抜き取り式御題[台詞]・弐 No:2(上)

June 12 [Mon], 2006, 13:17
 扉を開けると、それは、般若の顔でした。

 チャイムで確認せずに扉を開けたのがそもそもの間違いだ。教え子にはあれだけ『不審者が多いからドアはすんなり開けるな、まず確認しろ』と言っているのに。
 絶対零度の視線で青龍は仁王立ち。俺は扉を開けたままの格好で固まっていた。
 視線・・・・・・視線が・・・・・・突き刺さってくるんですがどうしたら・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・視線で俺を殺そうとしてるのか?」
「憎しみで人が殺せたら、と思っている」
 お前なら殺せる、大丈夫だ。
 とかそんなこと言おうものなら俺の命はここで断たれる。やめてくれ、来週には大会控えてるんだ。
「えーと・・・・・何か用か?」
 そう言ったら、あの碧眼が閃いて、突如胸元を掴まれた。
「・・・・・・・・・・・この前、バスケ部の男子が俺の授業中に寝ていたから、特別課題を出そうとした」
 掴んだ手がそのまま俺を引き寄せる。ギリギリまで近付いた額と額。つまり俺はこの恐ろしい眼を至近距離に置いているわけで。
 今の心境。『いっそ死なせて下さい』
「そうしたら試合があるからそれが終わってからにしてくれと言われた。お前が顧問だと聞いたから、俺はそれを許した」
「うわーお前心広くなったなぁー」
「黙れ。今貴様に褒められてもナノレベルで嬉しくない」
「ナノって・・・・それ全然嬉しくないって言ってるようなもの・・・」
「その口を閉じて聞け。それであの男子は俺がお前に弱い、と勘違いした」
「・・・・・うーん・・・・・浅はかだな」

抜き取り式御題[台詞]・弐 NO:2(下)

June 12 [Mon], 2006, 13:12
 こいつが俺に弱いわけがない。主語が逆だ。
「ああ、そうだ浅はかだ。でもそれを思うのにはちゃんと根拠があった!」
「ヒッ!!」
 特徴的な青の眼が、俺を映してカッ!と見開かれた。やめろ恐ろしい!今日寝るのが怖くなるだろ!!
 青龍は壮絶な笑みを浮かべ、かすかに首を傾けて
「貴様はベラベラとあの子供に何を話してるんだ・・・・・・?言わなくてもいい事まで・・・・・!」
「いやそれくらい別に」
「『別に』?・・・・ああ、それくらい『別に』のレベルだ・・・・・!でもな!!」
 ガン!と頭を衝撃が突き抜けた。目の前に星が散って、ぐわんぐわんと脳が揺れた。
 強烈すぎる、青龍の頭突き・・・・・!!
 歯を噛みしめて、本当に憎しみで人が殺せそうな青龍が呻いた。
「・・・・・貴様が何を言ったか知らないがな・・・・!俺はあの男子に俺と貴様は『ただれた関係』だと言われたんだ!!これが腹を立てずにいられるか!!」

・・・・・・うわぁ・・・・・・・・

「・・・・・それは、ほれ、あいつも勘違いしてるだけで・・・・ちゃんと明日誤解は解いておくから・・・・・」
「当たり前だ・・・・・!!」
 吐き捨てるように言って、ようやく手を離してくれた。俺は皺になった服を伸ばして少し咳き込んでから、脊髄反射で言葉を発した。
「でもそんな子供の戯言真に受けなくてもいいんじゃないか、青龍」
 時限爆弾スイッチオン。カウント、ゼロ。
 俺は反省はしても学習はしない。
「・・・・・・たった今、俺は決めた事がある」
「青龍、笑って許そう」
「許せるかこのアホ!今決めた、即行で決めた!!貴様のある事ない事言いふらしてやる!無様に泣き崩れろ!後ろ指差されて学校生活を送れ!最終的に懲戒免職処分になって路頭に迷うがいい!!!」
「お前何恐ろしいこと言ってくれてんだーーーーーー!!!」
「黙れ下衆!!」
「あ、ちょっ、待て青龍――――!帰るな、その顔で帰るなっ!すれ違う人がショック死するから待て!お茶でも飲んで落ち着いて話し合おう!」
 でも、青龍はそれきり振り返ることなく帰っていった。

 俺はその後近辺整理に精を出した。振り返ってみれば、楽しい人生だったな・・・・。

抜き取り式御題[台詞]・[弐] No:1(上)

June 08 [Thu], 2006, 14:46
 この学校は大丈夫なんだろうか。不純異性交遊はダメとか言うけど、じゃあ不純同性交遊はどうなんだ。
 ああ、スイマセン。語弊がありました。『不純』じゃないッスよね。きわめて本人達は『清純』なつもりなんですよね。・・・・・・・・きっと。
 とにかくどういう運命か。俺は青龍先生のところに行かなくてはいけない理由があった。
・・・ま、理由はただ単に授業中うっかり妄想にふけってしまって特別課題が出たから取りに行くって話なんだけどね。
「青龍先生〜・・・」
「来たか」
 先生はいつも不機嫌そうで怖い。何が怖いって目が怖い。
「これを五時までに全部やって持ってこい。もし万が一間に合わなかったら、時間が一分過ぎるごとに一枚ずつ追加してやるからな」
 そう言ってどさっと渡されたのは分厚いプリントの束。うえっ!!
「・・・・・すいません、できる自信がありません」
「何だと?」
 ひいっ!すいませんすいません、やらないうちから弱音吐いてすいません!でも絶対無理ですから!俺には無理ですから!!昔から国語の能力はめちゃくちゃ低くて中学の時国語の備考欄に『頑張れ』って書かれたくらいできないんですよ!
 って、そんなこと正直に言ったら絶対『いい機会だ、しっかりやれ』って言われるに決まってるよ。
「あの、えーと部活で試合が近くて、そっちの練習したいので・・・・・・」
「それでもう少し減らせ、もしくは明日にしろと?」
 頷いたら、ハッ!と鼻で笑われた。
「お前、何部だ?」
「・・・・・バスケ部です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・バスケ?」

