君のそばで D-2 

2012年01月21日(土) 15時07分
5-2

しばらくお互いの肩に寄りかかりながら時を過ごした。
暗くなってきたところでソファを離れ俺がスーツケースの荷物を整理している間、
日向さんは洗濯物を干すといって洗面所へ消えた。

寝室で服を取り出しながら部屋を改めて見渡してみる。
ベットと備え付けのクローゼット、あとはノートPCが置いてある机だけ。
そういえば東邦の寮のときも日向さんは荷物が少なかったな。

『サッカーするために来たんだから余計なものは必要ねえ』
そんなことを言っていた。

日向さんらしい、のかな。

『サッカー以外興味持てねえんだよな』

他の奴らがこっそりやっていたゲームや談話室で見ていたお笑いのTV番組にも
無関心で、ひたすら身体を動かしているかサッカーの雑誌を読んでいるだけだった。
偏るのをはよくないと反町がしきりに言って、遊びに連れて行ってもあまり乗り気
じゃなかった。

『特待生で入ったからには勉強はする。成績落ちていられなくなったら意味がないからな。
無関心すぎるって言われるけど別にそれでいい。余計なものに金使いたくないだけだ』
少しは何か別なものに目を向けてみてもいいんじゃないのかと俺が言うと、

『そうしたいところだが実際余裕ねえんだよ』

その言葉を聞いて、自分が気がつかなかったことに反省した。
仕送りしてくれたお金をほとんど使わず、実家に帰っときにそのお金で小さな弟達に
プレゼントを買ってあげていた。

『俺は絶対プロになる。母ちゃんがもう働かなくてもいいように俺が稼いでやりたいんだ』
本当は今でもできるならバイトしたいぐらいなんだと言っていた。
だからサッカーにしか興味が持てず、考えられなかったのだろう。

「不器用、だよね」

それなりにやり方はあったのだと思う。
でも、子供だった俺にはそれ以上できることはなかったし、考えてあげることもできなかった。
だから日向さんは前しか見えなくて、一本道だけをひたすら走ってきたのだ。

今も変わっていない。
直情的で、頑固で。不器用で、前だけしか見えなくて。
だけど家族思いで、口ではなんだかんだと言っているけれど仲間を大切にする。
そして、心の優しい人。

だから俺はそんな日向さんのことが好きなんだ。
ずっと昔から魅かれていた。
それがどこでこういう想いに変わったのかはわからない。

「もしかしたら最初から、そうだったのかもしれない」

一人で納得して笑って、俺は寝室を出た。



リビングに出るといい匂いが漂ってきた。

「日向さん?」
「座ってていいぞ」

キッチンを覗くと鍋で何かを暖め始めているところだった。

「やっぱり腹が減ってきた。あれだけじゃ朝まで持たねえし。
アパートの大家さんが作ってくれたシチューだ。
たくさん作ったからって分けてもらったのを冷凍していたんだ」

「結構差し入れしてもらうんですか?」
「たまに。食い物はありがたいからな」
「美味しそうな匂い。俺も手伝いますよ」

冷凍してあったもらいもののシチューを温め、付け合せに
パンとサラダを用意してイスに座る。

「あともう一つ」
戸棚から出してきたのはワインだった。

「ワイン?」
「この地方で作られてる赤いスパークリングワイン。『ランブルスコ』っていうらしい」
「よく飲むんですか」

「いや、初めてだ。普段はまったく飲まない。
けどせっかくお前が来るのに何もないのもどうかと思ってさ。
何がいいかわからなくて探していたら『これがオススメだ』って店の親父にしつこく薦められ
て買ってきたんだ。だからうまいはず」

「きっと美味しいに違いないですよ」

栓を開けグラスに注ぎ、同時に二人で口をつけてみた。

「うまい」
「美味しい」
「親父が薦めるだけあったな」
「ちょっとだけ辛口?かな」

「甘口、中辛、辛口と三種類あるんだ。今飲んでるのは中辛口。
『どんな料理にも合うし、一番飲みやすい』って店の親父が言ってたぜ」
「甘すぎなくて飲みやすい。ほんと、美味しい」


