風能奈々展 

June 22 [Mon], 2009, 0:23
小山登美夫ギャラリー京都にて開催中の風能奈々展「誰がその物語を知る」に行ってきました。冬に開催されたオープンアトリエ「4つのアトリエ」でも見せてくれた、大量の小作品達もエディションズで展示されています。(「草上の想像」)

まず、率直な感想として、風能さんの作品はこの展覧会でよりその魅力の深みを増したと感じました。そしてなにより展示がとても良かった。二階の小山登美夫ギャラリーへ上ると『Who knows the Stories 』という展覧会タイトルの種あかし?の英題と共に、VOCAにも出品していた「花の瘡蓋」が出迎えてくれます。ぬるりとした絵の具の空間にちりばめられたバキリとした無数のイメージがとても気持ちよい。その存在感で見る人を世界に引き込んでおきながら、それ以上奥には進ませまいと人魚や植物たちが物語の深部を覆い隠しているような印象を受ける大作で、彼女の傑作の一つだと思います。VOCAでは気づかなかった、青い、マスキングの塗り残しと思われる部分がとても生きていて、より作品を魅力的にしているなと感じました。
大作に続く円形作品3点が、その特異なセンスの世界観をよりいっそう感じさせてくれるのですが、そこで次に来る作品が全然違う!黒い下地に細かい描写でびっしりとイメージが描かれたその作品は"突然新しい話が始まった!"というか、物語の中に新しい本筋が立ち現れたという感じで、その作品が登場したことで展覧会は、"とても面白い小説を読んでいる途中だけど、さらに面白そうで読みたい小説を借りてしまった"というような、とても贅沢で悩ましい展覧会になったなと思いました。きっとこの展覧会を見た人は『Who knows the Stories 』の続きを読みたくなってしまうこと受け合いです。
人を引き込む魅力を持ちながら、その世界は「彼女の世界」であり、見る側それぞれが「一人一人の世界」にいることをしっかりと意識させてくれる、そんな素敵な展示をエディションズと合わせて是非ご覧ください。絵を描く自分としては良い作品を作るために「もっと自分の中に潜らなければ」という課題を教えてもらったような気がしました。(2009/06/21)

風能奈々展「誰がその物語を知る」「草上の想像」
2009年6月19日〜7月25日
小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都

VOCA2009 

April 07 [Tue], 2009, 1:28

2009.3.15~3.30に開催された上野の森美術館で行われたVOCA2009。VOCA展は1994年から推薦委員が選んだ若手作家に出品を依頼するという形で毎年この時期に行われている展覧会。時代の平面表現を垣間みる事のできる貴重な展覧会と言えます。私は最終日に観覧しましたが、やはり今年も興味深い内容となっておりました。
個人的な意見になりますが気になった作家さんを挙げていきます。
田尾創樹さんは以前から正体不明の作家として気になっていましたが、今回実際に拝見して感じたのは作家の個人的文脈が希薄であるという事。それは、コピー&ペーストのような感覚で図像がアイコン化されそれぞれが本来の意図を消失している点で言えると思います。ただし、面白い点はそこではなく、その図像がウォーホールのような誰もが慣れ親しんだものではなく、身の回りの変哲もないものであろう品や、特定できない人物、慨視感はあるが微妙に変更された図が使われている点だと感じました。確かに何かが消失しているのに、田尾創樹という人物は存在感を消したまま確実に大きな個性を放っている。不思議な感覚を覚えました。好き嫌いはありそう。
藤田桃子さんの絵は、まずその迫力に圧倒されました。グロテスクで強烈なマチエールですが、どこか荘厳さを覚え、神や人知を超えた存在をさせ感じます。
佐藤修康さんの絵画は原始的で、感情的に見えるし、実際にそうなのだろうと思いますが、ただ、色を無造作に
塗り付けているのではなく、何かわからないものが確かに描かれている、それは呪術に使うお供え物のように思えてきて、その儀式が行われた痕跡を見ているような感覚を受けました。
今回の展示で佐藤さんの対局にあるのが樫木知子さんであったような気がしました。超越したものに委ねる佐藤さんの方法とは逆に樫木さんは完璧な画面を追求した技法の極み。その技術を駆使して作られたアンニュイな世界観は他に追随を許さない完成度を実現しています。
視覚体験を超えてもはや感覚に直椄に訴えかけるような、風能奈々さんや三瀬夏之介さんの作品は、空間と平面の狭間に入り込んでしまったような不思議な体験や、何千年もの夢に旅だってしまったような、精神世界へと見るものを連れ去ってしまう魅力がありました。風能さんの素材に対する意識や卓越したセンス、三瀬さんの把握しきれないほどの世界感と手数が、作品をそれほどの領域にまで高めているのだなと感じました。
福永大介さんの絵画は、「変」という印象。明らかに変な構図で変哲もないモチーフが描かれている。にもかかわらず、これを単に構図の良くない絵として見ていいのか。絵画における常識の構図からズラす事によって絵画の在り方について問い直す意味で重要な部分をついている作品なのかもしれません。

