No Title 

July 14 [Sat], 2007, 14:56
扉を挟んだ向こうから、聞きなれた声の、けれど滅多に発しないだろう押し殺したような悲鳴が幾つも重なって伝わる。
「……?」
"此処"の場所柄、そういった非日常的な事は頻繁に起こる。むしろ、それらの現実離れした全てにいちいち反応していてはやっていけないほど。
だというのに、悲鳴は尚連鎖している。
初めのそれでその場に駆け付けた者が声を上げ、またつられて興味本位に足を向けた者が息を呑み――その繰り返しのようだ。
何が起きているのかは定かでないが、見過ごせるほど達観視出来ないか。
「乗り気じゃない、なんて言ったら怒られるか咎められるか」
ふう、と小さく息を吐き、腰掛けていた椅子から立ち上がる。足元すれすれの、幾房かは地に着いている茶色の髪が、所作に合わせて揺れた。
ついと視線を己の身体に下げる。
強引に着させられた、着飾った衣装――。あまりに派手すぎて、かえって浮いて見える。これでもひらひらのフリルをあしらったドレスを着衣するのを躊躇った結果、それよりは大分と大人しいひだの薄桃色のスカートと白いブラウス、紺のデニムの上着で収まった時はほっとしたが。
(私に、こんな服は似合わない)
スカートの裾を持ち上げ、皮肉げに笑う。
どれだけ抗ってもこの地位を投げ出せないのなら、せめて自由で居たかった。
好きな服を着て、好きな場所に行って、友達と下らないお喋りに華を咲かせたり、眠たくなったら気ままに横になって。
けれど今の彼女は、それすら望んではならない。
(鳥篭に入ったままなんて、真っ平なのに)
自然と零れる吐息が、手を掛けた戸に当たる。半ば半永久的に幽閉する為の扉の装飾も、鬱陶しいほどに緻密だった。端から端まで纏わりつく蔦が圧迫感を与える。
こうしている間にも声は大きくなり、騒ぎすぎだと思うほどに肥大化していく。叫び声や怒号や、指示を飛ばす鋭い声に慌しく行き交う足音。余す所なく敷き詰められた絨毯が人々の喧騒を多少は吸っているのかもしれないが、沈静化するまでには遠く及ばない。
扉のすぐ反対で控えている彼女の護衛の物なのか、かつんと何かが扉に触れる音がした。いつも携えている剣の切っ先か柄だろうか。
P R
プロフィール
  • アイコン画像 ニックネーム:灰鎖弦月
  • アイコン画像 性別:女性
  • アイコン画像 誕生日:1992年
  • アイコン画像 職業:小中高生
  • アイコン画像 趣味:
    ・読書-とある魔術の禁書目録
読者になる
2007年07月
« 前の月  |  次の月 »
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