逢瀬 

2006年07月07日(金) 2時45分
文月の7日
夜空に浮かぶ夏の大三角形、西よりのこと座の織姫と、
その向かいのわし座の彦星との一年に一度の逢瀬の晩でございます。

夕刻6時を回っても明るい時分、来客が参ります。
今宵は曇り、多少は薄暗くなっておりますが、まだまだ日は高こうございます。

「悪かったね、呼びつけてしまって。」
「いや、構いやしないよ。どうせ暇な身だ。」
「外は暑かっただろう。お上がりよ。」
庭に面した部屋で冷やした麦茶を勧める。氷がカロンと涼しげな音を立てる。
「この家の庭は立派なものだな」
「祖父から家ごと譲り受けたのだよ。私の手じゃない。」
「手入れは、」
「馴染みの庭師が時折来ている。しかし、庭木は気まぐれだからね。時々追い返してしまうから困りものだよ。」
「庭木が追い返すのか、」
「そんなときもあるさ。」
彼はわかったようなわからないような顔を見せる。

「時に中原君、君 紫陽花は好きかい。」
「ほっくり咲いた姿の紫陽花ってのはいいもんだと思うが。」
「そうか。うちにはため池の淵に咲いていてね。結構立派な花をつけているんだ。この時期それは瑞々しい姿でね。よかったら見てやるといい。紫陽花も喜ぶ」
「すっかり庭の亭主だな」
ははっと笑って庭に下りる。表の道よりも緑が近く、日向でも涼しい。
「やっとの逢瀬だ。ゆっくりするといい。」
花が風にそよいで笑う。
「逢瀬…そう云えば今日は七夕か。しかし今宵は薄曇りだ。叶うかどうか。」
「なに、雲で人から見えぬだけで逢瀬は逢瀬。人から見えぬだけでな。」
ただのひと月で恋し哀しと嘆くのだ。
一年(ひととせ)ならばなおのこと。顔を見るだけで天にも昇る心地だろう。

「今宵はゆるりとして行けばいい。」
「紫陽花も喜ぶ、か…、」
振り向いてにっと笑う。
「そういうことだね。」
切子グラスの氷がカロンと笑う。

梅雨の季節 弐 

2006年07月01日(土) 13時05分
押し殺した泣き声は徐々にはっきりと聞こえるようになります。
池の淵まで近づくと、泣き声がはっとこちらを向きました。
声の主は紫陽花でございました。
赤紫の色に染まった花々の群生がわっと咲き乱れております。
「一体何を泣いているんだい」

しかし、紫陽花はほとほとと涙をこぼすばかりで口を開こうとはしません。
すると池の淵から鯉が顔を出します。
「紫陽花の涙は藍色なみだ」
「先の頃から変わらぬ哀を」
「逢いを願うて暮れぬ日々」
口々に云ってはぽこっと空気を吐き出して池の中へと帰ってゆきます。
はて、何のことやら・・・。

「紫陽花は懸想してるのよ」
後ろを振り向くと桜の木が声を掛けてきます。
「・・・一体誰に?」
桜はころころと笑って
「貴方じゃないことは確かね」
「・・・」
「ひと月ほど前に来たでしょう」
「忘れ物」
「届け物」
「赤い自転車」
「キツネの目」
鯉たちが騒ぎ出す。

「ああ、忘れ物を届けてくれた中原君ですね」
「そう、彼よ。あれから一度も来てないでしょう。紫陽花は彼を想ってるのね。ふふ、可愛いじゃない」
桜は紫陽花を一なでしてじゃあねと去ってゆきました。
「彼に逢いたかったんだね。君が綺麗に咲いてるからと誘っておくから、今日はもうゆっくりおやすみ」
紫陽花はほっと微笑みを返してくれました。

梅雨の季節 

2006年07月01日(土) 10時41分
梅雨の季節、少々寝苦しい夜もございます。
そんな眠りの浅い夜の出来事でした。

しとしとと小雨が降り、雨樋から垂れる水音が耳につきます。
幾度寝返りを打ってもなかなか次の眠りは訪れず
耐え切れずに部屋を抜け出し庭沿いの縁側に腰を下ろしました。
生ぬるい風が全身を包み、眠気はとうに去ってしまったようです。
空は明けの月を隠しどんよりと重たい表情をしています。

ぼぅっと庭を眺めておりますと、何やら微かな音が聞こえて参ります。
滴の奏でる不規則なリズムのその合間に時折交ざるようです。
雨音に交ざって微かに、ほんの微かな音…否、それは押し殺した泣き声でございました。
こんな夜にどうしたことだろう…。

外灯を頼りに見回してみても、薄暗くてとてもよくわかりません。
「誰か居るのかい」
声を掛けようと思った瞬間、柳の木の枝が肩に触れます。
「しっ、静かに」
そう云っているようでした。

困惑して柳を見上げると、そっと池を指差すのです。
池のほとりには水仙や菖蒲、紫陽花が咲いております。
どれも今は水の粒を抱きながらも凛と立っておりました。
私は手短な灯篭を持ちそっと近づいてみました。

花の季節に 

2006年04月06日(木) 3時13分
桜の咲く時期になりました。

桜は麗らかに咲くという意味の「咲麗(さきうら)」から“さくら”と呼ばれているという説がございます。

我が家の庭には桜の木が一本、凛と立っております。
家の裏手の縁側から見上げればちょうど好い具合に枝垂れた桜を拝めます。
今の花の頃合いは3〜4部咲き、花見をするにはまだ早いですが
咲いたばかりの花や蕾は柔らかに、私をご覧よと傍を通れば呼びかけて参ります。

遊び性なもので、訪ねてくる友人などにはちょくちょく気軽に声を掛けているようです。
満開の折には十分に愛でてやろうと思うております。あれは宴が好きですから。

貴方も一席、いかがでございましょうか。

13月はじめました。 

2006年01月27日(金) 5時22分
管理人の鉱月と申します。

こちらは13月の日めくり帳です。
今宵のお越しを感謝いたします。

当方来客はどなた様でも歓迎いたしております。
…が、夜の帳が下りる頃は悪さをするものが時折おります。
どうぞお気をつけください。

手始めに今宵は日の出時間の表紙でございます。 
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