映画「黒部の太陽」全記録
2008.10.01 [Wed] 00:00
映画「黒部の太陽」全記録 (新潮文庫)
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熊井 啓
新潮社
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熊井啓監督の願いは届かなかった・・・
幻の超大作に賭けた昭和の男達の苦闘2005年2月に出版された「黒部の太陽ーミフネと裕次郎」の文庫版で、2009年2月に出版された本。昭和43年(1968年)に封切られた映画、「黒部の太陽」の 熊井啓監督 の著作である。
当時の映画会社の「五社協定」の枠外にある 独立プロの ミフネプロ(三船敏郎)・石原プロ(石原裕次郎)が企画し 五社のうちの日活社員である 熊井が監督をした。この3人とプロデューサであった 中井 景 氏が、「五社協定」による妨害を受けながら、映画を作っていった経緯と 撮影中の 大事故 が圧巻である。
530ページを超える 文庫本としては 大冊の 前半が、この2つのテーマを主とする制作の経緯で、残り半分が 「黒部の太陽」のシナリオである。シーン毎に番号が入ったシナリオが後半についているということを知らないまま 前半を読んだことが「勿体なぁぃ」と思われた。
作品が完成して、大評判になった1968年の正月、日活の社長の新春祝賀会での挨拶が引用されているが、「『黒部の太陽』が1ヶ月の長期興行で制作費はゼロである。制作経費が一銭もかからないで配収の金がどんどん入ってくる。諸君、これでは儲からざるをえないではないか」。ありとあらゆる手段をとって制作の邪魔をした 堀社長が、ヌケヌケとこういう挨拶をしていることに呆れ果てるなぁ。んなことやっているから、今の日本映画の衰退があるんじゃないの。
文庫本が腹に巻いていた紙(俗称は フンドシ というんだけど、正式には何というのかな)には、「DVD化も再上映もされない幻の大ヒット映画」とあるが、確かにその通り、我々の眼には触れないままになっている。
しかし、2003年の「石原裕次郎 17回忌」に記念上映が行われ、30万人の希望者が出てそのうちの3万人が鑑賞したけど、内容はオリジナルの 3時間15分 のうちの、2時間10数分に短縮されたもの、だったそうで、数々の名演技が失われていた由である。
この本への不満は、何故、この作品が闇夜に葬られているのか、何が原因で何故そうなっているのか、については全く言及されていないことである。著者である 熊井監督も 2007年に逝去されているようなので、加筆を望むべくも無いが、文庫本 お得意の「解説」で、この間の経緯を明らかにしても良いのではないのか。
アマゾンでの「おすすめ」の文によれば、「この映画はスクリーンでこそ見て欲しい」という裕次郎の遺志のため、だそうだけど、もし本当にそうなら、20数年前に死んだ亡霊にとりつかれて、文化遺産を死蔵していることこそ、裕次郎達をないがしろにしているのだ、ということを声を大きくして、再々上映、DVD化などを実現したい、と思った。
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