ぽぽちゃん 

September 01 [Fri], 2017, 20:00
たまには電話とかしてあげてねと母が言うので、
特に用はなかったが祖父母(母方)にコーリング。

祖母「あらっ!やんちゃん?!めずらしいこともあるものよね〜!!元気?元気なの?ご飯は食べてる?お化粧はしてる?不倫はしてないわよね?ふくらはぎは揉んでる?相変わらず膝が痛い毎日よこっちは。桜はどうなの?まだ咲いてる?え?何おじいちゃん、自分で言いなさいよ、ほら、変わってあげるから、なに?え、いやだ?もう・・・でね、」

マシンガンという言葉を擬人化するとたぶん祖母になる。
私は元気であるし、
化粧はたまにしているし、
(女は身だしなみを整えるのが礼儀と散々言われてきた)
不倫はしていないし、
(なぜか不倫に厳しい祖母の話→※参照)
ふくらはぎは揉んでいるし、
(去年“ふくらはぎを揉めば長生きする本”を唐突に送り付けてきた)
膝の痛みは私でなく医師に訴えてほしいし、
桜は半分散っているし、
祖父が私との対話を拒むのをリアル中継されて若干ヘコんだし、
もう切りたいぜ正直。

なおも続く祖母「あ、うん、はいはい(なにやら後ろで祖父とやり取りをしている様子)・・・あ、やんちゃん?おじいちゃんがね、ポポは元気に育ってる、だって。よかったね!」

よくねぇし!誰だよポポって!分かんねぇよ!

まさか・・・
まさかとは思うがあのぽぽちゃんか!



幼い母性を育む知育人形NO.1の、あの“ぽぽちゃん”の事なのか!

ついに祖父も退行が始まったか・・・
触れるまい、ここはそっと相槌を打って逃げ切ろう・・・

やん「そっかぁ、元気で何よりだよ!じゃあやんはこれからお風呂に入るからもう切るね!二人とも体に気を付けてね!またね!ちゃお」

罵ればいい、現実からダイナミックに目をそらす愚かな私を。
嗤えばいい、当然の変化を受け入れられないちっぽけな懐を。

おかっ・・・おかあさぁぁぁぁぁん!!!!!

お母さんはいつだってわたしのサンドバッグだ。

母「どうしたの?うん、え?ポポ?あぁ〜あれよ、夏に植えたアボカドのことよ、それ」

なに・・・?アボ・・・カ・・・ド・・・だと・・・?

こと想像力に関しては、
バーベル100sは余裕で上げられる筋力はあると自負していたのに、
どれだけ力を入れてもアボカドからポポちゃんへの跳躍が全くイマジンできない。

なぜ!どこの筋肉を使えばそうなるの!
おしえて!
おしえておじ・・・じゃなかった、おかあさぁぁああん!!

母によると、
去年の夏に私が帰省し実家で食い散らかした(1日2個食っていた)アボカドの種を、
なんかもったいないからじいちゃん家の余ってる畑に植えてもらおうぜ、
と面白半分に渡しておいたら祖父が“やんちゃんのために”と言って育て始めた、
とのことだった。

お、おれのためだったのか・・・

種を植えるまでアボカドという言葉も、
それが食べ物であることも知らなかった祖父は、
母が来るたびにあれは何ていう食べ物だったかと問い、
初めのうちは頑張ってアボカドしていたのがだんだん、
アボカノ、アモカノ、アポカノ、アポ+日替わりでアレンジされた語尾、
と変遷してゆき、気付いたらポポに落ち着いていたという。
略語センスが常人のナナメを快走中、それが祖父。

母「でもね、ポポに落ち着いてからはもうあれが何の種であったかは聞かれなくなったから、おじいちゃんとアボカドの間でうまく折り合いが付けられたんじゃないかな、良かったよ、外国の食べ物をやんのために育ててるんだって嬉しそうだしね、おじいちゃんがいいならもういいかなって、お母さんはそう思ってる」

