生田難破船の俳句 

April 11 [Mon], 2011, 18:43
1 大寒や家よろこびぬささめごと
2 大寒やなおうるわしき薔薇の棘
3 三月のあたまに雨や鯉泳ぐ
4 雨が降り出し寒鯉も浮いて来る 
5 雨がやや強く枯れたるものの音
6 秋河原重機の蟹が幾匹も
7 唇に風をしごきぬ茅花哉
8 どうみても壜の蝮のよろこべる
9 芳一とその同僚の雪おんな
10 春蘭のほのめくごとくあらわなる
11 雪女裾の先から風になる
12 真夜中の秘湯に会いぬ雪おんな
13 家を抱くこともありけり雪おんな
14 溜め息が風の音なり雪おんな
15 たわぶれに尿もしてみせ雪おんな
16 大根の消されておりぬ卸金
17 大根が解読卸金の文字
18 さざなみのおうみのなみのおろしがね
19 静物のまむし置かれる壜の底
20 さくらさくらさくらだけあるさくらかな
21 出でもみよさくらの夜が散っている
22 二の腕の肌の白さやさくら散る
23 襟足にうすき翳りの春日哉
24 冬来たるきりんの首にかかる空
25 なつかしき冬の日われに還りけり
26 冬の日のガラスを過ぎて翳りけり
27 寒菊の白さたましい何グラム
28 雪折れのこだまをもって返しけり
29 やわらかな水にゆれるや芹の花
30 まんさくの金るるるると御慶哉
31 まるごとの空をあげます初つばめ
32 かしましきつばくらのたびのものがたり
34 あやめ草水の暗さに交わらず
35 あやめぐさ夕暮れの雨いろめける
36 春一番天へ一蝶放ちけり
37 夜の門打ち放ちけり桃の花
38 桃の花ひとり見に行く夜の国
39 出でもみよさくらの夜が散っている
40 ひとはみな寒さを云うや牡丹の芽
41 三椏の花のしろさに漉かれけり
42 蕪村忌や永劫寒き烏哉
43 ひっそりと頭あつまる木骨火哉
44 勾玉に春が集まっているかたち
45 春一番ゴルフが好きな風もいて
46 東京の雪だるまとてなでられる
47 寒椿鬼が睨める天の穴
48 数式も一行の詩やばらの花
49 烏瓜みのりきったるかるさ哉
50 穀象のすべてを水へ流しけり
51 寒卵空へかざして失いぬ
52 巌頭に注連はり滝を落とす哉
53 大木にならぬ気楽さ独活の花
54 竹林にひかり刻みぬ藪柑子
55 せ せき せきれ せきれい きれい れい い ・
56 石がある せきれいがいる 石がある
57 巻貝のほどけておりぬ春の水
58 貌で飛ぶ蝶をみかけぬ渋谷駅
59 春天和地和人和緑一色
60 木の枝を噛めば苦きや春の味
61 おんな唄蝶の肢体に針ふくむ
62 負け鶏の括られている焚き火かな
63 やまざくらその一片の散りはじめ
64 寒造り水に麹に唄聞かす
65 秋河原重機の蟹が幾匹も
66 瓜盗りの星の金貨が置いてある
67 新豆腐水も切り分けゆれる哉
68 金魚玉にヒビあり楽観できぬ哉
69 映写機の光の束を見ておりぬ
70 貴船村貴船に来れば消えていし
71 突堤の春陰波が砕け散り
72 遠足の運動靴のみな違う
73 きつつきのこだまの数がはかどらず
74 秋風や跡形もなき曲馬団
75 羅の女体に馴れて憑くごとく
76 せみ時雨その一匹が遁走ス
77 台風に目あり耳なし容赦なし
78 滝落ちる正直すぎると壷がいう
79 花冷えや虚子にまつわる紐いろいろ
80 駅を出て見知らぬ街の春祭り
81 鮒鮨にあきて近江の春を去る
82 「在原」とありかきつばたが植えてあり
83 滝壺に滝詰むあそびあそびけり
84 ズズズズと滝にほれたる滝の壷
85 さば雲を摺り出す海の輪転機
86 唇に「探梅」と云わせて重ね
87 春鴨の水曳きゆけば一面へ
88 サルビアの火の容して枯れており
89 鶏頭に篠突く雨や庭の隅
90 辛酸もなめたついでの掻き氷
91 裂けるとはこのこと石榴裂けており
92 落ちるとはこういうことと椿落つ
93 叩かれて悪気なき蠅爆笑ス
94 自販機の仕様が冬に秋深し
95 防人の夫はかえらず秋つばめ
96 吹く風に夏がおとろえ動く哉
97 あさがおや登りつめれば秋の風
98 秋を盛り秋を笑える器かな
99 干し網の目ごとの海や秋の風
100 うだる夏氷細工の蟹の汗
101 大旱り降るべき雨はみな海へ
102 火遊びと蛍紛れる闇の中
103 羅をくまなく探しみあたらず
104 自画像の瞳にばらが描きある
105 夏帽子帰って来たかでかけるか
106 白球の夏影つかみ一塁へ
107 ひとに目がふたつづつある炎暑哉
108 荒星のやみに影なき蛍かな
109 天幕に張りつき花火こぼれ落つ
110 達人が水になってる水着哉
111 なめくじり雨の吉日続きおり
112 なめくじりひかりをまとい漂えり
113  一塊の陰核としてなめくじり
114 水面の浮子水面下春の水
115 紫木蓮白木蓮に疲れ哉
116 カタクリに地球の傾斜日矢の数
117 はなびらをかぞえてばらをくずしけり
118 ばらがばらばらばらばらばらばらばら
119 赤飯をもらって返す桃の花
120 薄曇る牡丹あかりや水あかり
121 春光をまといてかるく振りむける
122 月光に針穴とおす赤い糸
123 やれ蓮に風集まれば繕わず
124 おふくろとふくろうとちちとみそさざえ
125 藁苞に雀あそべる寒牡丹
126 とりわけてひかり集まる寒牡丹
127 きまりより掟がすこし寒雀
128 消息が絶えて緑や雪おんな
129 初心者か 隙だらけなり 椿見ゆ
130 あさがおの隣の枝へうつりけり
131 羽抜け鶏とても困っていたりけり
132 球磨神楽舞舞舞舞舞舞舞
133 鮟鱇の鉤に魂吊られおり
134 七草も秣に刈るや後の月
135 寒烏一記号として枝の上
136 銘刀の反りを愛して名月も
137 烏瓜のっけの花がまず怪し
138 これやこの会うも別かるも蝉丸忌
139 瓜茄子やちゃらんぽらんと水の中
140  瓜茄子やちんぷんかんぷん桶の中
141  足音のたしかな音も冬に入る
142  初春のふしぎ懐かし雀哉
143  凍月夜銀のさかなをひろいけり
144 ばら苑のばらを撰りかねばらに酔う
145 畳目を数えているや春日陰
146 錦絵の版木に春が摺りあがる
147 八重衣ほどきし梅の花蕊哉
148 寒烏ゴミに寄るなと御触書
149 三ヵ所に挫折の痕や羽抜け鶏
150 寒椿鬼が睨める天の穴
151 ドリップにコーヒー時間入れて秋
152 コーヒーのゆけむりまとう二月哉
153 夏の海へらず収支がトントンか
154 少年の首荒れ初める夏の果て
155 蓮花や池の河童はみなねむる
156 落ち椿しきつめ蒼き一樹かな
157 梅雨寒や鯉のあらいに昼の酒
158 マスゲームは苦手さくらをすり抜ける
159 坂道を下れば上るさくらかな
160 春一番目玉クリップ喰い下がる
161 雪おんな振りさけみれば木の芽吹く
162 「春の小川」暗渠の中を渋谷川
163 ものに名の多きえにしえつづみ草
164 れんげ摘みあそびの卓にのりきらず
165 寒波急日本列島弓反りに
166 雪おんな唇がもっとも匂う
167 赤い目の記憶の中の雪おんな
168 消しゴムで描いてあるや雪おんな
169 雪おんなぶ男なれば寄らで去る
170 直線で円を描きぬ雪おんな
171 逆輸入されてしまいぬ「Yuki-Onna」
172 穀象が炊かれておりぬ飯の中
173 春泥をチット弾きぬ猫の爪
174 どくだみは地下組織にて白十字
175 どくだみの花ちらちらと昼の雨
176 なめくじのいつのまにかにいなくなり
177 城郭は栄螺のかたち江戸古地図
178 春愁うラピスラズリとエメラルド
179 地軸寝て春夏秋冬わけて春
180 春立ぬいろとかたちとおんがくと
181 春立ぬ百済観世音の指先に
182 春満月過敏な秒針がえがく円
183 春満月四次元方程式の解
184 春曉や途絶えし夢の橋半ば
185 春寒しかすかに立てる家埃
186 春寒し墨の工房麝こうの香
187 春めくや黒ずみかかる銀の箔
188 洛中洛外図屏風春めけり
189 涅槃会という悲しみに華やげり
190 野火の舌甘き春草のこしけり
191 神々が間ぐ合う春となりにけり
192 ふるさとはまんさく墓に近く咲く
193 鶯や紅白梅図屏風裏
194 風なでて木蓮の花ちりじりに
195 やわらかな水にゆれるや芹の花
196 山吹の花盛るらし流れくる
197 風車笑うがごとく廻りだす
198 憂しとみてやさしとみてはさくらかな
199 やまざくら散れば風の子あらそえる
200 朱の椀の酒に帆かけるさくら舟
201 さらさらとさらさらさらとちるさくら
202 さくら蘂降るふるさとを置き去りに
203 引力の弱き日の蝶うららかに
204 羽うてば蝶の異次元ゆるゆらり
205 なに蝶か大海原からもどりくる
206 春祭り野は風の浪ピイヒャララ
207 うらうらと雲雀かくして草萌える
208 げんげ田に鬼をわすれて花をつむ
209 菜の花の香におぼれける影ぼうし
210 やしお咲く岩の鼻先にあっけらかん
211 ふつふつと春が煮えける藍の甕
212 春の夜や放物線と直線と
213 ぶらんこや揺れる現在過去未来
214 猫の子の遊びをせんとや生まれけん
215 猫の子の遊びにあきて育ちおり
216 げんげ田に片一方の靴さがす
217 落ち椿拾ってみるやたなごころ
218 椿落つ胸の真空海の凪
219 わたくしがその中からきた春の闇
220 風の花アネモネ海をみていたり
221 白魚の目は悲しけれ海のいろ
222 浅みどり白く染め抜く梨の花
223 春盛る裸婦とわたしとその他のもの
224 峠から見る日本海人麻呂忌
225 春の凪おくれて動く鳩の首
226 語り部の母に三つ子の囀れる
227 風と来て風と行ったる獅子の舞
228 剪定を終えし樹に空あらわれる
229 海峡を飛ぶ蝶の唄聞こえしや
230 春や憂し少年に魔法解けてより
231 藪椿昼闇の森いでにけり
232 停止するメトロノームに春深し
233 初夏の星見す朝の切り子哉
234 万象を孕みて重く滴りぬ
235 白牡丹あまたの景を余白とし
236 太陽をめぐる地球の牡丹哉
237 ぼうたんの病の癒えぬ五六日
238 芍薬や姉が牡丹のさみしさよ
239 河鹿の笛天地と闇が息合わす
240 照明と音響効果地球座夏
241 階段を降りくる裸体青いばら
242 ばらの息ときにばら語の交じりおり
243 ばらを吐く白き裸体の唇に
244 ばらのなぞなぞなぞのなぞなぞのなぞ
245 ばらの棘刺して痛さを訊いている
246 あかいばらをもみくしゃにしてふみつけて
247 ばらの香に容ありけりガラス瓶
248 赤いばらあおのけに見し鼻の穴
249 藻の花の憂き目をみぬや水の中
250 禿山はゆでるがごとし夏木立
251 ぼうふらやなにをのぞみのうきしずみ
252 夏の夜や屋台の陰影伎楽面
253 今カンナの向こうを過ぎしは誰
254 かしましきつばくらのたびのものがたり
255 どくだみの花ちらちらと昼の雨
256 手鏡に十薬の花も写りけり
257 ばらの棘に刺されて指を見つけた
258 兜虫日本列島改造論
259 マジックは科学サボテン花を出す
260 京和菓子ひとに会いたし水牡丹
261 夏場所を見に来よ義士も吉良殿も
262 天幕にはりつき花火こぼれ落つ
263 手花火の一部始終を面の翳
264 頼朝の義挙の風聞蛍狩り
265 噴水の頂点にある無重力
266 切れ味を嘗めてみる蠅銘刀展
267 蜜豆のむこうに街の雨を見る
268 よしきりや葦で棹さす風の海
269 旧名主屋敷の土塀青胡桃
270 鶏頭に篠突く雨や庭の隅
271 チエンソウ真夏のねむけ切り倒す
272 炎天やマンホールの蓋はなぜ丸い
273 うだる夏傷つきやすきロバの耳
274 日輪がひとりにひとつ夏盛る
275 夏の死やドライアイスにて涼む
276 みずすまし光秀の軍に囲まれる
277 職業は蟻地獄です夢のため
278 おにやんま目先をよぎる古生代
279 まな板のすいかの太陽まっぷたつ
280 ねじ花の螺旋階段ちいさき天
281 秋近しざるに盛られるうにの棘
282 砂の城くずれて夏も果てにけり
283 夢なかに銀河濃くして母をよぶ
284 きりぎりす両手にあまる太柱
285 菊満ちて日輪すでに傾けり
286 いいわけをふたことみこと菊膾
287 第二幕おりて第三の幕の秋
288 台風圏に入りつつあり虫の声
289 馬のいぬ南部曲り屋萩の花
290 塀の外に石榴熟れけり児童館
291 吹く風にあらがう秋のあかね哉
292 妻問いの闇うるわしき衣被
293 分数のごとくわかれし天地に月
294 口寄せや賽の河原に秋の風
295 秋深し鬼がかくれたかくれんぼ
296 箕笠や柿に聞かせる大鼾
297 時空という暗き四次元風の花
288 凍て蝶の祈るとみせてねむる哉
299 丹頂の鬨はなたねば凍死せん
300 天井に鶴棲む国のあるらしき
301 満天の星がふるえる霜夜哉
302 花人に酔客はなし寒桜
303 木枯らしやさかなのごとく子を散らす
304 贈られてうれし新海苔軽くても
305 山姥の木霊漉き込む紙白し
306 木枯らしにすがりついては落ちる滝
307 寒山の竹の一叢に風棲める
308 冬の水淵へ落ち来て温もれる
309 コーヒーのゆけむりまとう二月哉
310 池杭に冬魚棲める水輪哉
311 秘め事は明かさじ秩父火の祭り
312 網走監獄五翼放射状舎房冬
313 子烏の首かしげ見る寒さ哉
314 寒さまでストーブに燃す北の果て
315 さざんかや陽めぐり来れば散りやまず
316 一月やしずかに廻る江戸の独楽
317 棒杭と流れぬ月や冬の川
318 冬の日をめくる一ページ一ページ
319 天人の午睡の夢や風の花
320 直線の終点へ来て千鳥消ゆ
321 ふくろうがぐるぐるまわす冬の森
322 胎内に忘れし記憶龍の玉
323 坂道を下れば上るさくら哉
324 北斎の漫画に春が蠢めける
325 蝦蟇が出てどろんと暮れて雨が降る
326 われひとりとり残されて冬の狩
327 藻の花やおなじ方へと時流れ
328 ぶらんこや海へ出でてはもどりけり
329 冬の海くじら三千しゃち五千
330 漱石の日記に降るや明治の雪
331 天人の午睡の夢や風の花
332 雪に烏傷つけることが嬉しくて
333 ごうごうと闇が揉みいるさくら哉
334 大寒や全林おのが翳を曳く
335 サザンカや誰にも云わず泣きもせず
336 ひび割れの筋に翳入る鏡餅
337 探梅や花のすきまを埋めに行く
338 天と地に海が連なる立夏かな
339 のいばらの白き花の実赤く熟れ
340 うかうかと月をからめる蜘蛛囲かな
341 栗飯や雑木林に荒れる風
342 夏の海へらず収支がトントンか
343 自画像の瞳にばらが描きある
344 荒星のやみに翳なき蛍かな
345 蓮花や池の河童はみなねむる
346 水面の浮子水面下春の水
347 赤飯をもらって返す桃の花
348 藁苞に雀あそべる寒牡丹
349 奈落などなき涼しさや村芝居
350 手に負えぬほどになりけり梅の花
351 銘刀の反りを愛して名月も
352 烏瓜のっけの花がまづ怪し
353 大多喜の白き山城万寿紗華
354 これやこの会うも別るも蝉丸忌
355 吹き抜けを突き立つ柱春寒し
356 地球流浪流転の春に従える
357 春めくや西口へ出てとおまわり
358 空白のそらが色ずく春一番
359 ひかり満ち翳息づくや蘭の花
360 天と地の睦める夜や春の雨
361 ぶなの春ぶな科ぶな属ぶなのいろ
362 フラクタルいやとめどなき新樹哉
363 忍び音やにおうばかりの梅の花
364 おのが絵を壁に映せる梅古木
365 水という自由になってみたき春
366 風なでて木蓮の花ちりじりに
367 黄すみれがのぞいているや石畳
368 さくらさくらさくらだけあるさくらかな
369 春の夜の夢は甘かれ沈丁花
370 霧となり水にもどりし春の滝
371 蜂の死や触覚ゆれる石の上
372 桃の花孤峰崩れるおもいあり
373 夢ふかく入りてもどりぬ桃の花
437 滝水の空間座標いく時間
375 夏草や伏して流れる水の音
376 青天へわきたつ雲や新茶くむ
377 褶曲に地球の素肌みせて夏
378 道糸がふたつに分ける夏の川
379 ばらを剪り棘のこわさも美とおもう
380 夏至の日をわすれていたり雨のやみ
381 青梅の実にむすびける雨しずく
382 鬢の香や風の両国五月場所
383 うつくしき闇のありけり遠花火
384 悲しみのいろをひと刷毛秋立ちぬ
385 じゃがいもの非対称のキャラ洗いえず
386 瑞穂の国二百十日のむなさわぎ
387 竿燈の穂が重ければよろめける
388 地団駄をふむにも似たり阿波踊り
389 大欅はや晩秋の翳を曳く
390 旅へ出るピエロが好きな月の夜に
391 桃食めばやさしきひととなりにけり
392 塀の外に石榴熟れけり児童館
293 肩の荷をはらって吹くや秋の風
394 吹く風にあらがう秋のあかね哉
395 秋風や急な用事でいったきり
396 台風来蒙古襲来日延べさる
397 夢のごと茗荷の花に雨しずく
398 林檎という全きもののならべらる
399 名月や菊坂芋坂団子坂
400 対面す翁の面や秋の風
401 秋茄子に愁色暮色すさみけり
402 日輪に隈なき月のうらおもて
403 秋の実の色それぞれへ鳥いそぐ
404 台風一過そら抜け落ちていたりけり
405 母と子の哺乳類めく星月夜
406 秋ひとりノット・クワイエット・ア・サンバ
407 芭蕉翁の痔の話して菊の花
408 息ひとつ遅れて立つや菊の前
409 足早に駆け寄る秋とすれちがう
410 凍て水に目玉の動く寒の鮒
411 とりわけて光あつまる寒牡丹
412 はなびらの散りのこりたる河豚の皿
413 春怒涛のぼる滝ありぶなの幹
414 やしお咲く岩の鼻先にあっけらかん
415 しゃくなげと密会に来ぬ霧の中
416 春子夏子秋子冬子春子来い
417 さみだれや株式会社「天下布武」
418 秋茄子や糠に釘さす暮らしぶり
419 入学すさくら大樹の花の門
420 うぐいすの母をまねてや不如帰
421 秋の葉の掃かるをおしむ靴の裏
422 たんぽぽのそらとぶゆめが黄色です
423 草にねてたんぽぽの空高き哉
424 野薊のだれにもなにも教えない
425 急ぐより紆余曲折がよし春の川
426 春よ春わきたつ春の無重力
427 春たける車窓のさかさ文字も春
428 なめくじのいつのまにかにいなくなり
429 寒山の竹の一叢に風棲める
430 自販機の仕様が冬に秋深し