料理を食べ終わり、片づけをしてからリビングへ移動し
ソファに座りながらグラスに3杯目を注いだ。

「飲みすぎるなよ。度数は結構高めだ」
「大丈夫」
「明日は俺のホームグラウンドにも案内する」
「はい」

「・・5年か」

「え?」
「ここに来て5年経った」

顔を向けると日向さんは目を細めてどこか遠くを見ていた。

「来た当初はな。受け入れてくれる奴なんて一人もいなかった。
ユーベにいた頃の輝きが残ってない。なんでこんな奴を入れるんだ。
俺たちだけで十分だってな。いがみ合って、怒鳴りあって。
うまくいかなかった」
自嘲気味に笑って言った。

「初めてですね」
「なにがだ」
「当時のこと話してくれるの」


昨年帰国し再会した時、自分自身で納得できたから戻ってきたんだと日向さんは言った。
それを代表戦で証明してくれ、誰もが認めてくれた。
だから自分は距離を置いていた3年半のことはあえて聞かなかったし、日向さんも
口にしたことがなかったのだ。

俺がそう言うと日向さんは眉間に皺を寄せて呟いた。

「やっぱりやめておくか。おもしろくねえ話だし」

聞きたい。
そう言うと強張った顔を緩め、苦笑いして頷いた。

「今はうまくやってるが。DFのゴッツアっていう奴がいるんだ。
そいつに言われた。『ここにお前の居場所なんてない』
ブチ切れて殴っちまった。どれだけ必死にやってもパスは寄越さない
いい流れになったと思ったら守りに入る。さすがに我慢できなくなってな。
言い合いになって喧嘩になって内部的にだが出場停止くらった。小泉さんに
さんざん怒られたぜ」

「そんなことが・・」

「当初のレッジョは守り重視。まあイタリアだからな。それはわかる。
普通ならカウンター仕掛けて点を取る。だがレッジョはFWに仕事をさせようと
していなかった。上手く使えていなかったんだ」

「それって、失点も少ないけど得点も少ないんじゃ」

「その通り。なんの意味もない。リーグの上位に上がれない。
いつまでたっても同じ位置。その繰り返しだ」
「それで喧嘩に?」
「ああ。だからFWを上手く使えと言ったんだ。いいボール寄越せば
働いてやるってな」


少しいい雰囲気になった矢先、大事な試合で日向さんは大怪我をした。
それがあの夏。
吉良監督に俺は手紙を託した。

「そこで自分の弱さを知った」
「弱さ、ですか」

「ああ。お前たちは俺がいなくてもオリンピック出場を決めて前に進んでいた。
その予選のビデオを見たんだ。俺がいなくてもやっていけてる。
それに比べて俺はなんてざまだってな」
「日向さん」

「情けない話だ。
こっちに来て踏ん張らなきゃならねえのにうまくいかねえから悪い方向に考えていって。
バカで勝手すぎる」

お酒が入ってるせいかめずらしく想いを口に出している。

「どこまで落ちればいいのか。俺の居場所はどこにもないのか。
そんなことまで考えるようになっていた。だけど」
グラスを握り締めて小さく息を吐き出す。

「そんな時。吉良監督が、お前の手紙を渡してくれた」

握っていたグラスをテーブルに置いた。
俺もグラスを置いて日向さんへ視線を送った。

日向さんは顔を下へ向けて唇を噛み締めていたが、ゆっくりと顔を俺のほうへ上げた。


「お前を傷つけて辛い想いさせておきながら気持ちを押し付けた。
そのくせ、チャンスをくれだなんて言って。
自棄になりそうだった俺に、お前は言葉をくれた。その言葉で俺は救われたんだ」

だから今がある。
そう言いながら俺の頬に手を伸ばす。

「それからは下を向くのをやめた。
ぶつかり合いながら、なんとかやってきた。
取り戻すために、がむしゃらに走ってきた。
何度も躓いたけど前だけ見て走った」

頷くと両手で頬を包まれ引き寄せられた。

「自分勝手でバカな俺をお前は・・ずっと想ってくれていた。
助けようとしてくれていたのに。それを聞き入れようとしなかったこの俺を」
「本当にバカだよ。俺の言葉を聞かないで信じようとしないで」
「若島津」

「それでも。どれだけ辛くても、傷ついても。俺には日向さんしかいない。
失いたくなかった。心から消すことなんてできるわけがない。
だから俺は待つことを選んだ」

俺も日向さんの頬を両手で包んで引き寄せた。

「後悔してる、なんて言わないで。終わったことはどうにもならない。
言ったところで消せるわけじゃない。
俺は距離を置くと決断したことは間違ってなかったと思ってる。
そりゃ、会えなくて声が聞けなくて触れることもできなくて、折れそうになったけれど。
でも、それでも後悔なんてしていない。
だってあの時の俺達にとってそれが最善だと考えたから。
そのおかげで日向さんは戻ってきた。
取り戻すことができた。
いつまでも俺に対してしたことを後悔してるとか、すまなかったなんて考えてるのなら
それこそ情けないよ。そんなの日向さんらしくない」


