星降る大海40(終)
2015.08.20 [Thu] 10:13

流れ星が流れた。


ラスは腕でめちゃくちゃに顔を拭いた後、顔をあげた

「じゃあ、もう寝る。」
もっとゆっくり話をしていたいと思ったが
でも、確かに子供はもう寝る時間だった。

「オヤスミ。お父さん」
何気なしにおやすみと返そうとラスの方をみると
ラスの顔がボボボッと赤くなった。
その様子にリュカは目を丸くした。
そのままラスはダッとかけだして甲板から飛び降り船内に入っていった。
リュカは目を丸くしたまま、その背中を見送る。
乱暴に閉められたドアがきちんと閉切れておらず中の明かりがもれている







「リュカ殿、船長から伝言です。」
ピエールがちょうど甲板から入ってきたリュカを見つけて声をかけた。
「明日の夕刻港に着くとのことです。もし何かぁああっっ!?」
ピエールの悲鳴があがる。
淡々と報告をするピエールにリュカがいきなり抱きついてきたのだ。
そしてブチューと頬にキスをする。
ホヨホヨと後から現れたホイミンにも抱きつきキスをする。
「ナニナニ?」
騒ぎを聞きつけて現れたスラリンにも、にゅっとリュカの手が伸びてくる。
「うわー!うわー!」
なんとかその手をかわしながらスラリンが叫ぶ。
「大変だっリュカがキス魔になったぞ!!」
わーわーと船内が騒然となった。

部屋の外がなんだか騒がしかったが
「お父さん」という響きが恥かしすぎて、ラスはそれどころではなかった。
「くそっあんな約束するんじゃなかった」
毛布にもぐって眠りについた。
      
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星降る大海39
2015.07.10 [Fri] 12:18

ラスの頭に手を乗せる。部屋の前でずっと聞いていたのだろうか。目が腫れている気がした。
「辛かったね」

頭においた手は振り払われることはなくラスは静かになった。
「消える」といったティルの傍で、ラスは相当苦しんできたんだと思う。


―――自分の所為で好きな人が傷ついたらたまらないわ


そう教えてくれたのはビアンカだった。
好きな女の子が傷ついて弱っていく姿は本当にたまらなかっただろう。




「ごめんね。僕駄目な親で」
「全くだ」
俯いていても間髪をいれないキレのいいダメ押しに、苦笑する
「僕がんばるよ。ティルが笑っていられるように」
思えば僕はティルの笑顔を望んだことがなかった。
「かわいいんだろうなあ」

頭に浮かぶのは春のお日様のようなビアンカの笑顔
周りを巻き込む笑い声

同じ笑顔が他でもないティルから見れたら最高だ。

見上げた空は光の粒であふれていた。
      
 

星降る大海38
2015.06.19 [Fri] 10:57

「・・・ごめん」


ラスは、ティルのために怒ってたんだ。
それに比べ、自分は自分の事ばかりだ。

親のくせに「ビアンカに会いたい」なんて甘ったれたことを言っていた自分が恥ずかしかった。



しっかりしろ自分
パパスの形見?馬鹿か自分は
パパスを敬い慕い後を追う、そんな時代はもう終わったのだ

世界の中心は、「自分」から「子供」へと移っている
『世代交代』
これをリュカは強く意識した。

自分の存在など二の次だ。
「我が子」これがなにより一番の優先事項。

いみじくもパパスがそうだったように。


「……ラスはティルが好きなんだね」
「ああ!好きだよ!!言っとくが、俺は親とか世界とか魔王とかどうでもいい!傍にティルがいればそれでいい」

ラスの瞳には パパスの敵も 魔王も 世界も 映ってはいない。
気になるのは傍にいる女の子の事ばかり
リュカは笑った。

「男の子」とはそういうものだ。
単純明解。複雑なことなど考えてはいない。
自分もそうだった。

だからこそ、その気持ちが融通のきかないもの
純粋で真っ直ぐで、それでいて無敵であることがわかる。


そこにいるのは「勇者」という「正義の塊」でもなく「スーパーマン」でもない、ただの普通の男の子だ
この当たり前な答を見つけるのに、どれだけ時間がかかったのだろう。

わかっていたつもりだったのに
今までこんなにラスを身近に感じたことはなかった。
      
 

星降る大海37
2015.05.29 [Fri] 12:49

「あれから、一体何日経ってると思ってるんだ!!」
船先まで追い詰められたラスは、こちらを振り返り叫んだ。
「何のためにアンタ探しに行ったと思ってるんだ」

アンタが生きてるってわかったとき、ティルは泣いてたんだ。
どんなに苦しくても悲しくても泣かなくなった。
そのティルが泣いてたんだ

「オレは父親とかそんなのどうだっていいんだよ!ティルがいればそれでいいんだよ!」

ただティルが泣くから・・・・・。

ティルを救って欲しかった。


ティルはずっとずっと親を恋しがっていた。
だから自分は探しに行こうと思ったのだ。

『勇者』とかそんなもの抜きで自分達を見てくれる人。
何よりティルの事を一番に想ってくれる人。
そんな存在が現れたらティルは昔みたいに笑うようになるかも
そんな淡い期待。

