シルエット 

2006年06月03日(土) 23時12分

■シルエット/島本理生(講談社文庫)★★★☆☆

女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠(かん)くん。冠くんと別れ、半ばやけでつき合った遊び人の藤井。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を強く求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人賞優秀作の表題作と15歳のデビュー作他1篇を収録する、せつなくていとおしい、等身大の恋愛小説。 (amazonから転載)

しりあがり寿の「真夜中のヤジさんキタさん」のなかで、お互いを尊重しプラトニックな愛を求めて、身体の関係を持たないように背中と背中をくっつけた夫婦のことを描いた一編があって、この本を読んでいる時にふとそれを思い出した。

ある一定の年齢に達すると、恋愛とその延長上にある肉体関係を意識するようになったり、実際に肉体関係をもつようになるわけだけれど、それに関してとても抵抗を感じる時期があった。だけど相手を強く求めて、心だけでなく身体でもつながりたいと思うことは、ある意味で純粋な恋愛のかたちなのかな〜ぐだぐだ。と、この小説を読んでそんなことを考えました。

海馬の助走 

2006年06月03日(土) 22時43分

■海馬の助走/若合 春侑(中央公論社)★★★☆☆

東北地方で魚商人だった著者の父親をモデルに、昭和前半の地方の家族の喜怒哀楽を描いた小説。以前読んだ同じ作者の「無花果日記」という小説と、この小説の文体が全然違うので驚いた。

戦前から戦後直後の激動の時代を、赤貧を味わいながらも必死で生き抜こうとする主人公の姿勢が印象的だった。当時の家庭や社会の描写が濃密で、漁場の魚やほこりっぽい空気のにおいが立ち上がってくるようだった。

王国3〜秘密の花園〜 

2006年06月03日(土) 22時34分

■王国3〜秘密の花園〜/よしもとばなな(新潮社)★★★☆☆

雫石の不倫相手、真一郎の協議離婚が成立した。新しい生活が始まろうとするその矢先、壁が立ち塞がる。それは、真一郎の亡き親友が残した美しい庭と、その庭を守り抜こうとする若く魅力的な義母の出現だった。真一郎の思いを見抜き悩む雫石。落ち込んだ自分を見つめ、自分が何に耐えられないのかを知ろうとする雫石の心の旅。 (amazonから転載)

前にも書いたけれど、よしもとばななの作品は以前のものよりも「スピリチュアル」な世界観を前面に押し出していて、そのような精神世界になじみがないためか抵抗を感じる。それでも小説を読んでいると、時々はっとするような表現に出会ったりして、ついつい新刊が出ると手にとってしまう。

雪屋のロッスさん 

2006年06月03日(土) 22時22分

■雪屋のロッスさん/いしいしんじ(ダヴィンチブックス)★★☆☆☆

雪屋のロッスさん、大泥棒の前田さん、似顔絵描きのローばあさん、サラリーマンの斉藤さん…。物語作家の著者が描く、さまざまな人たちとその営み。

リトルバイリトル/島本理生 

2006年05月29日(月) 16時01分

■リトルバイリトル/島本理生(講談社)★★★☆☆

高校生作家の芥川賞候補作ということで話題になった小説。文章もうまいし、心に傷を抱えた主人公が様々な人々に支えられ日々を淡々と過ごしながらも、前を向いて生活していく姿に好感が持てた。

古道具 中野商店/川上弘美 

2006年05月29日(月) 15時28分

■古道具 中野商店/川上弘美(新潮社)★★★★☆

 愛すべき恋するダメ中年店主「ナカノさん」、そのお姉さんで艶っぽい「マサヨ」、そしてアルバイト従業員の「わたし」、小指の無いぼんやりした男「タケオ」。東京郊外の小さな古道具屋、中野商店に関わる人々の日々を淡々と綴る長編作品。

 食べ物に関する研ぎ澄まされた感覚とその描写、日常の些細な挙動への細やかな筆致、川上弘美の文章を読むと、起きて、食べて、セックスもして・・・と日々を淡々と重ねていくことの美しさや喜びみたいなものに気づかされ、幸せな気持ちになります。

 そんな日常の描写の間に描かれた、「わたし」と「タケオ」の不器用でささやかな恋が、なんとなく行き違ってどんどんはなれてしまう感じがリアルで、でも恋愛ってそういうものかも、なんてできるだけ結末を知りたくないような思いでページを読みすすめていたのですが、最後はとてもよかったです。