「・・お前は」

「なに?」
「俺よりも、ずっと強い」

「そんなことはない。
俺に対してしたことを引きずってるように見えたから・・喝を入れたいだけ。
・・俺は強くなんかない。何度も泣いたし。
日向さんが欲しくてたまらなかった。でも。
俺が託した言葉はきっと届いてる。
待ってくれている人たちがたくさんいる。
俺は顔を上げて待っていないと駄目だと思った。
自分が決めたことなんだからって言い聞かせた。
だから、人前では強がって見せていた」


そっと唇を寄せられ、俺は黙って受け入れた。

「お前に対してしたこと悔やんできた。
お前の言うとおり、終わったことはどうにもならないし、消せるわけじゃないな。
実際にあの時の俺はそうしてしまったんだからな」

「今がある。それでいい。俺はそう言ったでしょ」

「若島津」
日向さんは頷いて俺を抱きしめた。

「お前がいるから」
「なに」

「俺は、強くなれるんだろうな」

二人一緒だから、そうなれるんだよ。

そう言おうとした言葉は日向さんの熱い唇に消されてしまった。
さっきよりも深く重なり、舌を絡めあう。


「・・ベットへ」


服を脱がせあいながら、寝室へ移動する。

ちらりと視界に入ってきた時計の針は。
丁度、十二時になろうとしていた。







::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
次はやっと29日、です!
やっと半分が終わりました。。。
毎日更新はできないと思いますが、後半も頑張りたいと思います!


『ランブルスコ』というのはイタリアでは珍しい赤いスパークリングワインだそうです。
エミリア・ロマーニャ地方で作られており、レッジョ・モデナ周辺で栽培されるランブルスコ種から作られるそうです。
甘口・中辛口・辛口があります。店の親父(笑)が進めてますが、なんにでもあうのは中辛口、らしいですよ♪
飲んでみたい〜

君のそばで D-1 

2012年01月19日(木) 21時45分
5-1 お互い肩に寄りかかって


「この辺でやめないと止まらなくなるぜ」
このままここでするか。
なんて低い声で囁かれたので慌てて身体を離した。

「ここでは」
「お前から強請ったくせに」
「俺はただ、キスが欲しくて」

「わかってるって」
笑いながら俺の肩に腕を回して引き寄せた。

「強請られて嬉しかったから止まらなくなりそうになった」
「そんなときはいつも強引にするくせに。もしかして、我慢してる?」
「我慢なんてしてねえよ。焦る必要もねえし。
それに、ベットのほうがお前をじっくり味わえるからな」

お前だってそのほうがいいだろ。
わざと耳元で笑いを含んだ声で囁いた。

それが弱いのを知っていてするのだから意地が悪い。
身体の熱が上がる前に俺は話題を変えた。

「あ、明日は外へ出かけたい」
「そうだな。観光名所じゃないからあまり見るところはないと思うが」

「観光が目的じゃないから。俺、自分の目で見て、感じたいんです。
日向さんがこの街でどうやって生きてきたか。
町の景色とか、いつもどんな店に行くのかとか。どんな人たちと出会って、
どんな環境でサッカーしているのかとか」

顔を上げると自分を見つめている日向さんと視線が合った。

「それを知れば、日本にいても浮かんでくるっていうか。
今頃あの店に行ってるのかなとか、あのグラウンドで練習している時間だとか
あの人たちと楽しく会話をしてるのかなって。
今までは自分が想像した景色で日向さんのこと想っていた」

「すまない」
「なんで、謝るんです」
「俺は今まで一度も、そういったことを伝えてなかったってことだろ」
「聞かなかったのは俺ですから」
「なんで」

「実際に自分の目で見て、肌で感じたいと思っていたから。
日向さんに教えてもらっていたとしても、それってやっぱり想像するしかないでしょ。
だから今回のチャンスを逃したらいつになるかわからないって思ってね」

日向さんの肩に頭を乗せて俺は目を閉じる。

「飛んで行けたら。いつもそう思っていた。だけどスケジュール的に無理が
あるのは俺のほうだったし、いつも飛んで来てくれるのは日向さんだった。
飛行機の中で思ってたんです。あと何時間なんだろう。今どの辺りなんだろう。
日向さんは家を出たのかな、もう空港に到着してるのかなって。
降り立ったらどんな顔すればいいんだろう。顔見たら、泣いてしまうかもしれないって」