「テルパドールで天空の兜をかぶったとき
ティルは、後でアンタを見てたんだよ。俺ばっか見てるアンタを見て、泣きそうな顔をしてた。」

「アンタ知らねーだろ!ティルが後ろで手を伸ばしてた事!
 アンタ、一体何なんだよ!何が父親だよ!ふざけんじゃねえ!!」

「オレを見る奴なんていっぱいいるんだよ!!同情する奴だって腐るほどいる!」

「アンタまでオレを見てんじゃねえ!ティルを見てろよ!!」

一気に全てをぶちまけたラスは肩で息をしていた
      
 

星降る大海36
2015.05.25 [Mon] 12:47

「やっと気がついたか能無し」


肩を落として部屋を出たリュカを、一撃必殺の声が襲った。
ラスが立っていた。


「待って!」

そのまま走り去ろうとするラスをリュカは追いかけた。
ラスは廊下を駆け抜け船外にでて甲板へと逃げる。

リュカはラスを追って
あの夜上れなかった階段を駆け上がった。
      
 

星降る大海35
2015.05.20 [Wed] 22:12

その後ティルは長い間泣き続けた。
今は泣き止んだというより力尽きてしまったようだ
眠るティルの真っ赤な目元が痛々しい。

そのベッドの横でリュカは落ち込んでいた。


いろいろなことがショックだった

極めつけが自分に縋りつくティルの手が恐る恐るだったこと
これが堪えた。


ラスだけじゃない。
慕ってくれていたはずのティルにも結局父親として認められていなかったということだ。

がっくりしながらも眠るティルの頭を撫でる。
はずみで頭につけたリボンが爪に引っかかって解けてしまった。
そのままリボンを手に取ると縫合が甘くてあちこち糸がほつれているのに気がついた。
端から解けていくのを何度も補修した跡もある。
何もこんな汚いリボン着けなくてもいいだろうに。
もっと綺麗で可愛いリボンいくらでも買えるのだから
こんなボロさっさと捨ててしまおうとゴミ箱に手を伸ばした瞬間、「それ」が何なのか思い至って愕然とした。

昨日も着けていたんだろうか。記憶に無い。でもたぶん着けていたんだと思う。


これは自分があげたリボンだ
僕はあの時1ミリでもティルの事を考えていたか?
ただ不愉快な不要品を押し付けただけだ。

このリボンをあげた時、ティルの頬がピンクに染まったのを思い出し頭を抱える


僕の馬鹿野郎
なんでもっとちゃんとした可愛いリボンをあげなかったんだ。

自分の気持ちはこの程度でしかなかった。
縋りついてくれるわけないじゃないか。

『まじめにやれよ』
ラスの怒りは御尤もだ。これは嫌われて当然だ。



するすると紐が解けていく。

「ねえ、リュカ覚えてて。
ラスは、一番にティルのことを大切に思ってる」

エルヘブンでティルを最上階の部屋に幽閉されて、ラスが激怒した時だ
スラリンに言われた。


皆が止めるのも振り切って殴りこみに行ったラスを自分は呆れ顔をして見ていたのだ。

あの高さの城壁をティルのいる最上階まで素手で登ったと知ったときは、血の気が引いたものだ。


今、思い返せば皆からいっぱいヒントを貰っていた。
気づかない自分はどうかしてたとしか思えない。
      
 

更新履歴
2015.05.16 [Sat] 09:13

星降る大海 4,5 を追加しました。

一度PC壊れてリカバリーかけることになり
データが消えて泣きそうになりました。
今更ですがバックアップって大切ですね
      
 

拍手御礼
2015.05.13 [Wed] 11:35

お返事おそくなってごめんなさい

4/8
いつも楽しみにしてくれてありがとう
待たせてごめんね。がんばって続きを書きます。
リュカの駄目っぷりが発揮されていますね。
男ってこんなもんよ。こんなもん(笑)
むしろリュカは考えている方かと思う。こんな共感してくれる旦那私も欲しい。
世の中の男って
★「悪かった。今後、気をつける」と言ったこと忘れる。
んでもって、またやります。今回が初めてといった顔で
そして★へ戻る。永遠ループ(๑╹ڡ╹๑)
質が悪いのは、謝っている時本人は本当に反省していること。でも忘れるんです(๑╹ڡ╹๑)
ドウシタライインダー!