             

生田難破船の俳句 

April 14 [Wed], 2010, 10:41
「家族写真」みんな何見るさくらから
さくら咲く「漢和辞書」探し物は何
幾星霜ありて今日の桜かな
もう2月ところで緑は好きですか
年の瀬やあらなつかしい声だわね
秋の雲みんな何処いく何故いそぐ
大空を西から東へ秋の雲
秋の空平和だ豊かだ好きだ
タンポポの夢の構造風に散り
小豆島一番札所夏至観音
夏至の日を忘れていたり雨の闇
菜の花の香におぼれける影法師
鈴虫の卵春雷を待つばかり
春鳥よ愛の外には知らないわ
散るさくらそのはなびらの浮きごころ
鎌倉や梅にうぐいす桜かな
手に取れるほどの小さき春なれど
黒板はまことに新緑新学期
春競馬やや濃くなりぬ馬の影
路地の春猫に会釈をしてされて
猥雑感増す路地の春すりぬけて
春の鳥大地奏でるサクソフォン
土筆伸ぶ「泣けなかった」と泣いたとか
春立ちてより秒針の刻々と
風車笑うがごとくめぐり出す
陽をめぐる春のフレーズを繰り返し
春一番犬が尾を振る蟹が手まねく
気もそぞろ街駆け抜ける春一番
われも見ず人にも見せぬ襟足を髪振りみだす春風ぞ知る
花占い「おきらいかしら」「すきかしら」
春はあのクラリネットの「ソ」の音から
チュウリップの芽が出揃うや幼稚園
来るものと去り行くものに春の雪
春一番「冬もいい」など余裕だね
春や憂し少年に魔法解けてより
春めくや心のくもり時々晴れ
春風や髪振り乱す柳かな
世迷言を他人(ひと)に食わせて味を見る
れんげ咲く土を耕し種を蒔き
はこべらのしろいちいさいはなはここです。はイ。はイ。はアイ!
春風や銘酒「川柳・柳樽」
花粉症信号の目がカチカチと
春なれや別れを熱くライブ歌手
コーヒーの湯煙まとう二月哉
春なれや別れの歌が茶房から
春立つや使い古しの種暦
春立つや二百十日を視野に入れ
寒き日を今日を限りと春立ちぬ
春立つや水の地球の水一滴
ひとは皆寒さを云うや牡丹の芽
牡丹の芽京大阪は鼻の先
冬も好きメトロノーム針右左
歳月や想う節あり竹の雪
溶けるまで泣かず騒がず雪だるま
雪溶けて黒い疑惑も露出する
藁ずとに雀遊べる寒牡丹
目白来てチィと鳴いたが寒かろに
チューリップのグラスに雨は刺激的
母の背で雪を温(ぬく)しと思いけり
子羊や風渡野の若草たんと食め
春なれや暗中模索五里霧中
箱根駅伝聞けば涙の裏話
顔にあるしわがもの言う十二月
まな板を白刃が叩く師走かな
大寒やねぎの白さをみじん切り
「唐獅子牡丹」捨てぜりふが決めぜりふ
球根を埋めて復活を信ずるや
熱燗のそばで冷酒冬隣
なつかしき冬の日我に還りけり
冬の陽のガラスを過ぎて翳りけり
赤椿雪に匂いがあるを知り
木犀の銀が集まる風の趣味
言い訳けを二言三言菊膾
麗しの虞美人草は芥子の花
ぜんまいやつる巻ばねの古時計
さば雲を刷り出す海の輪転機
どんぐりの胚や木になるプログラム
ドレミファソラ紫蘇の香を聞きに行く
台風来新人アナが矢面に
秋に入るそこはかとなくそれとなく
コスモスや笑いころげて泣くじゃない
秋母の知恵会うてみよ添うてみよ
木の実落つふるさととうに他郷なる
唇に風をしごきぬ茅花(つばな)哉
風に研ぐキツネノカミソリ触れるなよ
無花果はあざむく花よ熟れて知れ
身軽さよころげる落ち葉どこまでも
夏の波当たって砕けろと砕けて
見限りの客現れぬ冷奴
夭折の気色に風や芥子の花
タンポポやそのポーズとてもいいですねえ。
雪積むや「雪」の美名に名を借りて
椿散る訳など知らぬうちが華
日本橋小伝馬町に柳の芽
初雪や下駄の鼻緒が二足三文
春は「ロマンス」ギターの指の擦れ音
花札をめくれば鶴に旭(あさひ)哉
負け組みのあの馬何処ハルウララ
時空という暗き四次元風の花
天人の午睡の夢や風の花
名月に蜘蛛やおぬしも綱渡り
木枯しや枯葉をつなぐ蜘蛛の糸
寒空や知事の裏見る「おもてなし」
寒卵空へかざして失いぬ
陽を廻る地球の軌道寒卵
寒卵その構成力を特許庁
十二月始末をつける銭と鐘
カラカラとコロコロ笑う紅葉(もみじ)中
十二月要ルと要ラヌを四捨五入
枯れ尾花どこへ迷い道くねくね
ワインレッド自分を忘れてもういいね
名馬あり即ちこわれぬ秋の影
サルビアの火の容(かたち)して枯れており
コスモスのなんでもなさがお気に入り
思い出すことなど浮かぶ秋の雲
台風に目あり耳なし容赦なし
秋の夜も更けぬ「産業革命史」
秋の実の色それぞれへ鳥いそぐ
地下鉄を這い出て涼し神保町
じゃがいもの非対称のキャラ洗い得ず
唇に風をしごきぬ茅花(つばな)哉
上弦の月半分はわたしの罪
秋の雲今頃どこで何してる
花梨(かりん)落つ一夜に更けぬ空のいろ
Full moon 見過ごしにけり「最終回」
忘れたる天地山河や米届く
生業(なりわい)や牛を見送る9月哉
名月やこれには最少しうらがある
うるわしの虞美人草はけしの花
秋に入るそこはかとなくそれとなく
どんぐりの胚や木になるプログラム
山百合の理性を捨ててなお白し
みず穂の国二百十日の胸さわぎ
江戸川の漁家に干される鰻筌(うけ)
秋の雲空へ召されぬ法学者
終電が月へ吐き出す夜の蟻
瓜盗りの星の金貨が置いてある
秋風や跡形もなき曲馬団
タンゴともボサノバかとも秋の虫
風に研ぐキツネノカミソリ触れるなよ
あさがおや登りつめれば秋の風
カナカナが鳴いて宿題が気にかかる
上を見てひとが居並ぶ原爆忌
第二幕降りて第三の幕の秋
秋風や神田古書街本の虫
夏の月かざりけのないありのまま
北極の氷が消えてうだる夏
暖まるくじらが嘆く海の水
列島にかかる前線雨すだれ
どくだみの花ちらちらと雨の闇
金魚玉わすれるだけの救いなさ
太陽をおそれるやからの花に雨
から梅雨やN極側から見る日本
柿若葉のぼってくるや鯉の口
柿の花落ちて波紋をよぶ手水
路地の露落ちて地に咲く柿の花
薔薇園の薔薇を撰りかね薔薇に酔う
赤い薔薇あおのけに見し鼻の穴
はなびらをかぞえてばらをくずしけり
ばらがばらばらばらばらばらばらばら
倭の国の使者が旅立つ立夏哉
鯊(はぜ)釣るや水平線に糸垂れて
白牡丹あまたの景を余白とし
芍薬や姉が牡丹のさみしさよ
せ せき せきれ せきれい きれい れい い ・
牡(ぼう)丹の凝り揉みほぐす首夏の風
柿若葉ブリキの金魚パキ・ぺキ・ピキン
歌舞伎座のこけらを落とす四月哉
海峡を飛ぶ蝶の唄聞こえしや
春の虹野辺の送りの手際よさ
コスモスのなんでもなさがお気に入り
寒けれど林檎の花と津軽冨士
引力の弱き日の蝶うららかに
うらうらと雲雀隠して草萌ゆる
まるごとの空をあげます初つばめ
かしましきつばくらのたびのものがたり
電脳に負ける名人榧の花
鳳仙花はじけて飛んで大都会
春蘭のほのめくごとくあらわなる
畳目を数えているや春日陰
タンポポがここにありますあそこにも
タンポポの空飛ぶ夢が黄色です
赤椿金毘羅歌舞伎大芝居
鶯といえどその日の上手下手
山桜その一片の散り始め
葉桜や過ぎた話に花が咲き
葉桜や過去形現在進行形
さくらさくらさくらだけあるさくらかな
坂道を下れば上るさくら哉
桜みな手を延べ触れる位置にあり
マスゲームは苦手さくらをすり抜ける
朱の椀の酒に帆かける桜舟
山桜散れば風の子争える
藻の花の憂き目を見ぬや水の中
やわらかな水にゆれるや芹の花
カタクリに地球の傾斜日矢の数
いらだちと見えて素軽き千鳥足
三月の頭に雨や鯉泳ぐ
春一番天へ一蝶放ちけり
春愁うラピスラズリとエメラルド
春や憂し少年に魔法解けてより
春天和地和人和清一色
水の音光の音やショパンの春
啓蟄やめぐる星座と虫眼鏡
竹林に光刻みぬ薮柑子
春立ちぬ百済観世音の指先に
春や春見栄切る猫の団十郎
葱の葉の流れる水に浮かぶ雲
ほめられて伸びるタイプの土筆哉
引っ込みもつかぬ雪野や蕗の塔
積もる気のない粉雪が風に舞う
降る雪や国会答弁延々と
降る雪や内藤九段の煙詰め
初雪や真っ赤な肌の仁王像
頼まれてタバコを買いに初雪に
初雪や聴く歌のない歌謡曲
初雪や烏も黙る枝の上
初雪や由来あやしの綾瀬川
雪の野を踏んで横切る二人連れ
初雪や滝が地に降る落差哉
平成の時代背景名残り雪
初雪や作って見せな!「いいお顔」
チューリップに雪降るなんてあるかしら?
雪に烏傷つけることが嬉しくて
砂糖大根天才の名をほしいまま
宮島の鳥居拝すや牡筏
笹に雪のせて喜ぶ竹の節
青物の値が競り上がる寒さ哉
ふんだんのコラボレーション冬星座
巌頭に注連張り滝を落とす哉
高座郡寒川町へ賀状書く
新年の座右の銘は1.5
寒菊の白さたましい何グラム
秘め事は明かさじ秩父火の祭り
三椏の花の白さに漉かれけり
破(や)れ蓮に風集まれば繕ろわず
巨匠にも蕾の時代寒椿
菊祭亀戸天神船橋屋
赤椿雪に匂いがあるを知り
あおのけに地軸傾く寒さ哉
真空管も売られておりぬ秋葉原
秋草の風に靡くや草書体
黄道の菊日和なり天球儀
木犀の銀が集まる風の趣味
寒椿真っ赤な嘘に黄の焔(ほむら)
北風に南へなびく柳哉
烏瓜皮一枚に種ひとつ
秋風や流れる雲の絵空事
皀莢(さいかち)の花をも知らず実も知らず
秋草の月を真似てや弧をえがく
赤とんぼ手には銘刀肥後の守
秋の風あの歌はもう唄えない
どんぐりの胚や木になるプログラム
夢のごと茗荷の花に雨しずく
寒牡丹女が唄う男唄
冬の星その指先の「カンパネラ」
憂鬱の波にただよう海月(くらげ)哉
花りん落つ一夜に更けぬ空のいろ
信号もコンビニも無い村の月
秋場所や化けて大関横綱に
秋の海すこしふざけて返す波
コスモスや風に笑って雨に泣き
たんぽぽの夢の構造風に散り
太陽系惑星のC・D9月の曲
いつからが綿の実になる綿の花
鯊釣るや水平線に糸垂れて
タンゴともボサノバかとも秋の虫
虫の音にせかれる蝉や夜もすがら
終電が月へ吐き出す夜の蟻
Bossa Nova のGarota de Ipanema 秋に入る
弧をえがく草葉の先に白露哉
油蝉上野の森にフェルメール
秋出水一時にすべてを台無しに
秋の翳ふむやうしろの正面はだれ
秋草や月を仰げば弧をえがく
一連の仕草のなかの秋の花
望月の日ごとに翳る三球儀
「天体の回転について」秋めける
碁仇きに五目並べの意趣返し
秋めくや仰げる空のなつかしさ
秋立つや峠を越しぬ四苦八苦
遠来の風でもてなす夏の客
南から風が吹き抜く夏座敷
朝に陽に夕べに白し芙蓉哉
東京のひとともなれずプラタナス
木苺の熟れてこぼれるけもの道
アメンボや気宇壮大な水たまり
アメンボや時空の主のなりすまし
夏の雲仮説に仮説積み上げて
冷酒やはらわたちぎる演歌哉
冷酒の甘さ辛や夜の底
桃の実や想い出させる花の頃
あさがおや「おはよう!」などとしゃべるねこ
万寿紗華花を落としてたけくらべ
風に研ぐキツネノカミソリ触れるなよ
秋風もそよぎぬ風の又三郎
林檎もぐ月が地球に落ちぬわけ
日盛りへ松葉牡丹のアラベスク
うだる夏氷細工の蟹の汗
太陽に地軸もたれる暑さ哉
地球から振り落とされる危惧極暑
投げやりが「槍投げ」を見る夏季五輪
暑さとは反りが合わぬやバイメタル
鳶廻る空の高さや鳥瞰図
灼る陽に一矢報いる水を打ち
金魚玉わすれるだけの救いなさ
夏草や伏して流れる水の音
河鹿の笛天地と闇が息合わす
荒星の闇に翳なき蛍哉
頼朝の義挙の風聞蛍狩り
火遊びと蛍紛れる闇の中
おにやんま地球の齢系統樹
そばを打つひねくれ者の変わり者
照明と音響効果地球座夏
野分して枝葉もつれる柳哉