今回のVOCAを観覧して感じた事は原始回帰ともとれる呪術的なプロセスを経て何か本質を露にしたり、目に見えない超越的なものに対する信仰を表現した作品が増えているのではという事です。それは以前のネットの普及による図像の在り方が変質し、フラットになっていく社会における表現の時代を越えて逆方向に向かう動向とも取れますが、平面の一部の作品を見ただけですし、確かな事は言えません。しかし、これからの平面表現において意義のある展覧会だった事は確かですし、これから美術がどんな動きになっていくのか楽しみにさせてくれる内容でした。
淺井祐介さんの超紀元的な絵画も魅力的でしたし、池谷保さんの絵の具そのものと交信しながら更新されていくような印象のペインティングも大変良かったです。
VOCA2009

2008 

December 11 [Thu], 2008, 23:51
すいません。放っておきすぎて2008年は何のレビューもなく終わってしまいそうです。
これからはまたちょくちょくとアーティスト、展覧会を紹介していきます。また、過去の時代の芸術もピックアップして取り上げていけたらいいかなと思っています

LOCA2007 

December 16 [Sun], 2007, 23:30
京都市立芸術大学大学院生による、学祭期間中のみの廊下で行われる展覧会LOCA展。今年もよかたー!!毎年メンバーが変わるのも学生の学生による展示ならではの楽しみ。学生とはいえ、質が高くて楽しめます。というか私は勉強させてもらっています。

村上滋郎 

September 21 [Fri], 2007, 0:32
アートキャンプ第三期はすばらしいものだった。その中で一人、どうしてもここで絶賛しておかなくて気がすまない人物がいる。それが村上滋郎くんだ。
彼は電車のレールや、プラモデルの端材の持つ交差感やその形態にこだわって作品作りをしている作家さん。彼の豊かな表現力の源はそのポジティブなバイタリティによるもので、その作品は常に見るものの好奇心や冒険心を掻き立て、幼少期だけに持っていた少年ならではのこだわりを喚起させる

今回のアートキャンプでもそれが十二分に発揮され、彼の展示ブースはさながらやんちゃな少年の子供部屋のようだった。夜になり、遊び疲れた少年は休んでいて、窓から差し込んだ月の光が、電車のおもちゃのレールの影や、レコード盤を静かに照らしているというイメージ。おもちゃ箱をひっくり返したような空間が少年のやんちゃさを物語っている。ブース内に張られたテントの中のネオンがやさしく、だが陽気に眠りの中で光り輝いている。それの持つ暖かさは少年本人の無垢さによるものか、はたまた幼き日の自分を見つめる現在の本人なのか、当時のお父さんなのか。ってもう、これは妄想しすぎかもしれないが、やがて朝が来ればこの部屋の小さな主はまた一日中遊び回るのだろう

展覧会の感想は難しいなあ、村上くんほどの作家さんの真意を全て読み取る事ができてるとは思えない。むしろかなり的外れな事を言っているのかもしれない。しかし、これだけは言える。どっちにしても最高だ。

