ディープ映画レビュー「The Interview」 

December 30 [Tue], 2014, 23:32
お久しぶりです。
9月以来更新していませんでしたが,あれから文化祭だの色々行事もあり,あっという間に年の瀬となってしまいました。ということで,一度だけ更新しておこうと思い立った次第です。

自分は朝鮮半島ウォッチャーという怪しい肩書きを持っていますが,そんな自分としては,今年は拉致問題など日朝関係に結構期待を寄せていました。しかし蓋を開けてみれば,日朝関係は結局膠着したまま,むしろ韓国の話題ばかりがくどくど取り上げられる状況。ナッツ航空なんかより,高麗航空のネタの方が絶対面白いのに。

しかし年末,ソニーが北朝鮮にハッキングされるという面白い事態が発生しました。聞けば,金正恩を暗殺する映画の公開が原因とのこと。本来,アメリカのB級映画なんぞ日本在住の私には縁もゆかりもなかったわけですが,公開中止からのオンライン公開のおかげで,(本当はアウトなのですが)自分も観ることができました。せっかくなので,感想や所見を遺しておきたく。
当然ながら字幕も吹き替えもなく,結構重要なところを聞き逃してるかもなので,興味がある方はご自分で観ることを勧めます。



まずはポスター。こういうキービジュアルは非常に再現性が高いです。特に書体とか。
因みに朝鮮語の部分は「この無知な美国(アメリカ)野郎共を信じないでください」。せっかく書体は良いのに,文章が機械翻訳みたいになっているのが勿体ないです。まあ,雰囲気だけってことですかね。
あとどうでもいいですが,日本のメディアが邦訳で「ザ・インタビュー」と書いているのが話題になってましたが,韓国語だと「ド・イントビュ」になります。大概ですね。


とりあえずソニー公式の予告動画。

さて,冒頭は朝鮮労働党創建記念塔の前(マンションに百戦百勝って書いてあるとこ)で韓服を着た女の子が歌うシーンです。その歌詞は朝鮮語で,英語字幕が出ているのですが,その内容がアメリカのクソヤンキーども飢えて死ね,自分の血とshitの海に飲まれてしまえー的な。結構初っ端から破壊力デカイです。韓国の反日教育とかもそうですけど,可愛い子供が無邪気に過激な政治的主張をしているのを見るのは辛いことです。

場面は変わってアメリカ。
主人公であるデイブ・スカイラークはインタビュー番組の司会者で,プロデューサーであるアーロン・ラパポートとともに数々の有名人の素顔を剥いできました。映画の冒頭でも,さらっとゲストがゲイであることをカミングアウトしたり,ズラを外したりするシーンが登場します。

そんな彼らが,ひょんなことから金正恩にインタビューできることに。実は金正恩本人が番組のファンだったんです。この辺はデニスロッドマンの例もあるし,普通にありそうな展開。
一方,CIAの美女からこっそり暗殺依頼も受けてしまう。「take him out」と言われて,しばらく二人は事が呑み込めなかったようです。結局,恐る恐る毒薬を携帯して訪朝する羽目に。


▲"Take Him Out"(動画見つけました)

平壌順安空港に降り立ったスカイラーク「コンニチハ!」



…まあそんなもんか。

さて,ここから場面は北朝鮮。撮影場所はアメリカか中国か,といったところでしょうが,結構北朝鮮の"不毛な土地"感が再現されてました。建物とかCGの場面も多いですが,それもなかなか。

最初の夜は森のなかの保養所の豪華な一室に通される二人。最初に鏡に怯えたり,盗聴器を探したりするのはお約束。
しかしここでスカイラーク氏,毒薬を無くしてしまったためにCIAの無人飛行機で平壌まで替えを届けてもらうことに。ラパポートが回収しに行ったもののバレかけて,自分の尻の穴にカプセルを隠す。無実を証明するために人民軍兵士の前で全裸になるあたりは,さすがに脚本家も兼ねている氏の意地の見せどころか。

翌朝,カリアゲ君登場。実物より少し老けて見える。というよりは,余裕がありそうな感じ。英語もうまいし,普通にfuckって言いまくってるし。
スカイラークと戦車に乗ったり,バスケに興じたり。そのなかで,偉大になり過ぎた父や祖父を継がなければならないことに対する複雑な感情を吐露したりも。本人も言っている通り,ただの若造なんです。彼に共感や同情を抱き始めたスカイラークは,暗殺をやめようと考え始めます。

一方のラパポートはセクシーな女性軍人とインタビューに関する打ち合わせ。ちょっとアメリカン過ぎて北方の美型という感じではないのですが,アメリカ人の抱くコリアンのイメージってこんな感じなんだー,という新鮮な印象です。
彼女は祖国を愛してはいますが,愛しているが故に,今の体制に不満を持っているようです。酒が回ると,少しずつ本音が出てきます。敵国アメリカ人であるラパポートに惚れてしまうあたり,彼女も複雑な境遇にありそう。最後は,二人で服脱いでベッドイン。

