日記再開? / 2005年12月30日(金)
猫になれ。
 
   
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のんちゃん79。 / 2005年11月15日(火)


「続きです。しかし、僕はそこで、ふと気づくと、不安になってしまいました。君のお父様、突然病で倒れた、君のお父様のことを考えると、さぞかし無念だったのではないかと思うのです。良子さんと、君を残して逝ってしまわれたこと、それはお父様だけでなく、もちろん君にとっても辛かったと思います。
 僕は考えました。もしも、僕が突然倒れてしまったら、君はどうなるのだろう、と。君との約束を果たせず、僕が消えてしまったら、君はどれだけ悲しむだろうか、と。それを一度考えてしまったら、いつの間にか僕はこのプログラムを作り始めていました。
 もちろん、このプログラムの出番が来ないのが、僕たち二人にとって一番のことだと思います。しかし人生には、何があるかわかりません。もしも僕が、いなくなってしまったなら、君は一人で生きていけるだろうか? 僕はなんとしても、どんな形でも、君との約束を、守らねばならないと思ったのです」
「このプログラムがある限り、僕はいつだって、君の側に帰ることができます。二人の約束の時間に、君に僕を届けることができます。これで、君の寂しさが和らげば、君が安心できれば、とても幸せです。いつでも、僕が側にいることを、毎日感じて貰えれば、嬉しいのです。
 なんて、また強がってしまいました。君に向かい合うと、どうしても僕は、自分を強がって見せようとしてしまいます。いけませんね、ちゃんと、本当のことを、言わなくてはなりませんね。
君が側にいると、とても楽しいです。とても落ち着きます。とても笑顔で笑えます。とてもご飯がおいしいです。君が側にいてくれれば、僕は何でも出来るような気がします。
 君が、『ずっと、側にいてね』と言うと、ああ、僕は君の側にいてもいいのですね、と思い、心から嬉しくなります。側にいたかったのは、僕のほうなのです」

 
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のんちゃん78。 / 2005年11月15日(火)


  「祥子へ」

「君にこのメールが届いてしまったということは、きっと僕はもう、死んでしまったのでしょう。間抜けな僕のことですから、どこかの道で転んだのかもしれませんし、急な病気にかかったのかもしれません。いずれにしろ、君にはとても辛く、苦しい思いをさせてしまっているでしょう。本当にごめんなさい。 
そして、きっと君は、僕の死後に届いた、このメールに驚いたことでしょう。驚かしてごめんなさい。実は、天国から君に向けてメールを打ったのですよ、という話ならば、感動的だったかもしれませんが、残念ながら、今の僕は天国にはいないのです。君と同じ、この地球上のどこかにいるのです。こんなことを書くと、君は戸惑ってしまうでしょう。ちょっと長くなりましたので一度切ります」
「続きです。今の僕が、どんな形をしているのかというと、それはいくつもの電子の波で形成された、ひとつのファイルという形です。もうお分かりかと思いますが、今の僕はプログラムなのです。 
 人は、死後四十九日で、生まれ変わり、この世に戻ってくるといいます。だから僕は、自分の死んだ四十九後に生まれ変わる先として、このプログラムを用意しておきました。僕が四十九日の間、決まった場所にメールを一度も送らないでいると、このプログラムは動き出すようになっています。というわけで、僕はこのプログラムに生まれ変わり、君にメールを送っているというわけです。
僕が用意しておいたこのプログラムは、世界中にある、ネットワークで繋がれた世界を放浪しています。世界中を旅しながら、毎晩九時半になると、君の元へ戻ってきます。メールという、もうひとつの電子の形でね。また長くなったので切りますね」

 
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のんちゃん77。 / 2005年11月14日(月)