祖父・・・
おれのためにポポちゃんを甲斐甲斐しく世話する、祖父・・・
こんな脳内筋肉、愛の前じゃ何の役にも立たなかったぜ、祖父・・・

ポポのことよろしくたのむな。
もし違うぽぽちゃんを愛でる祖父になったとしても、
おれはもう目をそらしたりはしないぜ。
祖父が異国のアボカドを受け入れてくれたように、
おれも全てを受け入れられる器になってみせるぜ。


もっと、しなやかな筋肉をつけよう。

千と千尋は便を出し 

July 31 [Mon], 2017, 23:07
またこの季節がやってきた。
飲食従事者には避けて通れぬ通過儀礼・検便だ。
今月末で退職が決定している私にも容赦なく提出が命じられる。
なめとんのか。
お前ら乙女の便秘をなめとんのか。
出せと言われて素直に出る便やと思てんのか。
肛門の硬さなめんなよぉぉぉぉ!!!!
パンツの中は大ストライキだ。

R君「ねぇね、見ました?まじでやなんすけど」
やん「だね。出したくない、てか出ない」
R「いっそギョウチュウって言ってパスしちゃおっかな〜」
やん「おい!そっちのほうが問題だわ(笑)!」
R「ですよね〜・・・てか聞いてくださいよ〜昔〜…」

当時Rは高校生。
初めてできた彼女に見栄を張って豪華なプレゼントを用意すべく、
こっそりアルバイトを始めることにした。
“まかないが魅力的”という
単純明快かつ思春期男子高生臭プンプンな理由で焼き肉屋に応募。
ついにやってきた面接日、R少年の胸筋(当時ばりばりの水泳部)が痙攣する。

店長(とおぼしき男)「あ、君、高校生?部活やってるの?両立できる?」
R「できます!深夜もいけます!」
店長「や、ごめんね、そこは法律で無理だから。高校生は22時までね」
R「じゃあ早朝の仕込みでもなんでもやります、ここで働かせてください!働きたいんです!」

湯婆婆に直訴する千尋並みの気迫だったと思う、と彼は述懐する。
ロン毛、という1点においてのみ千尋に見えなくもない。
差し当たり私は容姿端麗なハク様、ということで話を進める。

店長「ま、早朝はやってないけどね。そっか、うん、やる気は買うよ」
R「え、てことは合かk…」
店長「そうだなぁ、じゃあとりあえずコレ、提出してくれる?郵送で」

そういって小さなプラスチックの試験官を手渡されたR。
中に小さなスプーンのようなものがついていた。
それじゃあ今日はこれで、といって立ち去る店長の背中に、
あの!これは一体!せめてお名前だけでも!
とRが声をかけたかどうかは定かではないが、
きっとそんな状況だったはずだ。

やん、もといハク様「で、それは何だったのだ、千」
R、もとい名前を剥奪された千尋こと千「それが…検便キットだったの…」
ハク様「なに?!湯婆婆から直にか?!それはまことか?!」
千「本当よ、この手でちゃんと受け取ったもの。だから私帰って速攻で捻り出したわ!お父さんと、お母さんのためにもっ(泣)!」

千は急いでブツを郵送し、湯婆婆からの連絡を待った。
もちろんシフトはいつでも入れるよう、
部活の顧問にはしばらく勉学に励む旨を伝えて。

千「そしたら1週間後にきたの…」
ハク様(ごくり)
千「・・・お祈りメール(不合格通知)が来たのよっ!泣」
ハク様「まことかっ!!!!(爆笑)」

熱意は十分伝わったはずなのに何がいけなかったのか。
性格に異常があるなら改善、便に異常があるなら病院に行かねばならぬというのに、
湯婆婆は不合格の理由については何一つ触れてこなかったという。

千「それ以来わたし…検便が怖くなっちゃったの…これ、お別れにもらったメール。ちひろ?……千尋って……私の名だわ!」
ハク「千…そなたの本当の名は千尋というのか!」
千「ハクっ!そうよ、そうだわ!わたし千尋っていうの!便と一緒に名前も取られかけてた!」

