烏*12 

2006年01月05日(木) 17時42分
「俺の誇りは、守ること。」
拳を強く握り締めまっすぐな目つきで籬鶴を見つめる。
数秒見つめあうと、ふっと籬鶴が吹きだした。腕を組んで、肩を上下させながら笑う
「おっしゃ!いいだろう、俺と一緒にヤツを堕とそや!」
籬鶴が手を軽く上げたので、要も上げてみると思い切り叩かれた。ハイタッチにしちゃ思い切りがありすぎるだろう。
「ってぇ・・・・」
苦笑いする要をまた真剣な目で見つめる。
「その代わり、一度確認させてくれ」
確認?と、言うように首を傾げる。
「お前から言ってきたことだがな、天子はどこまで行ってもお前の母」
一つずつ指折りしながら続ける。
「情けはかけんな?」
「当たり前だ。情けなんて、あんな奴にかけてやるほど、余しちゃいない」
なら、うちからも。と、雲雀が要ギリギリまで近づく。
「”守る”それは簡単やない。それは、誰かの”モノ”やと、いけまへんの」
「何が言いたい?」
「”要”じゃ使わてるんやないの?アンタは天子にとって、政の為の”モノ”なんやろ?」

あぁ・・・・・。

「当たりだ。アイツは俺を”要”としか見てない。だったらどうするんだ?」
冷たい言葉というよりは、好奇心だった。
この者達はいつも、突拍子がないとそう思うから。
昔からの友のように、そう思う。
「だから、その誇りと志だけで目指すものを誓うのですよ。名をもって」
「名?」
この三人は、誇りに鳥を準えている。要にもそうしろ、ということなのだろうか?
守は、何に当てはまる?
俺は、アイツを殺し、新世界をたてる。
悪い意味ではなく、俺は見かけだけの国の飾りでいい。
国民に国をゆだねる。

そんな――鳥。

「朱雀、それは不死であり、守主。国を治め、守りたい意があるのなら、お前は不死鳥になれ。」



海の向こう、天子・・・・椿は恨めしそうに自然豊かな島を見つめている。
それは、予感だった。

数十分前。
ルキが大声を出しながら、食事をしていた椿の部屋に駆け込んできた。
教育所でも、落ち着いた雰囲気だったルキにただ事ではないと、話を聞いてやることにした。

疲れきった口から出た言葉に耳を疑った。

椿は、唯海を見つめ、大きく笑い声を上げている。
その笑いに、叉奈は聞き耳を立てた。

烏*11 

2005年11月25日(金) 16時47分
「ぇ・・・・?」
ぶわっ、と風が起こる。
ほのかに潮風の中に、金木犀の香りがした――気がした。
目を閉じていた一瞬、赤い髪を結い上げた少女と(雲雀と呼ばれていたのはこの娘か?)、茶の髪を立てた男が現れた。
まるで、マジックだ。
差し詰めあの二人は、真っ白な鳩ってところだ。

