イ・サンを予測

August 17 [Wed], 2011, 13:03
二人のために、長い歩行が待っていた。数えきれないほどあちこちと、廊下を通り、通路を歩かされた。どの道も、まったく目印や特徴を欠き、一様にすべすべとのっぺりしていた。そして一様にあの同じ薄気味の悪い、青白い光であふれており、舗装は超人類には石のように固いのだろうが、重い地球人が踏むと、イ・サン DVDやわらかい泥炭地のように応える弾力性の材料でできあがっていた。シートンは体じゅうに活力がみなぎっていたが、逸《はや》る心を一生懸命におさえつけていた。仮借ないヤスの、電撃のような小突《こづ》きまわしに抵抗することは一切やめ、むしろ、ヤスのつぎの動きして、それに従うようにした。
 それどころか、超人類の捕獲者は、シートンの心のなかを、ヤスのなかを走る電気的な接続で読みとっているおそれすらあった。だからシートンは、外向きの思考をおさえて、どこからみてもおとなしい捕虜だという外観をつくろった。だが、シートンの頭脳は、いまほど活発で鋭敏であったタメシがない。それにノルラミン人から与えられた剛健な精神力が、がっしりと彼の心の骨格を支えていた。廊下、通路、ドアの位置、曲がり具合、角度、交差の仕方などが、明瞭に彼の頭脳に印刻されていった。道程がどんなに混みいっていても、彼はあの長い水路に出る道順が手にとるようにわかった。
 シートンの外観と外向けの思考はネコのようにおとなしかったが、内側の頭脳は、最高度に調整されていた。仮借ない処罰の鞭《むち》であるヤスを握った超人類の注意がすこしでも緩《ゆる》んだり、わきへ散ったりしたら、シートンの筋肉はただちに兇暴な活動へ転じるように、バネが畳まれていた。
 だが、これまでのところ、超人類の警戒には一分のスキもなかった。超人類の知性は、妖光を発するヤスの穂先に集中されているようであった。捕虜の重量のため、二人を載せたエレベーターが上昇を渋ったときも、ヤスを握った捕獲者の警戒体制は微動だもしなかった。
 超人類の発する音声なき命令が続いた。シートンとマーガレットは一本の螺旋《らせん》状に曲がっている斜道を昇っていった。どこまで続いているのかわからぬほどの、長い長い螺旋斜道であった。二人にとって、登りは数時間も続いたと思われた。斜道の床は岩と金属でできていたが、地球人の重い足は、一歩ごとに踝《くるぶし》まで床材料に埋まった。超人類は二人の背後を、空中を漂いながら、無言で急《せ》きたてた。尻尾が風車のようにクルクル回転し、超人類の推進と操舵を行なっているのであった。
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