(無題) 

September 02 [Tue], 2008, 9:22
てのひらを そらに むけてみる
透き通ったうすいひふは 日にすける
そらは あおくて
にゅうどうぐもは たかくそびえる

そこをカラスが一羽 よこぎった。
和也はてのひらをおろす。

青色に 一点、の くろ

「おなかすいたなあ」

今は三時間めの数学のじかんで、でもここは屋上で、いつものきらきらした髪の毛の、カミヒコウキの人は珍しく留守だった。

どうして俺がここに寝転がっているかというと、ただなんとなくやる気が起きなかったからで、いいこだから次の時間にはちゃんと教室にもどるつもり。
体を起こしたら、金網に留まったカラスのはねがひかりにてらされて青くひかる。
だーくぶるーだな、きれいだなー


「けーしは、俺が居ないのに気が付いてるのかな」

きづかないで難しい数式とにらめっこ、してるのかな。
だったら さみしいな

「ていうか気付くわけないけど、俺誰にも会わずにここ来たし」

言い聞かせるみたいに、自分に言い聞かせるみたいに、つぶやいてポケットに詰めてたむぎを撒いたら、雀と鳩が飛んできてついばむ。

カラスは興味が無いように飛び立ってしまった

「さみしいな」

「さみしくないさみしくない」

「さみしい」

「うーん…」

もう一掴み、むぎを投げた。

「何がさみしいの」

驚いて見上げる。
青い空にカラスみたいな、日にてらされて鮮やかな、だーくぶるーが ゆれる

「なんでもない」

「さみしいって言ってたろ」

「さみしくない」

投げ出してた足を抱える。
むぎはもう、殆んど食べられてしまった。

「一人で勝手にサボって人気の無いとこ来ておいて、さみしいとか馬鹿じゃん」

「さみしくないよ、だってけーしが来てくれたもん」

「あそう…」

「うん」

本当は、教室に帰ったら、どこにいってたのって聞かれて、屋上!って答えて
サボりかよっていわれて、にへらってわらったら叩かれて、いたーいって言って
けーしだって教室にいるほうが珍しいじゃんって言い返して、俺はいいのっていつもみたいに言い返されて

のはずだったんだけど

「ねーねー」

「なーにー」

「あたま撫でてー」

カラスみたいな、だーくぶるーが空のいろにきらきらひかって きれいだった。

俺より大きいけーしの手のひらは、そのあと俺の頭を撫でてはくれなかった。



(無題) 

March 28 [Fri], 2008, 12:13
其処は赤い部屋でした。
私は寝そべっていました。
立ち上がりたいとは思うのですが、手足に巻かれた縄に遮られてしまいます。
正確な時間は判りませんが、もうずいぶんと夜も深いようでした。
天井に近い明かり取りの窓からは月の光と、何処からか梟の低い声が聞こえてきます。
暫くの間その声に聞き入っていましたら、大きな鉄の扉が開く、ゴウゴウと煩い音がいたしました。
私の体は恐怖に震えます。

「今晩は、私の可愛いお人形さん」

昨日と同じ台詞を男は言いました。

「今晩は、私の死神さん」

昨日と同じ台詞を私は言いました。

男は長い足と磨きあげられた革靴の先の方で私の顔をひょいと持ち上げます。
「死神とは酷いじゃないか、クック。」
私は出来る限りの冷たい目で睨み付けます。
「私はそんな名前じゃないわ。はやくここから出して。ママの所に帰らせて」
それは出来ないご注文だね、と死神は笑いました。
「君はもう、ここからも私からも逃げられないのだよ。」
私は思い切りその足首に噛みつきました。
するとぎゃ!と叫び、高い踵で私を踏みつけました。私は挙げそうになった悲鳴を飲み込みます。声を出したら喜ぶのです。それが悔しくてたまりませんでした。

