このところ日本の経済の先行きについて不安感が広がっています。アメリカの大手証券リーマン・ブラザース破綻以来世界恐慌にもなりかねないという不安定な状況なのに、政権を放り出す首相や、自分の足元だけを見て走り回る無節操・無責任政治家たちを見ていると本当にこの国に未来はあるのかと心配になります。
貧困化する日本とは正反対に、格差のない社会を目指し、経済成長もはたしている男女平等の国フィンランドが注目されています。
経済開発機構による生徒の学力調査で連続1位、世界経済フォーラムの国際競争力ランキングでも何度も1位になっているというフィンランドですが、この国は、日本とは対極的な政策に舵をきってきました。

世界の学力調査でランクが落ちたと聞くと、日本ではすぐ授業数が足りないだの、学校差だのと騒がしいですが、フィンランドには学校差もありませんし、授業数も日本よりずっと少ないのです。
ではなぜそうなるの?という疑問に答えたのが、現地の大学院留学で身近に見聞した著者、堀内都喜子さんの『フィンランド豊かさのメソッド』(集英社)です。
フィンランドはご存じのように男女平等の国です。ハロネン大統領も女性で、支持率は80%をずっと維持しているそうです。この方は弁護士ですが、大臣などを歴任して大統領に。未婚の母を選んで、大統領になってから交際していた男性と結婚したといいます。そのあたりも本当に自由な感じがしますねえ。閣僚の半分は女性です。

過去5年間国際競争力ランキングに4度も1位になったのは、ノキアに代表される情報・通信技術を売りにするハイテク産業の伸びが大きいといいます。輸出品の木材、紙、砕氷船、クルーズライナー、ログハウス、サウナなどはいかにも北欧の国らしいですが、とりわけサウナはもともとフィンランドの発明品で、その名もフィンランド語だそうな。
競争力がそんなに高いのに、働く時間は日本と違って短いのです。労働時間7時間半、完全週休2日制、残業はしない。もし週末に仕事をすると平日2日休めるといいます。有給休暇は消化する義務!があるといいます。夏休みは働く人たちも4週間、すごいですね。
フィンランドも1993年バブル崩壊の経済危機に陥りましたが、銀行がつぶれて経済破綻を起こすのを防ぐため、政府は銀行の統合、不良債権処理、銀行債務の支払いを保証すると議会で決めました。そして他の国にない強さと弱さを検討し、IT産業に惜しみなく投資することにしました。大事なのは大学と産業、地域をつなぐネットワークを築いたことです。こういうことがノキアを世界シェア40%というすごい企業に育てたのです。
わずか人口500万の国、他の国と渡り合える良い人材を育てるため、教育に力を入れ、教育者の再教育も盛んにしました。教科書は使い終えたら次の学年の生徒に回すことなど節約もしています。これは今も続いているそうです。
ここでは、ご存じのように教育費はゼロです。そして子供が生まれる時にはベビーに必要な産着とか防寒着、哺乳瓶、おもちゃや絵本に至るまで貰えます。

育児手当や養育手当も出るし、父親の育児休暇は勿論とります。医療は公的なところはほぼ無料です税金が高いのはよく知られています。それでも国民に不満は少ないのは、政治がガラス張りで判りやすいからです。そして議員には18歳から誰でも立候補できるので、議員の平均年齢も低いそうです。
この本には高齢者のことは書かれていませんが、高齢者福祉も素晴らしいです。
ところで、必ず税金は国民の生活に返ってくると思うから安心して高い税金も払えるわけですが、日本の政治家が言ってもなんだか信用できかねますわねえ。政治家も省庁も私たちが信用できるだけの透明性がないし、今まで何度も騙されてきたからねえ。
日本の政治が日本社会の未来像を示さないし、支持されている団体の思惑だけで動いたり、目先の人気取りに走るのもかえって政治の信用をなくしているように思います。
国民も棄権は多いし、選挙を自分たちの生活と直結していると真剣に考えない人が多いのは残念なことです。
そこで、次に紹介するのが『人間回復の経済学』(神野直彦著 岩波新書)です。
日本の進めてきた「構造改革」の間違いを鋭く指摘しています。グローバルスタンダードという名のアメリカンスタンダードを真似れば、格差は拡大し、社会に亀裂が走るといいます。
人間の夢と希望を行動基準にして、人間らしい社会の方向へ舵をきっても社会は機能するし、悲しみや苦しみを分かち合って、やさしさを与えあっても経済は破綻しない、人間が協力して知恵を出し合って未来をつくるしかないのだと訴えています。
この方は、スエーデンで学ばれた東京大学経済学部教授ですが、やはり北欧の「人を大切にする経済、財政とはどういうものか」を説いていられます。
8月に紹介した同じ著者の『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書)、このブログでは紹介しなかったけれどもは湯浅誠著の『反貧困』などと共に読んでいただければ、なおわかりやすいかと思います。私たちが政治を考えるうえでも、大事な点ですね。