もろこしの種を数える暇潰し
実の種を数える趣味を西瓜哉
ひまわりや自由研究種の数
「暑い」より「熱い!」と云えり今日この頃
暑いニャー・熱いワン等とホント熱い
グリニッジ世界のへその夏季五輪
原発や国家心中暑苦し
喉元を過ぎて涼しや原発忌
「E = mc2」原爆忌
夜の中にはばを利かせる牛蛙
藍浴衣かるく着流す江戸の趣味
羅の女体に馴れて憑く如く
こわいもの見たさの塔の花火哉
天幕にはりつき花火こぼれ落つ
手花火の一部始終を面の翳
圭甲武人埴輪眼窩闇涼し
切れ味を嘗めてみる蝿銘刀展
桃喰めばやさしきひととなりにけり
出し物を「夏の夜の夢」グローブ座
目にものを花カマキリの太極拳
世の中は苦楽の渦の薔薇の花
ひまわりも一年生や夏休み
コンパスと三角定規とひまわりと
ひまわりに背丈抜かれる夏休み
かがなべて46億年の夏
夏の海blackbeauty返す波
蝉の羽化七年振りの陽射し哉
触覚と嗅覚冴える梅雨の中
蝸牛「もうかりまっか?」「あきまへん!」
名古屋場所昔安土の相撲哉
胡の国の女踊れる葡萄哉
おにやんまタイムトンネル否定説
椿散るわけなど知らぬうちが華
葡萄の木たわわにベビー・ユニバース
夏の海返るこだまはなかりけり
世の中を覗き込むよな椿哉
毒舌の舌で刺す虻滅びしや
かぼちゃ割る黄金の茶室金の馬車
悲喜劇をひとりでこなす梅雨の中
なめくじに雨の吉日続きおり
梅雨の中ぬれて見返る美人哉
そのことについては触れず紅の花
梅雨時雨ひとをもてなす手間と暇
二十四季七十二候半夏生
夏至の日や遠日点を折り返し
小雀も交えて四五羽あそぶ哉
[浅草しぐれ]タッタと刻む手風琴
列島にかかる前線雨すだれ
為時の溜息「源氏物語」
柔肌の熱き血潮や花菖蒲
柿若葉ブリキの金魚パキ・ペキ・ピキン
聞こえるか耳の容の蝸牛
その実は地獄耳なり蝸牛
水すまし光秀の軍に囲まれる
不如帰西陣織の一張羅
緑陰に花が顔出す椿哉
緑陰や碑の読みがたき一里塚
行く末を何のへちまのたわし哉
耳なれぬ鳥の声聞くはしり梅雨
紫陽花に肩身のせまき舗道哉
鰹ぶし黴に付き合う日本哉
カマキリの貌に見入るやピタゴラス
くもの囲に水玉かかるはしり梅雨
走り梅雨ニセアカシアの花散らす
くもの囲やwww.com
総論をとばし各論梅雨に入る
小すずめの嘴にはみだす蝿の翅
漬け・炒ため・煮・茹で・蒸し・焼く茄子の紺
木曾なれば朴葉に包む柏餅
旅行けば木曽路に香る檜哉
値の付かぬ畑生まれの茄子の紺
茄子紺といろをめでられ身は喰われ
世の中を覗き込むよな椿哉
かぼちゃ延ぶ道路をよぎる無茶もして
海彦も川に集まる鮎の虹
白牡丹あまたの景を余白とし
河骨の金の軽さや水に浮く
新月があらわになりぬ真昼哉
金環食輪切りにされぬ茹卵
金環食スタンデイングオベーション・アンコール
陽暦に陰暦繋ぐ「セレナーデ」
金環食卑弥呼の鏡翳りけり
見るものと聞くものに無き解毒剤
夏競馬ついて離れぬ馬の影
夏の雨ハンマーアクション・ピアノ線
エジプトの便りよこせや初ツバメ
うら若きひとが顔出すクレマチス
母の日に心尽くしの葱の花
芍薬や姉が牡丹のさみしさよ
俳優に間と息とあり白牡丹
さくら鍋男が唄う女唄
峠から見る日本海人麻呂忌
人麻呂忌贈る現代用語辞書
見栄を切る団十郎やねこの恋
春の夜の夢は甘かれ沈丁花
葉桜や過ぎた話に花が咲き
背表紙の「鬼の研究」春の宵
菜の花と風が詩を書き曲を書き
わさび根のびりりと辛さ舌に眼に
春の日や沈める花も浮く花も
筍と蛸に無用の心柱
春霞曖昧模糊な俳句かな
裁判員裁判昔租庸調
春暁や呼べば鼾で答えけり
船乗りが陸(おか)で患う春の雪
震災の姿定まるゲシュタルト
「侘助」と呼ばれてひとに取りまかれ
水底も動いているや柿若葉
ぼう丹と芍薬・百合と三姉妹
「唐獅子牡丹」大正琴とマラカスと
寄進集め権門勢家望の月
望月や公転軌道の月の位置
待たされる身から待つ身に種植えて
ダビンチの春の自由の水の泡
バラ垣に光こぼれり「ノクターン」
夏場所を見に来よ義士も吉良殿も
甲羅干し鯉がうらやむ立夏哉
倭の国の使者が旅立つ立夏哉
有明の海が干上がる立夏哉
ぼう丹の凝り揉みほぐす首夏の風
京和菓子ひとに会いたし水牡丹
うらうらと雲雀隠して草萌ゆる
桃の花蜂の羽音のヴィヴレーション
桃の花蜂をとりこむ返し技
太陽を横目に過ぎぬ春分点
「春」なのね自分で云うのもなんだけど
春泥や寝る「長靴をはいた猫」
揚げ雲雀戻って来ぬや雲の中
浮く花も沈める花も春日哉
春の子の名のみ覚えし花の数
春の水渦巻くちからカオス論
鈴の音を選んで付けし子猫哉
なつメロや3分45回転
蕗の塔常陸の国の一の宮
しどみ咲く鄙にはまれな都振り
筑波嶺と霞ヶ浦に月ふたつ
筑波嶺や香取・鹿島に月ひとつ
辛夷咲くジャンケンポンであいこでしょ
入学す桜大樹の花の門
新入生良い質問に良い答え
カタクリに地球の傾斜日矢の数
桜あげ代わりに貰うハナミズキ
手に花を胸に花添え卒業す
祝盃をまず挙げいたりクロッカス
このあたりジャズが流れる蕗の塔
ランドセル手足まといの赤い靴
赤椿雪積む女性研究史
隠れたる名曲流る雪原野
藁苞と牡丹カバーとオリジナル
春は「ロマンス」ギターの指の擦れ音
春泥の猫の足跡もどりけり
乾板を反転させて春の星
土筆伸ぶ天にふれればふるえるよ
ほめられて伸びるタイプの土筆哉
つくしんぼ茹でて煮られる味なまね
雨がふり出し寒鯉も浮いてくる
海にいたこともありけり蝸牛
三月の悲喜交々の中にあり
時間にも甘き味あり春の宵
頼りなき金の成る木の白い花
春嵐ブレーンストーミングという手法
雪の野に目立ってくるや紙魚・痘痕
竿投げて山魚女の春となりにけり
名所江戸百景亀戸梅屋舗
寒椿真っ赤な嘘に黄のほむら
三椏の花を見に来ぬ百花園
半熟も完熟もよし寒卵
熱燗で飲めば色づくもみじ哉
寒牡丹聞けばうれしき物語
寒卵その構成力を特許庁
寒椿こころやさしきがらっぱち
北風に南へなびく柳哉
平蜘蛛は仕切りのかたち日馬富士
出がけにも帰りがけにも寒雀
寒烏ついてはなれぬ固定客
五十三次蒲原の雪の夜
五十三次見上げ見返る富士の雪
赤椿雪に匂いがあるを知り
大寒や水に切られし指の先
俎板を白刃が叩く師走哉
大寒や嫁に教える隠し味
冬の道はるかに尽きる遠近法
潔白の葱のさむさや微塵切り
閏日の雪つむ宵をさくらかな
新巻の半身そがれて板の上
ひとはみな寒さを云うや牡丹の芽
牡丹の芽京・大阪は鼻の先
地軸寝て春夏秋冬別けて春
春子夏子秋子冬子春子来る
福寿草天衣無縫の彫金師
恙無しや墨と硯と筆と紙
春の陽の地球に着くや500秒
春暁や途絶えし夢の橋半ば
コーヒーの湯けむり纏う2月かな
ころころとこどもも笑え蕗の塔
福寿草画狂老人卍筆
引っ込みもつかぬ雪野や蕗のとう
福寿草光と時間度量衡
蕗の塔純度薄まる銀の価値
春めくやひとりか待ちびと来たらずか
春光をまといてかるく振り向ける
蕗の塔まだ助かっているらしい
駅を出て見知らぬ街の春祭り
喧嘩して仲良く遊べ蕗の塔
雨の夜や匂いほころぶ梅の花
蕗の塔みどりの衣はなの束
月晴れる江差追分海も凪ぐ
蓑虫やぶらりふらりとお茶の木に
春風や叩く太鼓と鉦と笛
木枯らしと春一番とすれ違う
降る雪や国会答弁延々と
なまけ猫さびしがりやの寒がりや
島なみの茹でて干される寒ひじき
初場所や子どもに負ける紙相撲
父はもう記憶の中の蕗の塔
寒椿金毘羅歌舞伎大芝居
炒飯や失敗作で奇抜な味
寒椿街に客ひく楽屋裏
漬けられて炒られ煮・焼やかれ茄子の紺
炒められ漬けて煮・焼かれ茄子の紺
笹に雪のせてよろこぶ竹の節
下手うまの唄の持ち味冬ざるる
あけぼのに雲の竜立つ辰の年
屋根裏の散歩者かとも嫁が君
宮島の鳥居拝すや牡蠣筏
漱石の日記に降るや明治の雪
ふくろうがぐるぐるまわす冬の森
年の瀬やそんなことなどあったかと
村芝居椿の袖から出で来たる
見ぬひとにはたと出くわす十二月
顔にある皺がもの云う十二月
つけ足しの布一枚の雪おんな
冬の星その指先の「カンパネラ」
天人の午睡の夢や風の花
秋の実や笑いの種も実らせて
秋の実や頭痛の種も実らせて
柿の実の熟れてとどまる枝の先
業平の言問橋のみやこどり
寒に入る口に唖然と茹で卵
終電が月へ吐き出す夜の蟻
ひと混みに耳が働く十二月
世の中がしきたりめくや十二月
なつかしき冬の日我に還りけり
つま先も見上げる空も十二月
寒山の竹の一叢に風棲める
しがらみに繋がる凧や十二月
ふるさとに川の流れと赤まんま
秘め事は明かさじ秩父火の祭り
巨匠にも蕾み の時代寒椿
魂出でよ源融薪能
棒杭と流れぬ月や冬の川
冬に入るキリンの首にかかる空
寒椿鬼が睨める天の穴
花人に酔客はなし寒桜
柿喰えば身に浸み入るや石の冷え
寒さまでストーブに燃す北の果て
校門の銀杏黄落しきりなり
冬籠る猫の孤独とわが孤独
ホータンの月や蚕と桑の種
散りぎわとみえて白さや菊の花
寒菊やだめと言い切る女かな
寒菊の白さたましい何グラム
山茶花や富士見坂てふ道しるべ
山茶花やだれにも云わず泣きもせず
柿の実が干乾ぶ樹状系統図
寒椿苦しまぎれの一手かな
山茶花やこの世の中へほつほつと
山茶花や陽めぐりくれば散りやまず
秋の夜は本音で語れキリギリス
海に入る裾野や赤き秋の富士
西行の不二のけむりの行方哉
枯れすすき穂先に浮くや白い月
自販機の仕様が冬に秋深し
秋の葉の掃かるを惜しむ靴の裏
鳴き方は聞くな秋野の虫の声
果かなくて嘗めてばかりの秋の蠅
望月に糸ひく蜘蛛やさりげなく
世の中は水の流れの秋の雲
ころげ跳ぶ枯れ葉や秋の出す便り
桁々と笑う遊びの秋の塔
百舌鳥の贄百舌鳥鳴くソレガドウシタと
羽織るものいちまいほどの暖かさ
寒造り水に麹に唄聴かす
秋風や結ぶ編む織る摺る染める
初冠雪有無を云わさぬまでに澄み
葛の根を叩いてひたす秋の水
秋風や跡形もなき曲馬団
黄道の菊日和なり天球儀
蜜柑熟れ海に浮遊す島一基
いいわけをふたことみこと菊膾
秋の実のいろが集まる八百屋哉
菊の花つまびらかなる設計図
木枯しや枯葉をつなぐ蜘蛛の糸
大欅はや晩秋の陰を曳く
飛ぶ夢をみて躓きぬ初氷
三椏の花の白さに漉かれけり
野茨の白き花の実赤く熟れ
秋の気を吸って吐き出す手風琴
はぐらかしきれず纏わる秋の蝿
秋風や二行で足りる我伝記
秋茄子に愁色暮色すさみけり
秋茄子や糠に釘さす暮らしぶり
場外に馬刺しを喰えば秋深し
望月に餅搗く音や臼と杵
木犀の下で会いけり別れけり
木犀の銀が集まる風の趣味
銭湯の壁一面の富士の雪
これまでをまたこれからをカーネーション
鋸の歯の目立ての澄める朝の秋
秋河原重機の蟹が幾匹も
秋の実の色それぞれへ鳥いそぐ
秋はみな黄金色なる実り哉
どんぐりのしとどに落ちぬよべの風
いつどこで得たるや知らず髪の霜
秋空に描いてみるや点と線
キリギリス両手にあまる太柱
ねじ花の螺旋階段小さき天
台風圏に入りつつあり虫の声
秋愛(は)しと想う心をさみしがる
秋赤黄青と黒のあるコンポジション
肩の荷を払って吹くや秋の風
天人五衰目前の菊ねむる猫
街へ出て秋の天地に栞られる
影衰ろうひとしおうすき汗の味
分数のごとく分かれし天地に月
妻問いの闇うるわしき衣被(きぬかつぎ)
満天の星がふるえる霜夜かな
烏瓜実りきったる軽さ哉
柿熟れてすこし残りぬへたの渋
山ごとに風の名がある秋の雲
じゃがいもの非対称のキャラ洗い得ず
梨はその水の白さの重さ哉