抜き取り式御題[台詞]・[弐] No:1(下)

June 08 [Thu], 2006, 14:42
 先生、何でそんなものすごく微妙な顔で固まってるんですか。部活そんな特別な部じゃないですよ?
 青龍先生は深々と息をついて、掛けていた眼鏡を外した。
「バスケ・・・・・あいつが顧問か」
「あいつ?ああ、紅蓮先生ですか」
「・・・・あいつが顧問となるとあとで何を言われるかわかったもんじゃないな・・・・・・」
「何でですか?」
「前に一度部活を休ませて課題をさせたら散々文句を言われた」
 あー・・・・・・・・・。
 その様子がリアルに想像できて、納得。先生は案外部活バカだから。
 先生は俺に持たせたプリントをひょいと持ち上げると、自分の机の上に置いた。
「試合が終わってからにしてやる。忘れるな」
「あ、ありがとうございます!!」
 やった!紅蓮先生、俺、あなたに初めて感謝しました!!
「絶対忘れません!や〜、青龍先生って紅蓮先生に弱いんですねぇ」
「・・・・・そんなわけあるか」
「またまたそんないいですよ、知ってますから。この前紅蓮先生が約束すっぽかして怒った事とか、怪我の事とか」
 先生の視線が、人を殺せるレベルで鋭くなった。
アホだ、俺。何自分から地雷踏みに行ってるんだ。
 ドスの利いた低い声で先生は、
「なぜお前が知っている」
「・・・・先生が教えてくれました」
「・・・・・あのお喋りがっ・・・・・!!!」
 紅蓮先生、すいません。調子に乗ってしまいました。
「だ、誰にも言ってないですよ!?そんな先生と紅蓮先生がただれた関係なんて!!」
「誰がただれた関係だ!!」
 ああアホの世界チャンピオンか俺は!何でそんな地雷踏んでさらに魚雷に掴まるようなことを口走っているんだ!
 ほら見ろ!先生怒り狂ってるじゃないか!!
「・・・・・お前、いいか、現代文のプリントは待ってやる・・・・・・だけどな!!」
「ヒッ!!」
 突如指差されて身も凍る。先生の目が、それはもう激しく冷たく燃えあがっていた。
「基本的人権について、明日までにレポート20枚まとめて来い・・・!!わかったか!」

 基本的人権キターーーー!!!

抜き取り式お題[台詞]・壱 No:1

June 04 [Sun], 2006, 11:33
 Tシャツから出た腕に、褐色の肌とは正反対の真っ白い包帯。何か痛々しいなぁとじっと見ていたら、気が付いた先生がどうしたと声をかけてきた。
「いえ、何かそれ痛そうだなーと思って」
「これか?」
 自分の二の腕を指差して、先生はカラカラと笑った。
「まぁ痛いな。昨日しくじったんだ」
「どうしてそんなところ怪我するんですか」
「・・・・・・」
 俺の質問に先生は急にドンヨリした顔になる。俺は何か古傷を引っぺがして塩を塗りたくるようなことを言っただろうか。
 先生はため息をついて持っていたボールを回し始めた。
「・・・・昨日忘れていた約束の代わりに、青龍の家に行ったんだ」
「ああ」
 あの聞きたくもない秘密か。
「それで行ったはいいんだが何の約束をしていたか忘れてな・・・・・」
「・・・・・それ最悪じゃないですか」
 ホントに最低最悪。あ、何となく傷の予想が付くぞ。
「そうなんだ、最悪で・・・・。俺もよせばいいのに思わず『何で俺はお前の家行く約束していたんだっけ?』と聞いてしまって・・・・・」
 馬鹿正直め。
「そうしたら青龍めちゃくちゃ怒ってなー」
 そりゃ怒るよ。普通怒るよ。
「『お前もう帰れ』って言って、でもせっかく来たし何かもてなせと言ったらさらに怒って」
・・・・・・・・・・何かもう救いようがないなこの人。
「ドア締めて俺を押しだそうとしてたのを押しとどめてたらその拍子にガラスでガチャン、と。ばっくり切れた」
やっぱりな。この人の怪我をする理由はそんなくだらないことなのだろうと思っていたよ。
「それで先生病院行ったんですか?」
「いや?」
「は?」
 何で俺がそんな『ガラスで切ったくらいで病院行かなきゃならないんだ』って目で見られるんだよ。
 先生はおもむろに包帯を解くと、まだ赤い傷口を見せてくれた。そこは縫われていて、やっぱり病院に行ったようだった。
 じゃあ何でこんな目をするんだこの人。
 先生はニッと笑って、
「この傷俺の手縫いだ。なかなかのものだろ?」

 病院行けやーーーーーー!!!!

「いやー、やっぱ並縫いは難しいなー」
 せめて本返し縫いにしろよ!!
 ちくしょうこんな人が顧問の部活なんかやめてやるーーーっ!!


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