さてスカイラークは,食事の場で子供のように怒りをぶちまける金正恩を見たり,ハリボテのスーパー,フェイクのオレンジを目の当たりにしたりして,次第に感情が変わっていきました(早!)。ジョンウンの巨大な肖像画に向かって「嘘つき!お前は嘘つきだ!」と叫ぶシーンが印象的。
で部屋に戻ると,ラパポートと彼女がベッドでいちゃいちゃしていた後だったと(直接は見ていない)。三人揃ったところで,暗殺計画を練り直し。結局,毒殺するのではなくインタビューで本性を暴くという形で金正恩の息の根を止めることにしたようです。
これは朝鮮ウォッチャーである私の深読みですが,かの国では,金日成も金正日も肉体的生命は尽きても政治的生命は永久に残り続けるという思想が徹底されています。看板文句である「偉大な首領金日成同志は永遠に我らとともにおられる」というのはそういう意味なんです。
つまり,独裁者の肉体的生命を止めたところで政治が変わるわけじゃない。別の独裁者が出てくるだけなんですね。だからこそ,彼の政治生命を消滅させることに意味があるわけです。

でインタビュー。アメリカは勿論,北朝鮮国内とか世界中に生中継されてます。最初は無難な質問ですが,「どうして核兵器に金は掛けるのに国民は飢えている?」などと核心に迫ると怯え出すカリアゲ君。fireworkをスカイラークが歌い始めると,ついに焦りまくってウンコを漏らしてしまうという。テレビで観ている北朝鮮の人民たちも動揺し始めます。
スタジオの裏側では,朝鮮のテレビクルーたちが放映を止めようとしてラパポートと乱闘に。指を噛み切ったりと踏んだり蹴ったりです。例の彼女は,朝鮮側の人間であるにも関わらず放映を続けさせます。最終的には銃を乱射して解決。

スタジオでは,カリアゲ君が勢い余ってスカイラークに銃をぶっ放し,怒り狂ったままスタジオから逃げ出してしまいます。
一方スカイラークは無傷で,ラパポートと合流して急いで逃げることに。スカイラークが生きていると知ったカリアゲ君はさらに怒り狂い,アメリカに向けて核ミサイルの発射準備を始めます。ぶっ飛んでますけど,独裁者の最後って,やっぱりこうなるんですよね。もう,カリアゲ君は正気を失くしています。
結局,スカイラークが発射したミサイルがカリアゲ君の乗ったヘリコプターに直撃し,ここに三代続いた金王朝は崩壊したのでした。そして二人は,怒り狂う前にカリアゲ君から贈られた子犬とともに帰郷。
その頃北朝鮮では,新たな時代が訪れようとしていたのです。一応ハッピーエンド。


まあ,B級映画としては悪くないと思います。ネタも多くて結構笑える。個人的には,北朝鮮は反米なのにアメリカ英語が飛び交っていたこととか。当然ですが,キャストは全員アメリカ人なので,人民軍役にしてもまともな朝鮮語を話してません。ヨボセヨ?とかカジャ!とか片言で言ってました。
最終的にカリアゲ君を暗殺してしまったのは(個人的には)残念でしたが,自らの戦車と砲弾によって死んでいく独裁者の姿は,とてもB級コメディーとは思えないほど魅惑的なシーンでした。


fireworkって,こんな感傷的な曲だったんですね。

ただ,朝鮮民主主義人民共和国という国をどの程度捉えられていたのか。アメリカ人にとって未開な有色人種国家という表層を切り取っていただけではないかと思えてなりません。朝鮮半島特有の世界観とか,民族性とかは全く感じられませんでした。これはステレオタイプの薄っぺらい北朝鮮であり,(今さらではあるけれど)アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための映画なんだな,ということを再認識しました。それが理解できてしまった以上,私がこの映画の北朝鮮に関する部分についてとやかく批判することはできないですね。さらに言えば,北朝鮮当局がとやかく言うのもお門違いということです(確かに最高尊厳をネタにしまくっているのは間違いないですが)。特に政治的要素とかが無ければ,普通にB級コメディーとして気兼ねなく楽しめたと思うのですが。


さて,朝鮮半島特有の世界観を楽しみたい人には,韓国映画「The Flu」を勧めたいと思います。
ソウル市盆唐区に広がった致死性の鳥インフルで国が大混乱する様子と,それに翻弄される男女の運命を描いた作品で,「韓半島」のように不快な内容は伴わずに,韓国人特有の感情とか国家観を見てとれると思います。
政治方針を巡って,理想主義で情に厚い若き大統領と現実主義の総理が対立するあたりは鉄板です(「総理」側が勝利して日本に併合された李朝末期を,映画を舞台にやり直しているということ。大統領が勝って国が守られるというシナリオが多い→韓国人の自尊心が保たれる)。

