ひょんな事の「ひょん」 

March 11 [Sun], 2007, 9:06
 果肉100%ジュースというものに、男ならだれしもあこがれるだろう。
 しかし、現実はそう甘くない。ジュースも甘くない。それは、カステラの存在がまだ、我々の心にいるからだ。おそらくそのせいで、多くの人々が焼かれ、大地は死に、なめこの大量発生が起きたのだろう。これには大天使ミカエルでさえも、わかめとひじきに手を出すのをためらった。足がしびれるのを恐れたからだ。
 命というのは実にもろい。心というのは実に弱い。人というのは実にみにくい。だからこそ我々は石灰岩とチャートの違いをはっきりさせ、オームの法則を覚え、オセロの白黒をつけなければならないのだ。

昼休みの出来事 

March 11 [Sun], 2007, 9:00
 友人のあてもなく、俺はたった一人教室の隅─といっても本当の角っこは桐菜の席だが─の机で弁当箱を広げた。
 弁当には相変わらず茶色い要素がたくさん詰まっていた。唯一の緑は、ようわからんがきゅうりがちょこんと乗せてある。余計な気づかいありがとう。だがいらん。だいたいきゅうりとハンバーグって一緒に食っておいしいと思える奴はこの世にいるのか、とか考えていると隣のいすがカタンとなったのが聞こえた。
 てっきり俺は童顔メガネかと思ってふいとそっち側をふりむいた・・・のが間違いだった。隣に座っていたのは桐菜ではなく、ケータイをこちらに構えている長髪女だった。
『カシャ』という機械音が耳に届き、一気に不愉快へまっさかさまだ。コノヤロウ。
「・・・・・何。」
「あ〜!コイツ喋ったよ〜!!富〜♪」
「キャ〜!マヂ!?やったじゃ〜ん!!」
 貞子(長髪なので)は富とかいう女子の名前を呼びながらどっかいった。なんだ一体。俺は天然記念物か?まるで犬が日本語喋ったみたいな騒ぎようじゃねぇか。悪いが俺は天然記念物になったつもりも犬になったつもりも全くないぞ。
 俺が箸を持ったまま呆然としていると目の前に少し気の弱そうな美少年タイプの男子生徒が立っているではないか。
「君、気づいてないと思うけどさ。きみ・・・カケルさんは結構女子に人気あるんだよ。こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、『顔が可愛い』ってね。」
 そうなのか・・・。女子もごくろうなこった。俺だってもう少したてばムサいおっさんへと風変わりしていくに違いないのに。
 ところでこのお方は誰や。そう思ってちらりと名札を見た。「高原 桐矢」・・・・・「高原 桐」?・・・待て。まてまてまて。何だこれは。偶然か?いや偶然じゃないな。よく見ると似ている。もしかしなくても桐菜のお兄様(もしくは弟)ってやつか?
「・・・双子?」
 どうやらその二文字で何がいいたいのか分かってくださったらしい。
「あ、やっと気づいた?うちの桐菜と話すなんて変わってるし、カケルさん。まあでも相手してやってくれてありがとね。」
 こいつは口調まで女くさい。桐菜と似ている分、見た目もかなり女子っぽいのだが。
「だから俺に話しかけたのか。」
「ま、そういうこと。あいつ基本的に態度悪いけどさ。ただの照れ屋なんだよ。俺でも笑ったところとか大きくなってからは見たことないんだよな〜。つかさ、人と喋ってるのもちょっと珍しいから。どんな人と喋ってんのかな〜。と思ってね。ところでさ〜、きみ自分の外見全然分かってないみたいだよね〜。鈍感なの?それともカマトト?」
 どうやらこいつは桐菜とは正反対のようだ。お坊さんに例えると桐菜は黙々と正座をし、こいつはお経を延々と読む具合だろう。
「俺は中学校では男子としかツルんでねぇんだよ。」
「なるほどね。」
 何がなるほどなんだ。俺を解析でもしてんのか?悪いが面白いことなんて何一つないぞ。俺はいたって普通の男子生徒だからな。
 しかし馴れなれしい奴だな。もしかして俺と会話がしたかったのか?という自惚れもいいところに、桐菜が両手で購買で買ってきたのだろうパンを山ほど抱えて持ってきた。
「・・・桐矢」
「姉ちゃんよく食うね〜。」
 どうやら桐菜の方が姉だったらしい。この会話からすると二人の仲は結構よさそうだ。
 桐菜はそれから何も言わずにスルリと窓際の席に座ると、カレーパンの袋に手をかけたと思ったら俺の弁当箱の中身に興味がわいたのだろう。じ〜っと見ている。俺は桐菜が何のオカズを見てるのか必死に目で追った。
「からあげか?」
 桐菜はこくんとうなずいた。
「んじゃ、姉ちゃん。俺も腹減ったから飯買ってくるよ。」
 会話の途中で横やりが入った気分だが、桐菜も俺も気にしなかった。
 桐菜弟はスタスタと教室を去って行った。
 俺は箸でカラアゲをつまんだ。
「食いたいのか?」
 桐菜はまたこくんとうなずいた。
 なんでだろう。その時急に俺はこんなことをしたら目の前にいる小柄な少女がどんな反応をするのか見たくなった。
「桐菜」
 俺が呼ぶと、桐菜は瞬きをした。俺は桐菜の顎くらいの高さまでからあげを運んだ。
「あ〜ん♪」
 精一杯のぶりっこをして、桐菜に笑顔を向けた。
 箸が揺れる感触がした。
 ・・・桐菜は、顔色一つ変えずに黙々とからあげを噛んでいる。それと同時に『パリッ』という袋をやぶる乾いた音がした。
 クラスの数人は俺達を凝視して驚いていた。・・・そんなん、俺だって同じだ。
 だが、びっくりしたというよりは・・・不覚にもドッキリしちまったじゃねぇか。