かくして名前をとりもどした千尋もといRは、次の日にそそくさと便を提出し、
2度と不可解な解雇を言い渡されないよう最善を尽くした。

一方、最近明らかに丸くなったハク様はといえば、
いまだ本当の名を思い出せず、また便も出せずに、
ただ白い陶器にまたがって途方に暮れるばかりであった。

もうギョウチュウ(自己申告)しかないかもしれない。

実はすごい 

June 27 [Tue], 2017, 13:47
見えないけれど“実はすごい”
っていうのって
初めはけっこう侮られるパターン
なのかもしれないけれど
黙ってすごいモノを平然と
持っていられる人は総じて
並々ならぬオーラを発しているもので結果
一目置かれることになるよね遅かれ早かれ

だからというわけではないけれど
巨乳も巨根も隠されている方が
すごみがますと思うんだ
触れ回っちゃいけない
“実はすごい”という秘匿性にこそ
醸せるロイヤル感があると思うんだ

普段は見えないからこそ萌える
チラリズムの法則のように
ふとした瞬間に垣間見るからこそ
与えられる強烈なインパクトがそこにはある

だが悲しいかなわたしは
実は夜はすごいの
実は酔うとすごいのと
いたずらに妄想を掻き立ててもらえるような
“実はすごい”を
とりあえず匂わせるしかない毎日で

誰からも見えない心は
実はすごい下卑ており
誰からも見えている部分は
だいたい下品な作りをしてゐる
実はすごい凡庸な人間

つらたん 

June 10 [Sat], 2017, 13:33
R君は職場で一番若く、1996年生まれの蠍座だ。
蠍座と聞いて昭和生まれがもれなく披露する美川憲一が全く通用しない世代、
弟はなんと2001年生まれのミレニアムボーイ。
私が部活の顧問と揉めラケットを叩き割り、
猛然と坂道を駆け下りていた青き時代の話である。

R君のボキャブラリーはとても瑞々しい。

やん:Kさんが今週飲み会やるって言ってるんだけどR君来る?
R:今週?ヤッバ、どうだろ、行けるかな〜?ん〜まぁ場面で〜
やん:ん?じゃあとりあえずなに?出席なかんじ?
R:や、場面で〜って感じ☆

なんだそのフワフワ感!わかんねぇよ!どんな場面で決まるイエスとノーなんだよ!一丁前にババア惑わしてんじゃねぇぞ出欠係なめてんじゃねぇぞこの曖昧坊主がぁぁぁ!

最低5人は欲しいと言われ駆けずり回っている身を少しは案じてもらいたい。
だがR君にとって私の心中なんてきっとちんカス以下の存在だろう。

Kさん:昨日嫁に携帯投げられちゃって画面バッキバキなんだよね笑
R:わ、ヤバ〜つらたん〜!とりまショップ行った方がいいっすよ笑!
Kさん:シ、ショップな、そ、そうだよな…?(←ショップに行った方がいいことだけは理解できた模様

“やんさんはやたら漢字多いテイストで喋るから正直よく分かんない時あります”
と言われて以来、極力R君には低学年用の言い回しを心掛けてはいるが、
何を話していても最終的には
「ヤバくないっすか」が結論として導き出されるのだから、
こちらが何を言おうが関係ないっちゃないんであろうな。

だってヤバくねーもん。
私の腹が減った話や犬飼いたいけど糞の始末に全然自信持てないって話の
どこににヤバい要素があるんだよ。

適当じゃねーか!
先輩のくだらない話に打つ適当な相槌じゃねーかよ!泣


嬉しくても悲しくても怒っていても泣いていてもヤバい、ヤバすぎ、ヤバくない?
死ぬまでに100億回使わないと成仏できないとか、
なにかそんなアレがあるんであろうか、いや、ないな。

今朝も今朝とてお腹が痛いどうしようもなく痛くてマジヤバすぎてヤバイ、
と騒いでいたR君が便所を占拠して止まないので、
男性従業員一同(に何故か加わる三十路女性従業員わたし)が
休憩返上で交互にストライキを起こしていると、
一段落ついたのか個室からしれっと登場したR君、

“やんさんはどうせ何拾って食っても腹壊さなさそうですもんね〜だいたいの男腐ってても食っちゃえますもんね〜いいっすよね〜ある意味ヤバイっすよね〜”

と腹をさすりながら芳香剤くさい微笑みを投げかけてきた。

確定!肛門に正露丸の刑!

