、砂漠では気温が容赦なくあがるから、風が砂嵐を巻き起こすから。
「俺のことも書くの?」
細い手足に浅黒い肌をした、白金の髪を持つ少年は、抱えた膝の上に丸い頬を乗せて見上げてくる。
「勿論、この船の人たちを中心に書くんだ」
「でもネアゼイは、俺たちのこと何も知らないよ?」
「そうだね、まだ名前くらいだ。だから、これからきっと知る事が増えたら、その度に書いていくんだ」
ネアゼイがこの船に拾われてからまだ三日、彼がこの船の人々について知っていることといえば、名前と大体の役割だけ。
「それって、俺にも見せてくれるの?」
「あぁ、読みたいのならいくらでも」
リーヴィはその言葉に嬉しそうに八重歯を見せて笑った後で、あ、やっぱりダメだと呟いた。眉尻が下がってしまったその表情に、どうしてと尋ねると、少年は字が読めないと答えた。
「何だそんなこと。大丈夫だよ、言葉もそうだけど、こちらとあちらでは使っている文字もどうやら似ている、私はこの船の積荷の文字が読めたよ。だから遠慮しないで」
しかしネアゼイの言葉に、リーヴィは尚も首を振る。

LT人物 

2008年02月18日(月) 18時47分
リーヴィ(10〜12):誰にも知られていなかった花屋に育てられた孤児の少年。花の世話が異様に上手く、花屋が死んだ後で水屋と同行することに。これまで花屋以外の人間を見た事が無く、世間知らず。

スタン(24〜28):水屋の地図担当。貴重な地図を持つ、元クィア国の貴族の青年。冷静に見えて激情家。懐に入れた者への愛情は深い。主にリーヴィの教育係。

レックス(24〜28):スタンの幼馴染で、執事の息子だが現在スタンへの態度は対等。ナルシスト気味で快楽主義者。割と薄情だけど信用してもらえていると確信すれば、まあまぁ心を開く。

アレン(19〜25):武器商人修行の旅の途中の青年。船大工も兼任。単純直情型大型犬。リーヴィの良い遊び相手、大人気ない。深くものごとを考えないので、良くも悪くも素直。

ヴァル(19〜25):アレンの双子の妹、武器改造大好き。冷静無表情型猫科肉食獣。感情の起伏が乏しく、誤解されがち。アレン変わりに騒いでくれるからいっかぁと考えがち。

黒い男1(32〜37):放浪民族の一部族族長。スタンの養父。スタンに地図を渡したり情報をくれたり、船には乗っていないが味方の一人。髭面の熊男。
黒い男2(35〜40):1の右腕的存在。時折1の為に斥候に出たり裏工作したり船に乗ったり。極めて人相は悪いが温和で優しい。

異邦人(20〜40):RGから落ちてきた冒険家の男。どこかからRGへ繋がっている個所を見つけるまで水屋と同行。

プライド 

2006年08月01日(火) 11時29分
「料理も嫌いじゃないし、掃除も好きだよー」
酒の席で軽く言ったあたしに、あんたはこれまた軽く返してきた。
「へー、じゃあ今度俺の部屋来て世話してよ」
単なる友達、色気のある関係じゃないけれど、二人きりで飲んでる時にそんなことを言われれば、多少なりともドキリとするじゃない?
それをあんたは、続けた言葉で見事に打ち砕いてくださった。
「母親みたいだよね、何か。そ−ゆーのって」
あんたより年上とはいえ、一歳しか違わない女を冗談の上でも部屋に誘っておいて、そういう感覚なわけか?
あーあーもう、なんていうか自信なくすわ。
そりゃあんたの彼女はぴっちぴちの十代で?なんていうかあたしから見ても、可愛いなーっ、守ってあげたいナーって思うのは分るけど。
そんな彼女持ってるあんたからしてみれば、あたしなんか全くお呼びじゃないんでしょうけども?
あたしだって、あんたに恋愛感情は持ってないけどさ。
でも、それとこれとは別問題。
恋愛感情を抱いてない相手にも、女扱いされなきゃ腹は立つ。
よっぽど誘惑してやろうかと思ったっての。
でもま、あんたがあたしより酒が弱くちゃ、送り狼にだってさせられないけどねー。あたしより先につぶれる男なんて、可愛いッたらないんだ。

