『火花』

June 21 [Sun], 2015, 20:40
芥川賞にノミネートされたと聞き、
文庫化まで待とうと思っていた気持ちはどこへやら。
いてもたってもいられず、雨の降る中自転車で書店をはしごしてまでようやく手に入れることが出来た。

又吉直樹さんの『火花』を読んだ。

装丁があまりにも綺麗で息をのんでしまう、読むのが惜しい…

芸人さんの職業小説と聞いていたのでどうなのだろうと思っていたのだけど、
さらに芥川賞ノミネートと聞いて小難しいものかと思って身構えていたのだけど。
ひとこと、とても面白かった!!

一ページ目から作品に引き込むような表現の豊かさ。
情景が浮かぶ丁寧なテンポの良い描写で、一気に作品の世界観に引き込まれてしまった。
そして花火の風景からはじまる師弟関係。

その師弟の関係性が10年という月日で変化していくさまがとても見事に描かれていた。
売れるということ、世間に認められるということ、
それと自分の信じる笑いの世界を信じ続けるということは相いれないことなのだろうか。
売れないと自分のお笑いをみてもらうチャンスすら与えられないという葛藤と
尊敬する師匠に認めてもらいたいという思い。
憧れて嫉妬していた師匠の見え方と思いの変化。
いずれの感情もとても生々しく身近に迫ってくるもので、読んでいて心にぐっとくることが多くあった。
特に主人公の最後の漫才は思わず涙してしまうくらい感動した。

芸人さんの小説の粋を完全に超えている「文学」だけれども、私小説的な吉祥寺の風景があったり、二人の笑いへの考え方がつぶさに描かれていたりして芸人さんという経験を文学に落とし込んで、地に足のついた作品になっているなあという感じがした。

今年読んだ作品のなかで一番おもしろかった。
芥川賞の結果をたのしみにしている。
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