ぎゅっと肩を強く抱かれ俺は日向さんの腰に腕を回した。

「いつもこんなに長い時間をかけて来てくれてたんだ。ありがとう」

「俺のほうこそ、ありがとうな。俺はいつも待たせてばかりいる。
そんな俺を笑顔で出迎えて送り出してくれて」


出迎える前は嬉しさでいっぱいだ。けれど送り出した後は、辛くなる。
でも次があるからと言い聞かせ、下を向かないようにしている。

下を向くと泣いてしまいそうだから。

「空港で待っているとき考えた。お前はいつもこうして待ってくれてるんだなって。
出迎えるのは、嬉しいな。けど、送り出すのは」

どちらも辛い。
送り出すのも、そうされるほうも。

考えたくなくて、日向さんの手を握った。
日向さんはそれ以上何も言わずに黙って俺の手を握り返してくれた。







:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
長いので5-1としまして、続きを5-2で。

君のそばで C 

2012年01月16日(月) 0時00分
4 何だか幸せ


あれから止まらなくなり、俺達は激しく求め合った。
シーツが限界を超えたところで日向さんは苦笑いしながら呟いた。

『すげえ有様』

動けない俺をそのままにシーツを手早く取替え、タオルで身体を拭いてくれた。

『シャワー浴びてから飯の用意する。まだ寝てていいぞ』

取り替えられたシーツが気持ちよくて少しうとうとしたが、さすがに眠れなかった。
だるい身体をようやく起こしてベットからゆっくりと出る。
服が見当たらない。裸で出るわけにもいかず、勝手に掛け布団カバーを外して
それを羽織り、寝室のドアを開けた。

「日向さん、俺の服・・」
「もう起きれるのか?まだ寝てたほうが・・」

俺の姿を見て日向さんは困った顔して笑いだす。

「裸で出てくるの期待したんだけどな」
「な、なに言ってるんですか」
「それも色っぽいな」

「ど、どこが」
羽織ってるものを引っ張ろうとするので手を軽く叩いてやる。

「バカ」

浴室のドアを閉めるのと同時に日向さんの低い笑い声が聞こえた。


あれだけ抱き合ったのに。
手に触れただけで、低い笑い声を聞いただけで身体が火照るなんて
どうかしてる。
熱いシャワーを浴びて、どうにかやり過ごした。


日向さんが用意してくれたのはリゾットとサラダ、あとはカットフルーツ。
お腹は空いていたけれど、がっつり食べる気にはなれなかったので
丁度良かった。

「美味しい」
「そうか?ありあわせのものだけどな」

食後にコーヒーを入れてくれ、ゆったりとリビングで過ごした。


「もうこんな時間」

食器洗いを手伝い、ソファに座ろうとしたら時計が目に入ってきた。
夕方の17時になろうとしている。

日向さんにぐいっと腕を取られ、慌てて座らされた。

「気にするな」
「わかってるけど」
「もったいない時間の過ごし方だったか?」
「そんなわけない」

「じゃあ問題ないだろ。
今回は二人で一緒にゆっくり過ごす。そう決めたじゃねえか」

肩に腕を回され、引き寄せられる。

「だから時間なんて気にするな」
「はい」

頷いて顔を上げると、優しい顔で笑ってくれた。


何も言わずに手を伸ばすと、抱きしめられた。
欲しいと強請ると、熱い唇が与えてくれた。

なんて、幸せなんだろう。
そう思った。








::::::::::::::::::::::::::::::::::
ただイチャイチャしてるだけの会話。。。。そしてまだ28日!!
前回の二人はシリアスで過酷な状況に追い込んでしまったので、今回は甘々でいきます♪