秋ひとりノット・クアイアット・ア・サンバ
唇に風をしごきぬ茅(つ)花かな
逆光の中を狂える秋の蝶
漬物の石がおぼれる寒さ哉
馬の居ぬ南部曲り屋萩の花
あなたにと子を授かるや椿の実
あっさりと花を捨てたり椿の実
十月よわたくしだけをひとり愛して
栗飯や雑木林に荒れる風
朝顔やのぼり詰めれば秋の風
新聞を斜めに読むや秋の蠅
干網の目ごとの海や秋の風
秋めくやざるに盛られる海栗の棘
切れ味を嘗めてみる蠅銘刀展
照明をすこし落としぬ居待月
ソーメンのすすきに盛るや黄身の月
花に会いもみじに別るさくら哉
コスモスや笑いころげて泣くじゃない
遠足の運動靴のみな違う
朝顔の見てきて咲きぬ夜の闇
万寿紗華はなを落としてたけくらべ
秋めくや風に吹かれる蝉の殻
こころからくすぐられておりすすき原
くちなしの花が匂うやハイビジョン
山ごとに日暮れていくや蝉時雨
兜虫十年一日Yesterday
父さんを母さんにする更正法
徳利の口をめぐるや秋の蠅
羅の衣桁に懸かる秋の陰
秋場所や総紫の庄之助
番付の蠅の頭の四股名かな
胎内にわすれし記憶龍の玉
夢中に銀河濃くして母を呼ぶ
サルビアの火の容して枯れており
毒舌の舌で刺す虻滅びしや
病院の麻酔打つ蚊の手際哉
澄む秋や馬の目玉にわれの影
とどかざるもののひとつの秋の雲
叩かれて悪気なき蝿爆笑ス
うだる夏氷細工の蟹の汗
夏帽子帰ってきたか出かけるか
口寄せや賽の河原に秋の風
悲しみのいろをひと刷毛秋立ちぬ
葛の花見分けぬまでに暮れにけり
秋立ちぬ空を映せる赤子の目
よしきりや葦で棹さす風の海
石楠花と密会に来ぬ霧の中
梅雨明けを惜しむ触角なめくじり
値のつかぬ畑そだちの茄子の紺
稲妻や恋しき夫のありどころ
白球の夏影つかみ一塁へ
名ゴールもつれた糸をときほぐし
京和菓子ひとに会いたし水牡丹
陽盛りへ松葉牡丹のアラベスク
灯台の影踏みいるや西日中
大阪は将棋がすきな塔の月
千年の地震(ない)くる地球割れるかと
マグニチュード9.0の震度7
山くずれ谷埋まるとも蝉時雨
とおくふかくくらくみちのくねぷたもゆ
竿灯の穂が重ければよろめける
地団駄を踏むにも似たり阿波踊り
ひまわりの種を数えて休暇果つ
天幕に張り付き花火こぼれ落つ
うつくしき闇のありけり遠花火
手花火の一部始終を面の影
頼朝の義挙の風聞蛍狩り
ひとに目がふたつずつある炎暑かな
日輪がひとりにひとつ夏盛る
ひとであれば走るマラソン炎天下
山百合が陽へ吐き出しぬ黒き蜂
おもしろいと云っちゃ悪いが云い得て妙
納豆の糸ひきねばる風情哉
鈴の音を選んで付けし子猫哉
ばらの花背景のない肖像画
撫子が咲くや日本のいい女
辛酸も嘗めたついでの掻き氷
ぼうふらやなにをのぞみのうきしずみ
夏帽子帰ってきたか出かけるか
夏草や伏して流れる水の音
圭甲武人埴輪眼窩闇涼し
夏の死やドライアイスにて涼む
ひと濁りの宇宙手に落つ心太
台風に目あり耳なし容赦なし
兜虫日本列島改造論
自画像の瞳にばらが描きある
あさがおのとなりの枝へうつりけり
あさがおや音盤に針恋の唄
ゴッホの向日葵わたくしのダリア
かじかの笛天地と闇が息あわす
今カンナのむこうを過ぎしは誰
夏競馬新潟一直線の千
貼り付いてまったく揺れぬ夏の影
青桐の葉ごとにうごく夏の影
朝顔とへちまからまる垣根かな
にんじんの花のころまで捨て置かれ
かごめかごめ月の自転はほんとほんと?
水すまし光秀の軍に囲まれる
五月雨や株式会社「天下布武」
六月や海へむかって土俵入り
夏至の日をわすれていたり雨の闇
どくだみの花ちらちらと昼の雨
思うことみな同じなるタニシ哉
ぶつくさと不平を鳴らすタニシ哉
初夏の星見す朝の切子哉
マジックは科学仙人掌花を出す
二十四季七十二候半夏生
赤いバラ画家が探りしバラの線
池袋居酒屋「CHIHARU」赤いバラ
薔薇を吐く白き裸体のくちびるに
赤い薔薇あおのけに見し鼻の穴
ばらを切り棘のこわさも美と想う
ばらの棘に刺されて指を見つけた
薔薇の息ときに薔薇語の交じりおり
なめくじり雨の吉日続きおり
竹の子の突き当たりけり天の底
階段を降りくる裸体青い薔薇
はなびらをかぞえてばらをくずしけり
ばらがばらばらばらばらばらばら
あかいばらをもみくしゃにしてふみつけて
しろばらのいろはにおいどちりぬるを
ばらのなぞなぞなぞのなぞなぞのなぞ
ぼうたんの病の癒えぬ五六日
寝て覚めて牡丹見し眼をもて余す
柔肌の熱き血潮や花菖蒲
根深き想いの丈や花菖蒲
げんげ田に鬼をわすれて花を摘む
げんげ田に片一方の靴さがす
麦の秋麦なき故郷風いそぐ
植木市午前の曇り午後の雨
あやめ草水の暗さにまじわらず
あやめ草夕暮れの雨いろめける
ひかり満ち翳息づくや蘭の花
まるごとの空をあげます初つばめ
つばくらやそのこえそのいろそのかたち
かしましきつばくらのたびのものがたり
つばくらに切られし空が暮れかかる
青梅の実にむすびける雨しずく
春蘭のほのめくごとくあらわなる
青天へ湧き立つ雲や新茶汲む
万象を孕みて重く滴りぬ
白牡丹あまたの景を余白とし
芍薬や姉が牡丹のさびしさよ
羅やかって知ったるおんな哉
なめくじりひかりをまとい漂えり
なめくじりいつのまにかにいなくなり
山笑う濡れては還るこだま哉
縄文の土器出る畑の蕎麦の花
菜の花の香におぼれける影法師
風車笑うがごとくめぐり出す
梅雨寒や鯉のあらいに昼の酒
天と地に海がつらなる立夏哉
揚げ雲雀語るに落ちて草の中
水底もうごいているや柿若葉
柿若葉のぼってくるや鯉の口
団子やの暖簾からまる柿若葉
坂道を下れば上るさくら哉
大和路や仏も出でよ春の旅
春の川清し麗しアーチ橋
青丹よし奈良の都の菜種梅雨
出でもみよさくらの夜が散っている
薔薇苑の薔薇を撰りかね薔薇に酔う
二の腕の肌の白さやさくら散る
畳目を数えて居るや春日陰
さくらさくらさくらだけあるさくらかな
三椏の花の白さに漉かれけり
錦絵の版木に春が摺り上がる
八重衣ほどきし梅の花芯哉
初蝶やがまんできぬが女です
夜の門打ち放ちけり桃の花
桃の花ひとり見に行く夜の国
花粉症信号の目のカチカチと
自販機の仕様が冬に秋深し
蕪村忌や永劫寒き烏哉
三月の頭に雨や鯉泳ぐ
春一番ゴルフが好きな風もいて
春一番天へ一蝶放ちけり
落ちるとはこういうことと椿落つ
ひっそりと頭あつまる木骨火(ほたび)哉
寒烏ゴミに寄るなと御触書
勾玉に春があつまっているかたち
大寒や家よろこびぬささめごと
大寒や尚うるわしき薔薇の棘
東京の雪だるまとて撫でられる
三ヵ所に挫折の痕や羽抜鶏
飛ぶ夢をみて躓きぬ初氷
雨が降りだし寒鯉も浮いてくる
寒雀我が家に宝あるごとく
寒椿鬼が睨める天の穴
数式も一行の詩やバラの花
烏瓜みのりきったる軽さかな
芳一とその同僚の雪女
穀象のすべてを水へ流しけり
寒卵空へかざして失いぬ
色見本ペラペラめくる冬のあたり
美しくみせる気のなし枇杷の花
穀象のこの賑わいの我が家哉
巌頭に注連張り滝を落とす哉
満作の金るるるると御慶哉
大木にならぬ気楽さ独活の花
竹林に光刻みぬ藪柑子
滝落ちる正直すぎると壷が云う
せ せき せきれ せきれい きれい れい い ・
石がある 鶺鴒がいる 石がある
花冷えや虚子にまつわる紐いろいろ
ことごとく暮色なりけり冬の水
探梅の一行ガイド解き放つ
巻貝のほどけておりぬ春の水
貌で飛ぶ蝶をみかけぬ渋谷駅
春の富士を押し倒さんと試みる
春天和地和人和緑一色
駅を出て見知らぬ街の春祭り
木の枝を噛めば苦きや春の味
大根の消されておりぬ卸し金
雨がややつよし枯れたる物の音
女唄蝶の肢体に針ふくむ
鮒鮨に飽きて近江の春を去る
「在原」とあり杜若が植えてあり
旅急ぐ胡桃の花は見ず過ぎる
山桜その一片の散り始め
木の股から産まれて来たり風二月
ひび割れの筋に翳入る鏡餅
負け鶏の括られている焚火哉
寒造り水に麹に唄聞かす
秋河原重機の蟹が幾匹も
瓜盗りの星の金貨が置いてある
金魚玉にヒビあり楽観できぬかな
唇に風をしごきぬ茅花哉
秋に振れば秋の音する土鈴哉
雁渡る見えてあるらし緯度経度
映写機の光の束を見ておりぬ
貴船村貴船に来れば消えて居し
滝壺に滝詰む遊び遊びけり
ズズズズと滝に惚れたる滝の壷
新豆腐水も切り分け揺れるかな
鯖雲を刷り出す海の輪転機
啄木鳥のこだまの数がはかどらず
唇に「探梅」と云わせて重ね
探梅や花の隙間を埋めに行く
突堤の春陰浪が砕け散り
河骨の地下で繋がる仲間たち
春鴨の水曳きゆけば一面に
想い出は胸の底なる著がの花
滝の上に靴が現れネクタイも
どうみても壜の蝮のよろこべる
天と地に海が連なる立夏かな
なめくじり雨の吉日続きおり
遠足の運動靴のみなちがう
海遠し身に沁み入るや秋の風
穂の先の未完の粒や青葡萄
野茨の白き花の実赤く熟れ
秋風のつかみどころがなくすぎる
人参が育つ邪魔するものもなく
サルビアの火の容して枯れており
羅の女体に馴れて憑く如し
天体の葬列の日が消ゆダリア哉
浮か浮かと月を搦める蜘蛛囲かな
秋風や跡形もなき曲馬団
栗飯や雑木林に荒れる風
ドリップにコーヒー時間入れて秋
蝉時雨その一匹が遁走ス
夏の海減らず収支がトントンか
台風に目あり耳なし容赦なし
鶏頭に篠突く雨や庭の隅
少年の首荒れ初める夏の果て
カマキリの食欲が永遠の緑
小雀の大人気づける名残りかな
仏間まで来ておにやんま帰りけり
辛酸も嘗めたついでの掻き氷
裂けるとはこのこと石榴裂けており
目つむれば曼珠沙華のみ浮かびけり
万寿紗華たんとたんとたーんとたんと
叩かれて悪気なき蠅爆笑ス
自販機の仕様が冬に秋深し
秋風や路地の抜け道猫に聞かん
防人の夫はかえらず秋つばめ
吹く風に夏がおとろえ動くかな
あさがおや登りつめれば秋の風
秋を盛り秋を笑える器かな
干し網の目ごとの海や秋の風
うだる夏氷細工の蟹の汗
大旱り降るべき雨はみな海へ
火遊びとホタル紛れる闇の中
羅をくまなくさがし見あたらず
自画像の瞳に薔薇が描きある
夏帽子帰ってきたか出かけるか
白球の夏影つかみ一塁へ
ひとに目がふたつづつある炎暑かな
あら星の闇に翳なき蛍かな
天幕に張り付き花火こぼれ落つ
達人が水になってる水着かな
なめくじり光をまとい漂えり
蓮花や池の河童はみなねむる
落椿しきつめ蒼き一樹かな
水面の浮子水面下春の水
夏蜜柑三月ピアノ売られけり
草に寝てタンポポの視野広きかな
恋猫の丸く寝るのもふて寝哉
たらの芽の棘柔らかき酢味噌和え
紫木蓮白木蓮に疲れ哉
梅雨寒や鯉のあらいに昼の酒
カタクリに地球の傾斜陽矢の数
はなびらをかぞえてばらをくずしけり
赤飯をもらって返す桃の花
薄曇る牡丹あかりや水あかり
春光をまといてかるく振り向ける
マスゲームは苦手さくらをすり抜ける
このあたり植木屋多し桜かな
坂道を下れば登る桜かな
小雀もまじえて四・五羽あそぶかな
春一番目玉クリップ喰い下がる
雪女振りさけみれば木の芽吹く
まんさくの金るるるると御慶哉
「春の小川」暗渠の中を渋谷川
ものに名の多きえにしえつづみ草
すかんぽも友も酸っぱし草の中
春寒しつながる犬に石つぶて
レンゲ摘みあそびの卓に載りきらず
やれ蓮に風あつまれば繕わず
ほうたるや赤い表紙の英和辞書
月光に針穴とおす赤い糸
秋を盛り秋を笑える器かな
寒菊の白さたましい何グラム
おふくろとふくろうとちちとみそさざえ
藁苞に雀あそべる寒牡丹
きまりより掟がすこし寒雀
寒波急日本列島弓反りに

