目的とは受信機設計上の仕様ではない

June 15 [Wed], 2011, 12:33
 放送法では、「放送の受信を目的としない受信設備」を契約義務の対象外としています。

 しかし、これを、受信機の仕様として放送受信を含まないものが対象外と勘違いしている方々が多いようですが、昭和33年10月17日の衆議院逓信委員会で、電波監理局次長の以下のような発言があります。

○莊説明員 失礼いたしました。三十二条の第一項のただし書きでございますが、「但し、放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、この限りでない。」こういう受信設備とはどういうものかという点につきましては、こういうものでございます。すなわち、通信用の受信機などというものがございます。たとえば船でもって、ラジオを聞くためでなくて、もっぱら通信のために受信機を持っておる。しかしその受信機の性能として、目的は通信なのであるけれども、たまたまラジオの部分も入ってくることがあるというようなもの、こういうようなもりのがただし書きに該当するものと解釈いたしております。

 これを見ると、「目的」という言葉の使う位置が不適切なため誤解してしまいそうですが、

 「たとえば船でもって、ラジオを聞くためでなくて、もっぱら通信のために受信機を持っておる

 と、はっきり通信機器の仕様ではなく、使用者の用途のことだと明言しています。

 注)現在はラジオは受信契約対象外ですが、当時は対象でした


 ちなみに、

 「しかしその受信機の性能として、目的は通信なのであるけれども、たまたまラジオの部分も入ってくることがあるというようなもの」

 というのは、三十二条の第一項の前半(協会の放送を受信可能)に該当することを説明しているだけで、ただし書きのことではありません。
 ただし書きは除外定義であるため、まず回答として「除外するのは船舶無線(のようなもの)です」と答え、船舶無線の特殊性として協会の放送を受信可能であることを説明しています。この説明がないと、その他の無線通信設備等、最初から非対象(除外でない)のものまで除外対象と勘違いされ回答の真意がブレる可能性があるからです。

 また、逓信委員会の発言を見て分かる人は分かるのですが、当時の無線設備は現在主流の送受信一体型であるトランシーバータイプではなく、送信機と受信機は別々のものを組み合わせ、無線設備としていました。
 したがって、受信機については、わざわざ隣接する無線の受信を排除するなど、コストをかけて船舶通信専用のものを造る必然性はなく、同じコストならできるだけ多用途に使えるものの方が商品価値が高かったと言えます。
 
 そこで、実際に使用されていた有名な小林無線製作所の受信機ですが、仕様を見るとバッチリNHKが受信可能なものです。

 したがって、「放送を目的としない受信設備」が受信機の仕様の事であれば、船舶無線局でも放送受信契約義務のあったものが多数、いや実際には、ほとんどが契約義務があったことになってしまい、電波監理局次長の発言と全く噛合わなくなってしまいます。

 それに、実は当時に限らずプロ用無線機の多くは、船舶専用といったような専用仕様のものではなく、せいぜい船舶主流といった仕様でできています。実際に無線設備の受信機の機能としては、かなり多くのものがNHK放送を仕様として受信可能ですし、送信だって船舶用周波数に限定されていませんから、下手すればNHK放送に被らせることも可能だったはずです。

 その裏付が電波法第五十二条,第五十三条です。

   第五章 運用

    第一節 通則

(目的外使用の禁止等)
第五十二条  無線局は、免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項(放送をする無線局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く。)については放送事項)の範囲を超えて運用してはならない。ただし、次に掲げる通信については、この限りでない。
一  遭難通信(船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥つた場合に遭難信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
二  緊急通信(船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥るおそれがある場合その他緊急の事態が発生した場合に緊急信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
三  安全通信(船舶又は航空機の航行に対する重大な危険を予防するために安全信号を前置する方法その他総務省令で定める方法により行う無線通信をいう。以下同じ。)
四  非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいう。以下同じ。)
五  放送の受信
六  その他総務省令で定める通信

第五十三条  無線局を運用する場合においては、無線設備の設置場所、識別信号、電波の型式及び周波数は、免許状等に記載されたところによらなければならない。ただし、遭難通信については、この限りでない。


 お分かりになると思いますが、これは緊急事態なら免許状に記された運用範囲(電波法ではこれが目的)を逸脱してもいいよと言っている訳ですが、持っている無線設備の機器的仕様が免許状に記された運用範囲と一致していたら、いいもなにも最初からできない事を言っている事になってしまいます。

 すなわち電波法的には、船舶無線といっても当然機器の仕様としては船舶用周波数以外のところも使えるはずだから、緊急事態なら、使える機能はフル活用していいよと言っているのです。
 当然、船舶無線設備は、機器の仕様的に、隣接するNHK放送の周波数を送受信可能である事が前提という事になります。
 それに、第五十二条の五でストレートに「放送の受信」は、どんな無線局(≒無線設備)でもやっていいよと言っているのも、無線設備の多くは、放送くらい受信できる仕様である事を想定しているのでしょう。


 したがって、 「放送の受信を目的としない受信設備」の「目的」が「受信機の仕様」を示す可能性はありません。

 よくお考えください。「受信機の仕様」であれば、電波監理局次長が例に挙げた船舶無線設備の受信機を自宅で使用してNHKを受信しても、受信義務がなかったことになるのです。そんな馬鹿げた話があるはずもありません。
P R
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