あれ・・・・?
違和感を感じた。まぁ、感じない世の中をお目にかかりたいが、いつも感じるものとは違う。
要は家を出る前に屍烏、籬鶴の資料を虱潰しに読んだ。その中には
屍烏は、必ず一人で何万もの兵を血祭りにあげた。
己の誇りに背かんとしているのか。
と記されていた。しかし、この通り三人でこの島にいる。
「なぁ、籬鶴・・・お前は人との馴れ合いを拒むものではないのか?」
怪しげに微笑。
「俺達は、ただの人間と馴れ合う気はねぇ。でもな、俺等はただの人間じゃねぇ。鳥の誇りを持ってる。」
誇り・・・・?要はそう聞き返したかった。
「そう、誇り。雲雀は天高く舞い、春を告げる者。やから、ウチは告げるものの誇り、予言を告げる」
雲雀はニッコリしながら木の枝に座る。
「鷹は・・・鋭く獲物を貫きつつ、その知性を十分に使う者。俺は獲物を瞬時に捕らえ知を用いて肉塊にする」
周りから見れば要は馴染みすぎている。何故こんなにもすぐに話してくれるんだろうか?
「どうして・・・・」
「俺はお前を信じる。お前の誇りをな。天子のトコのモン・・・息子でもな。なぁ、蘭楼宮 要(ランロウノミヤ カナメ)?」
要だけ驚いているのを見ると、残りの二人も知っているらしい。
そう、要は天子、蘭茜宮 椿(ランセンノミヤ ツバキ) の第一子にして、天子の跡取りでもある。肩には宮の家紋である、蘭花を刺繍された袴の上だけを羽織っている。下はただの着物。
あぁ、と要は苦笑した。
「これで分かったのか?」
何事も無かったように、上をすんなり脱いで刀を捨てたときのように海へ放った。
「蘭楼の名を捨てに来たんだ。俺は、写真でしか見たことない真っ青な空が好きでな。鳥を・・・・鳥を見たいんだ。」
はぁ、と息をつく。
「アイツは・・・・この空に鳥が居ないことを知らない。このタールみたいな空に」
籬鶴は、ニヤリと笑う。
「お前に誇りはあるか?」
同じ光を瞳に宿した。
「あぁ、俺の誇りは―――――」

烏*10 

2005年11月18日(金) 20時32分
「はははははっ」
刀を放った男を見て、なにやら楽しそうな笑い声が響いた。
「主には、負けた」
たっ、と木の上から長い白髪の男が軽い身のこなしで飛び降りてきた。
その姿は無防備で、銃を持っていたら一発で打ち抜けそうだ。小動物だってこんな無防備にひょっこり現れたりしないだろう。
「おま・・・っ」
「まだ、俺の問いは終わってない。何故こんな所に来た?」
また、突拍子のない質問に驚く。
「何だそんなことか?」
まず、と男は息を吸いなおす。
「屍烏・・・ニホンの空から鳥が消えた。力を貸してくれないか?」
白髪の男、籬鶴はただ黙って男の要求を聞いている。
言葉の一つ一つの意味を確かめるように、目を塞いで。
すると、急に天に向かって草笛を吹いた。
「鷹人、雲雀――敵じゃない。お客様だっ!」
口調は明るい。素敵な客人を招き入れるように。
「ぇっ、ぁ・・・屍烏・・・?」
「籬鶴だ」
言って、握手を求める手を差し伸べた。
この男、籬鶴と名乗る白髪の男は、何でこんなにも・・・純粋なんだろうか。
「お前は、俺を殺さない。目に誇りを宿してんやから、俺はお前を殺さない」
ニッコリと笑うその籬鶴の目は、明らかに年齢より下の無垢さが感じ取れる。こんな笑顔を見せる男・・・ホントに何人もの人を肉塊へ変えてしまったのか?
「お前じゃない。要・・・・・だ――必要のようと言う字を書く。」
手を握り返した。
「何に・・・・?」

