おもちゃの好きな王子様 19 

May 24 [Tue], 2011, 11:37
〜〜〜大会当日〜〜〜

今年の“ロボットチャレンジ”の関東地区大会は、

代々木体育館で行われた。

体育館には、ロボット好きな関東の高校生が集結していた。

この大会では、“バスケット競技”以外にも、

“演劇競技”“町探索競技”というものもあった。

“演劇競技”は、ロボットと人間が役柄を演じオリジナルストーリー

を展開していく。ロボットにどれだけ高度な動きを

させているかという点を含め

全体の構成や演出を評価する競技であった。

“町探索競技”では、町の中の決められたポイントを

通過し目的地までどれだけ短時間でたどり着けるかを

競うものであった。

町には障害物や信号なども設置されていて

各ポイントでは指定された動きをしなければならない。

参加選手は総勢300名にもおよぶ大きな大会で、

開会式の時点ですでに体育館の中は熱気にあふれていた。

王子達のチームが参加する“バスケット競技”には、

全40チームが登録されていた。

予選は、8ブロックに分かれ、

それぞれのブロック5チームが総当たり戦を行い、

上位2チームが決勝トーナメントに出場することになっていた。

そして決勝トーナメント優勝チームは、日本大会へと進めるのであった。

開会式が始まるまで、残り10分。

王子と桂浜はすでに受付を済ませ、中杉が到着するのを体育館の正面入り口で待っていた。

「晋也、なかなか来ないね」

王子は足早に体育館へと入っていく高校生たちを横目につぶやいた。

「いつもは、早めに来ているんだけどな」

桂浜も腕時計をちらちら眺めながらこたえた。

(ブ〜ン、ブ〜ン)

桂浜の携帯がズボンのポケットの中で鳴った。

「うん、うん、そうか、しょうがないな、じゃあまた後で連絡するよ」

そう言って桂浜は電話を切った。

「晋也、今日来れないって」

「何かあったの?」王子はたずねた。

「おじいちゃんが緊急入院し手術をしなければならなくなったみたい」

「晋也のおじいちゃん、何か病気なの?」

「そっか、ミッヒーは晋也の家のことまだ聞いてないんだね」

2人は、体育館そして選手控室へと歩を進める中、

桂浜が中杉の家の事情に関して話し始めた。

「晋也の両親は、晋也が幼いころに事故で二人とも亡くなられたんだ。

晋也は、その後は、お母さんの方のおじいちゃんとおばあちゃんと

一緒に生活をしてきた。晋也はほとんど両親の記憶も無く、

悲しむという気持ちよりもおじいちゃんとおばあちゃんに

大切に育ててもらったことに感謝してるみたい。」

「ふ〜ん、そうなんだ」

王子は、国の家族のことが頭をよぎった。

「3年位前かららしいんだけど、おじいちゃんが足を悪くして、

歩行も困難な状態になってしまったんだ。

それで、おばあちゃんが、一日中世話をするようになったんだけど、

どうしても体を起こしてあげたりトイレでの補助といった作業の時に、

おばあちゃん一人の力では大変らしくて。

施設に預けるようなことも考えたらしいんだけど、

晋也のおじいちゃんとおばあちゃん本当に仲が良くて、

出来るだけ一緒に暮らしたいという気持ちが強いんだって。

で、そんな二人の姿を見ていて晋也は何か自分にできないか

ということを考えたみたい。

力の弱い人でも重いものを簡単に移動できるような道具を

開発したいって言ってた。

で、創作部の活動を通してロボットやプログラムの研究を行っているんだ。」

「なるほど、晋也あんまり自分のこと話さないから全然知らなかった。

そっか、そんな目的を持って部活動しているんだ」

王子は、間近にいる友人の部活動に対する思いに感心していた。

「で、ミッヒー、今日は代役で君が出場するんだよ!」

「えっ、そうなの!!」

王子は若干の動揺を隠すことが出来なかった。

でもすぐに気を取り直し

「わかった、頑張るよ!」

「2人で今日は大活躍しちゃうか!」

「OK!」

王子もこの大舞台での選手としての出場に気合いが入ってきた。

開会式も終わり、いよいよ第1回戦!!

ロボットの開始時の操作は桂浜が行うことになっていた。

王子は、工具一式を持って、万一の故障に備え、

フィールドの脇の椅子に座っていた。

結果は、8vs5で王子・桂浜チームの勝利。

2台のロボットとも大きな故障もなく、

まずは順調な滑り出しを切れた。

予選の残り3試合を2勝1分、

予選リーグを3勝1分けという好成績を残し

見事グループ1位で決勝トーナメントへと進出した。

(つづく)