金太郎、来襲第一回。 

2006年07月13日(木) 23時20分
「佐賀原、穂積、問4と5」
 数学の教師に当てられて、俺とアオは間延びした返事をして立ち上がった。時刻は午前最後の授業後半、皆購買のパンが売り切れる前に飛び出したくて、既に筆箱にシャーペンをしまって臨戦態勢の奴までいる。
 俺もアオも弁当組みなのでそこまで焦る必要は無くて、それぞれノートを片手に黒板にチョークを滑らせていく。
 その時だ。
「青銅ーー!!!勝負!!」
 温くとも入ってこないよりはマシな風を求めて開け放っていた窓の外に、いきなり男が姿を現した。
 ちなみに俺らの教室は、三階だ。
 ったく、やっぱり来やがったか、金太郎!!人間ってのは、お前の脳みそみたくふわふわ軽く宙に浮いたりできねえんだよ!ついでに言うなら、青銅の名前も、禁句だ!
「コウ!!」
 隣にいたアオが、咄嗟に黒板の下にかけられていた一メートル定規を窓に近い方に立っていた俺に手渡す。
「おう!」
 俺はそれを受け取ると、迷う事無くそれを金太郎に向けて突き出した。
「危なーい!!!」

航の混乱 

2006年07月12日(水) 22時50分
*下の「卓巳の転機」を読んでから、お読みください。


 結婚?結婚と言ったか、この男。数週間ぶりに顔だけ見ようと、何の心構えも無しに顔を出した弟に対していきなりそんな爆弾を投げつけやがったのか、この男は!?
「何でいきなりそんな展開になってんだよ!」
 そりゃ、銀奈さんが頻繁にここに通ってるのは知ってるよ。そのおかげで、俺はここに掃除に来る回数が減ったんだから。でもだからって、少しは打ち解けたのかなとか付き合い始めたのかなとかは思ってたけど、まさか泊まることがあるくらいの仲だなんて・・ていうか、大人同士なんだから万が一にもそんなことがあったとして不潔だなんて言うほど俺だってガキじゃねぇけど、だからって、だからって。
「いきなり孕ませてんじゃねぇよ、この下手くそ!!」
 どうせこの男のことだ、24やそこらで真面目に結婚を前提にした付き合いなんて頭にあったわけがないんだ!ああもう、別に俺は銀奈さんは嫌いじゃないけど親父やお袋には何て言うんだよ、嫁は妖怪ですなんて言えないぞ!?
「お前、兄貴に向かってそれはねぇんじゃないの?まるで人が失敗したかのように言わないでくれない?」
「え?だって兄貴、銀奈さんとそんなこと考えて付き合ってたわけじゃないんだろ・・?」
 もしかして、兄貴なりに真面目に付き合ってたのかな・・・。なんて俺が少し見直そうとしてたところに!
「うん、別に考えてはなかった」
 あーそうだよな!このスカタン!!
「だってそもそも、寝たのだって一回きりだぜ?」
 寝たってあんた、実の弟にいきなり生々しい話聞かせんなよ。
 とはいえ、俺もお年頃。兄貴の話には興味もある。いや、これは唯一事情を完全に知る身内として、たった一人の兄の身に何があったのか知らなきゃいけないと思うからさ。
「じゃあ何でいきなり、結婚なんだよ。兄貴、銀奈さんのこと怖がってたじゃん」
 俺が初めて銀奈さんに会った時の兄貴の怯えよう、俺は忘れてないぞ。
「その辺はまぁ、ここにあいつが出入りするようになって大分慣れたけどな。でまぁ、頻繁に顔会わせてりゃあイイトコも見えてくんだろ」
 そりゃあま、そうだろうけどね。