やん:ちょ、そゆことはさ、もっとこう、オブラートに包んで言ってよ笑!てか私そんな食ったりしてないから笑!誰でも彼でもいいわけじゃないからね!(ぷんぷん)
R:や、でもノリはそんな感じでしょ笑?てかなんすか、何に・・・包むって?
やん:え・・・(うそやろまさかこいつそんなまさか)え・・・?オブラー・・・ト?に、包んで・・・・?って。
R:おぶら?・・・って、何やね〜ん!的な〜笑!
やん:(まじかやっぱりまじなのかまじやったんか)・・・ですよね〜笑!ですよね〜笑!

もしかしたら1996年にオブラートは廃番になっていたのかもしれない。
その後私がどんなに、

“あの、苦いお薬飲むときに包む、透明の、フィルムだよ!”
“ボンタンアメ包んでる膜?みたいな、ほら、舌の上でぬめ〜っと溶ける、薄い紙だってば!”

と説明しても全く通じず、どころか混迷は極まる一方で、
そもそも薬飲む時はフィルムになんて包まないし、
ボンタンアメは存在すら知りませんということで、
なんということキンコンカン、
会話しゅ〜りょ〜!と相成りました。

しかしながらKさん(34歳)やH子ちゃん(23歳)他3名には理解していただけたので、
“オブラートに包む”という慣用句が2017年現在においても、
生産ラインは停止せずいちおう機能はしていると考えてよさそうだ。

まぁでも言葉の消費期限というやつは私の胸がBかCかぐらい曖昧なもので、
それだから徐々に慣用されなくなって、
気付いたら美川憲一もオブラートと共に消化されていた、
なあんてことがあったりもするんだろうなあ。

やん:じゃあさ、オブラートに包む、みたいな、きつい言葉をフワっと包んで伝える、みたいなときはさ、今だったら何て言えばいいんだろうね?
R:うーん・・・遠まわし?とか?
やん:あ〜遠まわしね〜言うよね〜でもなんか“オブラート”的じゃないんだよな〜(←ここめんどくさい)語呂的にさ〜ほら、そういうやつない?
R:え〜?・・・あ、あ〜・・・あ!あるある!苦い薬飲むときのやつ!CM見たことあったわ!
やん:お、まじ?!やっぱ平成にもあるんじゃん!オブラート的なヤツ〜!なになに、なんて言うやつ〜?
R:えーと、たしかねー、お薬飲めたね!
やん:・・・え?よ、よかったね?・・・で?
R:だ〜か〜らぁ〜、商品名が、“お薬飲めたね”ってやつなの!なんかゼリーみたいなやつで、そん中にお薬入れて一緒に食べれば苦味が消える?みたいなやつ
やん:まじか。つーかそれ、普通のゼリーと何が違うの?たらみじゃダメな理由ある?え?特許取ってる系?え?ゼリー?ゼリーて・・・ゼリーてなんやねん
R:や、ゼリーはゼリーっす。詳しいことはちょっと、自分担当じゃないんで分かんないっすけど。ま、要は甘いゼリーっすね、ぷるぷるの、あれ
やん:まじか。ぷるぷるの、あれか。そんなやつに大事なもの包ませらんない感はあるけどね
R:もぉ〜!ほんっとああ言えばこう言う〜、じゃあもういいです、やんさんはいい、何も包まなくていいです、はい終了〜っ!ばいばーい!
やん:ちょっ・・・おま・・・