 急に俺は目の前のやつが可愛く思えて仕方がなくなっていた。だが俺はそんな単純な男じゃないはずだし、こんな無愛想がタイプなわけないんだ!!自分にそう言い聞かせて、今日一日、平静を装っていたのは言うまでもないかもしれない。

高一、初日。 

February 24 [Sat], 2007, 19:26
 俺と桐菜との出会い。それはごく普通といえばごく普通な出会いだった。
 高一の春、隣の席だったのが桐菜だった。「この子ちょっと華奢なカラダしてんなぁ・・・。」という第一印象であったが、その分まあまあ可愛らしい外見な女の子だった。
 
 休み時間、俺はかなり寂しかった。周りはどうやら顔見知りばかりのようで、楽しそうに会話をしている。だが、俺には誰ひとり知っている人はいなかった。
 しかし一番後ろの窓際の席でよかった、と関係ないことを考えて気分を紛らわした。溜息が出そうになりなんとなく空が見たくなり窓に向いた。
 するとこの子も顔見知りがいないのか、ひとりで黙々と本を読んでいた。ショートカットで、スポーツをしてそうなメガネをかけたかわいい(童顔と言ってもいいだろう)少女だ。
 暇だった(というか話相手がいなくて孤独だった)から、満面の笑みで俺はその子に話しかけた。
「なんの本読んでるの?」
「・・・言ったってわからないと思うけど。」
 女の子はこちらに見向きもせず、ぼそりとそう答えた。笑顔をつくってみた自分が空しかった。
「知り合いはいないの?」
「いる。」
「じゃあなんで話したりしないの?」
「別に。友達がいないから。」
 細いが、高い声なので聞き取ることができる。それくらいの大きさで女の子はつぶやく。
「変なこと聞いたね。・・・あのさ、名前は?」
「・・・高原、桐菜。」
 そこまで言うと、『高原桐菜』は本から目を離して、やっとこちらを向いた。
「あなたは?」
 『高原桐菜』は大きな目をしていた。てか、こいつ本当は中学生じゃねぇのか?子供みたいだ。
「・・・名前。」
 名前を催促されているのにようやく気づき、俺は今度こそニッと笑った。
「何で?気になんの?」
「・・・・別に。何かあったとき私だけあなたの名前を知らないのは不利だから。」
「へ〜・・・。そんな場面そうそうないと思うんだけど。ま、気にしないでおいてやるよ。」
 『高原桐菜』の眉間にしわがよった。
「・・・名前。」
「あ、俺?友広カケル。」
「・・・なんて呼んだらいいの。」
「カケル。」
「・・・そう。」
 会話が途切れた。
「まてまて。俺はなんて呼んだらいいんだ?」
 本に意識を戻そうとしていたので制した。
「何でもいい。」
「ヤダ。なんか言ってくれ。」
「・・・桐菜。」
「いいの?」
「・・・別に私は名前の総称に執着はない。それにあなたも名前で呼べというんだから私もそうしなくては不平等だから。」
 今度こそ桐菜は書物に没頭し始めた。
 俺はその様子をずーっと、見ていた。

 

シズの話は終わってないけど・・・(汗) 

January 28 [Sun], 2007, 10:21
 俺はたまにちょっとびびる。
 闇の魔法を使おうとしたときに、誰んだか知らないけど荒れたように憎い、凶悪な雑念が頭に入り込む。自分でもぞっとする。
 だけど最近は幸運なことに光の魔法しか使ってなかったり。