卓巳の転機 

2006年07月12日(水) 22時18分
 銀奈に出会って約一年半、会社を辞めて一年位。俺の人生には一つ転機が訪れたようだ。
「あれぇ?兄貴、銀奈さんいないの?」
 高校三年の受験生になった弟が、相変わらずぼろいアパートを久方ぶりに訪れた時の第一声がこれだ。そう、いつの間にか俺のアパートには銀奈が出入りする様になっていた。洗濯やら掃除やら一通りこなしてくれるから、航が様子見と称して片付けに来なくても良くなって、結構経つ。
 初めはマジで、怖かっただけなんだけどなぁ銀奈の奴。
「んー、里帰りしてる」
 それが航が言うように、いて当たり前みたいになっちまってるんだから人間関係て分らんよなぁ。その上、銀奈の里帰りの理由にも驚きだ。
「里帰り?何かあったのかよ、こんな中途半端な時期に」
 確かに盆でも正月でもない時期に、一応正体隠してとはいえ社会人である銀奈が里帰りってのは不自然だよな。
「でもまぁ、気分としては盆と正月が一緒に来てんじゃねぇかなー、あいつの頭ん中では」
「はあ?」
 全く訳が分らないという顔をする弟に、俺は溜息一つ吐いて報告した。や、別に溜息吐く理由も無かったんだけどな。
「子供ができたんだと」
 あぁほんと、人生って何が起こるか分らないよなぁ。
「こ、ども・・・」
「あぁ」
「て、だれ、の・・・?」
「それ、本人には聞くなよ。ブチ切れるから」
 幸い俺は聞かなかったので無事だったが、皆川さんが被害に合った。いや怖かったね、狐火でアパート全焼するんじゃねぇかと思ったもんな。
「まさか、あに、き。・・・?」
 これだけここに入り浸ってて、他の奴が相手だったらソッチの方が俺は驚く。
「だから俺、結婚するから」
 まさか齢24で父親になるたぁ、思わなかったな。しかもお前、相手は妖狐だぞ?俺の平凡な人のレール、どこで切り替わったんだろうね。
「はあぁぁああああああ!!????結婚ーーーー!?子供おおぉおおおおぉぉぉおお!!???」
 うん、良い反応だ、わが弟よ。

百葉箱のお守り様 

2006年07月12日(水) 17時16分
 ねえ、知ってる?体育館裏の百葉箱に、願い事を書いて入れておくとお守り様が叶えてくれるんだって。
 叶えてくれるなら赤い紙、駄目なら黒い紙が玄関に貼り出されるの。 願いが叶ったら、必ずお礼はしなきゃ駄目なんだって。だからその時、その人だけはお守り様に会えるって話。

 なんていう恵子の話、馬鹿馬鹿しくて信じてなかった。だって、そんな話しができたのはつい最近数ヶ月のことだ。
 神様なんてものが、数ヶ月でできあがるもの?馬鹿じゃないの、そんな影の正義の味方なんているわけ無い。大方どっかの誰かが適当に玄関に紙を貼って暇つぶしに遊んでるんだ、実際に失くした物が見つかったとかカツアゲされた財布が返って来たとか、噂ばっかで本人に会ったことなんて無い。
 だから、これも何かの間違いだったら良かったのに。
 部活で一人で居残りなんてするんじゃなかった、部室の鍵を返しに行く途中で忘れ物なんて気付くんじゃなかった、教室に傘なんて置き忘れるんじゃなかった、大体傘なんて明日でも良かったのに。
「人間にしちゃ、足は速い方か?」
 何よそれ、自分は人間以外の何かのつもり?大体、今更狐のお面で顔を隠すなんて古いのよ、制服はしっかりうちの学校のだし、顔だけ隠せば正体がばれないとでも思ってるの?
「余り騒がないでくれよな、俺達は悪い事をしてたわけじゃないんだ」
 だったら何で人を呼ばれたら困るなんて言いながら、あたしの口塞いでんのよ!
「騒ぐなよ?オッケー?」
 分った、分ったから手を離して!苦しいってば!
「あんた達、何者?」
「聞いたことくらいあるだろ?百葉箱のお守り様、生徒の願いを叶える生徒の味方」
 お面一つでも、案外一って分らないもんだなって思った。声がくぐもっちゃうし目も見えないし、何より表情が読めなくて不気味で、正体を観察してる余裕なんて無い。声と制服からして、男だっていうのは想像つくけど、それだけだ。
「あんた達がそうだっていうの?・・・・・・・まさか、だったらお面で顔隠してコソコソ暗くなった教室で生徒からお金巻き上げたり、しないわよ」
 あたし、見たんだからね。そのせいでこうやって追いかけられて、階段の踊り場なんかで壁に追い詰められてるわけだけど。
「成功報酬だよ、タダのダイヤなんて怖いだろ?」