烏*9 

2005年10月29日(土) 20時58分
「ふぅ・・・」
ブォォンというエンジン音がちゃんと止まったことを確認した男は、砂浜に足をつけ一息ついた。
ここは、本当に天子の軍が一つ壊滅した場所だろうか?
「すげぇ――」
屍烏が来たことで、天子の守りを受けなくなったというのに立派に育つ木々が視界を埋める。
こんなに濃い緑を見たことがあったろうか?
この濁った空に不似合いな色は、天子への反抗そのものだった。
ガサッ・・・・
不意に聞こえた物音にさえ眉ひとつ動かさない。
来た、かなぁ
ガサガサッ――ギシ・・・
近くの木の葉が異様に揺れている。誰かがその太い枝に座り込んだか。
「――その場より、一寸も動かず我の質問に答えよ」
まるでお伽噺の一説だった。
貴方の落とした斧はこの金の斧ですか、ってか?微かに笑った。
「分かった。何だ?」
特にここで暴れようとはしなかった。目的があったから。
「主は、敵か?」
「・・・」
率直な質問にきょとんとした。
「ははっ、勿論だ。俺はこの場所に何一つとして危害を加えるつもりはない」
「ならば、その意を示せ」
あれ・・・・?
「随分簡単に信用してくれるんだな?」
「そちらから問うてもいいと言ったか?」
「駄目とは言わなかったぜ?」
・・・・
長い沈黙。波の音だけが空気を揺らしている。
この質問の主は、俺の何を知りたいんだろう・・・・
急に踏み込んできた奴を信用できないのは分かる。でも、ならすぐに殺してしまえばよかったはず。
威嚇発砲の主もこいつか?なら何で一発で当てなかった?
何を試そうとしてるんだ?
「あぁ、そういえば」
沈黙を破ったのは、男の方だった。
「俺が敵じゃないことを示すんだったな?」
男は徐に腰にある刀を鞘ごと腰から取った。そして、勢いよく後ろに放り投げた。
後ろは海。波がさっきより激しくなったように思う。
刀はバシャッ、と飛沫を上げながら海へ落ちた。
「これでどうだ?そろそろ顔、出してくれねぇか?」
男は勝ち誇ったように笑みを見せた。

烏*8 

2005年10月08日(土) 19時59分
モーターボートの男は、何か大きな声で叫んでいるようだった。
エンジン音と、水飛沫でなかなかな聞き取れない。
籬鶴は、きりっと目を凝らす。
―・・・刀?いや、日本のモンじゃない。英のモンだな・・・サーベルとは違うな・・・
「あれ・・・・本当に敵か?」
「敵じゃないと言うのですか?あの胸元の勲章は正しく天子のところのものでしょう?」
男の方へ向き直ってから腰元に目をやった。
「でも、一人で来たってのがどうも気にかかる。それに剣が鞘に納まってる。お前なら絶対そんなことせんだろ?」
鷹人が納得したのを確認してから、籬鶴が少し斜めに構え威嚇発砲。
それは、ボートの真横に二発撃ち込まれた。
男は、たじろぎもしない。それよりも
「怯みもせんか。イイ眼してんな」
その男の鋭く、まっすぐな瞳に何を思ったか、まっすぐ銃口を男の頭に向けた。

―やぁ坊ちゃん、見せてごらん?
     その眼光の理由をさ?
       俺は誇りがない奴ぁ御免だぜ?

雲雀は何かに駆り立てられたような籬鶴から目がびっちりと張り付いたかのように、離せなかった。
獣を捕らえた狩人よりも飢えた様な
月面を見、変化した狼よりは冷静で
新しい玩具を見つけた子供の眼差し

「アーユーレディ?」

恐怖ではない。
今までにない籬鶴の表情を見たような気がして・・・・
男に向けられた細身の銃口から空を裂く音が響く。
弾丸は自分の世界を行くようにただ、まっすぐに男の額へ飛ぶ。
キィンッッッ
高い音が鼓膜を貫く。
その音が、雲雀の目線を籬鶴から剥がした。
「うそ」
目線の先にあったものが、信じられなかった。こんなこと一度もなかったからだ。その驚きは、鷹人も同じ。男を見た目が瞬きを忘れている。
男は、赤く半透明な細身の刀で弾丸を弾き飛ばしていた。
ボートはいつの間にか岸に到着していた。
自分の攻撃を弾かれた本人は、とても嬉しそうに、にやりと笑った。
「よしっ!鷹人、雲雀!!」
驚きに身を硬くしていると、急に名前を呼ばれて、二人とも体がびくりと跳ね上がった。
何?と聞きたかった。でも驚きすぎて声にならない。
「アイツの所に行って来る!鷹人は危なければ、斬り込め。雲雀は上に登れ!仲間を連れていないか、見張ってろ」
正気か?と、引き止めたかったがこうなった籬鶴は誰にも止められない。
「了解」
「へぇ」
籬鶴に、任せることにした。