 あたしは、ずいぶん長いこと、無理をして摂取しなかった睡眠薬を、すべてシートから抜き出して、手のひらに集めた。数か月分はあるから、ざっと数えても百を超える玉粒が、手のひらで揺れている。
 もう、いいよね、と誰にいうでもなく、口にした。
 もう、苦しすぎるし、つらすぎるし、いいよね。
あたし、いなくなっても、いいよね。
 のんちゃんは怒ると思うけど、あたし、もうあなたのいない毎日に、耐えられない。
 あたし、弱いし、これから何年もの間、おばあさんになるまで、のんちゃんのことを忘れられないと思う。
大好きだったから。心から、愛していたから。あたしの、すべてだったから。
 すべて、を失ってしまったあたしには、もう何もないから。だから、ごめんなさい、もう楽になるね、あたし。
 用意しておいたウオッカのボトルを開けた。普段ならとても飲めないような、アルコールの匂いがぷんぷんする。手にひらいっぱいの薬を、口に持っていこうとする。手が、がくがくと震えて、薬がこぼれるので、何度も何度もあたしは拾いなおした。
 今度こそ、とあたしは手に力を込めて、口の上まで持っていった。
 ぷるるる、どこからともなく、聞き覚えのある音が鳴っていた。それは、とても懐かしくて、温かい音だった。
 あたしは、手のひらいっぱいの薬を丁寧に机に置き、その音を探した。
 ぷるるる、音は鳴り続けている。どこだろう、とあちこち探しても、なかなか出てこない。
 耳をすますと、どうやらバッグの中から聞こえるようだった。あたしは、バッグを手に取り、中身をベッドにぶちまけた。化粧用具やら、財布やらの中に、見覚えのあるピンクの箱が、光っていた。
 のんちゃんと一緒に買った、携帯電話。
 すでに呼び出し音は切れていた。誰からだったのだろう、とあたしは二つ折りの携帯電話を開いて、ディスプレイの文字を見た。

 
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のんちゃん76。 / 2005年11月12日(土)


さすがに少し、暑さのせいで、バテてきた。目の前には、のんちゃんと通いつめた、あの喫茶店があるはずだった。
ところが、しばらく見ないうちに、いつのまにか改装されてしまったのか、それとも店舗が入れ替わったのか、まったく違う店になってしまっていた。
 それでも喉が渇いていたから、あたしは一人、喫茶店に入った。やけに内装がチープになっている。なのに、場所柄なのか、店の席はお客さんでいっぱいだ。
 あたしは一人、窓際の席に腰掛けた。メニューをざっと見ると、なんだか美味しそうなバナナジュースというメニューを見つけたので、髭をはやしたマスターに注文した。
 バナナジュースが来るまでの間、のんびりと街頭を見渡した。陽気はさらに強くなって行き、女の子たちがどんどん薄着になっていく。
 バナナジュースが届き、あたしは一口すすって、思い切り吐き出しそうになった。バナナの味なんて、まったくしない。ぜんぜん感じられない。なんだかおかしな粉末が舌の上でざらざらしている。
「すいません」
 髭の店長を呼ぶと、にこにこしながらやってきたので、あたしは一喝した。
「ちょっと、これ、すごい変な味なんですけど、作り間違えたんじゃないですか?」
 店長はにこにこ顔を崩さずに、作り直しますから、といってバナナジュースを持っていってしまった。やれやれ、と思いながら、またあたしは街頭を見やった。
 しばらくして、また同じような液体を、髭のマスターが持ってきた。「今度こそ、マニュアル通りできたと思うのですが…」と、不安そうに言う。マニュアルのあるバナナジュースって何だよ、と思いながら、また一口すする。ざらっと粉末の味。まったくさっきと変わらない。
「もう、いいですから」
 にこにこ顔の店長は、消えてしまった。よくこんなもので、商売が成り立つなあ、と思う。でもその一方で、気付いたことがあった。
 あたしは、あんなにのんちゃんとここで会っていたのに、何を注文して、何を飲んだのかまったく覚えていないのだ。    
 そうかそうか、と気づいて、あたしはおかしさを抑え切れなかった。にやけ顔で店内を見回すと、どの席にも、カップルばかりだった。
 そうかもね、好きな人と一緒なんだから、どんなまずいジュースでも、美味しく感じちゃうのかもね。

 
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のんちゃん75。 / 2005年11月11日(金)


