そう期待もせずに観に行ったのだけれど、これはなかなかいい映画でした。16歳の高校生ジュノが妊娠して驚くところから話が始まります。
始まりはあの椅子だったと彼女はいいます。好奇心に駆られて、同級生の男の子とたった1度椅子の上でしたことが、彼女にとても大変な事実を突き付けることに。
こんなとき、周りの大人たちはどんな反応をするのでしょう?彼女もはじめは親たちに知らせず、自殺も考えたりはしますが、現実的にしっかりと自分に起こったことを見据え、対処していきます。とてもさばさばと、自分がしたかったことのつけは自分で引き受けるといった気概がみえて好感が持てます。
彼女は、妊娠しても産めない女性の中絶を助けてくれるというNOW(全米女性機構)に相談に行きます。ああまだNOWは健在なんだと、なんだか感動しました。NOWはベティ・フリーダンが創始したあの団体のことだと思いますが、違っていたらごめんなさいです。フリーダンは亡くなるずいぶん前に路線の違いでやめたと聞きましたが。
さてさて、結局彼女は中絶はしないで、命を大切にすることにします。ここからがアメリカならではのお話です。雑誌に赤ちゃんの養子を望んでいる人が広告を出しているんです。妊婦の間から契約をしてその子が生まれた後すぐに貰い受けるのです。もちろんお金を払うこともあるようです。
雑誌の広告で感じのよい写真が載っていた夫婦を見て、養子に出すのはこの夫婦だと彼女は決めます。
彼女はそう決めてから両親に話します。親友の助けを借りて、言いにくい事実を両親に打ち明け、養子に出すことも決めていると言います。
もちろん両親はショックを受けますが、この両親がとってもいいのです。あわてず騒がず、娘が望むことに反対をしません。何が娘にとっていいのかを見極め、しっかりと支援します。母親は、彼女の本当の母ではなく、父親の2度目の妻です。これもアメリカじゃ普通のことなんでしょう。
いわゆる継母ですが、実に聡明にこの16歳の妊婦に必要な温かさを注ぎ、必要な言葉やけじめを教えます。父親に付き添ってもらって会いに行った養子希望の夫妻は、裕福で感じもよく特に妻は子供を熱望しています。
こういうシチュエーションで、決して家族関係がベタベタせず、本人ジュノも甘ったれることなく、またお相手の男の子も悪びれることなく、いい感じです。彼女のおなかが大きくなると、高校では超有名人に。彼女も自分の姿に驚きや戸惑いを隠せません。
ジュノを演じたエレン・ペイジは、ほとんど演技をしているようには見えないほど自然にジュノを演じています。めちゃうまい若い女優さんです。
これ以上書くとまだ見てない方に叱られそうですのでやめますが、この脚本はすごくいいです。この映画に出てくる人物には説得力があります。脚本を書いたのは初めてというまだ30歳くらいの若い女性です。なんとこの作品でアカデミー賞最優秀脚本賞を受賞してしまったのですが。
このお話が日本の高校で起こったら大騒ぎでしょうに、この映画では高校の先生は出てもこないのです。大きなおなかを抱えて、産み月まで堂々と学校に通っているのも日米じゃ感覚も違うのですね。

映画ではあっても、アメリカ社会の個人主義を垣間見せてくれます。養子縁組の仕方をとっても、子どもと家族の関係も、日本とはずいぶん違うと思いました。あちらの方が個性豊かに生きるのにはずいぶん生きやすそうに思えますけれど。まあ一長一短なんでしょうね。
と、まあここまであくまで映画の話でお気楽に書いていたのですが、なんと先ほど買った週刊誌のア〇ラに、この映画「ジュノ」が大ヒットしたため、高校生の間で妊娠がはやって、「妊娠協定」をした17人の子が妊娠したとか。
何とバカな!この事件をきっかけにまた保守派とリベラル派が喧々諤々の議論になっているようで。
アメリカも日本以上に保守というより禁欲主義者がいて、いまも性教育に反対する勢力になっているようですから、こんな事件があるとまた元気づくでしょう。
それにしても、映画の中のジュノは、自分を粗末にはしていません。集団妊娠した子たちは、マスコミの話だけ聞いて、ちゃんと映画は見てないのではないかと思いました。
妊娠には危険も付いて回るのですから、流行りで妊娠するなどもってのほかですね。
それにしても妊娠や自殺や殺人を模倣するなど、今は見境がありません。メディアに弱すぎる人たちの困った現象ですねえ。