「畜生め、服が汚れるだろう!」

男は鞭を振るいます。
それは私の体に容赦無く赤いラインを描きます。
その度に私は悲鳴を堪えねばなりませんでした。
男は言います。

「もっと泣いて叫んだらどうなんだ!高い声で助けてください言ってみろ。可愛いげの無い奴め」

頭がレンガの床に打ち付けられます。

「クックは鳴くものだろう!」

男の声が響きます。
私は繰り返し為されるままに暴力を受けます。
そのうちぷつん、と音がするとそれきり左目が見えなくなりました。
右目も焦点がよく合いません。

お家に帰ったら、こんな私でもママは変わらず愛してくれるでしょうか。

「お家に返して」

私は言います。
男は高笑いをしました。

「なにを今さらまだ気付かないのかい愚かな子供め。お前のママはかわいいお前を俺に売ったんだよ微々たる金と引き換えに」

男は笑い続けます。
どうやら私は耳が壊れてしまったようでした。
鞭とレンガへの殴打で体は何かよく解らないものになっていきます。
指も逆に曲がりましたがこんな私でもお家に帰ったらママは抱き締めてくれるでしょうか。
















「口の枷を外してあげなきゃ、声はだせないよね」
僕が言うと、頭から綿がはみ出た縫いぐるみを殴る手を止めた。
「手錠なんて嵌めなくたって、彼女はどこにも行ったりしないさ」
だって動けないからね

(無題) 

March 20 [Thu], 2008, 10:53
鉄格子の向こうはつめたい、くらい、くらい

「ラスターシャ…」


握った鉄格子すらあまりにも冷たくて凍りそうだと思った。
僕はもう何度、この向こうに身を投げ出そうとしたかわからない。
またこんな所に来てるのか、と上から声がした。
性格には後ろからなのだが、背丈の差で上から声が降ってくるように聞こえたのだ。

「バル」

「何度見に来たって、彼女は元にもどらない」

そんなことはわかってるのだ。

「うるさい」

「あんまり来ない方がいいぞ、ここはクイン様の手の内だからな」


バルは自嘲ぎみに笑った。

「お前だって危険だろう?」

クイン様の兄貴だろうが。

(無題) 

March 05 [Wed], 2008, 10:09
もうあまり覚えていない。
ただそこには僕しか居なくて、僕しか居なかった。
なにをしたらいいのかもわからなくて
なにをしたらいいのかわからないことすらわからなかった。
ただ僕はそこにいた。

意識があったのかもわからない
夢だったんだと言われたらそうなのだろうと納得してしまう
それくらい
曖昧



確かなことは、そこでずっとそうしていたら僕はその日のうちに誰かのお腹のなかに収まっていただろうという事だ。

だけどいつの間にか僕は柔らかな腕の中に居た。


「ラスターシャ、ラスターシャ、今日は2つ向こうの森までいったんだよ」

「そう!それは凄いわね!ねぇねぇ2つ向こうの森には何があったの?」

「ええとね、こんな大きな大きなお家がね」

暖かくて、幸せだった
僕らは誰にも邪魔されずに、特別裕福でもなく貧しくもなく、ただひっそりと暮らしていた。

それだけで良かったのだ。
他に何もいらなかった。

僕は何も知らなかった。


ある日彼女は何時もとなんら変わらない笑顔でこう言った。

「ウィスタリアは、いつか一人で生きていかなくちゃいけないのよ」

「そのときはこの紫の森から逃げなさい」

「森の向こうで、生きていきなさい」

「約束だからね?」

約束だからね。

何も知らない僕は、何も分からないままに返事をした。
パイは何時ものように美味しくて
食べこぼして服を汚しては叱られた。
その頃僕はよく叱られては泣いていたし、彼女が出掛けてしまって家に居ないときも泣いていた。
そんな僕を彼女は泣き虫と笑ったが、
最後にはちゃんと笑顔で抱き締めてくれた。


僕は家の外で金髪の少女を見る。
僕と同じくらいの背格好で、触覚が生えていた。
僕を見つけた彼女はにっこりと微笑む。
ラスターシャに外の人には気を付けなさいと言われていたが、同じくらいの年齢に見えたのもあって特別警戒心は持たなかった。
少女はすぐに飛び去ってしまったけれど、僕は一人で遊んでいるうちに彼女の事を忘れてしまってラスターシャに伝えなかった。

それが過ち。



僕は両腕に沢山のぶどうをお土産に家に帰る。
ジャムの入っている大きな壺が倒れていて
家のなかはぐちゃぐちゃになっていた。
僕は不安になってラスターシャを呼ぶ。
倒れた食器棚の影になにかが要るのが見える。
その影から彼女の声がして、僕は近寄る

わけがわからなかった。
直後、影は広がり、けたたましく彼女の声で笑う。
黒い爪が僕を狙う

あまりの出来事に僕は逃げ出したが、家から出たところで転んでしまって動けなくなった。

P R