烏*7 

2005年08月22日(月) 20時13分
立ち昇る煙草の煙。
島の中でも大きい方である杉の木の上に、男は寝そべっていた。
「あふぁぁー、まったく天子のとこの軍は皆腰抜けでいけねぇなぁ」
なにやら大きな独り言なのかと思いきや、木の下に右腰に短刀を二刀構える長身の男が見上げていた。
「まったくですね。リーちゃん一人で片付けられてしまうんですからね。」
「鷹人(タカト)っ、俺はだな・・・」
「リカちゃんですやろ?」
鷹人、と呼ばれた男の横になにやら嬉しそうに微笑みながら割り込んできた少女。扇子で扇ぎながら、着物の大きくはいったスリットから白い足を覗かせていた。
「っ、雲雀(ヒバリ)まで。俺は、リーちんでもリカちゃでもねぇ!籬鶴だ、リ・カ・ク!」
クスリ、と鷹人が微笑ましくムキになった籬鶴を見つめる。あなたは、本当に天子の軍をも震え上がらせる者なのか、と言わんばかりの微笑み。
あら、そないな名前やったん?と雲雀が嬉しそうに茶化していると、ぱっと海の方へ眼を見開いた。雲雀のチカラである、予言。

来る・・・――――

と、声に出さず口だけを動かした。それでも、二人にはきちんと伝わっているらしく体から微かな殺気を放っていた。
「神田か?」
いいえ、と目線で伝える。

―――ウチが今立つ所より南東の海上。荒々しゅう機械音を放ちながら、一刀の太刀を抱え我らの巣へ向かってきてはります・・・・・・。男の方やわ。

「ありがとうございます、雲雀さん。では、もうそろそろ来ますね。」
そう言うと、高く飛び上がり先程まで籬鶴が寝ていた木の、もっと高い所。ほぼ天辺に近いところから眼を凝らす。
ブォォォォォォォォォォォォン
少数のカラスが、驚いて叫びを上げる。
「獲物は一人、モーターボートで来ますよ。」
「舐めてるんか?俺の首獲りに来たにしては少ないんと違うか?」
籬鶴も登って、銃を構える。
・・・ん?
モーターボートの男は手を振って、何かを訴えかけていた。

烏*6 

2005年08月05日(金) 18時20分
「・・・・これは―――」
この字の特徴、これを書いた者に覚えがあった。誰よりも、烏を否定していた男。
それの読んだ自分の意思を伝えるための続きの言葉を捜しているかのように、何度か食い入るように読んだ後、紙をポケットにねじ込んだ。何事もなかったかのように整理した書類に適当に目を通し、判を押してまとめていった。
その時には、あの複雑な目の色はいつの間にか強い意志の色を濃く輝かせた。

