side―Rin

May 16 [Mon], 2011, 23:05

side―Rin

一年ぶりの青の国。
前に来た時とは違う。

私、本当に何も知らなかったんだな。

お姉ちゃん(メイコ)に連れられた一年。

本当に足手まといだったと思う。
でも、長い距離を歩けるようになった。
世界があることを知った。

自分が許される存在でないことは、あの日から痛いほどわかってる。

そういえば、紫の国で会った人は"人間は罪を重ねて生きる"っていってたっけ。


―――有罪者話〜ツミアルヒトノハナシ―――




「ここが、紫の国?」
「そう。なんだか…面白い雰囲気ね」


「おや、異人さんかい?」


「え?」


そこには、緑の髪の女が立っていた。


「その服、西洋のほうだろ?珍しいね。」
「あぁ。今ついたのよ。悪いんだけど、宿とか知らないかしら?」
「宿?ならうちへおいでよ」
「あら、悪くない?ずいぶん長い期間いるつもりよ」
「いいよ。うちの旦那も異人なんだ。あたしはめぐみ。おまさんたちは?」
「私はメイコ。この子は――」


リンは俯く。しかしメイコは構わず肩を叩いた。


「――リンっ、です…」
「へぇ。可愛い名前だね。鈴の音みたいだ」


めぐみと名乗る女に連れられて家まで行くと、その家は横に広く見たことのない造りだった。


「靴をお脱ぎ、」
「え?靴を脱ぐの?」


思わず顔を上げたリンはさっと目をそらす


「何そんなに怯えてんの。うちの国は靴を脱ぐんだ」

ニコリと笑う彼女にリンは少しホッとした。



「あんた、お客さんだよ!しかも異人さん!」
「異人?珍しいね」


今に座っていた男は紫の髪をくくりあげて本を読んでいた。
メイコは少し違和感を覚える。


「本当だ。我は神威がくぽ、寛いで行ってくれ」
「ありがとう。そうするわ。」


「メイコさん、リンさんはこっちの部屋使ってください。」
「は、はい」


幼い女中が言う。頭を下げて出ていった。
二人になったメイコとリンはとりあえず荷物を下においた。床に座る風習に慣れず二人とも戸惑ってしまい思わず吹き出した。


「あっ、ごめんなさい…」

「…いいのよ、笑ったって」
「………でも、」


気まずくなる。そんな雰囲気を破ったのは襖から顔を出しためぐみだった。


「お二人さん、服、どうする?」
「服?」
「そんな西洋の服じゃ目立つだろう。何か貸そうか」「あぁ…なら買いにいくわ。長く借りる訳にはいかないもの。」
「そっか。じゃ、仕立て屋紹介するよ。夕飯の準備があるからあいつに連れてってもらって」


ぐっとめぐみが袖を捲ると女中がたしなめた、


どうやら、お金持ちらしい。


「あんたー、二人を呉服屋に連れてってやっておくれよ」
「呉服屋?円尾坂の?」
「そうそう。ルカさんならすぐ作ってくれるから」
「わかった。では行こうか。」



神威とリン、メイコは歩き出した。街は人が行き交い騒然としている。


めぐみが言った店は坂のふもとにあった。


「ルカさん、いるかい?」


奥からピンク地に赤い模様の着物を着た女がでてきた。


「おや神威の旦那。珍しいね。ぐみさんに贈り物?」

「残念ながら違うよ。彼女達の服を御願いしたいんだ」
「へぇ。異人さん?うちは高いよ?」
「心配いらないわ。いろいろ売れそうなのは持ってきたし」


「ははっ。お姉さんいい心意気。…そうだねぇ、あっ。紅い着物があるんだ。お姉さんちょっと着てみな。―――テトさぁん。着付け頼むよー」
「はぁい。わかりましたー」
「えっ、ちょ、あのっ?」

