
敗戦の色が濃厚になってきた1945年の日本。条件付き降伏をアメリカに認めさせるため、帝国海軍の一部の勢力は、ナチスの元で作られた特殊水中探査兵器「PsMB1」ー通称「ローレライ」ーを、潜水艦「伊507」に搭載し、アメリカへ差し向けた…
たまーに読みたくなり、読むとやたら愛国心に溢れる気分になってテンションが上がるにもかかわらず、読んだ後はだいぶ放心状態になってしまう本です。
何と言っても、登場人物がそれぞれしっかり描き込まれているのが素晴らしいです。史実と虚構を巧みに織り合わせていながらも、要所要所は史実に忠実な構造をとっているため、私なんかはどこまでが本当にあったことなのか分からなくなってしまいます(笑)
特に好きな人物は、フリッツさんと艦長の絹見さんですかね。フリッツさんは、なるべく早く日本(つまりいずれ滅びる国)から妹を逃そうとしていた頃から、「伊507」を信頼して妹を託せるような心境に至れるようになるまでの変化がかなり感動的でした。それから絹見さんは、帝国海軍の名に恥じない行いを装いつつも、心の中では戦争に疑問を感じる節もあり、そのせいか時折優しさが垣間見える…というあたりが大好きです。後はもう、
「
『否っ!』その声は声帯とは異なる、もっと深いところにある器官から発せられた。」(引用)
がかっこ良すぎます。ほんまに。「いなっ!」ですよ、ほんとにもう(テンション上がりすぎ)
色んな書評を見てると、終章が不要だと言う意見が多いみたいですね。私としては、終章は必要だったと思います。確かに説明が冗長な感じは受けますが、それ以上に最後のシーンは素晴らしいのです。戦争中は常に神経を張り詰めさせていたパウラが、自分の能力をしっかり余裕を持って受け止められるようになり、世の中に戦争がなくならないことを肌で(文字通り肌で)感じとりつつ、征人に語りかける、孫の弥生も思わず息を飲むほどその姿は若々しいものであったといった場面は本当に美しいものでした。