「ったく、あの人はいっつも、いっつも仕事そっちのけでフラフラと!!!!」
大きな独り言と、顔に似合わない眉間のシワ。
薄暗く、広い廊下。だが、部屋の扉は一つもない。この廊下の先は要の仕事部屋のある。いつも要が走らせる万年筆の音すら聞こえるほど静まり返っている。が、今は紙の擦れ合う音が聞こえる。書類の整理をしているからである。
この廊下は、前天子の意思で無駄に長く設けられている。静まった、この”無”が好きなのだと、生前の天子は言っていた。それのせいで、ルキの独り言が長くなるのが欠点だ。
角の壁、大きな地獄絵が飾られている。灼熱の炎の中をその突き当たりのひときは暗い場所。そこに要の仕事部屋がある。
せわしなく誰かが動く音。
コン、コン。
「要様、入りま―――」
「入るなっ。そのままそこで聞け。」
珍しかった。要がこんなにも厳しくルキに言いつけるのは。
「烏は・・・・俺達にとって有害なものか?アレは救いになるような気がしてならない。」
ルキに話させる暇もなく続ける。
「思い出せ、歴史教本を。どれだけ昔の空は美しかった?どれだけ人は自由だった?そりゃ天子様が昔のことを記した教本を書き直させた。が、お前は知ってるだろ?俺の元にいるんだからな。まぁ、それに見合うことをしてくれているんなら文句はねぇさ、でも―――」
ぶわっ、と風が吹きぬける音。
あれ・・・・?
不審に思った。日頃仕事中絶対に窓を開けない筈なのに、聞こえたのは海から届く風。
「失礼しますっ」
言いつつ遠慮なくドアを開ける。
「かっ・・・・・・要、様?」
カーテンが風に遊ばれている。書類が飛び回っている。
要の姿はない。声の主は動き続けるボイスレコーダーだった。
海に面する窓が全開だ。荒々しく拭き乱れる潮風。それは、ルキの髪を弄ぶ。
窓を閉めようとしたとき、目に入った。長いロープが窓の外にたれている。
「まさかっ・・・・」

烏*5 

2005年07月23日(土) 21時26分
「本当の意味・・・・と申しますと?―――」
叉奈の表情のない瞳に一種の”興味”・・・”好奇心”の色が浮かんだ。特に答える様子もなく微笑で返して、神田軍戦隊の軍室から出ようとしたその時だった。早まる靴音、はぁっ、と怒ったように聞こえる溜息がだんだん部屋に迫って来る様に大きくなったのは。
ドア付近にいることを危険に感じ、ドアから何歩か後退さった。
「要様・・・お話は結構なのですが、書類の整理をなさってからにしていただけませんか?」
思ったとおり、重たそうな鉄のドアが勢いよく開き、息切れをした声が要を諫める。
「・・・・ルキ、少し落ち着きなさい・・」
さっき宿った瞳の”色”はいつの間にか消え、冷静な態度で叱った。
「ん、落ち着いてますっ」
要も、叉奈にビシっと叱られむくれているルキを見て、現在進行形で落ち着いてねぇよっ、とクスクスと笑いながら、本来やろうとしていた、ドアの外に出るという行為をしようと改めてドアの前に進んだ。

「叉奈、アレはきっと刃で貫いただけじゃ堕ちないんだ・・・・」


自室とはまた別にある要の仕事部屋。机の上に書類が山積みで雪崩状態で、そのシックな色合いを隠している。
その中から、判子を見つけ出し一度どかして、整理を始めた。その書類から、紙が落ちた。それは、隅が赤黒く変色していて、震えた字で
―烏ハ我々ニ向カイ「馬鹿カ」ト、天子様ニ対シ「踏ン反リ返ッテル奴等、漢字ノ名ヲ奪イ、身分ヲ塗リツケ、天子万歳を唱エサセ続ケタト。二百、三百年モ前ナラ自由ダッタンジャナイノカ?」ト言ッタ。何タル侮辱デアロ―――
途中で途切れていた。漢字とカタカナのみを使っている所から、若い者の記したものではないらしい。
この文章に要は、怒りとも、喜びとも取れる光をその緑石色の瞳に宿していた。