 ────こうやって安心しているときに限って、どうして厄介ごとが舞い込んでくるのだろうか。
 なぜか今回一緒に行動することになったのがドリーと会長。ここにくそでぶが入るならまだ普通の組み合わせなのかもしれないが、なんだかこの三人組は違和感を感じかねない。・・・まあ、どうでもいいがな。
 ではようやくのことだが、本題に入ることにしよう。
 おおよそ分かっているかもしれないが、あんな前フリをしといた上に、この依頼を「厄介ごと」とまで言っているのだから俺が「闇の魔法」を使うのがほぼ確定している仕事。
 内容は、『めったに暴れることのない光の魔物が突然暴れ出して死者まで出してしまった。これはもう、排除の対象として見るしかない。だが、光の魔物は他の属性と違って高度な呪文を使ってくる。そのおかげで生半可な実力のやつにこの依頼を頼むわけにはいかないのだ。だから、お前らが行くのだ!!いいな!?」と学園長に押し付けられたものだ。
 面子はやはり少し変だが、光の魔物相手だということならば・・・まあ、納得しざるを得ない。魔法中心で防御力の低い光相手だと、ドリーは物理攻撃だから専ら相性がいい。だがドリーはその分魔法に弱いので回復専門で会長。
 ・・・・・そして、俺。光に相性がいいのは、闇。
 あー・・・。やる気しねぇっ!!が。学園長に逆らうほど俺は愚かではないので、依頼を頼まれた場所へ三人でさっさと向かう。

「わ〜!何コレ。めちゃめちゃ綺麗なんスけど。」
 会長が感心している。
 目の前には、湖があり、その近くにオーロラのようなものが輝いている。
「これ、アレでしょ。魔力があつまってできる結晶が光ってみえるんでしょ。」
 いつ習ったか忘れたが、ドリーが魔法科学について語り始めようとしたが、会長がそれを制した。
「戦闘準備開始。見えてきた。」
 虹の色合いでキラキラ舞うカーテンのようなものの間から、だんだんと透明なものが実体化してきている。
 天使のような身なりだ。・・・てか、天使?


 ・・・だが、そいつらの形相はもう天使と呼べないくらい、気持ち悪い。
 打撲痕が見えてきそうなほど悲惨な状態で、目玉が半分飛び出ている。皮膚は全身アザのような紫に近い。目の色は血で染まったように真っ赤だった。げっそりとやせ細っていて、どす黒いなにかが、あいつらからあふれ出しそうなくらい酷い。

「魔力の結晶体よ。ドリーを滅ぼす魔の波動からお守り下さい・・・・」
 会長はドリーの魔法対策のため、マホカンタの呪文を唱え始める。
 ドリーはもちろん陸上でしか戦えないので、湖からできるだけ離れるように後ずさりする。
 俺はさっそく敵の実力がどれくらいか確かめるためにザラキを唱えた。
「殺意の消滅を!!」
 ザラキは、敵が自分より低いレベルならその分成功率が高くなる。一瞬で魔物を消滅させる魔法。
 天使は、一匹たりとも消えなかった。
 その殺気を感じてか天使が飛んで近づいてくる。
「マホカンタ!!」
 会長は詠唱時間を限りなく短くし、ドリーに魔法のバリアを張った。
 そのバリアの向こうで、ドリーは剣をかまえている。
 ドリーは湖から遠ざかり、会長は元々遠い場所で待機していたため、俺は今、天使に一番近い場所にいた。天使は会長とドリーには目もくれなかった。
 一斉に奴らが俺を睨んだ。すると、悲鳴に近い金切り声で呪文を全員が唱え始めた。
「キィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 あたりがびりびり金切り声で響く。心臓が急に冷えだしたかのように、ぞくぞくする殺気に襲われる。
 マホカンタはこれだけ離れてしまっては射程範囲外だ。
 会長が俺に駆け寄ってこようとしたが、俺は止めた。
「マホカンタは間に合わねぇ!!無駄な被害作らないためにもこっちに来んな!!」
 会長が止まった。何かなす術がないものかと考えてる表情。
 俺だとしても一人であれだけの魔法をくらったら、・・・まずい。

 俺は覚悟を決めた。
「闇夜よ、命の根源を絶つ。無への空間よ、すべてを覆いつくせ!!」
 俺は体中の全魔力をこの呪文に集中した。
 前に突き出した手の数センチ先に真の闇が作られ始める。
 天使の詠唱した呪文は、やはり光のようだ。間に合えば、粉砕できる。
───その時、何かが俺を支配した。
あの、感情が─────・・・・・・・。
「光の抹消、希望の抹消、死への喜びを!!!」
 俺に逆らう全てのもの
死ね死ね死ね死ね死ね 真っ赤な液体を流せ
苦しめ 
 殺される
痛みを 突き刺せ 引き裂け
折れ殴れ憔悴しろ
全てのものに死への追及を
──────────全てを殺せ!!!






