藤本由紀夫+/− 

August 28 [Tue], 2007, 22:00
藤本由紀夫+/−展を見に国立国際美術館に足を運んだ。普段からこういった作家さんを好きなわけでもないし、キャパシティが足りず思考的作品を見るのは苦手なのだが、頭をフル回転させたのと、発見させられる事もあり、この展覧会は楽しめた。
まず、藤本作品において1+1=2ではない。1+1=0である。これはなかなか衝撃だった。一つあったものにもう一つを足す事で両方とも消えてしまうのだ。勿論『消える』というのにもいろいろあり、藤本自身にとっての「消える」という意味合いも一様ではなく、fade(次第に消える)、disappear(見えなくなる)、vanish(突然消える、見えなくなる)、die(存在しなくなる)、pass(出来事、状態などが消える)等々…としているが、つまりは成り立たなくなることを、効果が消えるという事もそのうちに含まれるのだろう。
ということを踏まえて今回の展示のサウンドインスタレーション(と言っていいのかな)を見てみよう。一番+/−効果を体現していて、わかりやすいと思う。
ビートルズの曲目数と同じ数のCDプレイヤーが壁一面に並べられ、ビートルズの曲が一斉に再生されている。その一つ一つに近づくとちゃんとした音楽が聞き取れて、正常に再生されていることがわかる。しかし数歩離れただけで「ざーざー」という単なるノイズ音にしか聞こえなくなる。一つ一つでは成り立っているはずの音楽を一斉に流す事によって、消去してしまっているのだ

アートにおける+と−の話について思い出すのは、2005年京都で行われた世界アーティストサミットでの「アートはアフリカの飢えたこどもを救うことができるのか」というテーマにおける討論で、李禹煥氏が人類全体が1日ぐらい戦争も、喧嘩も、仕事も、セックスもやめてみることによって考える機会を作るというのはどうか、というマイナス法を提案したところ、カチョー氏が「マイナス法もいいが、どう世界を変えていけるかについてプラス法で考えたい」と発言した場面だ。このサミットの記録本を読んだ僕は、「うーん、たしかに、プラス法のほうが直接的だがポジティブだ」などとバカ丸出しで読んでいた。
あまり関連性はなかった気がするが、1+1(-1)=0という方法を使って、視覚と聴覚に訴えかける藤本由紀夫に何か気づかされたような、何か教えられたような気がしてならない。しかしこれ以上語るにはまだ理解が足りないのでもう少し調べてみることにしよう。(もちろん彼のコンセプトは+/−だけではないわけで、知識なしでは難しい)

ARTCAMP 第二期 

August 23 [Thu], 2007, 5:29
ギャラリーヤマグチ クンストバウでの毎年恒例、アートキャンプの季節がやってきた。今年の第二期は、藤好紘沖さん、絹田恵一さん、谷本真里さん、深江恵さん、谷 友理子さん、山口冴子さんの6人だった。語弊のないように断っておくが、今回の展示は例年にないほどレベルの高いものであった。

そのなかで最も素晴らしかったのは山口冴子さんだった。別に知り合いだからと言って特別贔屓しているわけではない。ただ、作品としてこの中で一番好きで、素晴らしいと感じたからだ。展示の良さも去る事ながら、山口さんのアニメーションには毎回、舌を巻く。いわゆるアニメ作品になってしまいがちなアニメーションを、美術作品として成立させるのは実は並大抵の事ではない。そして極めつけはその感性、目のつけどころ「洗濯機から出した洗濯物をカゴに入れた後は、洗濯物が一番存在感を増すときです。持ち上げるとそれはずっしりと重く、世界のすみずみまでやっぱり重力が働いていることを感じます。(備え付けのプリントから抜粋)」
展示も文句のつけどころがない。展示のための作品。作品のための展示。持ちつ持たれつ、無駄を感じさせない内容だった。

また、谷友理子さんのネオン的表現。自分もネオンや、花火等の光や色をどう表せるかと常々考えているのでまた違った表現をしている作品を見て勉強になった

二期の6人、ご覧になったみなさんはどう感じただろうか?僕はもう手強いライバル達に闘志を燃やしまくりながらも全員の作品を見ていろいろと感じたり、感心したりしながら見る事ができた