やばいこりゃ愚痴だ。イカンイカン
奥さん奥さん。諦めが肝心よ。といいつつ私はいつでも活火山
そういえば最近日本列島も活発化してきましたね。
ということで(どゆこと)リュカには理想的なパパへの変身を期待しています

4/20
キャラ気に入ってくれてありがとうございます
他の方の描くキャラで、私の頭からは絶対生み出せないキャラというのがあります。
そういうキャラに出会ったらすごく興奮します。
私も一生懸命個性をだそうとがんばっていますが、なにせ なす一人の脳みそから生まれるキャラですから平坦にならないよう毎度頭を悩ませています(*´艸`*)
キャラ作りって難しい。
癖を出したら出したで、受け入れられるかビックビク。
だから好きといってもらえると嬉しいです。イメージを壊さないように頑張ります。

4/23
インフル・・・エン・・ザ!!?
いやいやいや流行遅れにも程がありますぜ旦那。
一体どこで貰ってきたんですか!?確率低すぎて驚くんですけど(´゚д゚`)
といじっといてなんですが、お大事にね

4/29
最近更新はやいでしょ〜〜えへへへ
ひとえにあなたのおかげですよ〜^^とか言っちゃったりして☆
でも本当本気ではげみになっています。楽しみになっています
いつも欠かさず応援ありがとうvV
がんばります

5/9
アップしたらすぐにコメントが入っていて嬉しいです。
がんばって続きかきますね!
そろそろ峠をこえるので、するする投稿できるハズ
      
 

星降る大海34
2015.05.08 [Fri] 11:13


「私はっ!」
そこまで言って、苦しそうに口を噤んだ。後ろめたそうに瞳が下にそらされる。
肩口に置かれた小さな手がかわいそうなほど震えていた。
「私は・・・ラスを・・・こ・・・」
「ティル!」

ティルの言葉をリュカが遮る。
ティルは、ビアンカ譲りの意思の強さをもって「絶対」優しくないと思いこんでいるのだ。
だが、この先ティルからどんな言葉が続こうが覆えらない事実がある。


「ラスもそう思ってるよ」



光に灼かれてもなお、傍に寄り添いつづける
これを優しさと呼ばずに何と言う。

一番救われているのはラスだ

たまに「辛い」と叫ぶことを一体誰が責める


突っぱねていた腕の力が抜けたので、胸に抱き寄せることが出来た。肩に涙がにじむ。
もっと大声で泣いてもいいのに。
くぅっと声をこらえる姿がもどかしい。どうしてそんな苦しそうな泣き方をするのだろう
小さな肩がしゃくりあげるたび腕を通して振動が伝わってくる。
辛い苦しい助けてと叫んでるようで、それがもう堪らなくてどうにか泣き止んでくれと腕に力をこめた。

その体は細く軽く小さくてすぐに壊れてしまいそうで
思い切り抱きしめたい気持ちと、壊してしまわないように大切にしたい気持ちとの折り合いの付け方がわからなくてパニックになる。



そうだ。



自分は今この時まで

自分の子供を思い切り抱きしめた事さえなかったのだ
      
 

星降る大海33
2015.04.28 [Tue] 11:04

一瞬何の話かわからず、自分の事を心配されたのだと気づいたリュカは真っ赤になった。
よりによってティルに泣きついた昨日の自分を叩き斬ってやりたい

「・・・そうか」
だから、ラスは叩き斬りに来たのだ
自分のことしか考えてなくて子供のことを見ようともしない最低な男を。

「自分で考えろ」と言われいじける自分に、
怒りを顕わにラスが天空の剣を突き付けてきたあの夜。

その剣で叩き斬ってくれて構わなかったのに


今ならわかる。ラスの不器用な優しさ



「ティル」
少々引っかかりを覚えたリュカはそっと言い添えた。

「ティルも、やさしいよ?」

この何気ない一言で、水晶のようなティルの表情に亀裂が走った。

ティルの顔が引きつり、目がこれ以上ないほど大きく開かれる。
みるみるうちに呼吸が浅くなり、青い瞳が泳ぐ。
唇が紫色にかわり、苦しそうに胸をおさえてその場にうずくまった。

そのティルの動揺ぶりに言ったリュカ本人もまた驚いた。
抱いた肩は震えていて、どうしたらいいかわからずあせる。
とにかく呼吸が楽になるように背中を擦ってあげてるとその腕を押し戻された。

「優しくなんかないわ!」
首をふりながら顔を上げたティルは、いつもの薄い表情からは想像もつかない激情を見せた。
まっすぐ訴えてくる瞳は眩いほどの光を放ち、涙がキラキラと弾ける。
目が醒めるほどの艶やかな表情

これがティルの本来の姿なのだと、リュカは直感した。

幼き頃のビアンカがそこにはいた。
涙で頬を濡らしながら「絶対よ」と叫んだあの彼女の瞳そのままだ。