君のそばで B 

2012年01月14日(土) 11時54分
3 そんな日差しの中で



頬に暖かい温もりを感じて目を覚ますと、日向さんが自分を見つめていた。
優しく頬を撫でながら耳元で囁く。

「おはよう、若島津」

起きたての自分にはこの声はかなり堪える。
しかも耳朶を甘く噛まれてしまい、思わず声を出してしまった。

「ひゅ、日向さんっ」
「なんだ」
「お、おはよ・・あっ」

弱い首筋に唇が降りてきて軽く噛まれた。

「ちゃんと、挨拶っ、できてない・・・」
俺の言葉を聞いて首筋に唇を当てたまま日向さんは声を殺して笑い出した。

「日向さんっ」
「わかったって」
やっと唇を離して、顔を向けてくれた。

「おはよう、日向さん」

やっとの思いで挨拶すると、日向さんは優しく笑って、俺の手を握ってくれた。


「お前に、会いたかった。
昨日空港に迎えに行くのに早く会いたくてぶっ飛ばして、
そしたら一時間も前に着いちまった」

握った手に軽くキスをしながら告白する。

「お前の姿見つけた瞬間、走り寄って抱きしめたかった」
人がいなかったら絶対やってたと苦笑いする。

「・・俺も」
「ん?」

「次会えるのは1月だし、天皇杯は絶対決勝戦までいくつもりだった。
けど悔しいけど負けてしまって。予定もないし時間ができてしまうと
やっぱり考えてしまうのは日向さんのことで。
俺達の場合、会えるのは必ず代表のときだけど、そっちに集中しなきゃならないし。
プライベートで会えるのなんて中々ないから。
だから会えるときに会わないと後悔すると思ったんです。
一度でいいいから日向さんの住むイタリアへ行ってみたかったし。
それにね、会いたくて。どうしようもなく、会いたくて。
だから・・日向さん。俺、日向さんが」

途中で唇を塞がれ、その先の言葉は言えずに終わった。
日向さんの唇を舐め、口を開けて催促すると熱い舌が進入してきた。


日向さんのことが好きでたまらなくて。
苦しいくらいに、好きすぎて。
欲しくてたまらないんだ。


カーテンの隙間から太陽の光が入り込んでいる。
まだ昼にもなってないのにな。そんな自分に呆れたけれど。
でも欲しいのだからしょうがない。

そんな日差しの中で。
俺達の唇は深く重なっていった。







まだ日付は28日です。。

君のそばで A 

2011年12月30日(金) 14時40分
2 君の温もりを感じてそばにいる


暖かくて、気持ちがいい。

目を開けると目の前に日向さんがいた。
一瞬、夢なのかと思った。
はっとして動こうとしたが長い腕が巻きついていて、身動きが取れない。

昨日、俺は初めてイタリアへ来た。
空港から出て車に乗って自分はすぐに寝てしまい、気がついたら
日向さんのアパートに着いていた。
シャワーを浴びて、入れ替わりに浴室へ消えた日向さんをソファに
座って待っていたはず。そこからの記憶が飛んでいる。

あのまま寝てしまったのか。なんてバカなことを。
いくら疲れていたからとはいえ、ろくに話もしていないというのに。


日向さんは静かに眠っていた。
寝顔を見ているだけで胸が熱くなる。

好きで好きで、たまらない。

そっと頬に触れてみた。
暖かい。

会いたくてどうしようもなかった。


準々決勝で負けたのは悔しい。決勝まで行くつもりでいたのだから。
負けた後、家に帰り一人になった。
予定なんかない。
年明けのクラブ練習はまだ先で、代表合宿も中旬。
おもいがけずに時間ができてしまった。

そうなると頭に浮かんでくるのは日向さんのことだった。
今はウィンターブレイク中断期間。

『天皇杯に集中しろ。だから帰国はしない。
来月の代表合宿で会えるしな』日向さんはそう言った。

いつも飛んで来てくれるのは日向さんだった。
リーグの関係上、俺がイタリアへ行くことはできなかったから。

そういえば一度も行ったことがない。
ユーベの時も、今のレッジョも。

どんな街なんだろう。どんな部屋に住んでいるんだろう。

日向さんは俺の住む街や行きつけの店、なんでも知り尽くしている。
だけど俺は何も知らない。
行ってみたいな。

なによりも、日向さんに会いたい。
会いたくて、たまらない。

だから俺は電話をかけた。


背中に回っていた腕が動き、更に引き寄せられた。
顔を上げてみるが、寝息を立てて眠っていた。
起きたわけではないらしい。
密着した身体から日向さんの体温を感じる。

俺は目を閉じた。
こうして日向さんの温もりを感じながら、そばにいられることが
とても嬉しい。

「会いたかった」
声に出して言ってみた。

何故だか泣きそうになって。
どうしようもなくて、俺は日向さんの胸に顔を埋めた。






::::::::::::::::::::::
続きは年明けに更新します☆
今年はこれにて。皆様よいお年を!!