早い帰宅 

January 17 [Wed], 2007, 17:30
「うえひげっほげほっ!!」
「あちゃ〜。たいへんだったね、勇人。」
 リザードンが傍らで勇人を羽でバタバタと仰いでいた。
「サイクイングロードのぼってきたのはさすがにキツかったね。」
 勇人は答える気力もなく、自分ちで寝っ転がっていた。
 馬鹿なことにサイクリングロードを逆襲してきたのだ。
 その途中。でろでろになった勇人を見るに見かねたリザードンが3分の一くらいまで来たところで、勇人の乗ったマッハ自転車を後ろから押してくれたのだ。
 すでに主人の威厳のない勇人に、リザードンはもう何も言うまいと無言で羽を振り続けた。

 ラプラスはマミーが作った、やたらしょっぱいから揚げをつまんでいた。その横からイーブイが本当に横槍をいれている。どこから持ってきたのだろうか・・・。バタフリーは自分がかっこよく見える角度を探しているし、ミニリュウはやっぱり意味も無くとぐろをまいている。
 勇人は自分の家なので、ポケモンを出しっぱなしにしていた。
「・・・・あ、あれ?リザードン、ゲンガーは?」
「あ、お母さんに頼まれて夕食の材料買いにいきました。」
 バカだな〜。あいつに買い物頼んだら絶対にボトルガム三つくらい買ってくるに決まっている。が。僕の金ではないので、ガムを当分買わなくてもいいということを考えると好都合だ。
そして、僕はまたすやすやと眠りの中に落ちていった。


「勇人!勇人!起きろよ!」
 やたらミントの匂いがする。どうやらブラックガムがなかったのだろう。買ってきたボトルガムをさっそくくっちゃくっちゃと音を立てながら、ゲンガーであろう奴がけってくる。
「いや、起きてるから。」
 久しぶりに自転車で運動らしきことをしたおかげか、なんとなくスッキリしていた。
「じゃあ早く起きろよ!!スピーディングに!!わかる?スピーディングに!!」
「はいはい・・・。」
「エリカが帰ってきたぞ!!」
「・・・は?」
「うじむしー!!!お前ねぼけてんじゃねぇのかー!?ジムリーダー!!じ・む・り・い・だ・あ!!」
 それを耳にしたみんなは動作を止めた。
「ああ〜!!エリカさんか!!四天王に挑戦しに行くって言って出て行ったエリカさんか!!」
 そこまで話すと、イーブイが僕に向かって槍を投げてきた。
「あの勇人さんセリフが説明的すぎるんですよ」
 舌足らずな喋り方でつっこんで来た。おそらく長州小力のものまねだろうが、さっそくイーブイをモンスターボールに詰め込む。なんか「あいたたた・・・」とか聞こえるがこの際どうでもいい。
「みんな!!さっそく行くよー!!」

「・・・と言ったのはいいものの。」
 勇人の目の前には「なんだかこの木はポケモンのわざできれそうだ」的な感じな木が立っている。だが案の定勇人は「いあいぎり」のひでんマシンは持っていなかった。
「私の技はいかがでしょう勇人さん。」
 今回も結局のこと隣にいるのはイーブイであった。しかし、謹慎処分になっているイーブイに技を使わせる気などさらさらなかった。
「・・・相変わらずだね。」
 フェロモン75%の声が聞こえた。
「か、会長様・・・・!!!」
 勇人がそれなりに驚くと、会長さんはピカチュウをくりだしてきた。「くっ・・・!!バトルか!?」と思ったが、どうやら違うようだ。
「ピカチュウ!!『いあいぎり』!!」
 いあいぎりをピカチュウが覚えるのか?という疑問はおいといて、とりあえず目の前にあった木は倒れた。
「あ・・・・、ありがとうございます!!会長様!!」
「いいってことよ。じゃあね。子猫ちゃん。・・・でてきて!!フリーザー!!」
 会長さんはそういってフリーザーに乗った。鳥肌をたてながら、どこかへ飛んでいった・・・。

シズの癒えない傷 3〜天の力の持ち主〜 

January 04 [Thu], 2007, 0:00
『呪い事典』
『呪術からの解放』
『魔法の解き方』
『回復魔法』
『呪いの恐怖』
『呪縛からの追放』
 私は今日、6時間でこれだけの本を読破した。言うまでもないが、シズが言っていた「サイドワインダーの呪い」について調べるため。
 シズは気が動転していてよく分からなかった部分もあるが、呪いについてはシズの発言がだいたいのヒントになる。
 女の子とサイドワインダーはくっついていて、女の子は人間の姿をしていること。サイドワインダーが人間的な感情を持っているということ。あとは単なる偶然かもしれないけれど、女の子が回復呪文を唱えられる、サイドワインダーが女の子の母親だということ。
 しかし、この事項に当てはまる呪いはどの本にものってないし、先生に聞いてもわからなかった。
 だが、その代わり、今まで起きた「サイドワインダー」の関連する似たような事件についての情報を知ることが出来た。運良く、その事件が起きているのはその鉱石場だけでのことだった。
 そして、私はありえない事実を知った。

 サイドワインダーの事件は10年前から起きていて、女の子は10年前も「女の子」だったそうだ。
 あからさまに不自然ではないだろうか。十年たった今も少女は幼いままなのだ。しかも、食料に人を食べるとシズが推測していたことはまったく違っていた。
 殺した人間を食べると言っていたが食べられた人の跡もないことはおろか、サイドワインダーにあっている人間は傷は負っていても全員生還している。
 ・・・食料がなくても生きていける魔法、ずっと若くいられる魔法があるのかもしれない、と勘ぐってみたりはした。だけど、そのような魔法が存在していたら人は殺されない限りずっと生きていられるハズなのだ。
 
