妖精 4 

January 14 [Sun], 2007, 23:02
庭に植えてあったのは、ビロードのような花びらの美しい花だった。
花の近くにしゃがみ、そっとつつんでいた手をのける。

 するとそのとき、思い出したように突然、風が吹いた。
妖精は手のひらを離れ、空中に舞いあげられると
門の外へ見えなくなった。
僕は急いで門を開き、妖精の姿を追った。


妖精 3 

January 14 [Sun], 2007, 22:27
 僕は起きたままの格好で、古びれた運動靴につま先をつっこんで外に出た。
つきささるような寒さだった。ここから見える木の葉も、凍えて身動きひとつしない。
僕は妖精ののった右手をつつむように、左手をそっとそえた。
これから何をするかなど決まっていない。
たぶん僕は、なにかが起こってくれることを期待していたのだ。
しばらく立ち止まっていたが、僕はとりあえず庭の方へ歩き出した。
昔読んだ絵本では、妖精は花の周りを舞う生き物だったからだ。
あいまいな考えだったが、そこに妖精を埋葬するのがいいのかも知れない。

妖精 2 

January 09 [Tue], 2007, 19:04
 開いた手に鮮やかな模様がべったりとついている。
その模様は、小さいころに大好きだった絵本で見た
それに似ている気がした。

手を少し動かすと、光をやわらかく反射して
模様がてらてらと輝いた。
それを見ると急に、僕は自分の手のひらから
何かが這い上がってくるような気味の悪さを感じた。
振りほどこうとしても、すがりつくように僕の腕を覆っていく。
自分の手がおそろしい。
もはや、妖精も、自分の手も見ることが出来なかった。
僕は妖精がいる方の手を軽く閉じ、つぶさないように
注意しながらそのまま部屋を出た。

妖精 1 

January 07 [Sun], 2007, 0:01
 妖精を、殺してしまった。

土曜日の昼間だった。
土曜日、特にやることも無いので僕はたいてい寝坊をする。
頭が痛い。今日はいつもより長く寝ていたようだ。
閉まったカーテンがうすぼんやりと明るい。
身体を起こそうとした時、僕は自分の右手に違和感があるのを感じた。
ぐっとにぎりしめたこぶし。何か自分の意思とは関係ないでいるように
手は何かを強く握っていた。
そっと、指を広げていく。
少し汗ばんだ僕の手の中には、何かがあった。
それは乾いた枯葉のようにぱらぱらと少し崩れた。

かなり久しぶりかも♪♪♪ 

January 06 [Sat], 2007, 20:53
 久しぶりに更新してみようと思いました
半年ぶりくらいに自分のブログ開いてみたら
スキンが消滅して文字だけになっててびっくりしましたょ・・・何事・・・
スキン取り替えたら直りましたけどねワラ”

『361°』E 

August 22 [Tue], 2006, 23:52
 私の目の前にあった光景は、残っていた疑問を拭い去るのに十分すぎるものだった。一面真っ白で箱のような部屋。その隅のほうには力なく横たわった人たち・・・
いや、今はもう機能しなくなった機械が、山になって積み重ねられていた。
光に目が慣れてくると、彼らの首がだらしなく垂れている理由が分かった。
みんな、首の辺りに穴があった。
幾本もの千切れたコードが、穴からのぞいている。
そして、その山のてっぺんに横たわっていたのは、ナギサだった。
ぐったりとした格好のその首の辺りには、他の犠牲者と同じように穴があいている。
ふっと笑いがこみ上げてきた。
恐怖のためでもなく、喜びのためでもなく、すべてを超えて笑いがこみ上げてきた。
私も、こうなってしまうんだ。私の存在は、誰かのくだらないひらめきの結果でしかなかったんだ。
この、今この瞬間にこみ上げてくる笑いさえ、何一つ本物ではないんだ。
何気なしに目をあげると、部屋の奥から誰かが歩いてくるのが見えた。
研究員風の格好をした女性が、こちらへ向かって歩いてくる。
彼女が近づいて来るにつれ、私からは笑いが消えていった。
白い光にぼやけていた姿が、だんだんはっきりと、鮮明に目に映る。
その姿は、私がこの世で絶対離れることが出来ないであろう人の姿だった。
私とまったく同じ姿のその人は、手に持った銃をすっと構えた。
銃口が私の首を、冷たく直視した。
「パンッ」
銃声が部屋に響く。

そして、真っ赤な血が、宙を舞った。

「邪魔者はもう誰もいなくなった。今日から私が“本物”だわ!!」
銃を持った彼女の笑い声は、金属的に部屋を響きわたった。

『361°』D 

August 22 [Tue], 2006, 12:24
 私は、昨日までナギサがいたはずの場所に何かパタパタと風にはためく
ものを見つけた。弾かれたように立ち上がり、それをひったくる。
新聞だ。少し黄ばんだ新聞は、あの本棚に入っていたものだろう。
記事に目を落とすと、一際目立つ大見出しが目に飛び込んできた。