中盤,感染者を隔離して処理する場面があるのですが,おぞましい描写が展開されます。



写っているのは,全て生きている人間の「死体」です。こういう場面は邦画では絶対観られないですね。かなり気持ち悪いですが,大きく感情を揺さぶられるのも事実です。

興味がある方は,ぜひ観てみてください。

9.11に見た国威発揚 

September 25 [Thu], 2014, 15:52
少し前のことになりますが,9月11日のこと,アメリカではニューヨーク・マンハッタンの同時多発テロから13年という節目の日を迎えていました。
一方,アジアでは仁川アジア大会に合わせて選手が続々と訪韓していた時期に当たります。9月11日,颯爽と仁川国際空港に降り立ったのは北朝鮮の第一次選手団94人を乗せた高麗航空機。その韓国での報道がなかなか興味深いものだったので,記事に起こすことにします。

まずツイッターで流れてきたのは,韓国人が投稿した以下のような画像と文章でした。


「仁川空港には駐機スポットが200個はあるハズなのに,A380の横にピッタリの割り当てなのは狙ってるな。真の資本主義を見せつけようとしているに違いない(適当訳)」

この画像から滲み出る恣意的な部分は幾ら挙げてもキリがありません。
まず,何故高麗航空機を沖止めにしなかったのか。北朝鮮の選手は仮にも敵国人であるわけで,わざわざ民間人と接触できるようなターミナルに近いスポットを選んだのかが理解できません。それに付随して,仮にターミナルに近いスポットを選ぶにしても,何故アシアナや外国のエアラインと並べるのではなく,大韓航空占用のスポットに誘導したのか。
更に突っ込んだことを問えば,何故隣が大韓航空でもレアな部類に入るA380なのか,そして,何故それを並べて撮ったのか。

ハングルで調べてみると,他にもこんな画像が出てきました。


これは仁川空港到着時の様子。
手前に大韓航空の尾翼(しかも大型機777の)を入れる必要がどこにあるのでしょうか。"北韓の飛行機が韓国に来た"感を演出したいのは判りますが,それにしても,という印象を受けます。


そして先ほどの写真の広角カット。

確かにA380と比べればロシア製のTu204は小物感にあふれますが,それはB737やB767,A320であっても同じことです。わざわざ超大型機であるA380を並べているのはどう見ても恣意的です。さらに,尾翼に韓国(即ち南側)のシンボルである太極旗が描かれているナショナルフラッグシップの大韓航空のそれであることは国威発揚以外の何物でもないでしょう。両国の国旗のサイズ比がそれを物語っていますね。
先ほどの韓国人が述べている通り,資本主義が優っていること,南側が朝鮮…いや韓半島の正統国家であることを誇示したいという思惑が透けて見えます。そもそも今回のアジア大会の開催自体が韓国の自尊心を満たすためのものではないのか,ということは韓国の某大手新聞でも指摘されています。
この写真だけを見てああだこうだと断定することは出来ませんが,それでも,韓国がどんな国であるかということが窺い知れるように思います。

南北融和を謳っているはずの韓国がこうした挑発に出たのは,当然理由があると思います。それは恐らく,美女応援団が来なくなったことへの報復です。
分断国家は世界の好奇な目を避けることはできません。あの西ドイツでさえ,「西」と言われれば冷戦や分断といったネガティヴワードが思い浮かんだように,韓国も経済が発展したところで負の印象を拭えずにいます。そもそも,世界の大半は韓国ではなく南朝鮮と呼んでいるわけですから,当然のことでもあります。
そこでナショナルブランド向上を促進している韓国は,アジア大会を機に南北の融和姿勢をアピールし,国のイメージを向上させたいという思惑があったと思われます。そのなかには,南北両市民が統一旗を共に携える構図や,美女軍団の来韓などがあったのでしょう。しかし,北朝鮮は融和提案を拒否したばかりか,応援団も送ってこなかったのです。
結果,北朝鮮がアジア大会に参加しても何もメリットが無くなった韓国は,こういった行動に出たのではないでしょうか。

因みに韓国のとある掲示板では,この写真に対して以下のようなコメントを寄せています。

「北韓の飛行機が小さいね」
「北韓は遠近法の錯覚だと言うでしょうwww」
「北韓の飛行機がどうやって韓国の空港に来たのでしょう。不時着ならともかく・・・」

まあ,これも私が恣意的に選んだものではありますが,歓迎するようなコメントはありませんでした。これが南北融和の実態だと考えれば,この一件に美女団派遣騒動は全く関係なかったのかな,という感じもします。

せっかくなので,模型でやってみました。
Tu204は未発売なので,およそ同じくらいの大きさであるTu154で代用しています。


▲遠近法を駆使すると同じくらいの大きさに?


▲上から見るのは・・・。


▲大韓航空と高麗航空。
分断国家の悲哀を感じます。それと,やっぱりA380は巨大でしたね。一時は高麗航空がエアバス機を購入するという報道もありましたが,当面はロシアの小型機だけで運用されるようです。

今大会では,運営や観客のマナーなど,韓国のモラルが問われる場面が多いような印象を受けます。これら一連の流れを見ていると,必ずしも「大」韓民国が真の意味で大きな国というわけではなく,そして,必ずしも南が北を圧倒しているわけでもない,と思わされます。
P R
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かつては東急沿線に,或る時は西鉄沿線に,現在は小田急沿線に住む,私鉄電車をこよなく愛する者。
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