煙か土か食い物/舞城王太郎 

2006年05月26日(金) 16時09分
■煙か土か食い物/舞城王太郎(講談社文庫)★★★☆☆

腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者に母親が巻き込まれたというのだ。故郷に戻った四郎を待っていたのは、凄惨な暴力と狂気、そして家族との確執と絆だった・・・。

ぐいぐい読ませる展開とスピード感ある文体で読むものをひきつける。次男の二郎のなかに、暴力性が芽生え、育ち、増幅していく過程はもはやミステリーというジャンルを越えた深い洞察があって、純文学的なにおいすら感じる。

好き嫌いのはっきり別れる作家だけど、新しくて面白い。好き。

ダヴィンチ・コード/ダン・ブラウン 

2006年05月21日(日) 10時24分

■ダヴィンチ・コード/ダン・ブラウン(角川文庫)★★★★★

 ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く……。(amazonから転載)

 「この小説は事実に基づいて書かれている」と冒頭にあり、ダヴィンチの絵画や実在の宗教団体が物語の謎解きと深く絡み合って展開されていくので、「ほんとかな〜」と思いつつも「そういう解釈もできるかも!」なんてわくわくしながら一気に読んでしまった。

世界文学のすすめ 

2006年04月29日(土) 8時51分
世界文学のすすめ/編:大岡 信、岡本大三郎、川村 二郎、小池 滋、沼野 充義(岩波書店)
★★★☆☆

 私がおもしろいな〜とかいいな〜と思う文学、映画、文化etcは日本のものが多く、海外の作品や文化には”憧れ”さらには”コンプレックス”みたいなものもあまり感じない。それは海外の文化に対する無知からくるものだと思い至り、それじゃ〜偏狭でいけない、とりあえず海外文学は何を読もうかな、とこの本を手に取った。

 海外の文学の面白いところは、まず、日本のそれとは違う重層的な構成と、あとは自分とは全く異なる文化的背景を持つ登場人物の心の動きの違いと共通点の面白さにあるかなと思う。んだけどそこに到達する前に挫折してしまうのは、なかなか訳文がしっくりこないこなかったり、文化的な違い(日常生活の常識とか宗教的なこととか)が理解できずだんだん煩わしくなって読む気がなくなってしまうからだ。わたしもいつの間にか頭が固くなってしまったのかなとあ。

 この本のなかでレビューを書いている人の多くは、それぞれ選んだ海外文学を中学・高校時代の頭の柔らかい時期に読んでいるようだった。こういう世界文学、特に長編は、まだ価値観が定まらず、考え方の柔軟な、少年・青年時代にこそ読むべき、というか、その時代にしか読むことができないのかな、と思った。とはいえまだ学生だし、色々な作品にチャレンジはしたい。

 「オディプス王」「西遊記」「ガリバー旅行記」「怪談」「ハックルベリー・フィンの冒険」「グリム童話集」「カフカ短編集」などが面白そうだなと思った。あ〜でもやっぱり短編ばっかり

 何か海外の作品でおすすめがあったら教えていただきたいです。

県庁の星/桂 望実 

2006年04月20日(木) 13時51分
県庁の星/桂 望実(小学館)★★★★☆

 Y県県庁期待のホープ、野村聡はY県初の民間人事交流対象者のひとりに選ばれた。1年の研修期間の後に待っているのは約束された出生街道。しかし意気揚々と仕事に臨む聡の赴任先はド田舎のスーパーだった・・・。

 役人根性でガチガチの聡が活気のない田舎のスーパーで浮きまくる序盤も滑稽で面白いし、活気のない店員やパートのおばちゃん、惣菜売り場で働く外国人たちと一致団結して店の経営危機を乗り切る過程も、テンポが良くさわやか。

 データ・計画・文章主義、現実を知らず融通の利かないおカタイ役人の聡と、学歴や知識はないけれど現場を知り、庶民の常識を知りたくみに空気を読む従業員やパートの対立の構図や物語の展開はステレオタイプだけど、軽い気持ちでさくさく読めるエンターテイメント小説でした。

映画もおもしろそう。http://kaikaku-movie.jp/
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