世紀の大発明!!高度な人工頭脳を持ったロボット、ついに誕生!」

冷たい風が、私の背中を吹きぬけた。その見出しの横には、大きな写真がついている。
悪い予感は的中した。白衣を着た何人もの人々。
その中に私と、ナギサの姿があった。
写真の下にはこう、注意書きがついてる。
「写真(上):世界初の技術でつくられたロボットたち。
それぞれ研究者たちにのっとってつくられた。
右から、サユリ、ユウキ・・・・」
これ以上読む必要はなかった。あの映像が、再び鮮明によみがえる。
最悪の・・・処置・・・処分・・私とナギサが同じ境遇なら・・・
ナギサが危ない!!助け出さないと・・・どうにかして・・・
私はもう走り出していた。風に揺れる扉を、勢いよく開く―。
外は長い廊下が続いていた。とにかく急がなければ。そしてナギサと逃げ出そう。
どこか遠いところへ。
暗い廊下はきゅ、きゅ、と音をたてながら、だんだん短くなる。
ちょうどこれから下の階に行こうと、足を踏み出したそのときだった。
はだしの足に、すっと光の筋がさした。
振り返ると、階段から一番近い部屋から明かりがもれているのが目に入った。
この部屋だ。
私はそっと扉に近づくと、そのまま押し開けた。

『361°』C 

August 21 [Mon], 2006, 12:42
 ―喝采。拍手が、聞こえる。
数百、いや、数千もの拍手が私をつつんでいる・・・。
なんとも形容しがたい感覚に身をもてあまし、私は手で髪をうしろへやろうとした・・・。
「バサッ」


床に本が落ちている。
ドキドキする胸をおさえ、状況を飲み込むまでに少し時間がかかった。
昨日ベッドの上に置いたままになっていた本が、手を動かした拍子に落ちたのだ。
私は本を拾い上げ、ベッドに座りなおした。
ひんやりした空気が、湿り気を帯びている。
雨だ。雨が降っている。雨粒が外の壁をうちつける音だけが、部屋に響いていた。
静かだった。妙に、静かだった。
そこで初めて、私は部屋の様子がいつもと違うことに気が付いた。
本が散らばっている。冷たい風が吹きぬけ、今まで頑として開こうとしなかった扉が
風に揺れているのが見えた。
そして、この部屋のどこにも、ナギサの姿はなかった。

『361°』B 

August 19 [Sat], 2006, 14:41
 何日かが、この病室でたっていった。
いや、正確には時間などそんなにたっていなかったのかもしれない。
きっと、この病室の重い空気と、まだ晴れない頭の中のもやとが、時間の流れを執拗に遅くしていたのだ。記憶を垣間見た時の衝撃も今はもう、かすれてしまっていた。
あの後しばらく考えていたのだが、分かったことと言えば、記憶の中での私はドアの外から
彼らを見ていたのだろうということくらいだったからだ。
ナギサはというと、ときどき起きてきては本棚に入った本やら新聞やらを見、また棚に戻す、
といった動作を繰り返していた。私が彼女に話しかけても、首を動かすだけで返答し、
唯一発する単語と言えば、「わからない。」だけだった。
そのうち私の行動もナギサにならうようになっていった。棚から本を取り出し、また棚に戻す。
内容なんて、見てはいなかった。ただ意味もなくぐるぐると頭の中を渦巻く記憶。
それから逃れるために、この本たちが持っているかもしれない、
「私のための希望」に手を伸ばしていたのだ。

『361°』A 

August 18 [Fri], 2006, 12:38
 私が次に目を開けたとき、あたりは薄暗かった。
朝のようだ。ずっしりした重い空気に、白い光が差し込んでいる。
まだ頭がぼうっとするが、始めに目が覚めたときよりは意識がずっとはっきりしていた。
私は起き上がり、ベッドに座ったまま改めて辺りを見回してみた。
ナギサはまだ寝ているようだ。そのまま後ろを振り返る。
すると、昨日は全く気づかなかったのだが、そこには思った以上の空間があった。
部屋の奥の壁には、大きな窓がある。だがその窓は、部屋に風を運んだり、
日の光を通したりするためのものではないらしかった。サッシも、鍵もない。
そして何より、部屋の外側にカーテンがかかっていた。
自分の手に目を落とす。肌は滑らかで、うっすら赤みがさしている。
壁に目を移すと、そこには大きな本棚があった。
向かいの壁にも同様に本棚が立っている。
分厚い本が乱雑に並び、ところどころすきまに、
冊子にとじられた新聞が放り込まれている。
反対側に目をやろうとしたその時、本棚が向かい合う、
何でもない空間で目がとまった。
そのまま吸い寄せられるように空間に見入る。
すると頭の中に鋭く、映像が割り込んできた。
   *  *  *
男性と女性が、ふたりで話している。
男性は少し年配のようだが、女性のほうはまだ若いようだ。
研究者風の格好をし、男性のほうを なかばにらむように見ている。
彼らとは少し距離を置いた視点だったが・・・
場所は、今私が見つめているこの空間に違いなかった。
カーテンは開いている。
空気を切り裂くように、女性が口を開いた。
「別に何だっていいでしょう?彼女には記憶がないわ。
『自分の存在』なんて思い出さようとするのはもう無駄よ!
それに、万が一、中途半端に思い出されたら・・・」
「その場合は最悪の処置をしかねないですがね。
彼女をもう少し待ってみましょう。ことはあなたが思う以上に大きい。
あなた一人で決められるようなことではないんですよ。」
女性は首をふり、髪を乱暴にうしろへやった。
「彼女にはもう何の用もないわ!はやく処分したほうが、
あなたのためにもなるんじゃないの!?」
   *  *  *
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