君のそばで 10のお題 @ 

2011年12月29日(木) 21時24分
1 いつも離れ離れの世界で


12月27日。
レンタカーを借りて、高速道路を走っていた。
目的地はボローニャ空港。
若島津を出迎えるためだ。
二度目のイタリア移籍をしてから初めて若島津が俺の住むレッジョエミリアへ来るのだ。

若島津のクラブは天皇杯予選を順調に勝ち進んでいたし、来月代表合宿があるから
ウィンターブレイクでリーグが中断になり時間ができたのだが帰国することは考え
ていなかった。
だが、一昨日行われた天皇杯準々決勝で若島津のクラブは負けてしまった。
その日の電話で若島津は言った。

『日向さんに会いたい』
だからイタリアへ行ってもいいかと。

駄目なわけがない。嬉しいに決まっている。
若島津と会うのは11月にアウェーで行われたW杯アジア最終予選の時以来だ。
アウェーだったため現地で合流、終わった途端すぐにとんぼ返りしたのであまり
話もできずに終わっていた。


俺と若島津は親友であり、恋人同士である。
想いを重ねたのは若島津の19歳の誕生日だった。

あれから8年。
8年間、順風だったわけではない。
3年半一度も会わなかった時期があった。
自分のせいで。

酷く傷つけ、辛い想いをさせた。
だけど若島津はその3年半、俺のことを信じて待っていてくれた。
自分の中でようやく決心がつき、若島津の元へ帰ったのが昨年の6月。

それ以降、代表以外のプライベートで会うことが出来たのは昨年の若島津の誕生日だけ。
急遽帰国し、滞在わずか2日という強行日程だった。


駐車場へ車を止め、到着ロビーへ向かった。
早すぎたようだ。まだ一時間はある。

嬉しさのあまり飛ばしすぎたか。
こっそり苦笑いして、俺はカフェで一休みすることにした。

若島津をこうして待つというのは初めてかもしれない。
ユーベにいたころも日程が合わず、若島津はこっちに来たことがなかった。
思い返してみると、二人でゆっくりと過ごした記憶がない。
今回はゆっくりと二人で過ごしたいと思う。

到着のアナウンスが流れ、カフェを出てロビーに向かった。
名古屋からフランクフルトで乗り換えてのフライトのため、たくさんの乗客が降りてきた。
ほとんどが地元イタリア人か、ドイツ人のようだ。

その中に、長い黒髪を見つけた。

疲れた顔であたりを見回している。
視界に俺を捕らえた瞬間、ぱっと笑顔になり軽く手を上げる。

綺麗だと思う。若島津の笑顔は。
この笑った顔が俺は大好きだった。


「若島津」
「日向さん」

抱きしめたい衝動に駆られる。
思わず伸ばしてしまった腕をぎこちなく押しとどめ、ごまかすようにスーツケースを掴んだ。

「久しぶりですね」
「ああ。お前疲れたろ」
「少し。でもイタリア初めてだからちょっと興奮しちゃって」

初めて降り立つ空港だからかめずらしそうにキョロキョロ見渡し始める。

「若島津」
「はい?」

腕を引いて小声で告げた。

「お前に会いたかった」

俺の言葉を聞いて幸せそうな顔で若島津は笑って答えてくれた。

「俺も、会いたくて飛んできちゃいました」



空港の中で軽めの食事をし、車に乗って家へ向かった。

「ここからどれくらい?」
「車だと1時間ぐらいだ。寝てていいぞ」
「大丈夫」
「無理すんな。まだ時差ボケしてるだろ」
「でも」
「今回は充分時間はあるんだ。そうだろ?」
「そうですね」

しばらくすると小さな寝息が聞こえてきた。
窓に寄りかかりながら若島津は眠ったらしい。


隣にいるというだけで、こんなにも嬉しく思う。
幸せを感じる。

そっと髪を撫でてみた。
寝ているはずなのに、小さく笑った。


愛しくて、たまらない。
好きで、たまらない。


俺達はいつも離れ離れの世界にいる。
だから今日からの7日間は。

一時も離したくない。
そう思った。





年が明けてから始めようかと思ったんですが、当日になにもできないのはやはりちょっと。。。なので先走りました(笑)誕生日当日なのに、話の日付は27日・・・・
と、とにかく若島津誕生日おめでとう〜!!!
このお話は長期連載した「ビコーズ〜」の二人のお話です。
続きの2は明日。その後は、年明けに更新します。
年またぎ若誕お題ではありますが、宜しければ最後までお付き合いくださいませ☆(書くの超久しぶり)
P R
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