雪女唇がもっとも匂う
溜め息が風の音なり雪女
赤い目の記憶の中の雪女
消しゴムで描いてあるや雪女
雪女ぶ男なれば寄らで去る
雪女裾の先から風になる
天保三年出羽の国の雪女
たわぶれに尿もして見せ雪
口に椿咥えているや雪女
簪を忘れていきぬ雪女
湯上りの湯が匂いけり雪女
住所不定無職なりけり雪女
真夜中の秘湯に会いぬ雪女
昼は主婦夜は銀座の雪女
直線で円を描きぬ雪女
家を抱くこともありけり雪女
雪女見れども系図白紙なり
足取りを追えぬくやしさ雪女
消息が絶えて緑や雪女
風引いて寝込んでいるや雪女
ゆうれいに出会っておどろく雪女
逆輸入されてしまいぬ「Yuki-Onna」
芳一とその同僚の雪女
Lafcadio-Hearnの妻のYuki-Onna
雪女に果てはありけりオホーツク

穀象が炊かれておりぬ飯の中
さざなみのおうみのなみのおろしがね
初心者か 隙だらけなり 椿見ゆ
椿落つ 見る者の無し 惚れたるか
奈落など無き涼しさや村芝居
朝顔の隣の枝へうつりけり
羽抜鳥とても困っていたりけり
球磨神楽舞舞舞舞舞舞舞
春泥をチッと弾きぬ猫の爪
ドクダミは地下組織にて白十字
大根が解読卸金の文字
鮟鱇の鉤に魂吊られおり
闇を見て来て喜べる蛍狩り
なめくじのいつのまにかにいなくなり
七草も秣に刈るや後の月
寒烏一記号として枝の上
三月の悲喜交々の中にあり
手に負えぬ程になりけり梅の花
銘刀の反りを愛して名月も
烏瓜のっけの花がまず怪し
一塊の陰核としてなめくじり
静物の蝮置かれる壜の底
これやこの会うも別るも蝉丸忌
瓜茄子やちゃらんぽらんと水の中
瓜茄子やちんぷんかんぷん桶の中
城郭は榮螺の形江戸古地図
羅や勝手知ったる女哉
十本の指美しや桜貝
大寒や眼凍らば寒からめ
大寒の空の紙魚なる烏哉
足音のたしかな音も冬に入る
ひとはみな寒さを云うや牡丹の芽
初春の不思議なつかしすずめ哉
凍て月夜銀の魚をひろいけり

生田難破船の俳句 

April 03 [Fri], 2009, 10:02
        春
春愁うラピスラズリとエメラルド
地軸寝て春夏秋冬別けて春
水の音ひかりの音やショパンの春
春立ちぬいろとかたちとおんがくと
春立ぬ百済観世音の指先に
春満月過敏な秒針が描く円
春満月四次元方程式の解
春曉や途絶えし夢の橋なかば
春寒しかすかに立てる家埃
春寒し墨の工房麝こうの香
吹き抜けを突き立つ柱春寒し
光りと翳じゃれつきあうや牡丹の芽
草の葉に降りてやさしき春の雪
来るものと去りゆくものに春の雪
春蘭のほのめくごとくあらわなる
春眠やまだ覚めやらぬ石舞台
春めくや黒ずみかかる銀の箔
洛中洛外図屏風春めけり
地球流浪流転の春にしたがえる
春めくや伊藤看寿の煙詰
春めくや西口へ出てとおまわり
春めくや海をへだててあい向かい
マニキュアの爪のいろから春めきぬ
春の川春があふれて春光る
春よ春車窓のさかさ文字も春
春炬燵夢破れけり猫のひげ
春一番の中へたばこを買いに出る
空白のそらが色づく春一番
飯粒も海苔も香ぐわし春一番
春一番天へ一蝶放ちけり
ひかり満ち翳息づくや蘭の花
天と地の睦める夜や春の雨
涅槃会という悲しみに華やげる
啓蟄や虫穴を出づ泣き虫も
野火の舌甘き春草のこしけり
春の風あり・おり・はべり・いまそかり
梅の花生まれ故郷にそのまんま
耳鳴りか春の遠雷ひとに問う
神々が間ぐ合う春となりにけり
ブナの春ブナ科ブナ属ブナのいろ
春怒濤登る滝ありブナの幹
フラクタルいやとめどなき新樹かな
春の山分け入る水の匂いかな
旧正月わが八十の父と母
ふるさとはまんさく墓にちかく咲く
八重衣ほどきし梅の花芯かな
早咲きの湯島白梅明治の香
忍び音やにおうばかりの梅の花
鶯や紅白梅図屏風裏
鶯や云い切ってみてはっとする
おのが絵を壁に写せる梅古木
水という自由になってみたき春
竿なげて山魚女の春となりにけり
月の下山魚女に惚れる岩魚かな
天体がひしめき合いて春分点
春風や氷魚ほり出す榛名富士
春風や北前船の帆がはらむ
しどみ咲く太陽が好き月が好き
紙飛行機ゆくえ知れずに春の風
風撫でて木蓮の花ちりじりに
やわらかな水にゆれるや芹の花
黄菫が覗いているや石畳
すみれひとつ灯して行くや風の道
もりあがるもぐらの穴や蕗の塔
野火の舞序の舞破の舞急の舞
辛夷咲くじゃんけんぽんであいこでしょ
山吹の花盛るらし流れくる
風車北へ向かえばめぐりだす
風車笑うがごとくめぐりだす
憂しとみてやさしとみてはさくらかな
かくのごと満ちてさくらのさみしさよ
出でもみよさくらの夜が散っている
あれがほらほらほらあれが山桜
山桜散れば風の子あらそえる
朱の椀の酒に帆かける桜舟
さらさらとさらさらさらとちるさくら
桜蘂降るふるさとを置き去りに
入学すさくら大樹の花の門
校庭の遊動円木大桜
酔いしれて酔いしれて見る桜かな
さくらさくらさくらだけあるさくらかな
虫も鳥もひとも集まるさくらかな
さくらみな手を延べふれる位置にあり
風花を連れ去る撫でるふりをして
二の腕の肌の白さやさくら散る
人生やかなしみありてさくらかな
麻雀のガラガラポンとさくらちる
引力の弱き日の蝶うららかに
羽うてば蝶の異次元ゆるゆらり
なに蝶か大海原からもどりくる
蝶の背にのせたる阿弥陀仏かな
花ひとりに蝶がひとりというべきか
おさな子のまぶたに重く春の月
チンドン屋ダンビラで切る春嵐
春嵐舞もどり来るつむじ風
暖かや雪をのせたる石仏
暖かや大道芸のひとだかり
共和国ほろびつつあり春暖炉
大和路や仏も出でよ春の旅
引き出しから蝶がとびだし咳込める
春一番二番三番たて続け
春一番都大路をひきまわし
春一番黙だまぜかえし笑いけり
春一番縦横無尽ということを
紙風船越中富山の置薬
いそぐより紆余曲折がよし春の川
たんぽぽの夢みし夢を買い取らん
たんぽぽの空とぶ夢が黄色です
野あざみや誰にも何も教えない
春の星ポッケにマーブルチョコレート
春祭り野は風の波ピイヒャララ
うらうらと雲雀かくして草萌える
げんげ田に鬼を忘れて花を摘む
げんげ田のあやしき空に圧されけり
待たされし身から待つ身に種植えて
種植えて猫の墓標や花袋
種物と物種まがう命かな
春の夜の夢は甘かれ沈丁花
やなぎのめめめめめめめめあめすだれ
馬もまた笑えばたのしうまごやし
初蝶がきて思春期がはじまりぬ
朝露やノーマ・ジーン蝶の羽化
菜の花の香におぼれける影ぼうし
菜の花や白装束の遍路道
やしお咲く岩の鼻先にあっけらかん
ふつふつと春は煮えける藍の甕
母の手のつめたさ母のあたたかさ
春の夜や放物線と直線と
万緑やおんなの顔ができあがる
花みずき全開にしてまぎれなく
春の夢恐る名のなきいろを見て
球根を埋めて復活を信ずるや
駅を出てみしらぬ町の春祭り
ぶらんこやゆれる現在過去未来
寝たばこの炎とけむり春隣
猫のひげ障子にうつる春隣
猫の子のあそびをせんとや生まれけん
猫の子の遊びに飽きて育ちおり
尾をたてて隣へ行くや猫の春
小港の子猫も入るや時化の競り
黒猫の子ののらくろに似たる顔
げんげ田に片一方の靴さがす
げんげ田に沈む縄とびの縄を捨て
縄跳びの縄に跳び入る春霞
三月の中をつめたくあつく過ぐ
三月や忘れしむかし思いだせず
尾道は棚田とみえて家あかり
夜の門うち放ちけり桃の花
落ち椿ひろってみるやたなごころ
落椿胸の真空海の凪
春の技師機械仕掛けの青い薔薇
わたくしがその中からきた春の闇
春の雨傘をさそうかさすまいか
暖冬も季語になりかけ梅の花
風の花アネモネ海を見ていたり
うぐいすの母をまねてやほととぎす
一山をてんぷらで喰う春霞
春の川ルビコン川を渡りけり
春競馬想定外のごぼう抜き
霧となり水にもどりし春の滝
蜂の死や触覚ゆれる石の上
新撰組始末記無惨壬生狂言
メール打つ文の出だしを春の雪
白魚の目はかなしけれ海のいろ
野辺山の一番星に暮れる春
山笑う濡れては返るこだまかな
接木する手元に光る白刃かな
夢なかに夢みる夢の春の夢
春の日の出でて山河を翳らしむ
襟足にうすき翳りの春日かな
春の月きつねが化けしたぬきかな
阿蘇野焼き戦中戦後セピアいろ
浅みどり白に染め抜く梨の花
土筆伸ぶ塔堂ありし国分寺
春の野や名まえのつかぬ花はなし
花蜂やモーツアルトの音符飛ぶ
地軸寝て春夏秋冬わけて春
春なのにもう春なのに春なのに
春や春会いにいきたし阿修羅仏
少年の春をのこせる阿修羅仏
春の塔月を背にしてあらわれぬ
桃の花孤峰崩れる想いあり
桃の花ひとり見にゆく夜の国
桃の花つきあたりの部屋だれも知らず
夢ふかく入りてもどりぬ桃の花
春盛る裸婦とわたしとその他のもの
窓外に青葉波立つおんなかな
春や春わきたつ春の無重力
錦絵の版木に春が摺り上がる
房総の海をながめし花菜漬
春昼や神田駿河台聖橋
青春のこころの中に陽炎える
春長ける車窓に写るさかさ文字
月に浮く地球のJAZZ春滴る
青い地球月が心底惚れている
The Deep Blue Earth
The Moon Loves Him
From The Bottom Of  Her Heart