メイコはテトと呼ばれた娘に連行されていった。意外と凄い力だ。


「お嬢ちゃんの丈の着物はないからね。ちょっと待っておくれ」
「あっ…はい…」


リンは縁側に腰かける。
隣に座った女主人の手はお針子らしく豆ができている。


「この服、あなたが作るの?」
「そうさ。この相棒と一緒にね」


赤い鋏を取り出して彼女は笑った。


「ルカさんは仕事頑張りすぎだよ。あまり寝てない事も多いだろう」
「いやいや、神威の旦那には負けるさ。まぁあの紅い着物は徹夜ものだけどね」


リンはきょとんとする。
(仕事で寝れないって…あ、そういえばレンも寝るの遅かったっけ。)


「お嬢ちゃん。旦那はねぇ、異人の商船から流れてきて、そのまま武家の神威家の娘に見初められて今に至るんだよ」
「しょうせん?」
「貿易するための船さ。見た事ない?」
「…ない」


少しシュンとした。
あれだけ王女をやっていたのにわかる事が一つもない。


「運が良かったんだよ。前いたところじゃ罪人だからね」


その声にリンははっと顔を上げる。


「罪人…?」
「…そう。」
「でも旦那。腹に傷は漢の勲章だ。素敵。」


(罪、)


「どうした?お嬢ちゃんもなんか罪があるって?」


びくっ


「なぁに。人間は罪を背負って生きてくもんだ。1つ2つかわらんよ」


ルカは煙管を吐き出す。その目は遠かった。


「ルカさんも…ありますか?」
「ん、有るよ。人の事情を聞かずに突っ走ったりね。」
「あ…」
「我だって好きな女子1人に想いを告げることさえできなかった。人間は弱い。」

「……私、いっぱい人を傷つけたんです。大好きな人も…デリヘルやってる私の所為で死んじゃったの。私が…殺した…」


ルカもがくぽも目を見開く。


そして笑いだした。


「なっ…おもしろくなんか…ない…」
「そんなに気負いなさんな。――そら出来た。」

裾を直した黄色い着物は初めて見る形だった。
一見、布。


「簪もつけたげる。着物に合うから」


「ルカさん、おわりましたよ」


ちょうどよくメイコとテトがでてきた。
紅い着物はよく似合っており薄く引いた紅が妖艶さを醸している。


「んじゃ小さいお嬢ちゃんのもお願いするよ」
「はいはーい」


また連行されていく。
彼女は何者ぞ、


「そういえば、貴男は何処から流れてきたの?」
「我か?」
「そう、異人って聞いたからね」


がくぽは一度目を閉じると少し考えてから口を開いた。


「河の近くの街だったよ」

「へぇ…」
「そこで恨みを買って刺されてね、なんとか船に乗って亡命した」
「大変ね、貴男も」
「そなたも訳ありだろう?」


メイコは少し驚いた。
ばれていたなんて


「まぁ少し」
「女子はちょっと位秘密があるほうが素敵さ。」
「あらそう。」


黄色い着物に黄色い簪を着けたリンが出てくる。
よく似合っていた。


「お嬢ちゃん着物似合うね。すごくいい」
「ありがとうございます…」
「そんじゃお代だけど…」


ルカは煙管を置いてもともと二人が着ていた服を手に取る。

「これでいいかい?」
「え!?」
「異国の服なんて見る機会ないし。お二人さんがよければこれで。」
「そんな…、デリヘルやってる私のは…」
「いやかい?」
「………弟の、形見で」
「あら。それはすまなかったね。」
「服ならまだ持ってるわ。また持ってくるからそれでどうかしら」
「ん。じゃツケとくよ」


台帳を開いて筆を執る。
なにやら書き込んで閉じた。


「この国は基本的に平和だからね、ゆっくりしていきな」
「ありがとう。また来るわね」
「あぁ、あ。でも」




ルカはまた煙管を咥える、




「前に家族が殺される人情沙汰があったんだ」
「へぇ…」





「犯人は捕まってないから、十分気をつけなさいな」

赤い鋏を片付けながら、彼女は言った。
今日は、このあと風俗に行きますね。
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