 私は今、疑っていることがある。
 それは、これが本当に「呪い」なのか、ということ。
 何故シズはこれが呪いだと分かったのだろうか。女の子が「お母さんをいじめないで」と泣いたり、「死なないで、お母さん」と叫んだり、そうしたことから「女の子は実際に母親が呪いをかけられているところを見たのかもしれない」と考えるのはわかる。


そのうちまた更新するかもしれません

しゃぼんだまのように 

December 20 [Wed], 2006, 16:38
 背中から、やわらかい反動を感じた。俺の腕の間から、桐菜の白い両腕が伸びてきた。俺の下腹部の辺りがぎゅっと掴まれる。抱きしめられた途端、性欲と悲しみが一気に襲い掛かってきた。
 桐菜の胸の感触で、俺は後ろを向くことが出来なかった。
 ・・・・・小さな泣き声が聞こえる。
「お願い・・・。キスして。」
 消えそうな声。
 俺は、動けなかった。
 桐菜の気配に注意して、じっとしてみる。後ろから、ふっと桐菜が浮いた気がした。────と思ったら、首筋がふにゅっとした。熱いものが当たっている。・・・唇だ。
 それと同時に、桐菜の髪の匂いが鼻腔をくすぐる。女の匂いがする。
 もう俺は完璧に動けなくなった。男独特の感情にかられた。

 桐菜のくちと腕が離れたと思ったら、桐菜がダッと走っていく音が聞こえた。

 抱きしめてやれなかった俺に、涙がでそうになった。



しゃぼんだまのように



「カケル。お前に話さなくちゃいけないことがある。」
 普段なら聞こえないフリしてテレビ見てるところだが、どうやら深刻な雰囲気が漂っている。これは俺の勘からして真面目に聞かなくてはならないことだ。
 オヤジの隣には正座して、母も座敷のうえにちょこんと座っている。めったにないこんなシチュエーション。一体、何があったのか。
 オヤジがテーブルの上にあったビールを、気まずそうに手に取った。
「何?早くテレビ見たいんだけど。」
 俺が冷たくいうと、オヤジはため息をついて、口を開いた。

「来週の日曜、引っ越すことになった。」

「・・・・は?ちょっとまてよ。どういうことなんだよ。」
 その時、よく分からないが、ものすごいそわそわした感じがしてじれったかった。
 オヤジは、何も言わない。俺は頭にきたので容赦なく聞いた。
「人事移動・・・てか、左遷か?」
「カケル!!」
 母さんが怒鳴る。家中に響き渡った気がした。・・・・・うっさい。
 俺は頭の中が泥沼のように残虐で、汚い思いでいっぱいになっていった。
 イライラが募り、俺は立ち上がった。すげぇムカついたから部屋から出て行くときに、ドアを思いっきり閉めてやった。予想以上に大きな音が出て、逆に頭にきた。
 その向こう側で「ちゃんと整理しときなさいよ!!」と母さんが叫んだのがわかった。

 むかつくが、わかっている。子供が大人に逆らうことは許されない。反抗したところで、どうせ親の力なしには生きられないんだ。
 どうしようもないいらだち。だまって言うことを聞けばいいのかもしれないが、俺の頭には引っかかることがあった。
 それは、初めて俺が「好きだ」と実感できた桐菜のことだ。あの、優しくて可愛い桐菜と離れ離れになる・・・・・。
 「『初恋は実らない』。」友達がそういって俺を冷やかしたのを思い出した。遠距離恋愛なんて、俺には無理だ。
 俺は、桐菜をあきらめてしまっているのだろうか・・・。

 部屋のドアがガチャリと開いた。・・・・母さんだ。
「カケル〜。あんた明日あさって引越し先の下見に行くから、一応中のいい友達に挨拶しときなさいよ。」
「ふざけ・・・」
『るな』、反抗しようとして母さんに振り向いたが、久しぶりに母さんの顔をまじまじと見たせいかすごく驚いた。
 ・・・・今まで見たことないくらいにげっそりしている。
 そうか。母さんが一番父さんのそばにいるから、辛いんだよな・・・。
 俺の中に、同情の念が現れ始めた。

 だけど、それを納得しちゃったら、桐菜は?

