体外受精&ステップアップセミナーでのご質問への返答です

April 18 [Mon], 2016, 19:38
Q: (体外受精で生まれた子供を)「試験管ベビー」と偏見を持つ人はいますか?(夫が気にしております)

A: 4月9日のセミナーへ、東海地方からお越しいただいたご夫婦よりご質問をいただきました。ともに30歳代後半のご夫婦で、高度の子宮内膜症を患っておられる様子でした。現在、子宮内膜症への内科治療中で、不妊治療歴はないようですが、骨盤疾患の程度により、主治医より体外受精を勧められているとのことでした。

まず、体外受精、顕微授精等のART(生殖補助治療)が行われている歴史と現況について、お話したいと思います。

1978年、12年の研究の末に英国の生理学者ロバート・G・エドワーズと産婦人科医のパトリック・ステップトーが世界で最初の体外受精を成功させました。卵管の異常によって、9年間もの不妊に悩んでいた夫婦に対して、 卵子を腹腔鏡で体外に採り出して受精させた卵を子宮に戻すことで、卵管を使わずに妊娠を目指すという、当時としては画期的な治療でしたが、同時に実験的な要素が強かったため「試験管ベビー(Test Tube Baby)」と報道されたり、カトリック教からも強く非難されたりしました。世界最初の体外受精で生まれた赤ちゃんの名は、ルイーズ・ブラウン。 ステップトーは、「世界中の人々と喜びを分かち合う」という意味で、 その女の子に『Joy(喜び)』というミドルネームを贈ったのだそうです。世界の不安をよそに、ルイーズはすくすくと成長し、のちにルイーズの妹も体外受精で生まれ、今では姉妹二人ともが自然妊娠でわが子を出産しています。


出生直後のルイーズ・ブラウン



現在のルイーズ・ブラウンと自然妊娠した息子



最近になって、ルイーズの手記により、当時、ご両親が世間より受けた誹謗中傷の実態が明らかにされています。
http://spotlight-media.jp/article/174061123807236781


以来、40年近い年月が過ぎ、全世界でARTにて出産された子供の数は、600万人以上と言われています。エドワーズは、この業績が評価され2010年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。日本では1983年に、東北大学が国内で初めて体外受精治療に成功しました。以来、2013年までに国内でARTにて出産した子供の数は合計約38万4千人(大阪府では、豊中市、吹田市、および高槻市規模の都市人口と同等)となりました。

図1が示すように、我が国では年度を追う毎にART出産の数は増え続け、2013年には1年間に約37万回のART治療にて、約4万2500人の子供がARTにて誕生しています(全出生児の約4.2%, 約24人に1人の割合)。1980年代には、ARTが実験的医療と言われ、主に大学病院での医療研究として行われていたのが、現在、国内約600カ所の主にクリニックにて行われる治療として急速に普及しました。ARTは未だ、健康保険の対象になる治療とされていませんが、約10年前に公的な補助金制度が発足し、一般的治療として完全に定着しています。


図1:年度別のARTによる出生児数



近年は、女性の晩婚化および初回妊娠年齢の上昇にともなって、ARTをもってして妊娠出産されるご夫婦が増えつつあります。図2にあるように、過去7-8年だけでも、すべての年齢層において、ART治療の実施回数は約倍増しています。


図2:女性年齢別のART治療実態



女性の年齢が上昇するにつれて、自然な妊娠が困難になることを背景として、日本で出産される女性の年齢層別にARTによる出産の割合を図3に示します。30歳代半ば以降、ARTによる出産の比率が増加し、40-44歳での出産では、その約15%(7人にひとり)がARTで出産されている実態に驚きを隠せません。


図3:全出産における女性年齢別のART出産数と割合



一方、実は体外受精は、その安全性が確認されてから普及した治療ではありませんでした。よって、ARTにて出生した子供については、我が国を含む世界各国で出生後の健康調査が続けられています。はっきりした結論は得られていませんが、卵巣刺激、顕微授精、受精卵の凍結保存などをいずれの技術を用いても、出生する子供に先天的な異常が増えるということはなさそうです。

ご結婚当初からARTを希望したり、我が子がARTで出産したことを公表する方は少ないと察しますが、多くのご夫婦がARTにて家族を増やすという希望をかなえられているのです。当初は「試験管ベビー」と言われた21世紀に入り、我が国が深刻な少子化問題に直面する中で、人々の考え方も大きく変化し、ARTにて出生する子供たちの立場を護る法律も制定されようとしてます。

もし治療が必要な場合、どのような治療を選択するかは、ご夫婦の生命観は相互の信頼と共感をもってご決断いただきたいと思いますが、下記のルイーズの告白にあるように、ARTで生まれた子供たちは、自分たちが「普通のこども」として育っていることに自信を持っていただきたく存じます。

http://www.lifehacker.jp/2015/08/150811mediagene_gizmodo.html
  • URL:http://yaplog.jp/ohgimachi2511/archive/620
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