峠から見る日本海人麻呂忌
春の凪おくれて動く鳩の首
語り部の母に三つ子の囀れる
風と来て風と往ったる獅子の舞
海鳴りの聞こえるサザエひとつ持つ
晴れながら雨ふらしいる磯あそび
G線上のアリア軍艦島の青い月
天秤の春の長閑さぶれやすし
さみしさに口づさぶ春古俳諧
剪定を終えし樹に空あらわれる
茶を揉むや汗も一味許されよ
丸ごとの空をあげます初燕
その速さ空の大いさ初燕
つばくらや赤き子供らののど仏
あたらしきつばめの空になりゆける
夏蜜柑怒りも覚えむさぼれる
青丹よし奈良の都の菜種梅雨
もの思うことも澄みけり菊の苗
こうら干す海から生れし海女五人
海と月の逢い引きの間や潮干狩り
ひたひたと海もどりくる潮干狩り
海峡を飛ぶ蝶の歌きこえしや
女仏も八割ほどの春の海
春の闇塔堂伽藍息づける
停止するメトロノームに春深し
春や憂し少年に魔法解けてより
藪椿昼闇の森出でにけり
行く春や遠景に退く山河かな      
       夏
初夏の星見す朝の切子かな
滝水の空間座標行く時間
万象をはらみて重く滴れる
白牡丹あまたの景を余白とし
白牡丹まぬがれがたき月の影
白牡丹しずかな乳房ひとつ持つ
幼な子の手をあふれける白牡丹
太陽をめぐる地球の牡丹かな
ぼう丹の軋みて朝が生まれけり
俳優に間と息とあり白牡丹
縄文の土器にいけたる白牡丹
寝てさめて牡丹見し目をもてあます
ぼう丹の凝り揉みほぐす首夏の風
ぼう丹に大いなる空低く咲く
ぼう丹や賭博開帳図利の罪
ぼう丹やなにも約束はできません
ぼう丹の病の癒えぬ五六日
散る牡丹ポロネーズ変イ長調
牡丹散って華やぐ主題もう一度
ぼう丹や甍をすべる闇の音
牡丹散るや口伝てにしてたがいなし
牡丹という花魁を見に吉原へ
ぼう丹や寺の主の囲いもの
牡丹というコンピューターのプログラム
ぼう丹やみつめることのさびしくて
吹く風をまとめきれずや散る牡丹
牡丹の句寄せ集め読む驕りかな
芍薬や姉が牡丹のさみしさよ
芍薬や化粧の乗らぬ朝にくし
芍薬や誤解していたかもしれず
芍薬や酒癖にて身をもちくずし
河鹿の笛天地と闇が息合わす
夏草や伏して流れる水の音
ふるさとにけむる山河や鮎のぼる
跳び石を跳んで五月の石踏める
想い出は胸の底なる著我の花
春すぎて夏きたるらし乙女かな
不如帰身をさかさまに老の坂
六月や元本能寺南町
メビウスの輪を切り分けて立夏せる
新茶汲むもう忘れてもいい記憶
青天へ湧きたつ雲や新茶汲む
新茶汲む唯心論と唯物論
いなびかり百鬼夜行をあらわにす
ひと濁りの宇宙手に落つところ天
夏来たる三原色の夏来たる
照明と音響効果地球座夏
出しものを「夏の夜の夢」グローブ座
揚羽蝶舞くる教室睡魔満つ
夏障子陰翳礼賛蝶乱舞
かがなべて46億年の夏
褶曲に地球の素肌みせて夏
へぼ将棋次の一手にへちま伸ぶ
夏草に記憶をたどるヤゴの羽化
道糸がふたつにわける夏の川
朝の薔薇闘争の意志かいまみゆ
階段を降りくる裸体青い薔薇
口紅をすこし濃いめの朝の薔薇
薔薇の息ときに薔薇語のまじりおり
薔薇を吐く白き裸体の唇に
青春のいばらの門や罪と罰
薔薇のなぞなぞなぞのなぞなぞのなぞ
想う薔薇薔薇園の薔薇薔薇の図譜
少女期や黒猫の目と赤い薔薇
朝の薔薇画家が遺せる絵の具皿
デッサンに画家が探りし薔薇の線
薔薇を切り棘のこわさも美と想う
白薔薇のいろはにおえどちりぬるを
見るということのさみしき白い薔薇
白薔薇の迷宮迷路蟻の脚
薔薇のとげ原点へもどれるかどうか
薔薇のとげ刺していたさを訊いている
いろと香に自ら酔える薔薇となりぬ
薔薇におい蜂よる無防備都市の中
ばらがばらばらばらばらばらばらばら
あかいばらをもみくしゃにしてふみつけて
薔薇の香に容ありけりガラス瓶
赤い薔薇あおのけに見し鼻のあな
池袋居酒屋CHIHARU赤い薔薇
カンバスの黒地にばらの白い闇
薔薇の花いろをたがえる女連
薔薇満載居酒屋「バルザック」ひと気なし
数式も一行の詩や薔薇の花
薔薇の花メロデイーにのせて発音
せいかくはわるいが妖し薔薇の花
薔薇の花逮捕されたら死刑
薔薇の朝ピカソでいくかマテイスでいくか
薔薇の葉の重たげもなし雨蛙
あやめ草水の暗さにまじわらず
あやめ草憑かれているのか疲れているか
アヤメのむらさきに抽象化している
あやめ草またまぎれなき恋に会う
あやめ草ゆうぐれの雨いろめける
夏至の日を忘れていたり雨の闇
紅の花「都風俗化粧傳」
藻の花の憂き目をみぬや水の中
梅雨のいろスクランブル交差点
だれかれとかまわず投げる落とし文
水涸れてサルビア日に緋深めけり
朝顔のジャズとブルース猫の耳
ぎぼうしや「無題」という名の花咲かす
ひかりと影レンブラントは破産せり
禿山はゆでるがごとし夏木立
海へ出て帯解く浴衣大河かな
白百合の蘂の紅引く女かな
ぼうふらやなにをのぞみのうきしずみ
やれ打つなごきぶり唄うかもしれず
廃坑の出口に立つや敗戦日
ご破算でねがいましては敗戦日
終戦日升田幸三の対局譜
夏の夜や屋台の陰翳伎楽面
夏の果て海へたたずむ異邦人
存在と無真夏真昼の街のなか
今カンナの向こうを過ぎしは誰
かしましきつばくらのたびのものがたり
ひとであれば走るマラソン炎天下
ふるさとは雨に暮れるや合歓の花
湧く雲の上に湧く雲敗戦日
小港の海へ掃かれる残暑かな
どくだみの花ちらちらと昼の雨
手鏡に十薬の花も写りけり
薔薇の棘に刺されて指をみつけた
白蟻に行列はなし衣替え
蜂の気合銭かねで飛ぶ世の中を
蜂の腰マリリン・モンローノーリターン
上りすがら下りすがらや蟻の道
古池や蛙を飲んで笑いけり
夏競馬新潟一直線の千
藍浴衣肌になじめばほしいまま
兜虫似つかぬ夢のひとつやふたつ
香水やなにを隠してなに見せむ
もう行くかかなしかなしと蝉しぐれ
山崩れ谷埋まるとも蝉しぐれ
翡翠の去りてもどりし水鏡
つばくらやそのこえそのいろそのかたち
つばくらやななめに速し濡れもせず
つばくらに切られし空が暮れかかる
蝉しぐれかわらずありぬ母の膝
母あれば我は帰省子道おしえ
がま蛙どろんと暮れて雨がくる
豆腐屋の角をめぐれば夏の風
こがねむしもんどりうって膳の上
兜虫日本列島改造論
ホセンカはじけて飛んで大都会
マジックは科学仙人掌花をだす
京和菓子人に会いたし水牡丹
みずすまし廻るアンドロメダ星雲
両生類無尾目蛙鳴かず飛ばず
茂る草刈られて墓の伸びて立つ
五月雨や居ながらにして濡れそぼる
五月雨の交響楽団の主旋律
五月雨や闇をからめる蔓の先
五月雨や軒に分かれる内と外
五月雨や株式会社「天下布武」
帷子や「本城惣右衛門覚書」
へたうまのジャズとブルースさみだれる
さみだれや蔓草のびる低迷期
稲妻や恋する夫のありどころ
人妻の恋稲妻にみられけり
青梅の実にむすびける雨しずく
梅雨明けを惜しむ触覚なめくじり
梅雨寒や暗き神田の路地迷路
竹の子の突きあたりけり天の底
石楠花と密会に来ぬ霧のなか
木苺の熟れてこぼれるけもの道
山百合の云ってることもすこしわかる
山百合の陽へ吐き出しぬ黒き蜂
夕焼けや山裏の町火事いくつ
夏場所やテレビ観戦客の顔
鬢の香や風の両国五月場所
両国に夏場所がある風がすき
夏場所や仇同士も円のなか
夏場所を見に来よ義士も吉良殿も
天に星地にじゃがいもの花畑
天幕にはりつき花火こぼれ落つ
夢の中うつつの中を遠花火
手花火の一部始終を面の翳
漆黒の闇となりては遠花火
天仰ぐことわすれたる花火かな
うつくしき闇のありけり遠花火
闇深し割り物花火の菊牡丹
我が手にて目蓋をおさえ見る花火
花火さくれつ地の群衆を圧し縮め
頼朝の義挙の風聞蛍狩り
魂出でよ源融薪能
夜振りして水神様の淵に入る
噴水の頂点にある無重力
切れ味を嘗めてみる蝿名刀展
蜜豆のむこうに街の雨をみる
よしきりや葦で棹さす風の海
旧名主屋敷の土塀青胡桃
鶏頭に篠つく雨や庭の隅
桑の実がこぼれて果てぬ少年期
チエンソウ真夏の眠気伐り倒す
炎天やマンホールの蓋はなぜ丸い
炎天や赤くとざせる鉄の門
炎天や屋根に居座る鬼瓦
炎天を頭上に黒服応援部
うだる夏傷つきやすきロバの耳
うだる夏氷細工の蟹の汗
うだる夏一外交官の見た維新
噴く汗や生涯ぬがぬ宇宙服
夏井戸の地へ吐き出しぬ15℃
かぼちゃの蔓隣へ逃げて夏盛る
張り付いて全く揺れぬ夏の影
あおぎりの葉ごとにうごく夏の影
日輪がひとりにひとつ夏盛る
日盛りへ松葉牡丹のアラベスク
紫蘇の香のまえを過ぎればいつも想う
しがらみの抜けきっている蝉のから
蛾の翅の旋廻に入る火をめざし
圭甲武人埴輪眼窩闇涼し
青く黒く大和古墳群沈む夏
趣味の遺伝父往き我に夏盛る
夏の死やドライアイスにて涼む
かくれんぼのつづきのつもりか父失せし夏
皆既日食夏空にある冬星座
恐竜の夏皆既日食の白と黒
それは「スリラー」真夏真昼の真暗闇
SEXYな天体の葬列真夏闇
天体の数学的構造真夏闇
ひまわりやグラウンドにはひとりもいない
さるすべり校庭に鳴る昼の鐘
「青の時代」カミキリムシがあおぐ天
こうもりのよろこぶごとく夜をゆらす
スプーン曲げ少年その後夏盛る
まずしさというも涼しき虫のこえ
太陽に見せぬ影もつ白日傘
夾竹桃雪をめぐらす花の寺
あおぎりの路地に吹かれる下谷の夏
北半球膨張しつくす夏さなか
八月のぎらつくものにカフェの香
夏盛るなりたきものに寿司屋のねこ
白球の夏影つかみ一塁へ
生殖の器もみあう夏の海
へらへらの団扇火をよくつかいけり
チヌの竿つの字に立ててチヌを抜く
黒あわびてれ笑いする陰の神
雨あがり夏の眩暈を定着する
日の神に踊る手振りや黍の列
破れたる障子に遊ぶ夏の海
江ノ電や右手八月の海へ出る
正宗の包丁鈍し夏の月
みずすまし光秀の軍に囲まれる
遠来の風でもてなす夏の客
あさがおや音盤に針恋の唄
職業は蟻地獄です夢のため
蟻地獄うすばかげろうとあなどられ
「現場不在証明有」蟻地獄
あとはいつもおなじしずけさ蟻地獄
おにやんま目先をよぎる古生代
まな板の西瓜の太陽まっぷたつ
白拍子振る鈴の音や桐の花
悲しみのいろを一刷け秋立ちぬ
秋立ちぬ空を写せる赤子の目
八月の満月にいろ移るかな
影衰ろうひとしおうすき汗の味
少年の首荒れ初める夏の果て
八月が終われり街をいそぐなり
根深き想いの丈や花菖蒲
藻の花やおなじ方へと時流れ
ねじ花の螺旋階段小さき天
吹く風に夏がおとろえ動くかな
秋ちかしざるに盛られる海栗のとげ
秋めくやコップの水の澄みてより
砂の城崩れて夏も果てにけり     
       秋
夢なかに銀河濃くして母をよぶ
きりぎりす両手にあまる太柱
菊満ちて日輪すでにかたむけり
太陽系惑星のC・D9月の曲
いいわけをふたことみこと菊膾
第二幕おりて第三の幕の秋
空間が拡がり出して白い秋
改札を出でて見知らぬ秋に逢う
秋という迷路のなかへまぎれ込む
秋愛しと想う心をさみしがる
秋赤・黄・青と黒のあるコンポジション
気づきふとたたずみ秋に振り向かる
天人五衰目前の菊ねむる猫
秋の陽や国立西洋美術館
台風圏に入りつつあり虫のこえ
みずほの国二百十日のむなさわぎ
とおくふかく暗くみちのくねぷた燃ゆ
秋田竿燈穂がおもければよろめける
雨もよし七夕ホテルあまのがわ
地団駄を踏むにもにたり阿波踊り
落鮎や捕われて見しそらの青
ラベンダーのうさぎの耳に風が寄る
大欅はや晩秋の翳を曳く
じゃがいもの非対称のキャラ洗いえず
この世には遊び半分猫じゃらし
目つむれば曼珠紗華のみ浮かびけり
曼珠紗華養老渓谷滝いくつ
巣へ急ぐカラスもなかま秋の暮
野分して五六騎入るや縄暖簾
桃食めばやさしきひととなりにけり
柿食えば身にしみ入るや石の冷え
笑わざる父とはなりて木守柿
林檎もぐ月が地球に落ちぬわけ
蜜柑熟れ海に浮遊す島一基
馬のいぬ南部曲がり屋萩の花
旅に出るピエロが好きな月の夜に
防人の夫は還らず秋つばめ
逆光のなかを狂える秋の蝶
行くあてはなしとみえたり秋の蝶
秋天と大地のあいだに化石する
木犀や思い出せないわすれもの
秋の橋を渡ればいずくへつづくらん
秋の水胃の腑に落ちて眠られず
焼けこげて燃える怒りの鰯かな
コスモスや笑いころげて泣くじゃない
あさがおや上りつめれば秋の風
塀の外に柘榴熟れけり児童館
ざくろ裂く言わない理由言う理由
肩の荷を払って吹くや秋の風
吹く風にあらがう秋のあかねかな
吹かるものなべて長かり秋の風
秋場所やなにかありげな面構え
秋場所の空気を連れて乗り来たる
栗飯や雑木林に荒れる風
秋風や急な用事で往ったきり
月の下美しき人老いにけり
かくれ蓑葉うらの青し野分かな
台風来蒙古襲来日延べさる
夢のごと茗荷の花に雨しずく
りんごという全きもののならべらる
蓑虫や蓑の中なる風の音
蓼の花ふと詰め筋をみつけたり
祖母が打つ記憶の音や蕎麦の花
台風に後先ありて一過せる
長船の太刀見つけたり月の辺り
月悲し艶歌手うなる七五調
秋澄むや裸足でつかる海の波
秋の海むこうにあるのは砂漠です
街へ出て秋の天地に栞られる
秋風や結ぶ編む織る摺る染める
場外に馬刺しを食うや秋深し
球磨神楽舞舞舞舞舞舞舞
名月や菊坂芋坂団子坂
澄む秋や都会のなかの消失点
海へ出れば果てなき銀河流れけり
あおのけにへのへのもへじ秋を見る
戦いや百舌鳥鳴くソレガドウシタと
謀ありて甲高き百舌鳥の声
切っ先に鵙の図筆に持ち替えて
秋の雲見下ろして過ぐ下界かな
澄む秋や馬の目玉に我の影
中国の洞庭の月杜甫李白
校門の銀杏黄落しきりなり
青春の言の葉古りて柿熟す
対面す翁の面や秋の風
大多喜の白き山城曼珠紗華
秋風や跡形もなき曲馬団
秋の葉の掃かるを惜しむ靴の裏
秋茄子に愁色暮色すさみけり
虫絶えて耳鳴りを聞くひとりかな
秋茄子や糠に釘打つ暮らしぶり
秋に振れば秋の音する土鈴かな
私のブルー秋の空と海のブルー
カマキリの鎌ふりあげて動かざる
雁渡るみえてあるらし緯度経度
嫁ぐさきなくて三十路やかりんの実
野いばらの白き花の実赤く熟れ
星屑を直下にこぼす萩の花
王朝に灯火親しむ闇のいろ
秋深し独白の台詞ながながし
身にまとう月にひとつのとんぼ玉
日輪に隈なき月のうらおもて
女郎花風に吹かれて萩すすき
妻問いの闇うるわしき衣被
十月よわたくしだけをひとり愛して
秋の手が虫の背中をおさえけり
秋の天地メンコあそびで返しけり
月の影をまねて描くや萱の線
すすき原われら思わずわれら在り
草に蛇ねそべり高き秋の雲
秋の雲たかく過ぐ根はさびしきひと
とどかざるもののひとつの秋の雲
消印を押されて笑う薄哉
すすき挿し芋こんにゃくや後の月
秋の実のいろそれぞれへ鳥いそぐ
秋の大阪桂枝雀をみかけたよ
秋の子はみんなしっぽを振ってあそぶ
台風一過空ぬけ落ちていたりけり
遠足の運動靴のみなちがう
かごめかごめ月の自転はほんとほんと?
ほおずきやどぶりと落ちし夕日かな
蔓草の土塀にはうや秋草図
世の中をたったひとりの秋の暮れ
一生を棒に振る秋の指揮者かな
ほとんどは実にならぬ草の花の秋
花に会い紅葉に別る桜かな
母と児の哺乳類めく星月夜
どんぐりのしとどに落ちぬよべの風
ドリップにコーヒー時間入れて秋
秋ひとりノット・クワイアト・ア・サンバ
秋の雲うつりゆく時を見るごとく
夢枯れている静かさや菊の花
菊の花つまびらかなる設計図
芭蕉翁の痔の話して菊の花
翳うすき白きさむさや菊の花
寒菊やいわれてみればそのとおり
寒いのもまんざらでなし菊の花
寒菊やああちいさき声で語れ
菊の花なおりきらない失語症
太陽と月につらなる黄菊かな
息ひとつおくれて立つや菊の前
寒菊のしろさたましい何グラム
白き陽や用なきもろ手菊の花
歯車のきしむ寒さや菊の花
やわらかな尻をのせたる秋の富士
初冠雪有無をいわさぬまでに澄み
善人往生すいわんやかまきりをや
分数のごとくわかれし天地に月
うしろから陽射をうける秋の影
口寄せや賽の河原に秋の風
雲巌寺門を潜るや風とコスモス
自画像のへのへのもへじ秋のくれ
どんぐりを拾いしのみのずる休み
秋深し鬼がかくれたかくれんぼ
足速に駆け寄る秋とすれ違う
木枯らしや枯葉をつなぐ蜘蛛のいと
蓑笠や柿に聞かせる大鼾
        冬
時空という暗き四次元風の花
日輪が日々に衰う今朝の冬
なつかしき冬の日われに還りけり
冬に入るきりんの首にかかる空
はりはりと鎮まれる空冬来たる
凍て蝶の祈るとみせてねむるかな
丹頂の鬨放たねば凍死せん
天上に鶴棲む国のあるらしき
満天の星がふるえる霜夜かな
雪女郎おそろしくもあり恋しくも
雪女にも影があるのでしょうか
雪女風のたよりに嫁ぎしと
雪女越後上布の雪晒し
吹雪という美しい名に遠くすむ
ふる雪にかいまみせたるすがおかな
真向かえる雪とは何の名ならん
京の雪降られてつもる地図のうえ
赤提灯「いっぺいやっぺい」冬始まる
きつね鳴いて凍てつく大気裂く夜かな
夜の底をまっすぐよぎるきつねかな
寒桜母のよわいをたずねけり
花人に酔客はなし寒桜
刻々と逆行時計帰り花
これら日々を余禄と思う帰り花
じゃんけんの五本のゆびに菊寒し
凍て水に目玉の動く寒の鮒
羽黒山五重の塔を雪直下
吊り橋に吊られし山河冬構
行間を読みに分け入る冬木立
木枯らしやさかなのごとく子を散らす
冬薔薇読めない文字に書けぬ文字
冬の日のガラスを過ぎて翳りけり
贈られてうれし新海苔軽くとも
山姥の木霊漉きこむ紙白し
木枯らしにすがりついては落ちる滝
寒山の竹の一叢に風棲める
冬の水淵へ落ちきてぬくもれる
風花や遠き記憶の帰りしか
爆裂音今日も途絶えし冬銀河
コーヒーの湯けむりまとう二月かな
2009/2/27/13:19の秒針
冬籠もる猫の孤独と我が孤独
蓑虫やぶらりふらりとお茶の木に
冬さみしひょんなことからひとに惚れ
寒菊やサザンカつばき冬そうび
漬物の石が溺れる寒さかな
天気図の西高東低極まれる朝
寒仕込み作り仕舞いや別れ酒
澄める冬振動しても音が出ない
おふくろとふくろうとちちとみそさざえ
池杭に冬魚棲める水輪かな
足跡がなければあなた雪女郎
わかることわからないこと雪つもる
雪合戦に行ったつもりが帰らない
山頂の鉄塔の列冬銀河
サザンカやだれにも言わず泣きもせず
サザンカや「カサブランカ」という名画
一月の川リオ・デ・ジャネイロのカフェ
秘め事は明かさじ秩父火の祭り
寒椿赤き子鬼のかくれんぼ
寒椿男がもたぬ女の目
有馬記念泣く馬鹿もいてそのひとり
とりわけて光あつまる寒牡丹
日輪の掠める空や寒牡丹
日輪の近く低くを寒牡丹
寺銭を払って見るや寒牡丹
牡丹鍋ぐずりと煮えて外の雪
サザンカやなげくおまえのソクラテス
吉良殿の御首重し霙かな
大根のごとく引かれてこの世をば
手のなかに海を秘めたる寒卵
小鴉の首かしげ見る寒さかな
鳶赤し子等の鬼ごっこやまざるに
三椏の花の白さに漉かれけり
初富士やそこの電柱じゃまだどけ
元日やどこへもいかずだれもこず
ひめくりのただ一枚をのこしけり
ひびわれの筋に翳入る鏡餅
見ぬひとにはたと出くわす年の暮れ
鮟鱇に海の深さをたずねけり
はなびらの散りのこりたる河豚の皿
サザンカや泣きたくなって笑いけり
網走監獄五翼放射状舎房冬
寒さまでストーブに燃す北の果て
サザンカや日めぐりくれば散りやまず
サザンカや富士見坂てう道しるべ
サザンカやこの世の中へほつほつと
凍水にひげくらべする鯉鯰
冬の構図松葉で刷ける松林図
霜柱巨象のごとき身のこなし
楊貴妃の骨掘り出すや蓮根堀り
サザンカやなみだキラキラ星キラキラ
こがらしにすがりついては落ちる滝
行き過ぎて八百屋いろいろ冬ぬくし
街燈の影凍てついてあさぼらけ
一月やしずかにめぐる江戸の独楽
ひと一人冬木の歩み寄り来たる
冬の海くじら三千シャチ五千
冬の灯にとりつき闇に親しめる
冬の夜暗くひそめるものへ耳
棒杭と流れぬ月や冬の川
冬の日をめくる一ページ一ページ
天人の午睡の夢や風の花
宮島の鳥居拝すや牡蠣筏
漱石の日記に降るや明治の雪
降る雪や未来隔絶過去隔絶
雪に鴉傷つけることがうれしくて
寒鮒や釣られて天に真向かえる
星の海へ舟を漕ぎ出す砂漠の狐
北上川雪の陸奥出でみれば
直線の終点へ来て千鳥消ゆ
風呂ふきやわびしきものを寄せ集め
少年へ少女の目線お茶の花
小樽へは二度行っただけ一度は雪
雪がふる津軽じょんがら節にふる
蹴飛ばさる雪とはなってしまいけり
銭湯の壁一面の富士の雪
女にも賞味期限の更年期
何じゃのと彼じゃのというてお茶の花
寒椿鬼が睨める天の穴
寒椿ゆびさしみればすこし退く
燃え尽きて落ちけりよべの寒椿
寒椿女泣きしはまぼろしか
寒椿震う美女かも悪女かも
寒椿トキニハ娼婦ノゴトクナリ
寒椿屋島合戦の大観衆
猫の鼻の冷たさほどや冴え返る
冬梢わが網膜の脈の糸
葱を抜き寒暖計のごとく持つ
大寒や全林おのが翳を曳く
はっきりと空をへだてて冬の山
雪折れのこだまをもって返しけり
薄氷や女をおこしてしまいけり
われひとり取り残されて冬の狩り
あおむけば胸に雪ふる星もみえ
ふくろうがぐるぐるまわす冬の森
ゆく2月もうもどれない春なのね
胎内に忘れし記憶竜の玉