 家族と彼女を天秤にかけることなんてできない。いや、かけたくなんかない。
 でも、今一刻も早く家族か彼女かどっちをとるか決めなければならない。

 その時、ふわりと桐菜の笑顔が浮かんだ。
 急に物悲しくなってきて、けれどこの悲しみは桐菜に癒してもらうことができない。

 ずっと、そばに居たかった・・・・。
 しかし、俺には家族を捨てるなんて到底できそうにもないから。

 桐菜に別れを告げる事を決意した




シズの癒えない傷 2 

December 09 [Sat], 2006, 11:10
「『賢者の石』は、結晶が大きく壁にへばりついたようなもので、魔力の反射を起こすもの。魔力を回復させるものと同時に、モンスターたちの体力の回復の光を発するもの。だけど体力の回復量は少ないのに対して魔力の回復は多い。魔法反射は長老の魔法を反芻させられると考えたらむしろ好都合なんだ。」
「じゃあ、別にそんな慎重にならなくても・・・。」
 くそでぶが頭をかしげる。
「そう。賢者の石にはね。・・・問題は『サイドワインダー』の方にあるんだ。」
 みんなが何も聞いてこないので俺は話を進めた。
「サイドワインダーの後ろにある結晶から、背中に埋め込まれた泣き叫んでいる女の子が見えたんだ。でも、声はまったく聞こえないんだ。・・・ここからは俺の推測にすぎないんだけど、なんらかの呪いとかで、サイドワインダーとその少女は一体化してしまったんだと思う。ドリーが言ってた『女の子が見えた』って話からするとサイドワインダーが殺した人間を喰って、その栄養分を少女に送っているからその子は生きているんだ・・・。それで、やっかいなのは、サイドワインダーが弱った時に結晶を覗くと、女の子周りに輝く粒状のものが見えた。・・・回復呪文を唱えてるんだ。女の子が。」

 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。俺以外、誰も喋りはしない。
「その子は結晶に近いせいか呪文を無限に使えるのかもしれない。俺は限が無いと思って、一気に勝負を仕掛けようと思って、危険だけどサイドワインダーの横を通り抜こうとした。その時だった。」
 俺の声が、ガクガクと震えてきた。心臓が、気持ち悪いと思った瞬間。一緒に涙まであふれてきた。
「女の子の声が聞こえたんだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「シズ・・・。」
 誰かが、俺を呼んだけど、それを判別することができない。
 感情を捨てきれない俺。こんなことで泣いてしまう俺が恥ずかしくて。もう、周りのことはよく分からなくなってしまってた。
「『死にたくないよぉっ・・・。お母さん・・・!助けてよぉっ!!!いやだよ!!いやだよ!死なないでよぉ!』・・・・って・・・・。サイドワインダーの顔を見たら・・・・な、・・・涙がボロボロでていて・・・。・・・・・・母さんだったんだ・・・・。サイドワインダーは。たぶん・・・。・・・・生きてるんだよ。サイドワインダーは・・・子供を、守るために・・・。ずっと、ずっと、涙を流して・・・・。つらくて、くるしくて・・・・・。だけど、サイドワインダーが、幸せになる方法なんて・・・・。呪いを解く術も、無くて・・・・。俺・・・・は撃つことが、できなかったんだ・・・。撃ったら、俺は、・・・に、人間じゃ、なくなる気がしたんだ・・・・。・・・・・・・戦場に温かさなんて、優しさなんて・・・、いらないんだ・・・。・・・・・・・・その後、背中を、さされた。・・・・・・・・痛くて、痛くて、苦しくて、・・・・・・俺は死ぬんだ・・・って思った。いっそ死んだほうがいいんじゃないかって・・・。でも、・・・あのサイドワインダーが、・・・・泣いてた俺に回復呪文を唱えてくれたんだ・・・。そして・・・、『もう、お母さんを、・・・・いじめないで・・・・。』って女の子が言ったんだ・・・。俺が撃たなかったから・・・。そうして、くれたのかも、しれない・・・。けど・・・。けど・・・!!」
 誰かが、俺を、抱きしめた。
 もう、わかんなかったけど、俺は思いっきり、泣いた。


シズの癒えない傷 

November 23 [Thu], 2006, 20:59
 今日の空は曇り空───と言っても、真っ白な雲の隙間からうかがえる、澄んだ水色の明るさは曇りという感じを全く出していない。むしろ白い部分が多いせいで、幻想的な世界にいるような気がしてくる。
 しかし、それと同時に、心の余白がズキズキと痛み出す。それは、俺の背中にある大きな刃物傷のせいかもしれない。
 今みたいに、空のことや、日々のほんのしたことに感動して頭の中がからっぽになりかけた時。必ずと言っていいほどあの時のことを思い出す。
 
 ハンターは人を助けられるという代償に、敵を殺さなければならない時がある。
 その事に恐怖を感じ、躊躇してしまったとき、背中に大きな跡をつけてしまった。その時ほど「ハンターになるためには余計な感情はいらない。」と思ったことはない。
 だがそう思う反面、俺から人間性が損失されていくとも思うと、背筋がこわばって・・・。傷に、こないはずの痛みを感じることもある。
 あの日のことを思い出すたびに・・・・・


