居場所。 

July 12 [Thu], 2007, 19:27
またか。
台所で、娘と姑が喧嘩をしている。
畳んで椅子の上に上げておいた洗濯物の上に、姑が座ったので注意をしたら、「出て行け!」と一方的に怒鳴り散らされたというのだ。
どちらが悪いかは一目瞭然なのだが、この家のルールでは、常に娘が叱られ役であった。
「口答えをするな」
威圧的にそう言うと、父親は一方的に娘を怒鳴った。
姑はというと、いい気味だとでも言わんばかりに自分の息子の陰で笑っていた。
夫も息子も、常に自分の味方をしてくれるということを、わかっているのだ。
娘は悲しそうな顔をして、自分の部屋へと戻っていった。
どうして、姑はこうまでして娘に張り合うのだろう。
最近、娘は笑わなくなった。
娘だけでなく、誰の笑い声も聞けなくなってしまった。
夫や舅は、その場を丸く治めるためだけに、子供たちを一方的に怒鳴りつける。
調子に乗った姑が、まるで一家の主であるかのように振舞う。

「子供は、大事じゃなかったんでしょう?」
お母さん。
「私よりも、体裁やおばあちゃんの方が大事だったんでしょう?」
お父さん。
「私、この家に生まれたのに。どこに居れば良かったの?」
守ってもらえなかった。

ある日、部屋で首を吊っていた娘を見つけた。
部屋の隅に残されたノートに書かれていた言葉は、
「私よりおばあちゃんが大事だって言ってほしかった。守って欲しかったの」

数年後、舅と姑は認知症になり、とても一人では面倒が見切れなくなった。
何も残らなかった。
娘を殺したのは、この家と私だ。
「きっと、私が死んでも気づいてもらえないかもしれない。だけど私、ずっとおばあちゃんと張り合ってた。どっちがお父さんお母さんに愛されて、大切にされているのか、知りたかったんだ」

それが娘の、遺した言葉だった。
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