佐賀原家の事情 

2006年07月12日(水) 15時58分
 そもそも俺は、アオの家の話をよく知らない。つまりは、母さんの方の事情をよく知らないんだ。昨今の妖怪も台所が厳しくて母さんは人里に下りて働き出して、親父と知り合って結婚したっていうロマンス(だそうだ)は嫌って程聞かされたけど、七歳になってしきたりだっつーんで母さんの実家に挨拶に行くまでアオのことも知らなかった。
「で?結局金太郎とお前の関係って、何?」
 家でこの話をするには母さんの目があったし、叔父さんの家じゃ余計な心配をかけると思った俺らは結局、親父の事務所に転がり込んだ。
「あぁ、異母兄弟」
 親父は新聞を読みながらほう、と簡単に相槌を打ってる。息子の会話を盗み聞いてんじゃねぇよ、ったく。て、うん?今なんつった?兄弟?
「はぁ?金太郎ってお前の弟なの?」
 しかも異母兄弟ってことは、母さんが違うってことだよな?
「そ、金太郎は妾腹の子ども。跡取りが一人じゃ何かあった時に困るからな、保険だよ。実際、俺の兄弟も四人居たけど、皆死んだ」
 は。何それ、そんな話、聞いてない。だって俺がアオと知り合った時、既にこいつ一人っ子みたいだった。
「上に三人、下に一人居たんだけどな。お前がウチに挨拶に来る年まで生きられたのは、俺だけだった。病だとか人間の車に当たって事故とか色々でな。しかも上には兄貴もいてな、本当ならあいつが筆頭候補だったんだよ、金色だったし」
 しかもすぐ下の弟が死んだのは、俺が訪ねて来る半年前だったらしい。あぁ、それでアオは俺を弟みたいに可愛がってくれたのかな。でも、それなら金太郎だって弟だろ?
「金太郎は、好きじゃねぇ」
「いや、それはもう見ただけで分るけどさ。何で?て聞いてんの」
 するとアオは口を噤んじまった。何だよ、そんなに言い難いことがあったのかよ。
「以前の筆頭候補は金の毛並みで、自分もそうだ。それなら自分はきっとその候補の生まれ変わりか何かで、一族を率いる運命の元生まれてきたに違いない。そう思い込みでもしてんのか?その金太郎は」
 だから、息子の会話に入ってくんなよ親父。
「そう、だな。多分、そうなんだろうな」
 え、マジで。

勝手に巻き込むのはやめてくれ。 

2006年07月12日(水) 15時00分
 ・・・・・・・・・・・・何がどうなってこんなことになったのかなんて、考えるのもめんどくせぇけど、とりあえず頭を整理する為に考えると、最初は大した話じゃなかったんだ。大事になることってのは大抵がそうなのかもしれねぇけど、ホント簡単な話だと思った。
「クガネ・・・てめぇ、こんなとこで何してやがる」
 横で唸ってるアオと、いつもの様に頼まれごとをして、捜し物をしてただけだ。青はタフだし俺は鼻が利くから、簡単だと思った。ただ相手は生き物だから移動しまくってて、追いつくのが大変そうだってだけの話で。
「おやおや、久しぶりに会ったというのにその様な怖い顔をせずとも良かろう?」
 多分ここら辺りだろうって場所に餌捲いて、後は来るのを待ってタイミングを見計らって捕まえれば良いだけだったはずなのに。
「不機嫌にもなるな。お前が握り潰してるソレは、もしかしなくても俺たちが探してた鳥じゃねぇのか?あぁ!?」
 タイミングよりも早く飛び込んで来た全く知らない男が、目の前で俺たちが探してた迷子の飼い鳥の首の骨を簡単に片手で折った。呆気なく、けれど確実に悲鳴を上げて息絶えた鳥は、男の手の中でダランとしている。
 和服に金髪、不釣合いなことこの上無い。しかも非常識に宙に浮かびやがって。
 おいアオ、クガネって誰だよ。
「分っておるよ、だからこうしたのだ。私はお前が嫌いだからな」
 おいアオ、お前どんな恨み買ってんだよ、おい!?どう見てもこいつ、人間じゃない、よな。宙に浮いてるし俺だって半分は人外だ、そういうのは大体分る。
「んなこたぁ、てめぇが生まれた時から知ってるよ。おしめ取り替えてやろうとした俺に、遠慮なくぶっかけやがっ・・」
「そのようなことばかり覚えているから、俺はお前が嫌いなんだ!」
 え、こいつアオより年下?何か大袈裟な言葉遣いしてるから、年上かと思ったのに・・。でもそれなら尚更、なんだこいつ?アオは一応こんなでも一族筆頭の族長候補だ。それも、覆る可能性なんて万に一つも無い。そのアオに対して、こんな口利く奴がいるか?つか、口調変わってんぞ?
「おいアオ、お前こいつと何があったんだよ?」
 何かかなり険悪な二人の空気に割って入る勇気は無くてこそっとアオに小声で尋ねると、アオは眉間に皺を寄せたまま覚えてねぇのか?と返してきた。
 え、俺こんな奴知らねぇけど?
P R
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