以降、上がりの時間になるまで一切の絡みを封じられた哀れなパイセン(わたし)。
だがR君に邪険に扱われて拗ねる素振りを見せながらも心中は、
ここのところ従業員の間で秘かに囁かれている
R君ワキガ疑惑(というかほぼ確定案件)をどう伝えるかで一杯だった。

気温の上昇も相まって噴き出す汗の増量に伴うサワーなスメル。
いよいよ誰かが宣告せねばならんのじゃないかというエアリズム、
なぜか執行人としての期待を一身に背負ってしまい腹が下りそうなパイセン。
トイレに閉じこもりたいのはこっちの方だぜ。

ったく、においぐらいでガタガタ言ってんじゃねーぞコラァ!
思いやりの心はどうしたお前らぁ!
無臭がモラルとか島国精神押し付けてんじゃねぇぞオラァ!
ワキからワキのにおいがして何がダメなんだよこの野郎!

そうキレることができたらどんなに楽なことか。

嗚呼何で包んでも結局傷つけてしまうのならば、
いっそ何者にも包まず裸のワキガをぶつけてみるのもありなんじゃないか。
フィルムに包んでもゼリーに閉じ込めても、臭いものは臭いのだから仕方がなく、
それじゃあさっきまでのオブラートのくだりはなんやったんや
という虚無感はさておいて、
R君、ちょっとワキがあれだね、オブラートに包むといいかもね、
お薬飲めないかんじだね、においがね、うん、つらたんな感じだね、
君は悪くない、ワキだけ、そう、ワキだけなんだ問題は、
ヤバいかって?ヤバ・・・くはないとは言えないかなぁ、そうだね、
たまにね、オイニーがツイキーかな、うん、そう、そうなんだ、
場面でね、場面で〜!(←使いたかった

前後不覚の肉道中 

June 02 [Fri], 2017, 22:54
数日前から兆候はあった。
その証拠にグーグルの検索履歴にはみっちりと、
違う角度から打ち込まれた同じような単語が並んでいる。

「肉 食べ放題 ランチ」
「焼肉 ランキング 新宿」
「ガッツリ 安い 肉」

この突発的肉欲が一体何処から来るのかなど皆目見当もつかないが、
連日、寝ても覚めても溢れ出してくる肉汁にとうとう肉欲袋の緒が切れ、
今日という今日は食べに行かないとまずい、
とにかくまずいことになるきっとなるぜったいなる、
何かが捻じれ思考は果てしなく斜め上の肉に釘付けになるぜったいなる、
きっとそうここがリミット臨・界・点―っ!
と謎の確信が肉汁もろとも決壊しかけたので、
バッグを血眼で荒らしたらば擦り切れた財布を握りしめ、
あと10分ある午前のタスクを闇に葬り、
上司のくっきり二重の冷めた目など黙殺し一目散、
焼肉ランチで有名なお店へと駆け込んだ。

和牛ランチ定食(お肉は自分で焼くスタイル、スープ・ごはん・サラダ付き)が
席に運ばれてくるやいなやトングで肉を拘束し網へ叩き付ける。
普段は厳重すぎるほどのウェルダン派な私をもってしてもこの肉欲には到底抗えず、
明日の私が見たら“食中毒ぅっ!”と悲鳴を上げそうなレア感で
肉を引きはがしタレなんかほぼ素通りで口内へダンク!

にっ・・・肉ゥ・・・ッ!

実に凡庸であると言わざるを得ないが、
脳裏に浮かんだ言葉はただただ“肉”、
その一語に尽きた。

それから息継ぎを忘れたように肉を食みスープを流し込みまた肉を貪った。
餓えたハイエナでももっときれいに食べるだろうよと
突っ込みたくなるぐらい食い散らかした。
獣。30を越えたメスの獣が、
たしかにそこにはいた。

やばい・・・全然足りない、これ本当に・・・1人前?