        







時凍てて帰るすべなきふるさとは思うばかりの朱き曼寿紗華

ふるさとをほいと捨てたる朝ありき十八の春霜もありしか

おもうこと母にも言わずふるさとの川の流れの石のごとくに

ふるさとは山と川あり父があり母といくたりのはらからがあり

いかずちの社に狛犬ふたつ居て真ん中通る母に手引かれて

湧く水の山影うつすかがみ池かんばせ落とす山桜花

たずね来るひとなき里の山桜春の嵐に散らすかんばせ

ふるさとの記憶のなかの麦の穂の波わたりゆく白き日傘よ

ふるさとの花の咲きたる思い出はダリアの盛る夏の一日

海に来て海をみつめて海にいて海の真青に心ひたしぬ

山の辺に柿は熟れけり道暮れて古代飛鳥のひとゆきすぎぬ

秒針の移る間ごとに息をする春にそまりしはなびらの蘂

あかいばらをもみくしゃにしてふみしめてあのひとことをいわせてみたい

一・二・三・四・五弁花のからたちの花白かりしころ

石仏が弾けるがごとく竹山の雪の風音津軽あいや節

泣いてしまっていいですか津波帰りし海をながめて

有明の海に潮満ち夏光る国の名残す魏志倭人伝

黄身・白身・膜と殻から成る卵その構成力を特許許可局

雪と氷で転倒して新聞をばらまくのは誰もが通る道

デートをする時間はある。俺は相手がいないからしていないけど。

新聞配達は団地を5階まで3段飛ばして駆け上がる修行













      空

 トンボよ
 おまえは飛んでいるか
 あの高い
 あの青い
 あの夏の空を
 あのかろやかな
 あの強い羽で
 いまでも飛んでいるか
 自由に
 自在に
 あの風に


    ゴンドラ

 かの南国の
 かの珊瑚礁の島の
 ゴンドラよ
 かの究極の流線型の
 ゴンドラよ
 海神のつくりし舳先よ
 かの大空の
 かの大海の
 かの水平線の
 波を切れ
 かの水平線の時系列を
 どこまでも行け


    風

 風が吹いたよ
 春の風が吹いたよ
 山河は青めき
 原野の草木の芽も
 目覚めたよ
 春の渡り鳥も
 今着いたよ
 春の風が吹けば
 心がまた
 旅へでるよ
 風が吹いたよ
 春の風が吹いたよ
 水の波に
 光がきらめくよ
 春の風が吹き
 凍てついた心にも
 春の歌が湧いたよ


さくらんぼ

さくらんぼは
うるわし
さくらんぼは
愛らし
さくらんぼは
あやうし
さくらんぼは
禁断の色
さくらんぼを
口に食めば
罪の意識にうろたえる
さくらんぼを
ことさらに
かみくだき
さくらんぼの種を
初夏の空へ吐き出す


季節

灼熱の太陽は落ちぬ
かの海原の果てに
あまりに激しき恋ゆえに
月は落ちぬ
かの砂漠の果てに
あまりにつれなき恋ゆえに
星が空に満ち
花が地に満ち
乙女らは
恋して孕む
あなたがとてつもなく悲しいのは
あの季節に
あまりにも生真面目すぎたから




