Savior tale

September 22 [Thu], 2011, 22:38



序章
 「・・・ここは?」
 ふいに眼が覚めると、そこはいつもの見慣れた自室ではなく。
 「俺は今何処に居るんだ・・」
 周囲にあるのは、炎、炎、炎。
 遠くを見渡しても炎が空-----というよりも深い闇にしか見えないのだが-----を
 赤く染め上げるように燃え上がっているだけである。
 つい今まで布団の中で携帯を使い芸能人のブログを読みつつ翌日の学校でのくだらない話のネタを探していたはず。
 「寝落ちして夢の中なのか?」
 しかし、炎の熱気が俺の考察を否定する。 
 「熱い、夢じゃないのか?なんなんだ、一体・・」
 夢ではないことを悟ると同時に周囲の熱気がさらに激しくなる。
 「うわ!!」
 炎が吹きあがり俺を包み込む。
 「うああー!」
 「・・・え?」
 意識を取り戻すと、俺は朝日が差し込む自室で目を覚ましていた・・。



一章 愛すべき日常〜I Love It〜
 「なんだったんだ、一体・・」
 誰にもあの夢―と言っていいものなのかすら分からないが―のことを相談できず結局いつもの通学路をのんびり歩いてしまっている。いつもと同じ道、毎朝見かける野良猫。すれちがう人たちもいつもと同じだ。
 今朝、鏡で見た自分の顔―自他ともに認める普通な顔―もいつも通りだった。
こんないつもと同じ風景が昨夜のモヤモヤを忘れさせてくれる気になってくる。
 「そもそも、誰かに相談しても即行で救急車呼ばれちまいそうだな」
 なんて結論にたどりついたのがやっと放課後である。




 夕日が差し込み暖かい教室。
 もうほとんどのクラスメイトは家路に着き、
 教室にはあまり人がいない。
綺麗に整頓された椅子と机が掃除当番の生真面目さを物語っている。
外からは気合の入った運動部の声が聞こえてくる。そんな中、 
「お〜い、鷹野、ゲーセンでも行こうぜ」 
 間の抜けた声で俺を誘うのは中学時代からの付き合いで、腐れ縁が続いてしまっている黒羽である。
 「仕方ねぇ、遊んでやるよ。」 
 「んなっ!別にお前じゃなくてもいいんだぜ・・・せっかく金が入ったからおごってやろうと・・」
 「鷹野龍斗、行かせていただきます!」
 そう、こいつ黒羽九郎はこっそりと校則違反のバイトをやっていて口止め料として給料が出たらおごってもらう決まりなのだ。うっかりこの前給料が出たって言ってた事を忘れていたぜ・・。
 「じゃあ、いつもの所でいいか?」
 「いやいや、黒羽さんが行きたいトコでいいっすよ!。」
 「やめろ、それ、どこぞのチンピラか俺は」
 こんなくだらないやり取りもいつもの事である。





 ハンバーガーをおごってもらった挙句、格ゲーで黒羽をボコボコにして何だかすっきりした帰り道。空には星が輝き、あたりから漂うおいしそうな夕食の匂いが俺の鼻腔を直撃する。
 我が家の夕食は何だろうか。
 ・・・カレーがいいな。
「・・でさ〜この前バイトの先輩がさ〜」 
 「ハンバーグでもいいな」
 あ、でも昼はハンバーガーだったか・・
悩みに悩んだ結果、美味けりゃいいやというなんとも非論理的結論を導き出していると。
「話は聞こえてるか?」
・・・夕食に想いを馳せていました。とは言えず。
「まぁいいや。それよりお前もバイトすれば〜?慣れるとなかなか楽しいぜ?なによりいろんな女の子と知り合える」
 なぜだか自慢げにこちらを覗きこむ友人の顔を殴ってやろうかと思いながら、
「やらん。俺は家でのんびりまったりするのをこよなく愛している。」
 そもそもこいつはバイト先で女の子を探しているのか、けしからん。・・と思いつつちょっとうらやましがっていると、
 「まったく、この引きこもり野郎が。悪い顔でもねぇのに、もったいねぇ・・!!おいっあの娘めっちゃ可愛くね?」
 なにをいきなりそんなにテンション上げているのかと視線を追うと、俺らから200mほど離れた所に、



 女神が、いや、美少女が立っていた。
こんなこと口には出せないが、夜空の星の輝きもこの娘の前では霞んでしまうのではないかと思ってしまう程である。
確かにテンション上がるな、すまなかった。と悪友に謝罪しつつ問いかける。
「うわ・・マジだ・・モデルか!?でも俺らと年は同じくらいだよな?」
「あぁ、多分同い年だ。俺が言うんだから間違いない」
 たしかに女子に関してこいつの見立ては間違いないだろう。などと考えているとその娘と目が合った。・・ん?今なにか呟かなかったか?それはいくらなんでも自意識過剰か。あ、あっち行っちゃった。



 「でもあんな可愛い娘ここら辺で見た事あったか?」
 「・・・いや、無い。最近引っ越して来たとかじゃねぇの?」
 記憶の糸を手繰るまでも無く否定できる。
 あの娘を見た事を忘れるなんて不可能である。それほど印象強い人だった。
 「そうかもな・・高校一緒だと尚更良しなんだがな。」
 別に高校が一緒だからってどうなる事もあるまいに。まぁ言わないでおいてやろう。夢を持つ事はいい事だ。
 それからの帰り道はあの人の妄想話に花を咲かせそれぞれ帰宅した。



 「見つけた・・」
 夕日が差す路地で先ほど鷹野達が見つけた美少女が一人呟く。
 「後は目覚めてもらうだけ・・」 
 

 運命の歯車は音を潜めて廻りはじめていた。



夕食が望み通りのカレーだった事で上機嫌な俺は手早く風呂をすませ、布団に入っていた。いつもならまだまだ起きていられる時間なのだがどうやらゲーセンでハッスルしすぎてしまったようだ。襲ってくる睡魔に勝てる気がしない。
 「おやすみ・・」
 誰にでもなくそう言うと俺は目を閉じた。

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