 渋谷のセンター街を、ふらふらと歩いて行く。もうすっかり春になっていて、あたしの着ていたカーディガンではちょっと汗ばんでしまう。
思い切って脱いでみると、思いのほか初春の陽気が心地よくて、あたしはカーディガンを手に提げて、かつかつと歩道を歩いて行く。
 春休みの時期なのか、おのぼりさんのような人が多い。あたしもそうだったから、よくわかる。でも、派手な服を身にまとった若い子たちは、センター街の喧騒にたじろぐこともなく、堂々と闊歩している。
 あたしは、ろくにこの道を歩けなかったことを思い出す。姿見を買いに来て、人の多さで眩暈がして、呼吸が苦しかった。まだこの東京で、何も始まっていなかった頃の思い出。
 スペイン坂を登る途中で、シナモンを見つけた。それは、あたしの家にあるようなばかでかいやつではなくて、こぢんまりとした、バッグにつけるくらいの大きさのもの。
いつのまにか、このキャラクターも浸透して、どこでも見かけるようになってしまった。あたしが買ってもらったときは、最新のキャラクターだったのになあ、と思いながら、シナモンを売り場に戻す。
 一歩、一歩、階段を登るたびに、あの場所が近づいてくる。あたしは、その場所めがけて、軽いステップで歩き出す。
 坂の上まで来ると、ようやく見えた。
 のんちゃんと、初めて出会った場所。坂の上にある映画館。


 
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のんちゃん74。 / 2005年11月10日(木)


やはり前から聞いていた通り、のんちゃんの実家は、名家だった。ただ、その規模はあたしの想像をはるかに超えていた。そんな代々伝わる野村家の嫁に、あたしはふさわしくない、と判断されてしまった。
「…野村さん、頑張ってたよ。実家に反対されてもさ、許可が出るまでお願いしにいきますって言って、お前には内緒だったかもしれないけどよ、何度も実家に帰ってたらしい」
 忙しい仕事の合間を縫って、あたしと会う時間も作って、その上、何度も実家に帰ってただなんて。そんな無茶をしていただなんて、まったく知らなかった。
「なんでだよ、なんで、あんなに頑張ったのに、祥子のこと、許してやんなかったんだよ。だから野村さん、無理しちゃったんだろ、そうじゃないのか!」
「やめて、浦田」
「祥子、お前、悔しくないのか? こんな目にあって、最後に、顔だって見れなくて、線香の一本もあげさせてもらえねえんだぞ! いいのかよ、こんなんで」
「だって、全部、あたしが悪いから」
 浦田は、ガードレールを蹴飛ばした。がんがん、という音が、寒い道に響く。
「お前は、悪くねえよ」
 急に声のトーンを落として、浦田がつぶやいた。
「悪いのは、俺だ。全部、俺が馬鹿ばっかりやっちまったから、それでお前の人生、全部台無しにしちまった」
 そろそろ葬儀場に訪れる人もまばらになってきた。空もどんどん暗くなっていく。
「…いまさら、謝ったって、全部遅いってのはわかってる。でも、ごめんな、祥子。全部、俺のせいで」
「浦田は、悪くないよ」
 悪いのは、全部あたし。何もかも、全部あたしのせい。あたしが、わがままばかり言ってたから。のんちゃんのこと、気遣ってあげることもできずに、苦しめてばかり、いたから。

 
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のんちゃん73。 / 2005年11月09日(水)


どうすることもできなかった。ただ、待つしかできなかった。手術が無事に終わって、のんちゃんが戻ってきてくれるのを、待つしかなかった。でもそれは、途方にくれるほど、苦しく、長い時間で。
 あたしは祈り続けた。お願い、お願い、のんちゃんを連れて行かないで。
 ずいぶん長いこと、待合室には沈黙が続いていた。誰もが、口を開かずに、ただ待ち続けた。
「大丈夫だよ、野村、ああ見えて、ずいぶんタフなところあるし」
 同僚の一人がぽつりと口にした。その一言で、張りつめていた空気が少しだけ緩んだ。皆、口々に、大丈夫、大丈夫と言い合っている。 
 あたしも、心の中で、何度も繰り返した。大丈夫、大丈夫、のんちゃんが、約束を破るわけない。ずっと側にいてくれるって、約束したもの。あたし一人置いて、どこか行っちゃうなんて、考えられない。
 あんなに強くて、あんなにあたしを守ってくれたのんちゃんが、簡単に死んじゃうわけがない。大丈夫、大丈夫に決まっている。
 そのとき、奥の廊下から、音もなく何人かの白衣を着た医者たちが歩いてきた。あたしは、その先頭の顔を見てしまった。その表情を、見てしまった瞬間、心の中で、ぽきんと芯が折れる音がした。
 三人の医者は、待合室に入ると、横に並んだ。そして、同じように身をただす同僚の人たちに向かって、礼をした。
 あたしは、耳を塞いでいた。嫌だ、嫌だ、聞きたくない、そんなこと、聞きたくない。嫌だ、絶対に聞きたくない。
 悲痛な表情の医者が、何か話した。それを聞いた同僚の人達が、顔を、ゆっくりと俯かせた。目に手を当てる人もいた。喜山さんは、他の人たちの肩を叩き、やはり辛そうな顔をしていた。 
 あたしには、聞こえない。耳に力一杯、指を突っ込んで、塞いでいるから。何も聞こえない。何も聞きたくない、何も聞きたくない、のんちゃんに何があったかなんて、聞きたくない。
 何も、聞きたく、ない。

