4

July 14 [Sun], 2013, 23:56

しばらくそんな日々が続いた。



私は大学に進学することは決めていたので奨学金ゲットのため勉強に勉強を重ね、ついに念願の志望校に合格した。

一方彼は高卒で就職という道を選んだ。
知り合いに頼み、少し離れた街の小さな企業に入社した。



潤と私はそれぞれの道を決めた。
彼は会社の近くに引っ越すつもりだと言っていたし、
これでもう今のような生活は終わってしまうんだなと思っていた。
それはとても悲しいものに思えたし、正直そうしたくはなかった。



でもそんなのは私のわがままでしかなくて
そんなエゴを彼に押し付けるわけにはいかない。
そう思ってその思いは胸に秘めておくことにした。




何も言わないまま時間は流れて
気が付けば卒業式になっていた。


その日はひどく寒くて
空がとても綺麗だった。




私は友達と笑いながらこのあとどうするかなんて話をして一度家に帰った。



父の残したこの家にいるとあまりにも辛くなるので私は大学入学を機にこの家を出て行くことにした。
荷造りも少しずつ済ませ、あとは新居を決めるだけだった。


置いてあった段ボールに目をやったとき、
ふと、潤との夕食の光景が頭をよぎった。



ぱたぱた



「あれ?」



段ボールに涙がおちた。



気が付くと私は泣いていた。
なんで泣いているのかわからなかった。
ただなぜかとても胸が痛くて、何かの病気にでもかかってしまったのだろうかと真剣に考えた。




ピンポーン




玄関のチャイムが鳴った。
こんな顔で出るのはどうかと思ったので居留守を決め込むことにした。




ピンポーン
ピンポンピンポーン






うるさい。
もう顔とかどうでもいい。
一言文句言ってやる。




ドアを開けたら
そこには潤がいた。







「なにおまえ、また泣いてたの?」


「うるさいバカ。何の用だよピンポンばか。」




あまりにも動揺して変なことを言ってる気がしたが気にしないことにした。




「いや、ちょっと話があったからどっか出掛けられる前に捕まえとかないとと思って。」




話?話ってなんだ?




「え、なんだし」




しばらく間があって、




「おまえ俺と2人で住む気ある?」




彼はあまりにも予想外な言葉を口にした。





「はい?」



私は私で変な声を出してしまった。



一緒に住む…?
なんで?



「俺の会社とおまえの大学、最寄り駅一緒なんだよ。おまえ学費稼ぐんだろ?だったら家賃は少しでも安い方がいいんだろうし、俺は家事を少しでも手伝ってくれる奴がほしいからそんなら2人で住めば問題ないんじゃねーのって話。」





わあー。とっても合理的。素晴らしい。





「なるべく今日中に返事欲しかったから今聞きに来たんだけど」



どうやら今の家の契約の関係で今日返事が必要だったらしい。




「たしかに家賃は安くしたいし、まだ家も決めてないし、仕方ないからその案にのったげる。」



私は私でなぜこうも素直じゃないのか。
言ったあとに後悔したが




「おう。じゃあそういうことで頼むわ。」

彼はいつもみたいに少し笑いながら私に住所の書いてある紙を寄越した。


「それ新居の住所だから。俺明後日には引っ越し済ませるからおまえの準備が出来次第来いよ。待ってるから。」




彼はそう言ってさっさと帰っていった。





待ってるから





その言葉が嬉しくて
また涙がこぼれた。





まったくあいつはずるい。
私が欲しい言葉をいつも何気無い顔で与えてくれる。




待っててくれる人がいる。




それが今の自分には何より嬉しかった。





潤が帰ったあとしばらくして
友達と遊んで
卒業後もまた会おうねって約束をして
ゆっくりと家に帰った。





その日は星がとても綺麗で
幸福な気持ちで眠りにおちた。








プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:nano
読者になる
2013年07月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
最新記事
アイコン画像4
アイコン画像3
アイコン画像2
アイコン画像1
最新コメント
ヤプミー!一覧
読者になる
P R
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
http://yaplog.jp/nano-space/index1_0.rdf