もはや人間として己を捉えてはいけなかった。
私はもう1人ではなく、1匹なのだ。

ロース、ハラミ、カルビ、シマチョウ、タン塩
計5皿を追加。
網を2度変え、ライスとスープも2度おかわりをした。

畜生っ!1時間の休憩内じゃとても食べつくせない・・・
だがもう戻らねば・・・許せ壺漬けカルビッ・・・サラバッ・・・


一応は満たされた欲求にしばし安堵するも、
吸い込まれるようにレジに消えていった野口英世は5人半であった。

肉欲問題も無事に解決され、
さぞ休憩後の仕事は捗ったろうとお思いの皆々様に悲報です。

『満たされる』とは何をもってして言うのでしょうか。

午後のノルマをこなしながらもふとよぎるのはアツアツのテールスープ。
来客応対をしながらもチラつく壺漬けカルビ。
後輩のたるんだ二の腕はもはやホルモンにしか見えず、
案の定、いや、案の定以上な牛歩ペースでしか進まない仕事。

嗚呼!何故!あんなにもしこたま食っておきながら何故!

まだ足りないというのでしょうか。
恐ろしい子っ!

終業のチャイムは福音のベル、
さあ、お肉たちとのおかわりラブミーティングへ再び!

昼の量で満足できないなら、もうここは、
食べ放題しか選択の余地はありません、はい全会一致!

90分、全種類の肉を、ライスなんて邪魔なものは頼まず、
ひたすら純粋に肉だけをダンクダンクダンク!
これぞ肉浴(半身浴的な)、肉リゾートニクリアンズ。
世紀末かと見紛うばかりの摂取量。
漂う最後の晩餐感に戸惑う店員。
お構いなしのおひとり様、ヤン。

ラストオーダーまで連綿と肉と対峙、咀嚼し続けた。
実感はないがアゴが若干割れた気がする。
いい。満足出来たんだから、アゴの一つや二つどうだっていい。

惜別の野口英世は4人。
昼より食ったのに動員数が少ない。
やはり食べ放題は肉欲狂いのユートピアである。

しかしこれほどまでの肉欲が突然あふれるなんてあまりにも不可解なので、
そこは私の顧問相談士、S子さんにテレフォンすることに。

S子「食いすぎじゃない笑?!量やばくない?!ひとりマザー牧場してんじゃん!で、なんか、ストレスとか、鉄分不足とか、生理前とかにそんなことあるらしいよ。無性に肉!ってなる時が。前に私もあってさ、え、なんでって思って調べたことあんだよね。だからストレス?とか栄養不足じゃん?それか生理前」

まじかよ。
そんな辛かったんかスウィートハート。
気付いてあげられなくってごめんマイバディ。
栄養不足とか現代において何事って感じだよねごめんね。
なに?鉄?鉄を摂ればいいの?
つか鉄ってなんだよ!
無駄に元素記号しか浮かんでこねぇよ!
Feだろ!

自分でも検索をかけてみる。

『肉 食べたい 心理』

おおおお、出てくるよまじか出てきたよ、
みんな突発的に肉食べたいってなったら不安になるんだね、わかる。

ストレス、栄養不足、アブラ依存、強者アピール、と所説ある。

最後の“強者アピール”ってなんやねんと思いつつ、
そこはネット情報なので信ぴょう性は五分五分ということではあるが、
まぁ総合すると“心身共に虚弱ぎみ”ということか。


S子「ま、やんの場合、そっちの肉欲じゃなかったって可能性が高いけど〜笑!」

だな。
欲しかったのは、金で買えない方の肉だったのかもな。
うっ(嗚咽
P R
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    ・妄想-脳内は銀河へ直結しているのであります。
    ・観察-紳士および男子諸君の洞察であります。
    ・音読-卑猥・青春・少女・純文、とかく声に出すのであります。
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自意識が過剰すぎるが故に自信が持てない、鬱憤は溜まる一方で一向にパァシュワァしない、コーヒーにはお砂糖とチョコレイトが入ってないと飲めないしむしろカフェイン効きすぎ体質で朝飲んでも深夜までギンギン、構ってほしい時には側に誰もいない、ほっといてほしい時に絡まれる、そんな私ももうアラサーになりました…
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