 
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のんちゃん72。 / 2005年11月08日(火)


 慌ててタクシーになんて、乗るべきではなかった。ひどい雪のせいで、道が混んでいる。
 電話に出た救急隊員の指定した病院は、つい先日まで、あたしたちが入院していた病院だった。電車で行けば近かったのに、あたしは慌てすぎていた。何も考えずに、ただひたすら急いでいた。
 のんちゃんは、マンションから、田町の駅までの途中にある、小道で倒れているところを発見された。救急車が駆けつけた時には、きっと転んだのだろう、額から血を流したのんちゃんが、雨に濡れて倒れていたらしい。
それ以上のことは、教えてもらえなかった。とにかく、病院まで行くしかなかった。
あたしは進まないタクシーにいらいらしながら、両手を合わせた。のんちゃん、お願い、無事でいて、お願い、無事でいて。何度も何度も、頭の中でその言葉を繰り返し、祈った。
ようやくタクシーが病院に着いたときには、電話を受けてから一時間以上が過ぎてしまっていた。
あたしは病院の受付を通り、事情を説明すると、緊急外来へと案内された。
その棟へ続く長い廊下を急ぎ足で歩き、待合室らしき場所へ通されると、そこには何人かの先客がいた。いずれも見知らぬ顔で、皆がスーツを着込んでいた。いずれも深刻な顔ばかりで、空気がとても重い。
あたしが躊躇していると、一人の男性が声をかけてきてくれた。
「あなた、野村の、お友達か何か?」
 あたしは、とまどうことなく、答えた。
「あたしは、のんちゃん…いえ、野村さんの、婚約者です」
 待合室にいた一同の顔が、一斉にあたしのほうを向いた。
「ははあ、あなたが。噂はかねがね伺っております。さあ、とりあえず腰掛けて」
 男性は親切に、席を空けるように周りに指示してくれた。男性はどうやら、ここにいる中で最年長のようだった。若い一人が席を立ち、どうぞ、とあたしに勧めてくれた。

 
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のんちゃん71。 / 2005年11月07日(月)


 二月になると、すっかり冷え込みが厳しくなった。あたしは厚手のコートにしっかりと身をくるみ、マフラーをぐるぐると首に巻いて、青山にあるスパイラルビルの前に向かっていた。時計を見ると、待ちあわせの一時には、もうちょっとだけ時間がある。
 ビルの中に入り、暖を取ることにした。外は小雨がぱらついていて、とても寒かった。どうせ、のんちゃんのことだ。数分から数十分の遅刻は覚悟しなくてはならない。
 今日は近場にある結婚式場を見学することになっていた。ここから歩いてすぐのところにある、大きなビルの中にある結婚式場は、このあたりでは一番の人気だった。のんちゃんと出会った渋谷の、できるだけ近くで式を挙げたい、というあたしの希望を元にのんちゃんが探してくれた式場だった。
 ビルの中は、少し湿っぽくて、暖房が効きすぎていた。あたしはマフラーを取り、コートも脱いで、手に持った。
ふと見ると、奥のレストランに、ウエディングドレスを着た花嫁の姿があった。その隣には、タキシードを着た男性。二人は並んで、多くの人のシャッターを浴びている。
そうか、こういう所でも、結婚式ってやるんだなあ、と思いながら、純白のウエディングドレスに目が釘点けになった。あたしもあんなふうになるのかなあ、と思うと、やたらと胸がどきどきした。
のんちゃんは、やっぱり純白のウエディングドレスがいいかな。それとも、着物のほうがいい?
 しばらく見とれていると、幸せそうな花嫁たちは、あたしの目の前を通り過ぎていった。これから二次会なのだろうか、たくさんの着飾った男女が、フロアにたむろしている。
 あたしは時計を見直した。一時十分。待ちあわせはビルの前にしちゃったから、念のためあたしはビルから出て、通りを見渡した。のんちゃんらしき姿はなかった。雨が少ずつ強くなってきているようだった。

 
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