落胆と称賛のため息

April 01 [Tue], 2014, 15:32
央土産の馬が右、 熱密馬が左に並んで、 馬場を同時に駆け抜ける。
 選ばれて許された少数だけが 馬場の両側で見守る段取りである。
 終着点の位置、 真央土側には
 美穂積皇子と大臣をはじめ 大納言、中納言など高位の太政官が並ぶ。
 兵部卿と兵馬司の主だった面々も そちら側である。
 反対に 熱密馬側に置かれた床几には 帝と東宮が着いた。
 侍者と護衛が付く。
 間をあけて、 馬場の中ほどには、 葦若と砂々姫が仲睦まじく立っていた。
 桜子と幸真千、 くっ付いてきた真咲は その近くに案内された。

 周りを見回せば、
 忙しそうに立ち働く馬丁や 馬寮の役人たちと思われる者たちが
 出発地点と終着地点に見える以外に、 人は多くない。

 そうこうするうちに、 それぞれ一頭ずつ馬が引き出され、
 帝の「始めよ」の声に、 走り出した。
 真央土馬も優秀なのを出してきたのだろう。
 勢いよく飛び出したのは 小柄な馬の方だった。
 見物人から どよめきが起きる。 が、 それは長くは続かなかった。
 熱密馬が悠々と並びかけるや、 またたく間に形勢が逆転した。
 いかんせん、 力量の差がありすぎた。 勝負にならないのが見て取れる。
 走りきるまでも無い。
 見物人から 落胆と称賛のため息が漏れる。
 全速で駆ける熱密馬の迫力に 一同が魅了された。

 たちまち 真咲たちのいる所まで差し掛かる。
 その寸前、 突然 熱密馬が棹立ちになって暴れ出した。
 乗り手を振り落とし、 馬場を逸(そ)れて 突っ込んでくる。

 驚きに固まってしまった桜子と幸真千に、
 「逃げなさい!」と叫んで 背中を突き飛ばせば、
 先生の言うことを良く聞く感心な良い子たちは、
 狼に追われる子兎さながら 飛び出して逃げた。

 真咲は 残って大きな熱密馬に立ち塞がる。
 変わり者の教育係が、 暴れ馬を取り押さえるのは 有りだろうか。
 呪を使って おとなしくさせる自信はない。
 唯一得意だと思っていた 癒しの呪でさえ 失敗したらしいと気付いたばかりだ。
 だが、 有っても無くても 暴走を止めなくてはならない。
 子兎たちは 馬より遅い。
 近くには 葦若と砂々姫も居る。

 こんな時、 眼鏡はすこぶる鬱陶しい。
 壊れたらごめん、 と先に眼鏡に謝ったところで、 横から誰かが暴れ馬に飛び乗った。
 手綱を引いたのだろう。
 目の前で棹立ちになり、 さらけ出された馬の首に
 何かが刺さっているのを 真咲は見つけた。
geijlsngi15
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