「シズ。話聞いてた?」
 会長の疑問の声にはっとする。俺はぼーっとしていた。
「どうしたシズ。空なんて見上げて・・・好きなやつができたか?」
 横にいたくそでぶがぼけっとしてた俺を不信に思ったらしく、オヤジ臭いことを言いつつも口元は笑っていない。
「いや・・・。あ、そこを通りかかった猫が可愛いな、と。」
 それを聞くなりライが、「猫はいなかったぞ。俺の目は〜、猫を見逃さないからな〜。」と少し自慢げに言う。
「それより私の話、最後まで聞いてくれますか、かなり厳しく理事長に言われたことだから。」
「うん。ごめん。で、続きは?」
「まず、勇人は昨日から5日間の謹慎処分。・・・というか、入院。もう回復魔法じゃきりないくらいに衰弱しちゃってね。いわゆる瀕死状態。でも心配ないって。ここまではいいね?」
「ああ。それは聞いてた。」
 俺がうなずくと、会長は視線を手に持っていたびんせんに移す。
「それで、次の依頼だけど、遠くの武器屋知ってる?フロータウンていうでかいところ。そこで新しい武器を作るために必要な鉱石があるんだって。それをとりに行く・・・ってこと。」
「はあ・・・、鉱石、ですか。」
 嫌な念が、俺の中に生じてきた。あの時と依頼状況が似て過ぎる。
 そこでドリーがはっとしたように口を開いた。
「なあ!それって『賢者の石』ってやつを取って来いって依頼!?」
 会長はいきなり大声を出されて少しおどろいたように「なんでしってるの?」と聞き返す。
「そこなぁ、この前ニュースで見たんだけど、鉱石を採りに行った3人の商売人が引っかき傷を負って重体になったって聞いたぞ。しかもなんか知らんが女の子がいたとかいないとかどーたらこーたら・・・。」
 ダメだ。完璧に、あの依頼だ。

 長老も興味あったのかその話に関しては身を乗り出してきた。
「漏れもニュースペィパーを呼んだのだがな、引っかき傷ってのはどうやら『サイドワインダー』という通称の蛇みたいなやつらすぃ。」
「ふーん・・・。てことは強いのか?」
「そういうことになるな。まあ、ライには不利でも有利でもない属性の相手だがな。ヒントだ。・・・『蛇のようなやつ』+『ライに関係ない属性』、ということは・・・。」
「闇。」
「シズ。・・・・その通りだ!!」
「結構役に立ちそうな情報じゃん。あとで作戦考えるとして、この依頼の期限は5日以内。あせらなくてもいいみたいだけど、賢者の石は数が限られてるっていうから・・・。早めに行くか。」
 会長が頭を抱えて言った。
「この依頼、絶対にやらなきゃいけないとかってことは・・・?」
 俺は、知っていた。『賢者の石』の在処を。その守り神と言われる『サイドワインダー』の秘密を。
「あ・・・、いや、やっぱり、なんでもない。」
 言ったら震えて、あの時ことを考えてしまわなければいけない。
 そんな勇気、今俺にはなかった。
 みんな不思議そうな顔をしていたけどこれ以上この憂鬱を探られるのはゴメンだ。だから俺は何か言われる前にさっさとその場から逃げることにした。

 今日はそれぞれ戦闘の準備をするということになった。
 
 胸が突き破られるように痛い。
 少しでも関連する事項がでてきただけでも、じわじわと俺の心に広がる恐怖の余念・・・。いや、もしかしたら勝手に俺が心のなかでぶり返しているだけなのかもしれない。
 だけど、自分の心の奥深くを覗き込むと、その思いが深ければ深いほどその分傷つく気がして・・・。俺自身のことだというのに自分をふりかえるのが怖くなってくる。
 ・・・・・だが、このまま戦闘に行って、みんなが俺と同じ思いをしてしまったとしたら―――?
 そんなこと、絶対にさせたくない。

 俺は、みんなにあの時のことについて話すことにした。


「ねえ。賢者の石の話を聞く前に、一つ聞きたいことがあるんだけどさ。」
 会長が無表情で聞いてくる。
「なんで俺が知ってるかって?」
「うん。」
「・・・俺さぁ、ここに入る前から親戚のコネ使って依頼受けてたんだ。」
 みんなの顔を眺めた。
 みんなは、俺が思っていたような顔をしていなかった。・・・特に、驚いていないように伺える表情。
「驚かないの?」
「あ、俺なんか勘付いてたんだ。1年だってのにやたら銃の扱いうまいしさ。あの時、ほら、この前の依頼でさ。ハムが急に走り出したときあっただろ。あの時のシズの反応が異様にはやかったし・・・。」
 ライは記憶力がいいのかもしれないが、もしかしたら自分も咄嗟に反応出来なかったことに悔しさを感じて忘れられないのかもしれない。意外と、周りのことを観察してるんだな、と感心した。
「うん。俺も結構気づいてた。でもたまにつらそうな顔してるから、なんかその事に関係あるのかと思って俺も聞かなかった。」
 ドリーがそうつけくわえた。この様子じゃ、みんなわかってたんだな。
「じゃあ、賢者の石とサイドワインダーについて話すよ。」

くそでぶの中の闇(くそでぶカッコ悪いかもしれません ゴメン) 

