Story01「罠」:side/B

January 06 [Tue], 2009, 22:45
「キャプテン、この近くの宙域で奴隷船団が確認された模様です。注意してください。」
荷物を積み、出発しようと船の確認をする俺にメディがこう言った
「奴隷船団ねえ・・・ま、こいつの足と俺の腕が有りゃ恐るるに足らず、だ。」
コンソールに表示されるエンジン、スラスター、燃料といった項目に目を通す
「システムオールグリーン・・・と。メディ、今回の輸送目的地はどこだ?」
全てのチェックを終えた所で一番肝心な事をド忘れしてしまい、メディに尋ねる
「X103軍事基地です。」
「あそこかよ・・・参ったな、またアイツに会わなきゃならんのか。」
思い出すのも腹立たしいアイツの顔が脳裏に浮かび、それを振り払おうと首を左右に振る
「っし、とにかく発進するぞ。メディ、用意は良いか!?」
「了解しました。ハッチ解放、カタパルト準備。」
目の前のハッチが開き、広大な宇宙空間がコクピットのモニターに映し出される
「進路クリア。射出します。」
カタパルトによって急加速した機体が宇宙空間へと射出され、目的地である軍事基地へと飛び出した
「メディ、目的地までの所要時間はどんくらいだ?」
自動操縦に切り替え、コンソールの横に常備しているお気に入りの缶コーヒーに腕を伸ばした
昔からこれ一筋に愛用している品で、これが有ればと長距離輸送もずいぶんと楽になる・・・気がする
「およそ二時間半です。」
「おかしいな、前行った時は一時間くらいで・・・って、ずいぶんと遠回りな航路になってるじゃないか。」
よく見てみると、航路は現在地からまっすぐ目的地へ飛ぶのではなく、大きく迂回して到達するように設定されていた
「以前の航路上で奴隷船団の出現報告が有ったため、ルートを変更しています。」
航路表に以前通っていた直線的な航路が薄く映し出され、その周辺あるいは線上に数か所の赤い丸が表示された
メディの話から考えるに、この丸が奴隷船団の出現箇所なのであろう
「構う事ぁねえさ。以前の航路に戻せ、メディ。」
「よろしいのですか?かなりの危険を伴いますが・・・。」
奴隷船団の危険性は十分にわかっていた
大型船数隻で徒党を組み、発進させる小型機で逃げる相手を追い詰め捉えるのが奴らのやり方だ
だが、航路を変更して奴らに遭遇したとしても
そして奴らが俺を捕らえようとしてきても
俺には十分に逃げ延びる算段が有った
「奴らの使う小型機は主に軍払下げのP−52・・・最高速度はマッハ1だが。」
コンソールにP−52汎用宇宙戦闘機のデータを映し出す
「奴らの腕前なんざたかが知れてらぁ。せいぜい5、600出すのが限度だろうよ。」
それにひきかえ、と言葉を足しながら俺は愛機のデータを表示する
「こいつは最高速度こそ800程度だが、俺ならこいつの性能を100%・・・いや120%引き出せる。」
俺達は常に800で逃げ、相手は600で追う
つまり・・・差は広がりこそすれ縮まる事は無い
「それに、いざとなったらアレを使えば良いだけだ。3分も有れば絶対に引き剥がせる。」
「しかし、敵はこちらを攻撃して動きを止めようとする可能性も有ります。」
「ミサイルはジャマーを使えば一発も当たらない、機銃座の射撃なんざ掠りもしないさ。」
この言葉を聞いた大概の奴は、俺の事を自信過剰の口だけ野郎と嘲るだろう
だが俺の戦いを見た後なら――その全員が謝罪の言葉を口にするか、何も言わずその場を去るはずだ
「だから、航路変更だ。それにいくら遠回りの航路にしたって、絶対に奴らと出会わなくなる訳じゃ無い。確率は減るが、ゼロにゃならねえんだ。」
メディはしばらく思考していたが、観念したのか航路を変更した
さっきまで進んでいた遠回りの航路がだんだんと消えていき、それに反するように以前の航路が明るく表示される
「航路変更しました。目的地までの推定所要時間、一時間半です。」
「自分で操縦すりゃ一時間も要らねえ!飛ばすぜ!!」
自動操縦を解除し、操縦桿を握りしめ、エンジンを噴かす
何の操縦もせずゆっくり行くのも良いが、やっぱ俺にはこっちの方が性に合ってるらしい
「隕石群接近。減速、迂回して下さい。」
最大船速で突っ走る機体の真正面に、無数の小隕石が浮遊しているのが見えた
いわゆる『アステロイドベルト』と言う奴だ
「減速も迂回も必要ねえ!このまま突っ切るぞ!!」
隕石と隕石の間の僅かな空間を、真っ赤な愛機が駆け抜ける
遠くからなら、その速さと動き、色から赤い稲妻のように見えたであろう
「レーダーに反応。距離3000。」
メディの突然な言葉にレーダーを見てみると、たしかにレーダーに一つの光点が映し出されていた
「サイズからして小型機だが、妙にノロノロ飛んでるな・・・嫌な予感がする。メディ、レーダーを広域化してくれ。」
「了解しました。」
レーダーの映像が一旦消え、広域化され再び表示された時
嫌な予感は確信となった
「小型機の後方に大型船!そして周囲に多数の小型機!間違いねえ、奴隷船団だ!!」
その存在を確認した俺に浮かんだのは、恐怖でも焦りでもなく
好奇心だった
「キャプテン、最大船速を維持したまま直進すれば振り切れます。」
「馬鹿野郎、あの小型機を見捨てる気か!援護するぞ!!」
進行方向を一気に変え、小型機の方へと飛ぶ
「メディ、遠隔通信装置であの小型機とコンタクトを取れるか?」
「この船速と距離ではノイズが厳しいですが・・・。通信、開きます。」
予想通り通信はノイズまみれだったが、これは船速やら距離のとは少し違うようだ
「通信装置を破損してるな・・・これじゃ助けも呼べて無さそうだ。」
続けて通信に耳を澄ませていると、途切れ途切れだが言葉が聞こえた
「そこ・・・!今す・・・し・・・い!こ・・・危険・・・!!」
聞き取れた言葉はこんな物だったが
その語気から俺は読み取ることができた
この言葉の主の真意を
「危ねえから見捨てて逃げろってか。」
俺は缶コーヒーを飲み干し、コンソール横の操作盤をいじる
「好きじゃねえんだよ、そういうジコギセイの精神って奴が。」
メインエンジン出力全開
全スラスター最大稼働
自動制御装置・・・解除
「メディ、オーバーブーストモード!一気に片ぁ付けるぞ!!」
「了解しました。メインウィング展開。サブエンジン点火。」
機体の外装となっていた翼が開き、内蔵されていたサブエンジンが動き出す
「オーバーブーストモードの限界時間は三分です。」
コンソールの横に03:00:00のタイマーが表示される
俺はその数字を手動で調節した
「一分!それで十分だ!!」
メインエンジンと二つのサブエンジンが唸りを上げる
それと同時に一気に加速した機体が宇宙空間を駆け抜ける
「聞こえ・・・!?奴隷船団・・・るわよ、早・・・げて!!」
再び小型機から通信が入る
距離が狭まったせいか、先ほどよりはクリアに聞こえる
「フン、上等だ。」
おそらく俺を引き返さそうとしているのだろう声を
俺は完全に無視する
「そこで見てろ。今から奴らを・・・潰す。」
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