羽部ちひろ、吉田典子展 

August 23 [Thu], 2007, 4:54
8月6日〜8月11日までギャラリーデン、ギャラリーデン58で羽部ちひろさんと吉田典子さんの個展が開かれていたので彼女達の友人に連れられ足を運んだ。そこで元永定正さんとばったりというびっくりサプライズもあったのだが、展覧会の内容も素晴らしいものだった。

羽部さんの絵は前に見たベットが山になっている絵の時からかなりのファンで、今回も魅了されてしまった。ちらりと覗かせる遊び心も見る人を引きつける。表現というか表情がとても好感が持てるし、見ている間ずっと「なんでこんなに良いんだろう〜」とため息ばかり出ていた。個人的おすすめアーティストの1人である。良いものほど口で説明するのは難しい。ましてや本人ではないので尚更だ。とにかく機会があれば見て欲しい

吉田典子さんの作品は見るのははじめて…だったかな。イメージの融合というよりは連鎖といったほうがしっくりくる。ユーモラスな発想がかなりのセールスポイントになっている。ここからは完全に個人的感想だけど、さきほど述べたイメージの連鎖は一つの画面に留まらない。「これも!これも!そんでこれがこうなって…」って感じで絵から絵とジャンプして展開される(気がする)。は〜、そんな展開よく次々と思い浮かぶなー。と頭の良さに脱帽。大変勉強になりました。

2人ともすごい魅力的。これからも楽しみです。良い展覧会を見せてくれてありがとうございます。

深沢軍治展 

August 23 [Thu], 2007, 4:19
7月から8月はじめまで京都祇園、俵屋画廊で行われた展覧会。深沢軍治さんの作品はまるで絵画の実験室だった。

深沢さんの作品を見るのは以前、CASOで行われた横内賢太郎さん、手塚愛子さん、谷澤紗和子さんとの展覧会以来だったのだが、そのときから半年に満たないうちにさらに変化していた。というか同じ表現に頼っていないと言った方が正しいかもしれない。
若輩者の自分としては一つ一つの画面の隅々に至るまでこれ以上とないほどの新鮮味を感じてならない。
今の若い作家さんは光るものがあればギャラリーやメディアにすぐに取り上げられ、脚光を浴びやすい時代に生きている。しかし、大先輩である経験豊富な作家さんから学ぶという事の大事さを忘れてはいないだろうか。外国の大きなマーケット等に目を向け、売れるための活動をするのも現代においては大事かもしれないが、自分の生まれ育った日本の、身近なところにこそ真に見本となる先生がいる事を忘れてはならない気がする

深沢軍治さんはこれからの若い作家に期待しながらも、自らの制作、活動に全力を持って取り組んでいる。年齢なんて関係ない、常に最高のモチベーションと挑戦を忘れない「今が旬」の作家さんとして尊敬できる人だと思った。

CX展 

June 15 [Fri], 2007, 2:01
2007.5.29〜6.3の間、海岸通ギャラリーCASOで開催されていた、京都市立大学、同大学院生9名によるグループ展『CX展』はまさに現代美術という土壌に生まれて間もない新芽達の成長過程を見る事ができる貴重な展覧会であった。
髪の毛というモチーフにこだわった絵画作品(東京アートアワード2007選抜作家)やプラモデルを組み立てる時に出る端切れに着目した無邪気さ溢れる作品にはかつて少年だった観覧者は目を輝かせずにはいられない。またアウトサイダーを彷彿とさせる巧みな感覚で描かれた、緻密ながらおおらかなタブローは観覧者の心理に語りかける。そして自分だけのものだったはずの記憶を思い起こしてしまうだろう。子供の時にはじめて見た街々や草原や星やライオンを

アニメーション、ドローイングなど、メディアに偏らず表現の幅を感じさせない内容である。美術関係者から見ても「面白い。今後はどうなっていくんだ」と期待させられるものばかりだったはず。

また展覧会以後6月12日〜6月17日まで京都市立芸術大学、学内ギャラリー、小ギャラリーにて、大学院油画専攻2回生展pica-2-が開催中。CX展で展示された作品も多数展示されているので見逃した人は行くべし
P R
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