November 22 [Wed], 2006, 18:51
途中からグロテスクな表現が含まれています。苦手な人は見ないでください。



俺を含むチーム8人(7人と1匹)は寮にいついている学生だ。
男子寮・女子寮にわかれていて、俺はドリーと同室だ。
いつも俺達が集まるところは、さすがに女子寮に入るわけにはいかないので
寮の前の広場にあつまる。

だが、今日は会長がモンスター退治の依頼の報告をしにいく日だ。
報告が終わってからじゃないと次の依頼は入ってこないので、俺は今日一日を基本練習の時間にすることにした。

この前の戦闘で俺は自分の使う武器について考え直した。
ランスは中間の間合いの武器。
クロスボウや爆弾は遠距離の武器。
接近戦が弱点、ということに気づいた。
自分でいうのも何だが、俺は体力も防御力も攻撃力も結構備わっている方だ。
本来なら前線でもイケる。
今までは接近戦は少しキツイと思っていたが、前のあの戦いのような場面を考えると中間武具は危ない。なぜなら、保護を必要とする仲間がいる場合、接近戦は余儀なくされるからだ。
それに「新しいものに挑戦してみるか。」、とも思いなおしたから・・・という理由もある。
・・・この理由のほうが大きいのかもしれない。
俺はスフィア村に武器を購入しに足を運んだ。





俺は新しく買った爪を装着してみる。
左右共に爪はギラギラと怪しく光っている。
スフィア村の端までつくと、あの時の荒地が目についた。
俺は荒地を見つめた。

その時、俺は目を疑った。
荒地にまだゾンビがいる・・・!?
しかも小さい小学生くらいの子供が2,3人ゾンビ相手に木の棒で立ち向かおうとしている。
・・・やばい。

俺は今までないくらいの全速力で走った。
あの時、1匹仕留め損ねたのだろうか、もしかしてどこかに隠れていたのだろうか
と思考をめぐらせて。

すると、入り口で腰を抜かしている大人がいた。
「た、助けてください!!う、うちの子供が!!!」
「わかりました!!」
さっきからその状況を目にしているので、短く了解し、今まさにゾンビと戦おうとしている子供たちのもとへ走る。

「く、くるな!ゾンビ!!俺がギタギタにしちまうぞ!!」
木の棒を持っている1人の子供が叫ぶ。
やめろ。無理だ。防御の仕方も知らないお前らが戦ったところで30秒しないうちに殺される。
「お前ら早く逃げろーっ!!」
俺はガキどもにのどが引き裂けそうなくらいの大声で叫んだ。が、子供たちは俺の方を振り向いて半べそかいただけで、少しも動こうとはしなかった。
・・・畜生が!!
ゾンビが子供たちに腕を振り下ろした。

あと少しだが爪じゃ届かない・・・・・!!
どうしてこんな時に限ってランスを持ってねぇんだ・・・!!

・・・・仕方ない!!

俺は子供たちを横に突き飛ばした。
『ガシュッ!!』
「・・・・ぐ・・・あぁッ!!」
わき腹にゾンビの腕が直に当たる。
俺の着ていた洋服も、俺の皮膚もじわじわと緑色になっていく。
死にそうなくらいの激痛がはしる。
しかも、このゾンビ。
近くでみるとこの前のボス級のやつよりかなりでかい。

だが、俺は倒れるわけにはいかない。
子供の二人はすでにココからいなくなっていたが、木の棒を持った子供が震えていて動けない様子だからだ。



俺は覚悟を決める。
泣いている子供の前に立ちふさがり、爪を構えた。
ゾンビはその毒々しい腕で殴りかかってくる。

俺はしゃがんでゾンビの腹を見る。
そして躊躇せずに右の爪で広いその腹を突き刺した。
『グジュッ』
ゾンビの体から緑色の体液が流れ出る。
ゾンビは苦しそうにのけぞった。
・・・今だ。
俺は刺さっている右手の爪をグリッと回した。
ゾンビの体内をえぐる感触が伝わってくる。
ーーー吐きそうになった。
だが俺の後ろには守らなければならない子供がいる。

その思いだけで、俺は左手の爪でゾンビの顔を裂き、その隙に右手の爪を引き抜く。
『グチャグチャッ』
爪にはゾンビの肉だろうと思われる、黒い物体がこびりついている。
気持ち悪い。

左手の爪も引き抜く。
・・・もう、ゾンビが抵抗しないことがわかっていたからだ。
『ズシャッ』
ゾンビはもう、遺体としか思えないような音を立てて崩れた。
その周りには緑色の血がどくどくと流れ出ている。

俺はその場に立ち尽くした。
目の前にある死体が、爪に残る黒い塊と、したたる緑の血が、

あの、近くでえぐる感触が。

俺を動けなくしていた。
思い出した途端、胃から何かが急激にのぼってくる。
俺は必死にそれを抑えようとした。
涙も、でそうになった。

俺は、何もかも必死で抑えようとした。

接近戦のきびしさと、戦闘のきびしさ。
実際のこの経験で、俺はひしひしと感じた。

でも、俺はだんだんと怖くなってきた。
自分のことも、・・・みんなの事も・・・。