雨天揚々

June 06 [Fri], 2014, 21:02



勇気がいった

天然のシャワーに二輪の軽車両で飛び込むのに躊躇い

けれどすぐに誘われてしまった

濡れた

それはしとどに


てらてらと黒々な革靴の中までずぶずぶずぶ

ペダルは重く濡れた服はぴたりとしていた

寒いがふつふつと湧いてくるものがあった

逃れるように滑りそうな足に力を込めてがむしゃらに漕ぐ

疲れてすぐに重くなる


それでも漕ぐしかない

雨の音が聞こえない

前はずっと煙っていた

それでも力を緩めずにそれなりに進み

幾つもの泥川を裂き

緑のトンネルに出会った

緑々した街路樹と伸び放題の生垣の真っ青なこと

頭上を荒く囲む緑と雫の天井

大粒の葉露草露にせめられて笑った

屑色の水溜りを轢き散らしては空を見上げて目を閉じる

開けても閉じても見えるのは灰色ばかりだ

ふつふつとまた湧きでてくるものがあった

弾けて爆発して肝を突き破った

笑った

猿のように顔を真っ赤にして奮闘しつつ顔を歪めた

これを何と言うべきか

喜びでは生温い

嬉しさというほどに平穏でもない

奇異の目を恐ろしく思う間もなく

水の粒が世界を覆った

気にならなかった

怖くなどなかった

もっと飛び出してしまいたかった

素っ裸になって服も荷物も乗ってきた愛車も捨てて裸足で町を駆け抜けたかった

口角が上がる

マスクはとうに濡れそぼった重みでずり落ちた

丸出しだった

歪んだ赤ら顔が坂を登り、角を曲がる

一人だった

部屋で一人でいるのと同じように一人だった

歪む顔も同じだった

思いはちらとも掠らなかった

苦痛が見つけられなかった

気付けないほど遠く

身近な痛みが遠のいて

意識が遠く遠く

帰途を終え、駐輪場に着いたときに初めて

アルミの屋根に打ち付けるかきならすような雨音を聞いた










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変わり者ではありません。 どこにでもいる普通の人です。 暇人が書く暇潰しのためだけにある何かです。 特徴は口調と一人称に統一性がないことです。 くしびっちゃんか画伯(笑)と呼んでいただければ嬉しいです。
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