詩を想う
真夏の一日
魂は身を離れ
青い海原を渡り
南国のサンゴ礁の島に
舞い降りた
太陽がいぶかる
危い行為を
虚ろな空想を


  春

草むらに潜んで
春を捉えようとしても無駄だ
草千里を真西へ奔り
くたびれ果てて掴んだ
一条の光が春だ
張り裂けそうな胸の鼓動のあたりに
やわらかにあるのが
春だ


 酒

もし海の水がすべて酒だったら
太陽が昼間大酒を飲み
月が真夜中密かに
酒の浴槽で湯浴みをするだろう
鯨は大口をあけて眠りこけ
鯱は凶暴な殺し屋になり
イルカはおおっぴらな
うそつきになる
わたしは千畳敷の筏を組んで
北斗七星の柄杓を持って
海へ出る


静寂

わたしはおもうのだ
絶え間ないこの宇宙の
星星の炸裂を
核融合の騒音を
そして
それにひきかえ
このあまりのしずかさを
そして
このあまりのつめたさを
そして
この真空のなかに呼吸する我を


言葉

これだけ見事に凝縮された言葉は
これ以上動かしがたい結晶となり
花や蝶や鹿や鳥たちと同じ
神々に選ばれた存在となるのだ
これらの言葉を口にするたびに
至極の宝石を胸に輝かすのだ
このさんざめく光の中を走り
春の女神に会いに行くのは誰だ
春の女神の唇に
微笑を誘う詩を
捧げるのは誰だ


修羅

枯れたたんぼに
春の水が引かれると
たんぼの土くれは
それを静かに受け入れる
これら棚田の一枚一枚ごとに
今夜中に春の水がみなぎり
一面が星の海となり
月が冴えるだろう


時間

現在と未来が激しく交錯し
押し潰された時系列に
真っ黒な過去がうまれた
その瞬間をひとびとは
どのように過ぎて行ったのか
未来に激しく突入して
吸収された瞬間に
ひとびとよ
あなたたちは
どこへ行ってしまったのか
そのゆくえを探して悲しむ者を
なぐさめることができるのは
逝きしひとびとよ
あなたたちなのだ


秒針

そも彼女は時の女神であった
時をつくりながら突き進む
女神であった
美しい秒針そのものであった
おとこどもは時針のようにのろのろと
彼女につき従うにすぎなかった




わたしは眼下に海が見える公園の
古びたベンチにもたれながら
眠りかけている
退屈そうに寄せては返す
波の音を聞いている
わたしはここまで歩いてきた道程を
思い出すことができない


青蛙

目にいっぱいの涙をうかべ
青蛙は
紫陽花の葉の上で
6月の雨に濡れながら
その身の上を
泣くのです


ばら

黒がねの花瓶の
白い薔薇
縄文の火炎土器の
赤い薔薇
青いガラス瓶の
黄色い薔薇


落葉

秋風吹けば
踊りだす
赤や黄色の厚化粧
木枯し吹けば
旅に出る
秋の季節の
出すたより


 蝉

蝉は鳴きやむと
わずかにいのちが残っているのを
確かめると
炎天下の地面のうえに
ころげ落ちた
そして真夏の空を仰ぎながら
その青い深淵に沈んでいった
地下生活者の魂は
真夏の光のなかに溶け込んで
いったのだ
そのひからびた羽に
迷宮の地図を残して


  記憶

川は埋められて
もう川はない
なぜ埋められたかの記憶もない
風さえも
昔の風景を忘れて
当たり前に吹いているだけだ
わずかな名残の葦原に
老いたヨシキリが
昔の記憶をたどっていたが
なにかに驚いて
行ってしまった
わたしはそれでも
タンポポの茂れるこの一帯に
埋もれた川の水脈を探して
固い地面の上を
今日もうろついている


    雪

雪がふる
雪がふる
空からしろい雪がふる
空からしずかな雪がふる
空からかなしい雪がふる
雪がふる
雪がふる
空をかくして雪がふる
星をかくして雪がふる
月をかくして雪がふる
雪がふる
雪がふる
大地をうめる雪がふる
大地がしずむ雪がふる
大地がねむる雪がふる
雪がふる
雪がふる
しろいとばりの雪がふる
きのうをとざす雪がふる
あしたをとざす雪がふる
雪がふる
雪がふる
記憶をうめる雪がふる
胎児をうめる雪がふる
わたしをうめる雪がふる
雪がふる
雪がふる
空からしろい雪がふる
空からしずかな雪がふる
空からかなしい雪がふる
雪がふる
雪がふる
雪をうずめる雪がふる

               
悪の華

悪の華は
まばゆく美しい崩壊寸前の
ただれた赤い色だ
昆虫の嗅覚も拒めない
饐えた臭いだ
分別盛りの貴婦人が
御身を清めたいと願う
泥の浴槽だ
思い上がりの輩がいりびたる
泥の酒船だ
悪夢にまどろむ酔いどれ船が
赤い薔薇の華を満載して
船出するのは
翌朝の未明だ


女と海

陽よ昇るな
風よ吹くな
わたしは露のような身なので
月の光に濡れている
芸術の秘密
それはかたつむりには
わからない
エロチシズムなら
だいぶわかるが
大腿部の青い海
自殺志願者が列をなす
わたしはすべてを考える前にやっている
あるいは考えないでやっている
やった後でも考えない
それがエロチシズムというものさ
表現のための表現はやったことがない
芸術の秘密はわからない
暗転してさらに暗転する風景
暗い洞窟の入り口
それをふりかえって
わたしはみている
もうそこへはもどらないだろう
詩の舞台の遠景と近景
海と空の果てが交わる水平線
果てのない時系列
薔薇の花よ
おまえの色が赤いのは
太陽に恋するためか
乳房の乳頭の先端に
地上の果てがみえる
命を使い果たしてたどりつく
地上の果てだ
あとは身投げをするだけの断崖だ
まっ逆さまに突っ込む海の入り口だ
それはでまかせなできごと
暗闇から突き出た赤い触覚
それは女の99パーセント以上の部分
少女が海に描く大車輪の円
乳房と尻と黒い髪
赤い唇と黒い瞳
すべてが開けっぴろげだ
魂の抜けきらない肉体と
真夏の白昼夢のなかに
赤い海が荒れる
わたしはこの海に何度恋いこがれたことか
何度食い入るようにみつめたことか
太陽と海のまじわりを
暗い森に埋葬された紅い海と蒼い月
灼熱の肉を喰う赤い唇と二本の白い大腿
海へ消えた足跡
そそりたつ奇岩
女がよじ登り赤い唇から奇声をあげて
はげしく男を罵っている
真紅の太陽が埋葬され
天日に干された無数の女性器が
海辺に干し柿のように吊るされている
それをカラスが食いちぎり逃げていく
海へ引かれた直線の上を
それはあらたな旅立ちだ
女があらわな肢体でよこたわり
あまりに巨大ではかり知れない
無数の男たちがその廃坑の中へ自在に出入りしている
青い海にたてかけた巨大なカンバスに
太陽が最後の真紅のデザインを描く
巨大な意匠
完全な表現のための表現
だれもが感動の声をあげ黙りこくる
夕べの月は傾き
真っ白な空に
あやしく沈黙する
ああ若き魂よ
なぜおまえはそのように自分を怨むのか
天から降る雨がおまえの涙だというのか
この海原の前ではピタゴラスの定理は考えにくい
巨大なはさみの赤い眼の女が嘴をとがらせながら
コンパスの脚で水平線を跨ごうとしている
こだわることはない
もうこの地上に季節はないのだ
太陽と月と星星が傍惹無人な
たわごとをかわす日々が続くのだ
大砲にまたがった女が海にむかって
朝の一発をぶちかます
回り舞台の時計の針が
突然夜にむかって逆行する
女の身が気高く反転して闇へ沈む
ファン・アイクの描くアルノルフィーニ夫妻の肖像画が
ちぎれて吹き飛ぶ


      海

けだるい朝のまどろみのなかに
空と海が執拗な愛撫をくりかえす
空は熱い風の吐息を吹きかけ
海はときに激しく身をうねらせる
月は白く澱んだ空の片隅に
いぶかしげな半眼の光を放つ
星星は目覚めた夢の彼方に忘れ去られた
一羽のカラスが砂浜に舞い降り
しばし海を眺めていたが
やがて太陽が空と海の仲を割きはじめると
何かをわめきながら大地の奥の方へと飛び去った



<歌詞>

 
6月の雨

6月の雨が好きだよ
赤い薔薇に降る
6月の雨が好きだよ
あの日
あなたの長い髪を濡らした
6月の雨が好きだよ
あの日
あなたの長いまつげを濡らした
6月の雨が好きだよ
あの日
あなたが振り向きもせず走り去った
白いパラソルに降る
6月の雨が好きだよ
6月の雨が降る
赤い薔薇に赤い雨が降るように
白い薔薇に白い雨が降るように
悲しい心に青い雨が降るように
6月の雨が降る


  朝

この朝の
光の部屋に忍び込んだのは
だれ?
開け放した窓の隙間から
忍び込んだのは
風だけ?
夕べ見た夢のなかに
未来のすべてを見てしまったような気がする
あなたの慰めの言葉を
信じられないこころに
海からの風が
繰り返し忍び込む
しおれた一本の赤い薔薇があるだけの
この部屋に
海からの風が
繰り返し忍び込む


春 1

春の恋は
あまりにも危険に満ちている
春の嵐のなかに散り急ぐ
櫻の花のように



明かすものは何?
ゆうべ二人で見た夢の続き
あしたなれば想い出せない
春の嵐にかき消されそう
二人のつかの間の風景を  
スナップ写真に閉じ込めた春                             
幻想の中にとりとめも無い花が舞う  
ふたりもつれあって笑えば
気ずかない背景に
次の季節がしのびこむ
新しい季節のなかに
新しい時間が流れ出す
この季節の移ろいに


春 2

窓をあければ光
春は曙
昨日敗れたハート
壊れた恋愛
わたしは二番手?
でもがんばる
こだわらない
気にしない
あのハートのエースは何処の誰?
春は曙
じっとしていられない
いい子でいられない
だまっていられない
恋のメッセージ
スペードのエース
あの子に送りつける
恋はあまくない
恋はあまくない
決着をつける
夏が来る前に


恋はゲーム

アキラメナイ! アキラメナイ!
悩マナイ! 悩マナイ!
イエス! イエス! イエス!
ノー! ノー! ノー!
決めた!
恋はゲーム!
でも本気!
ワタシの取り分
アナタの取り分
分けるコトデキナイ!
ステキなカレは
一人!
タクラミはダメ!
タクラミはダメ!
恋はひとつ!
恋はひとつ!
渡さない!
渡さない!


恋のE−メール

恋の想いは
E−メール
急げ! 急げ!
会いに出かける時間が惜しい
春の星座も傾きそう
NO! NO! NO! NO!
恋の想いは
E−メール
わたしの思いは
ABC! ABC! ABC!
あなたの思いは
CBA! CBA! CBA!
たぶん!? たぶん!?
今夜の星座を占う!?
最高♡ 最高♡
二度とないチャンス!


別れの旋律

ENDINGの旋律を
あなたはさりげなく弾くけれど
わたしは歌えない
希望の曲を悲しみの曲に変えた
あなたのこころ
あなたの弾くショパンの旋律に
いつも酔っていた
この悲しみのピアノの旋律に
わたしは戸惑うだけ
この曲の最後に
あなたにみせる笑顔を
わたしはつくれない
あの流れる水の音のような
あの危うい風のためいきのような旋律
ドラクロアのショパンの肖像に
あなたは似ていた
この悲しみの曲の終わりに
あなたにみせる笑顔を
わたしはつくれない


別れ

満員電車の中でもらった
あなたのメール
窓の外は雪模様
春はつめたくひとり寂しい
きらびやかなネオン街が続く
あの言葉が
あなたの最後の言葉
別れはいつも突然やってくる
涙がかわかないままで
降りる駅を
わたしは見失う
別れはいつも
名残雪のようにやってくる
めぐる季節
信じていた
あなたは変わらないと
もうふたりで歩むことのない町並み
冷たいメールの言葉のなかに
あなたのリアルな後ろ姿を見る
電車の窓は雪の鏡
メールを覗いて笑う男のそぶりも悲しく
降りる駅を
わたしは見失う
夜の都会の町並みが後ろへ流れていく
いまのわたしが過去へ流れていく
たずねゆく未来は見えず
電車の窓にうつるのは雪のまぼろし
メールで送る届かない言葉
どこまでも続く都会の風景
ふたりをへだてるもなは何
涙がかわかないままで
降りる駅を
わたしは見失う
うしなわれたふたりの時間
二度と戻らない過去
あなたが書いた舞台のシナリ
踊る仮面劇
踊る無言劇
踊る独り舞台
幕が下りる
あなたのシナリオで踊るのはだれ
独り佇む舞台
降りる時を
わたしは見失う


 雪

雪が降っています
こんなまずしい都会にも
雪が降るのです
そしてなにかが許してもらえそうな
気がするのです
東京を離れて
あなたは元気ですか
このたよりが届いたら
あなたのおたよりをください
あなたの雪国の
雪の結晶で
封印をして


  蛙の笛

月の田んぼの夕暮れは
月の田んぼの夕暮れは
聞こえてくるよ
蛙の笛が
蛙の歌が
コロン  コロン  コロン
コロロン コロロン コロロン
コロン  コロン  コロロン
コロロン コロン  コロロン
いい声だね
自慢の声だね
蛙の笛が
蛙の歌が
冴える夜は
天には月が冴え
田んぼの真ん中にも もうひとつの月が冴える
そうなれば踊り出すやつもいるはずだ
みんな総出で踊り出すはずだ


  子猫のミャー

子猫のミャーは泣くのです
泣いてしまうのです
いまでは
自分がさがしていたものが何かさえ
忘れてしまったのです
でも一人ぼっちではないのです
小石につまずいてころんだとき
友だちを見つけたのです
仔猫のミャーによく似た
黒い仔猫なのです
いつもあとから着いてくる
友達なのです
横にならんだり
ときには前をえらそうに歩いたりするのです
仔猫のミャーは星を見るのです
仔猫のミャーは歌うのです
お母さんが歌っていた歌を歌ってみるのです


 すいかの太陽

すいかの太陽
まないたの
すいかの太陽
まっぷたつ
すいかの太陽
つめたい太陽
真っ赤な太陽
黒点ぽちぽち
燃える太陽を
スプーンですくって
食べてしまった







生田難破船の俳句 

February 02 [Sat], 2008, 15:55

コーヒーの湯けむりまとう二月かな

ごうごうと闇が揉みいるさくらかな

落ち椿しきつめ蒼き一樹かな


秋風や跡形もなき曲馬団

秋澄むや都会のなかの消失点

天人の午睡の夢や風の花

風花やとおき記憶の帰りしか

菊満ちて日輪すでに傾けり

いいわけをふたことみこと菊膾

サザンカや「カサブランカ」という名画

サザンカやだれにも言わず泣きもせず
P R
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