烏*4 

2005年07月09日(土) 21時14分
「確かに俺は忠告した。こっからは『deadoralive(生死問わず)』」
巫女に弾を命中させて10分がたった頃、発音のいい響きで男は言った。
「お願いっっ!お願いだから殺さないでぇっ」
巫女は発狂したように騒ぎ立てた。数珠を捨て、札を踏みつけ、両膝を着いて命乞いを始めた。そんな巫女を見て男はこくりと頷いた。その男の姿を見て、巫女の目は少し綻んだが、すぐその顔は鮮血に染まる。
忠義深い軍人たちは天子の命だと立ち去ろうとも、刀を下ろそうともしなかった。そんな姿を見て肩を揺らして大きな声で男は笑った。
「おめぇら、馬鹿か?あの踏ん反り返ってる奴等が何をしてくれる?」
言いながら、向かってくる兵達を打ち抜いていく。
頭に風穴が開き悲鳴を出すこともなく倒れていくが、兵は怯むことなく男にむかって刃を向ける。まるでゲームでもしているかのように、銃弾で刀を折り、確実に急所を狙って殺していく。漂う硝煙と響く銃声に島が悲鳴を上げたかのように大きな波が島の海岸を濡らした。
「何でそんなに忠実になる?あいつらは俺達から漢字の名を奪い、身分を塗りつけ、天子万歳を唱えさせ続けた。ほんの二百、三百年も前なら自由だったんじゃねぇのか?」
そんな男の言葉も聞き入れず、兵は"天子の命"に背くことはなかった。
「・・・――誰も、"光"を宿しちゃいねぇか・・・」


―悪魔祓イヘ向カッタ巫女軍ハ烏ニ撃タレ全滅シタモヨウ―
天子直属の神田軍戦隊へ届いた知らせはとくに誰も驚かすことなく、叉奈の手に届き、丸めて捨てられた。
「やはり、烏は討てんか?叉奈」
少女は振り返ることもなく無愛想に言った。
「私が神田頭首になった今、私の隊が落ちることはありえません。」
ふっと、男は笑って問う。
なぁ、叉奈・・・・・

「誰が烏を"ホントの意味"で討てるんだろうな?」
支配を受ける空から、微かに烏の鳴きが聞こえた。
       

烏*3 

2005年07月05日(火) 19時58分
天子の前に跪く黒髪の持ち主。綺麗に束ねられた腰までの三つ網と、切り揃えられた前髪。
「神田や、大事な話じゃ。表をあげぇ」
煙管を口から話すと天子は言った。神田も目上者に面を上げることをすまなそうにしながら、その色の白い顔を上げた。上げられた顔に表情は色濃く出ていなかった。つりあがる瞳に宿す光は生命感が全く感じられない。
「は・・・何でございましょう?天子様。」
声は幼げな高さを含んでいる。
天子はもったえぶった様にまた煙管を銜え、苦味のある煙を吸い込み、誘惑のように甘い匂いを吐き出した。
少女がクスリと、笑った・・・・ように見えた。
「主は今日より神田の最高峰に君臨いたせ。」
言って、すっと煙管を持った手を上げる。すると、黒子のように漆黒の衣で顔を隠した臣下二人が、何か大きな風呂敷包みを持って現れた。
「主にこれを授けよう。」 
臣下が風呂敷をとると、四尺はあろうかという長刀と、長い一つ歯の漆ゲタだった。
「これは・・・・」
先祖の神田が初代天子から贈られた神田家の家宝である。
「先代神田からの預かり物じゃ。主の身長では扱いにくいであろうが、先代の遺言じゃ。」
三つ編みの少女はもう一度深く頭を下げた。
「そのような御心配、痛み入ります。」


鮮血烏の屍島の周囲の海では、島を取り囲む軍艦からツンと鉄くさい匂いを漂わせていた。
屍烏の「呪い」と沿岸の民が表するものだからと、船には巫女が乗り合わせていた。呪いなら祈りを捧げ、島の大木に札を貼れば荒ぶる魂を沈められると上陸し、札に霊力を込めようとタントラを唱えるのとほぼ同時に、澄んだ琥珀色の数珠玉とお札を貫通させ巫女の方を撃ち抜き四方にその悲鳴を響かせた。
すると、悲鳴に聞き惚れた様に数羽の烏が羽を広げた。それの中心に立つように、一人の男が現れた。
「俺を悪魔とでも思っとるんか?可愛い巫女さん。その愛らしい顔に風穴開けるんは俺も忍びない。悪いが早々に四方五十里以上立ち退いてくれないか?」
男はメタリックシルバーの銃のトリガーを引いた。
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誕/10.18

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